ほとんどの方が一度は仏壇の前で手を合わせて先祖供養をしたことがあるのではないでしょうか。
先祖供養の際に使用される仏壇ですが、もともとは家の中にある小さなお寺という扱いでした。
仏壇は現世を生きる私たちの心の拠り所として、重要な役割を担っています。
仏壇を購入する際には、本記事で紹介するポイントについてしっかりと押さえておきましょう。
今回は、仏壇の必要性や、仏壇を実際に購入して設置するまでの流れについて解説します。
目次
仏壇とは?
「家にあるお寺」が本来の役割
仏壇は寺院の本堂を小型にして家庭内に安置できるようにしたもので、日々の生活の中で仏様と向き合うための「小さなお寺」という役割です。
また、仏壇の最上段に設置された須弥壇と呼ばれる一段高い壇は仏様の世界を象徴しており、寺院と同様に家庭用の仏壇でもご本尊を祀ります。
現在の仏壇の役割
現在は、仏壇は信仰の拠り所というよりも、ご先祖様と向き合い感謝するための場所という考え方が一般的です。
ご先祖様へ手を合わせて日々の出来事を報告する場所、いわば「ご先祖様の家」というのが現在の仏壇の役割と言えます。
仏壇はなぜ必要?
心の拠り所となる
仏壇は、日々の穏やかな暮らしに感謝をする場所、心が疲れたときや落ち込んだときに祈りをささげる場所など、私たちの毎日を支える心の拠り所としての役割を果たしています。
朝晩、仏壇の前に座ってご先祖様やご本尊に合掌礼拝をすることで心が清められ、安らかな気持ちになることができるでしょう。
身近な故人と対話する場である
仏壇の前に座って故人と対話の時間をもつことは、亡くなった大切な人を身近に感じさせてくれます。
故人がいつでも自分を見守ってくれていることを実感でき、残された人が元気に生きていくための力を与えてくれるでしょう。
先祖の魂を供養する場である
ご先祖様にお参りをして供養することはとても大切なことですが、毎日お寺に行くのは難しい方も多いのではないでしょうか。
しかし、家庭内に仏壇があれば、毎日ご先祖様に礼拝して安らかな眠りを願うことができます。
仏壇の歴史について
仏壇のルーツと言われる「玉虫厨子(たまむしのずし)」は、飛鳥時代に登場しました。
奈良時代に入り、白鳳14年(685年)3月27日に天武天皇が詔(みことのり)をもって「諸国家毎に仏舎をも設け、仏像及び経巻を安置し、以て三宝を供養すべし」と命じたことが、仏壇を祀るようになった始まりだと「日本書紀」に記されています。
その後、室町時代に蓮如上人が仏壇をもつことの素晴らしさを説いて信徒の間で仏壇が広まり始め、江戸時代になると一般庶民にも仏壇が広まりました。
そして、ご本尊やご先祖様の位牌を祀り毎日お参りをするという文化や伝統が、現在まで続いているのです。
仏壇を置けない場合はどうしたらいい?
スペースの余裕や仏間がない住宅などでは仏壇を置けない場合がありますが、位牌だけを祀る形でも問題ありません。
風通しのよいリビングや、朝晩のお参りがすぐにできる寝室など、日常生活の中で自然に手を合わせられるような場所に安置するとよいでしょう。
また、お墓に納める遺骨や遺灰を手元に置いておく「手元供養」もおすすめです。
小さな骨壷やアクセサリー、インテリア用品などに遺骨や遺灰を納めて供養することで、故人を常に身近に感じることができます。
仏壇を購入・設置する流れ
①仏壇の置く場所を決める
仏壇の置く場所を決める際に、以下のような古くからの風習や縁起などに気を付けたいと考える人が多く見られます。
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しかし、仏壇に合わせて置く場所を決めるのではなく、置ける場所に合う仏壇を選ぶ方法もあります。
広い和室であれば床置きの仏壇、家具の上に置くなら上置きタイプ、洋室であればモダン仏壇を選ぶなど、住環境やライフスタイルに合う仏壇を選びましょう。
また、仏壇を購入する際は安置する場所の高さや巾、奥行きをきちんと測り、そのサイズに合わせることも重要です。
仏壇のサイズについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
②宗派を確認する
仏壇には「金仏壇」「唐木仏壇」「モダン仏壇」の3種類があり、現在は宗派にかかわらず洋風の部屋にも馴染むモダン仏壇を選ぶケースが増えています。
しかし、仏壇に飾るご本尊や脇侍などは、お寺の中心がご本尊であるのと同様に宗派に合うものでなければなりません。
ご本尊は菩薩寺の宗派によって異なるため、事前に故人・自身・家系での宗派を確認して、正しい仏壇や仏具を選びましょう。
仏壇の宗派について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
③仏壇のデザインや材質を選ぶ
仏壇は、部屋の雰囲気に合うデザインであることも重要です。
最近では普通の家具と同じように見えるタイプや、ローボードなどにも置けるコンパクトな上置き仏壇なども増えています。
また、仏壇に使われている木材は黒檀(こくたん)、紫檀(したん)、桑、ウォールナットなどの銘木と呼ばれているもので、面材の使用工法には、無垢、厚板貼り、薄板貼り、木目調プリント、着色仕上げなどがあります。
仏壇の材質は耐久性や価格にも関係するので、デザインや色などと合わせて材質もしっかりと吟味して選ぶようにしましょう。
仏壇の種類について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
④予算を考える
仏壇の価格は、材質や職人の手間、工法、大きさなどによって変わります。
仏壇は長く付き合うものなので安さだけにとらわれず、耐久性やデザインなどを総合的に考えて、予算を立てたいところです。
また、仏壇を購入するときは仏壇本体だけでなくご本尊や位牌、仏具が必要なので、すべて含めた金額で予算を考えましょう。
仏壇の予算について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
⑤仏壇を購入する店を決める
購入の際は、アフターサービスがしっかりとしたお店を選びましょう。
仏壇は気軽に買い替えをするものではなく、長く使うものです。
大切に使っていたとしても、いつの間にか傷がついたり木材が収縮や腐食したりなどのトラブルが生じることが考えられます。
購入から何年経っても修理をしてくれるかなど、しっかりと確認しておきましょう。
仏壇の購入について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
⑥設置後は魂入れをする
「魂入れ」や「開眼供養」は、仏壇を新たに設置したときに必ず行う法要です。
この法要は、仏壇本体ではなくご本尊や位牌に対して行うもので、お坊さんに読経をしていただくことで、初めて礼拝の対象となるため、忘れずに行いましょう。
仏壇の魂入れについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
仏壇を設置する際に必要なものとは?
仏具
仏壇に飾る仏具は宗派によって異なる場合がありますが、基本の仏具には「三具足(みつぐそく)」と呼ばれる「花立(はなたて)」「香炉(こうろ)」「燭台(しょくだい)」が挙げられます。
その他にも以下のような仏具があり、飾り方も宗派によってさまざまです。
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仏具の種類や飾り方について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
位牌
位牌は故人の魂が宿る依代(よりしろ)であり、故人の戒名(法名・法号)や俗名、没年月日、享年が記された木碑です。
葬儀の際は白木の位牌を使用しますが、四十九日以降は本位牌を祀ります。
本位牌は故人が成仏した証でもあり、故人そのものとも言える大切なものです。
仏壇に祀る位牌について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
もともとはご本尊を礼拝する、まさに「家の中の小さなお寺」としての役割が中心だった仏壇ですが、現在はご先祖様を供養する意味合いが強くなっています。
毎日仏壇に手を合わせ、仏様やご先祖様と対話をする時間をもつことは、私たちが心豊かに暮らしていくための基盤となってくれるはずです。