仏壇を置く場合、最適な向きについては宗派や風水などの考え方によって変わります。
また、仏壇を置く場所には適している場所と適していない場所があるため、実際に仏壇を置く際は注意が必要です。
そこで今回は、仏壇を置く際の最適な向きや場所について紹介します。
目次
仏壇を置く向きに決まりはある?
仏壇の向きや置き場所、方角に決まりはありません。
仏教では、仏壇の向きに決まりはないという「十方諸仏(じゅっぽうしょぶつ)」と呼ばれる思想があるため、全方向どの向きに置いても大丈夫です。
設置する方角に吉凶などがないため、昔はどの家も方角を気にせず仏間が設置されていました。
一般的に北向きに仏壇を配置するのはよくないとされていますが、これはあくまで昔の家のつくりによるものです。
直射日光が当たらず、風通しのよい場所に置くためには、北向きはよくないとされていたことが理由です。
ただ実際は、十方どの方角にも仏様はいらっしゃるので、仏壇を置く方角は問いません。
昔の家のつくりと現在の家のつくりは大きく変わっているため、現代の住宅事情に合わせて仏壇の配置場所を考えることが大切です。
仏壇を置く向きの考え方について
仏壇を置く向きの考え方は複数あります。
ここでは複数の説を紹介するため、仏壇を置く場所に困ったときの参考にしてみましょう。
南面北座説
南面北座説では、仏壇正面を南、背面を北へ向けて置きます。
論語には「天子は南面す」とあり、位の高い人は南を向いて座って人民を治めたという中国の慣習に由来するものです。
この置き方だと仏壇に直射日光が当たらないため、仏壇が劣化しにくいメリットもあります。
東面西座説
東面西座説では、仏壇を東向きに置きます。
これは、インドの慣習に由来する考え方です。
インドでは、日が昇る東は立身出世する方角とされており、主人は東向きに座るのがよいとされています。
この考え方が日本にも伝わり、東向きに仏壇を配置するようになりました。
また、西の方角に仏様が住んでいる浄土があるとされているため、仏壇を通して仏様を拝むとためとも言われています。
本山中心説
本山中心説では、仏壇を拝む際に、その延長線上に宗派の総本山がくるように置きます。
住む場所や本山によって、仏壇を配置すべき方向が変わるのが特徴です。
真言宗では、本山中心説を取り入れて仏壇を置いています。
西方浄土説
西方浄土説では、仏壇を東へ向けて置きます。
これは、極楽浄土の方向である西に向かって崇拝するためです。
浄土とは、悟りを開いた仏様の住む世界であり、阿弥陀如来の西方極楽浄土でもあります。
阿弥陀如来を本尊とする浄土宗・浄土真宗・天台宗では、仏壇を東へ向けて置くことが多いでしょう。
春夏秋冬説
春夏秋冬説では、仏壇の向きにこだわっていません。
これは、ご先祖様が安らかに眠ることのできるならばどこに置いても問題ない、東西南北・上下左右に良し悪しをつけてはいけないという考えに基づくものです。
風水の観点から考える場合
風水では、太陽が昇り始めて新しい空気が舞い込む東南が吉方位とされています。
風水的に仏壇の向きにふさわしいのは、南東・南・東・西です。
また、家族が集まる賑やかな場所がよいとされているため、リビングや和室などが配置場所として適しています。
家相の観点から考える場合
家相の観点から仏壇の配置場所を考える場合、それぞれの方角の部屋に対して、以下の仏壇の向きが吉とされています。
東側 | 南か西向き |
東南側 | 南向き |
西側 | 東向き |
北西側 | 南か東向き |
北側 | 南か西向き |
宗派ごとの仏壇を置く向きについて
宗派によって仏壇を置く向きの考え方は異なります。
各宗派の仏壇の配置に関する考え方について、ここで確認しておきましょう。
曹洞宗・臨済宗
曹洞宗・臨済宗では、仏壇を南向きに置くことを推奨しています。
これは、釈迦が説法を説くときに南を向いて座っていたことに由来するものです。
真言宗
真言宗では、本山のある高野山の金剛峰寺に向かって仏壇を置いています。
そのため、はじめから仏壇を配置する方角が決まっているわけではありません。
住んでいる場所や総本山との位置関係などによって、仏壇を配置する向きは異なります。
浄土真宗・浄土宗・天台宗
浄土真宗・浄土宗・天台宗では、仏壇を東向きに置いていることがほとんどです。
信仰の対象となる中心的な仏像である阿弥陀如来は、西方浄土、つまり西側の方角にいると言われているため、西側の方角に向かって祈るように仏壇を東向きに置きます。
日蓮宗
日蓮宗では、仏壇を置く方角に指定はありません。
そのため、どの位置に置いてもよいとされています。
仏壇を置くのに適している場所とは?
仏壇は基本的にどの向きに置いても問題ありませんが、置き場所としてふさわしい場所とそうでない場所があります。
ここで、仏壇を置くのに適した場所を確認しておきましょう。
床の間
床の間は、本来は花や掛け軸などを飾りますが、仏壇を置くスペースとしてもおすすめです。
床の間に仏壇を置くのはよくないという考え方もあるようですが、どの宗派でも基本的に問題はありません。
一般的に床の間は風通しがよくなるように設計されているため、湿気など仏壇が劣化する原因を避けて設置できます。
和室などの畳のある部屋
畳のある部屋は、家の中でも家族が集まりやすい場所です。
そのような場所に仏壇を置けば、お花を供えたり線香をあげたりなど、日々の管理もしやすくなります。
和室が狭い場合は、場所を選ばないコンパクトサイズの仏壇を選びましょう。
上置き型仏壇であれば、タンスなど家具の上に置けるため、狭い間取りのマンションでも安心です。
リビング
リビングは茶の間と同様、家族が集まる生活の中心スペースです。
いつも家族が過ごすリビングに仏壇を置くことで、故人が常に見守ってくれる印象があります。
おしゃれでコンパクトなサイズの現代仏壇なら、洋室のインテリアに馴染みやすいため、リビングにも置きやすくおすすめです。
そもそも仏壇は感謝と供養の気持ちでお参りすることが重要なので、日々お参りしやすいリビングに設置するのは最適だと言えるでしょう。
仏壇を置くのに適していない場所とは?
仏壇の配置場所として適さない場所は複数あります。
適さない場所に共通するのは、仏壇を傷めてしまう可能性があることです。
また神棚との上下関係にも注意する必要があります。
それぞれ仏壇の配置場所として避けるべき理由があるので、参考にしてください。
直射日光が当たる場所
仏壇は木製が多いため、直射日光や湿気に弱い性質を持ちます。
日当たりのよい場所に置くと、日焼けして変色したりひび割れを起こしたりすることがあるので注意が必要です。
冷暖房の風も仏壇を傷める原因になるため、エアコンとの位置関係にも注意しましょう。
湿気の多い場所
湿気がこもるような場所はカビが発生しやすくなります。
湿気に弱い木製の仏壇は、風通しのよい場所に配置しましょう。
電化製品の側
仏壇の近くに電子レンジ、冷蔵庫、オーディオ機器などの電化製品を置くと、機器から発せられる熱や音の振動などで劣化する恐れがあります。
電化製品の上や近くには仏壇を置かないように注意しましょう。
タンスや収納棚、押入れの上部など、熱や音の振動がない場所に置く分には問題ありません。
鬼門の方角
鬼門とは、北東(うしとらの方角)のことで、陰陽道では鬼が出入りする方角です。
この北東の方角にお仏壇を置くのは風水的によくないという考えもあります。
風水や鬼門は中国から伝来した考え方ですが、現代の日本に伝えられている鬼門は、日本独自の陰陽道の中でできあがった独特の思想です。
日本には鬼門を根強く恐れる独自の思想があるため、日頃から風水を気にする方は、鬼門の方角を避けて配置したほうがよいでしょう。
神棚と向かい合わせ、または真下の場所
仏壇と神棚を向かい合わせに置いてしまうと、神棚に祈っているときは仏壇に、仏壇に祈っているときは神棚にお尻を向けてしまいます。
どちらにもよくない状況になるため、向かい合わせに設置するのは避けましょう。
神棚の真下に仏壇を置くのもよくありません。
というのも、神棚と仏壇のどちらに向かって手を合わせているか分かりにくくなってしまうためです。
また、神棚に手を合わせる際に仏壇を見下ろすことになってしまうので、左右のどちらかに設置場所を移動させましょう。
神棚と仏壇を同じ部屋に置くこと自体は問題ではないですが、上下関係になるような配置にならないように注意が必要です。
床の間と向かい合わせの場所
床の間は、その家で最高の上座とされています。
そのため、床の間に向かい合うように置かれた場合、仏壇は下座の扱いとなってしまうため、設置場所として不向きです。
床の間に仏壇を置くことは問題ありません。
座ったときに目の高さよりも仏壇が下になる場所
仏壇を見下ろして拝むことにならないように、配置する高さにも注意が必要です。
座ってお参りする場合 | 目線よりやや上にくるようにご本尊を配置する |
立ってお参りする場合 | 胸の高さより上になるようにご本尊を設置する |
仏壇にはさまざまな種類がありますが、背の低い上置きタイプの仏壇は直接床に置くことはせず、家具の上などに置いてお参りしましょう。
まとめ
仏壇を配置する向きや置く場所について決まりはありません。
しかし、直射日光や湿気の影響を受けやすい場所は仏壇を配置する場所としては不向きです。
ご本尊やご先祖様にとって落ち着ける場所であり、家族みんながお祈りしやすい場所が、仏壇の最適な配置場所と言えます。
現代の日本では住宅の在り方も多様化しているため、それぞれの家庭に合った仏壇の配置を考えることが大切です。
慣習にとらわれすぎることなく、日常生活に合わせてお祈りしやすい場所を探してみましょう。