仏壇で故人を祀る際には、ろうそくに火を灯すのが一般的ですが、これにはきちんとした理由があります。
また、ろうそくを消す際には正しい消し方で火を消す必要があるため、注意が必要です。
今回は、仏壇で使うろうそくについて紹介します。
目次
仏壇でろうそくに火をつける理由
ろうそくに火をつける理由は、単に仏壇を照らすためだけではありません。
具体的な理由は、以下が挙げられます。
仏様の智慧と慈悲を表している
仏壇に使われる仏具の中には「三具足(みつぐそく)」と呼ばれる荘厳(しょうごん)の形式があります。
香(香炉)と花(花立て)に並んで灯(ろうそく)もその一つとされ、元来仏様の智慧と慈悲を表すものとされてきました。
「智慧(ちえ)」とは「世の中の真理を見極める心の働き」を意味する仏教用語で、物事の真実を明らかにする力があると言われています。
その智慧の象徴であるろうそくの火は、拝む者の煩悩や邪念に光を当て本来の姿を露わにしてくれる仏様の光明なのです。
死後の世界と現世をつないでいる
ろうそくの火は死後の世界と現世をつなぐ役割も担っており、ご先祖様や故人が帰ってくるときの道しるべになるとも考えられています。
また仏壇の周囲が明るくなることで、私たちの姿を亡くなった人によく見てもらえるというのも理由の一つです。
仏様の教えを表している
ろうそくの火は「灯明(とうみょう)」と呼ばれ、一対となっているろうそくのうち片方を「自灯明」、もう一方を「法灯明」と言います。
自灯明は自分自身を頼りにして生きること、法灯明は真理を頼りにして生きることを表す、仏教の開祖・ブッダが入滅する間際に残した言葉です。
こうした言葉が伝承されていることからも、ろうそくの火は仏教の信仰や故人の供養に欠かせない存在だと言えるでしょう。
仏壇のろうそくの種類<和・洋・LED>
仏壇で使われるろうそくには、和ろうそく・洋ろうそく・電気ろうそくの3種類があります。
仏具の場合は宗派や仏壇によって使用するものが異なりますが、ろうそくについては特に決まりがありません。
次に各ろうそくの特徴やメリット、デメリットを紹介するので、ろうそくを選ぶ際の参考としてください。
和ろうそく
和ろうそくはハゼの実やなたね油、パーム油で作られたろうそくです。
植物油を使っているため煙が立ちにくく、ススで仏壇を汚してしまうことがほとんどありません。
また、芯に使用されたい草や和紙が溶けたロウを吸収し、下に垂れるのを防いでくれます。
職人の手で一つひとつ作られているため、火持ちがよいのも特徴です。
花の柄などが描かれた「絵ろうそく」は、お正月やお盆の飾り付け、仏花の代用品として重宝します。
洋ろうそく
洋ろうそくは最もポピュラーなろうそくです。
石油由来のパラフィンやステアリンを原料とし、芯には綿糸が使われています。
価格の安さが1番のメリットですが、和ろうそくと比べて炎が小さく、風が吹いただけで消えてしまうのが難点です。
また煙が多いことで掃除の手間や消費量が増えるというデメリットもあります。
とはいえ使い勝手がよいため、日常の供養に使用するろうそくとしては最適です。
LEDろうそく
火の不始末やスス汚れのリスクがあるろうそくの代わりに登場したのがLEDろうそく(電気ろうそく)です。
LED電球でろうそくの炎を演出するため、もし消し忘れたとしても火事の心配がありません。
特に高齢者や小さな子ども、ペットがいる家庭におすすめです。
コード式の他に乾電池式のタイプも販売されているため、モダン仏壇やミニ仏壇にも使用できます。
仏壇のろうそくの正しい消し方
故人と私たちをつないでくれるろうそくの火ですが、消す際にもいくつかの注意点があります。
正しい行動をしなければお先祖様や故人に対して失礼になりかねないため、供養時のマナーとして必ず押さえておきましょう。
息を吹きかけて消さない
ろうそくの火を消す際、息を吹きかけて消すのはタブーとされています。
仏教の教えにより人間の息が「穢れ(けがれ)」「不浄」の象徴となっているためです。
穢れを嫌う仏教の場において、仏様やご先祖様に息を吹きかける行為は大変失礼にあたるため、十分に気を付けましょう。
また、ろうそくの炎で火をつけた線香も同様に、息を吹きかけて消してはなりません。
手であおいで消す
最も手軽なのが手であおいで火を消す方法です。
手のひらでろうそくの火をあおぐようにしてそっと消します。
その際大きくあおぐのではなく、小刻みにすばやく動かすのがうまく消すポイントです。
指でなでて消す
親指と人差し指を使い、ろうそくの1番下から上に向かって優しくなでるようにして消します。
ろうそくの下のほうは上部と比べて熱くないため、直接触っても問題ありません。
ただし炎に触れないよう、気を付けて行なってください。
ロウソク消しや仏扇で消す
ロウソク消しは小さな柄杓のような形状をしており、火の上に被せるだけで簡単に火を消せる、火消し専用の仏具です。
また「仏扇(ぶっせん)」はうちわの形をした小さな道具です。
普通のうちわと同じくあおいで火を消します。
仏壇で使うろうそくの保存方法
意外にもろうそくはとてもデリケートです。
温度変化や湿度に弱いため、正しい方法で保存しないとヒビ割れたりカビが発生したりすることもあります。
ろうそくを長持ちさせるためにも、次のポイントにしたがって保存しましょう。
箱に入れて保管する
ろうそくを剥き出しにしたままでは温度変化や湿気の影響を直に受け、ヒビ割れやカビが発生してしまいます。
購入時の箱や密閉できる容器に入れて、しっかりと保管しましょう。
直射日光が当たる場所は避ける
ロウの融点は低く溶けやすいため、直射日光に当てるのは厳禁です。
日当たりがよい場所を避けて保管することで、ろうそくを長持ちさせられます。
冷暗所で保管する
冷暗所は温度変化が少なく、ろうそくが溶けたりヒビが入ったりすることを防げます。
例として、引き出しなどにしまっておくのがおすすめです。
ただし、湿気が溜まりやすい場所はカビが発生してしまう可能性もあるため、避けてください。
冷蔵庫での保管は避ける
ろうそくが溶けやすいからといって、冷蔵庫に保管することは避けましょう。
他の食品を取ろうと冷蔵庫を何度も開け閉めすることによって激しい温度変化が生じ、ヒビ割れてしまう可能性があります。
まとめ
ろうそくは仏壇に最低限揃えておかなければならない重要な仏具です。
今回紹介したろうそくの一面を知ると、今まで何となく行なっていた、ろうそくに火を灯すという行為自体が特別なものに感じられることでしょう。
またろうそくは選び方や保存方法を間違ってしまうと、大切な仏壇を汚したりろうそくを台無しにしたりする場合があります。
仏壇に供えるろうそくの扱いには十分注意を払い、想いのこもった供養をしていくことが大切です。
仏壇に関するお悩みやお困りごとがあれば、終活のトータルサポートを行う林商会へお気軽にご相談ください。