独特の文化が色濃く残る沖縄では、使用されている仏壇にも特徴があります。
また、先祖供養に重きを置いている点についても知っておくとよいでしょう。
この記事では沖縄仏壇の基礎知識や、しきたりなどについて詳しく解説します。
沖縄の仏壇の特徴
沖縄で使用されている仏壇は、安置する目的や使用する素材などが、一般的な仏壇とは異なります。
沖縄の仏壇は祖先崇拝のためのもの
一般的な仏壇は、小さな寺院としてご本尊を安置するのが大きな役割です。
しかし沖縄では、「先祖供養」を重視する民俗信仰があるため、ご先祖様やご位牌を供養することを大切にしています。
そのため、沖縄の仏壇ではご本尊を安置しないケースも珍しくありません。
ご先祖様の名前を記したご位牌のみを祀る家庭も多く、この点が沖縄仏壇である最大の特徴と言えるでしょう。
仏教の宗派は関係ない
沖縄の仏壇はご先祖様の供養を主な目的としているため、仏教の宗派を問いません。
どの宗派であっても、沖縄仏壇を安置してご先祖様を供養することが可能です。
沖縄仏壇の代表的な木材はチャーギ
沖縄仏壇で使用される代表的な木材はチャーギです。
チャーギは湿気に強いため、沖縄の気候に適しています。
また、シロアリ被害を受けにくく、長期にわたって美しい外観を維持できます。
ただし、チャーギと一口に言ってもグレードはさまざまで、質の高いチャーギを使用している沖縄仏壇ほど高価になります。
モダンな仏壇も登場!?
沖縄の家庭で安置されている仏壇は、ほとんどが沖縄仏壇です。
しかし、新たに仏壇を購入する人の中には、西洋風のおしゃれなデザインが特徴的なモダン仏壇を選ぶ人も増えつつあります。
これは、さまざまな事情から故人の遺骨を自分の身近に置く手元供養を必要とする人が増えているためです。
また、沖縄仏壇に比べて比較的安価で購入できることも、モダン仏壇が選ばれる理由の一つでもあります。
沖縄の仏壇の基礎知識・しきたり
沖縄の仏壇には、外観だけでなく置き場所や拝み方など、一般的な仏壇との相違点が数多くあります。
ただし、これから沖縄仏壇を購入する場合でも、古くからあるしきたりに従う必要はありません。
しかし、ご先祖様をお祀りするにあたって参考にすべきこともあるので、この機会に沖縄仏壇の基礎知識やしきたりについて理解を深めておくとよいでしょう。
家の中で置き場所が決まっている
沖縄では、家の中央に仏壇を配置している光景がよく見られます。
これは沖縄ならではの風習で、仏壇を置く場所があらかじめ決まっているためです。
伝統的な沖縄の民家は、台所と5つの部屋で構成されています。
家の表側には一番座・二番座・三番座と呼ばれる3つの畳間が並び、裏側には台所と二番裏座・三番裏座が並ぶのが一般的です。
沖縄では、仏壇を「家の中央」に配置する風習があるため、仏壇を置く場所は二番座の畳間と決まっています。
沖縄の仏壇には独自の沖縄位牌(ウチナーイフェー)を使用
沖縄の仏壇には「沖縄位牌(ウチナーイフェー)」と呼ばれる沖縄特有の位牌を置きます。
沖縄位牌とは、1つの位牌に複数人の名前を書くことができるもので、何枚かの札が並び、札の中央に帰眞・霊位と記すのが一般的です。
また、位牌札には故人の戒名のみを書き、没年月日などは記しません。
沖縄位牌は、お焚き上げをする四十九日の前日までに、仮位牌の「白位牌(シルイフェー)」を準備する必要があります。
仏具やお供えものの配置
沖縄の仏壇はサイズが大きいため、仏具は三段に分けて配置します。
一段目(下段)
一段目の中央にウコール(香炉)を置き、その両脇に一対のろうそく立てを置きます。
二段目(中央段)
二段目の中央に水椀と酒椀を置き、その両脇に一対の仏飯椀を置きます。
さらに、仏飯椀の両脇に一対のウチャトゥ(お茶)椀(台座付き)を置きます。
三段目(上段)
三段目の中央に沖縄位牌(ウチナーイフェー)を置き、その両脇に花瓶を飾ります。
日々の拝み方
沖縄の仏壇は、ご先祖様や故人を祀るだけではありません。
仏壇には始祖からの先人を祀るというのも沖縄特有の考え方であり、仏壇は神格化していると言えます。
また、火の神(ヒヌカン)と呼ばれる台所の神様とともに、女性は毎月1日・15日に拝むのが習慣となっています。
さらに、沖縄では仏壇と火の神は年中行事の主役であり、あらゆる行事の際にお供えものをして拝むのがしきたりです。
仏壇とお墓の関係
沖縄の人々は、お墓参りについても特有の考えをもっています。
沖縄ではお墓参りの行事を盛大に行う風習がある一方、お墓は頻繁に行ってはいけない存在です。
これはお墓と仏壇はいつでもつながっているという考えからきており、仏壇に向かって手を合わせることで、故人を供養できるとされているためです。
父系の血族で代々継承
沖縄の仏壇やお墓は「父方の血を引いた男子」が継承しなければならないルールがあります。
父方の血を引いた一族を門中(もんちゅう)と呼びます。
近年は時代の変化に伴い、門中による継承の文化を実現することが難しくなってきている家庭も増えています。
しかし古き良き伝統を守り、できるだけ沖縄のしきたりに従って供養するのが望ましいでしょう。
沖縄仏壇を選ぶ際のポイント
沖縄仏壇は一般的な仏壇と異なる点が多いので、これから紹介する3つのポイントを参考に選ぶようにしましょう。
置き場所を決めて、寸法を測る
沖縄の仏壇は、押入れなどを改造してはめ込んで設置するタイプが主流です。
また、仏間に直置きする場合でも1間仏間・半間仏間・地袋付き仏間などさまざまな様式があります。
新たに沖縄仏壇を購入する場合は、まずは仏壇を置く場所を決めましょう。
そして仏壇店に行く前に寸法を測っておけば、スムーズに仏壇を選ぶことができます。
値段の仕組みと価格帯
沖縄仏壇の値段は幅広く、どのような価格帯のものを選べばよいか、なかなか見当がつきにくいかもしれません。
値段の仕組みや価格帯を事前に知っておくと、選ぶ際の目安になって安心です。
値段の仕組み
沖縄仏壇の値段は、以下の3つの要素で決まります。
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先程も解説しましたが、沖縄仏壇で使用される主な素材はチャーギという木材です。
チャーギの品質が高ければ、当然仏壇も高価になるでしょう。
また中程度のグレードであっても、仏壇のサイズが大きければ使用量が増えるため、価格が上がります。
さらに、仏壇に施される装飾デザインによっても値段が変わります。
巧みな技術で装飾が施されている仏壇は高価で、外観もより一層美しいのが特徴です。
価格帯
沖縄仏壇の価格帯は幅広いですが、50~150万円の仏壇を選ぶ人が多く見受けられます。
大切なご先祖様を祀る仏壇なので、ある程度の品質を保つためには50万円程度の予算を組んでおくことをおすすめします。
品質のチェックを忘れずに
老舗の仏壇店であっても、仏壇を購入する際は自分の目で品質を確認することが大切です。
以下で紹介するポイントは仏壇の品質を大きく左右しますので、しっかりとチェックしましょう。
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こだわり派は製作するケースも多数
沖縄で1年を通してご先祖様とともに行う行事において、仏壇は中心的な役割を果たす重要な存在です。
特に一族の本家である「ムートゥヤー」は位牌の数が多く、大きいサイズの仏壇を安置する必要があります。
そのため、外観や材質、仕様などにこだわりをもつ人が多く、職人に製作を依頼するケースも少なくありません。
なかには500万円以上もする高価な仏壇を製作する人もいますが、職人に依頼するからといって必ずしも高価な仏壇とは限りません。
依頼先によっては予算に応じた仏壇の製作が可能で、モダン仏壇のように、しっかりとした造りで価格を抑えた仏壇の製作も可能です。
仏壇への強いこだわりがある人は、無理のない範囲で製作を依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。
沖縄の仏壇と先祖供養の行事について
沖縄の先祖供養は旧暦に合わせて行うのが特徴で、独自の儀式が今もなお大切に引き継がれています。
沖縄のお盆は旧暦7月13~15日に先祖供養
沖縄のお盆は、一般的なお盆より1か月早い旧暦7月13~15日に供養を行います。
それぞれの日に独自の呼び方があり、儀式の目的・内容も異なるので以下の表で確認してみましょう。
日程 | 呼び方 | 儀式の目的・内容 |
旧暦7月13日 | ウンケー | ご先祖様の霊をお迎えする日 |
旧暦7月14日 | ナカビ | 中日と同じ意味で、ご先祖様と一緒に過ごす日 |
旧暦7月15日 | ウークイ | ご先祖様の霊をお見送りする日 |
沖縄の旧暦七夕は仏壇を掃除する日
沖縄では旧暦の七夕はお盆前の特別な時期であり、特にお墓の掃除を入念にする日となっています。
家族総出でお墓に出向き、敷地内の雑草を刈ったり墓石を雑巾などできれいに拭いたりした後、お花とお線香を立てて供養するのが沖縄の風習です。
また、この日は「日なし」といって、お墓の引っ越しや修繕を行なってもご先祖様に失礼にならない日とされています。
そのため、この日にお墓の移動や仏壇の清掃をまとめて行うとよいでしょう。
仏壇移動の注意点
引っ越しなどで仏壇を移動する際には、いくつかの注意点があります。
仏壇のサイズを測って運搬ルートを確認し、置き場所を決めた後は仏壇を置くための環境を整えることが必要です。
また、仏壇を移動させる際には魂抜きや魂入れを行う必要もあるため、事前準備をしっかりと行なうようにしましょう。
仏壇の移動について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
沖縄の仏壇は一般的な仏壇と違い、先祖崇拝を目的に安置され、宗派も問いません。
また、仏壇の置き場所や拝み方、お盆の時期などにも沖縄独自の文化が根強く残っています。
沖縄仏壇を購入する際は、伝統的なしきたりを継承したうえで置き場所やサイズなどを決め、ご先祖様を祀るのにふさわしい仏壇を選びましょう。