仏壇があるお宅の場合、引っ越しの際にはいくつかやるべきことがあるのをご存じでしたか?
供養が引っ越し前と後に必要なほか、業者の手配などもしなければならないため、引っ越しの際にはやるべきことについてきちんと把握しておく必要があります。
今回は、引っ越しで仏壇を移動させる際のやるべきことや注意点について紹介します。
目次
仏壇を移動させる前にやっておくべきこと
いざ引っ越しをするときに前もって準備をしておかなければ、大切な仏壇を壊したり傷付けたりしてしまいかねません。
仏壇を移動させる前には、必ず仏壇の状態や新居での置き場所を確認しておきましょう。
サイズを測る
仏壇のサイズによっては、部屋の出入り口や玄関の扉、エレベーター、階段などに引っかかってしまう可能性があります。
あらかじめ仏壇の寸法を測っておき、運搬ルートに問題がないか確認しておきましょう。
運び出す自宅はもちろん、新居に運び入れる際のルートと照らし合わせるのも重要です。
元の状態を記録しておく
仏壇を運ぶ出す前には、仏具や装飾の配置を記録しておきましょう。
仏壇にはさまざまな仏具が置かれているため、飾り付けのときに何がどこにあったのか忘れてしまいがちです。
元の状態を写真などに撮っておくことで、引っ越し後の飾り付けがスムーズにできます。
置き場所を決める
新居での仏壇の置き場所を事前に確認することも大切なポイントです。
引っ越しではさまざまな家具を搬入するため、仏壇のような大きな家具の配置を決めておくと効率的に作業できます。
また、家具の配置をし直すという手間を省くためにも、仏壇が収まるスペースを確保しておきましょう。
梱包をしっかりする
仏具の中には壊れやすく高級な素材が使われているもの、壊れてしまっても買い替えできないものがあるため、しっかりと梱包しましょう。
それぞれの仏具には、次のように形状・仕様に合わせた梱包方法があります。
香炉・線香立て | 火元が残っていないことを確認し、灰が散らからないようビニール袋に入れる。 |
花立て | 器に残っている水分をしっかりと拭き取り、乾燥させてから梱包する。 |
仏飯杯・木魚・照明・装飾など | 割れたり壊れたりしないよう、緩衝材やタオルで保護・固定する。 |
引っ越し前と後の供養について
仏壇の引っ越しの前と後には、魂抜きと魂入れという2つの供養が必要です。
供養する際のポイントやマナーを押さえて、適切な対応をしましょう。
魂抜き
「魂抜き」とは仏壇に宿っている故人の魂を抜き、特別な存在である仏壇を単なる箱に変える供養のことです。
閉眼供養(へいげんくよう)・精抜き・お性根抜きとも呼ばれ、これによって普通の家具と同様に移動させることができます。
魂抜きには、数珠・生花・ろうそく・線香・お布施・お車代を準備しておきましょう。
魂入れ
魂抜きに対して、仏壇に故人の魂を入れるのが「魂入れ」です。
魂入れをすることで、引っ越し前に普通の箱となった仏壇を再び参拝対象へと戻します。
呼び名は開眼法要や精入れ、お性根入れなど、地域によってさまざまです。
供養の際には、魂抜きで使ったものに加えて赤いろうそく・おもち・御膳・果物・お菓子を用意します。
魂抜きと魂入れはセットで依頼する
魂抜きと魂入れはいずれも、普段お世話になっている菩提寺にお願いするのが基本です。
菩提寺のお坊さんの都合も考えて、引っ越し当日の約1か月前からスケジュールの確認をとりましょう。
また、引っ越し当日は大変忙しくなるため、魂抜きは引っ越しの1週間前から前日までに済ませたほうが無難です。
新居が遠方となり、両方の供養を同じ菩提寺に頼めないといった場合には、転居先近くの同じ宗派のお寺に依頼してください。
お布施やお車代のマナー
お布施やお車代にはいくつかのマナーがあります。
供養いただいたことに対する感謝の気持ちとして菩提寺やお坊さんに包むお金のため、失礼のないようにしましょう。
お布施やお車代の包みには、郵便番号欄のない白無地の封筒を使って別々に用意します。
ただし、中に内紙が貼られている二重封筒は不幸が重なることを連想させるため、使用を控えてください。
封筒の表書きには黒いペンまたは筆ペンを使い、「御布施」「御車代」としたためます。
裏面にはお金を納める人の名前・住所・金額を書きますが、金額は漢数字ではなく「壱萬圓」「参萬圓」というように大字(旧字体)を用いるのが基本です。
不祝儀袋を使用する場合には、中袋の裏面に名前・住所・金額を記入します。
また、お布施やお車代は手渡しするのではなく、「切手盆」というお盆に載せて渡しましょう。
引っ越しで仏壇を移動させる場合の注意点
仏壇は大変繊細な家具のため、移動させるときも慎重に扱うことが大切です。
また方角や環境も考慮して、適切な場所に仏壇を置いてあげましょう。
運ぶ順番について
旧居からの仏壇の運び出しは、故人をできる限り長く屋内に置いておけるよう、他の家具がすべて搬出し終わった後に行います。
最初に仏壇を搬出すると長い時間屋外に放置することになってしまい、あまりよくありません。
同様の理由によって、新居での搬入も仏壇を1番最初に運び入れましょう。
運び方について
香炉や装飾などの仏具はダンボールに詰めても構いませんが、ご本尊・位牌・遺影といった大切な仏具は破損を避けるため、自分の手で運びましょう。
ご本尊・位牌・遺影を運ぶときは一つひとつを白い布で丁寧に包み、手に持って運ぶのが理想です。
それが厳しいときは、タオルや緩衝材で包んでからバッグに入れて運んでも問題ありません。
仏壇本体は横置きにせず、必ず縦に固定して運びます。
どうしても横置きにしなければならないときは仏壇の正面を上向きにし、上にものを載せないようにしてください。
また、運搬の負担を軽くしようと仏壇を無理に解体するのもおすすめできません。
最悪の場合、仏壇に傷が付いたり破損したりしていまいます。
置く場所について
新居での仏壇を置き場所を決める際、置き場所の環境を考えることも重要です。
日当たりがよい場所や湿気が多い場所、冷暖房の風が直接当たる場所は仏壇を痛める可能性があるため、仏壇の置き場所には相応しくありません。
もし仏教の思想や風水などの観点から方角を気にするのであれば、部屋の間取りと照らし合わせて仏壇を置きましょう。
また、神棚がある部屋に仏壇を安置する場合は、互いが向かい合わせにならないように注意してください。
片方に手を合わせたときに参拝者のお尻がもう一方へと向かい、双方にとって大変失礼な行為になってしまいます。
仏壇の置き場所について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
▼仏壇の配置や向きについて紹介
仏壇を運んでくれる業者の探し方
仏壇は故人を供養するための大切な家具です。
仏壇を無事に新居へと移動させるためにも、信頼できる業者に頼みましょう。
仏壇を運んでくれる業者には、引っ越し業者と仏壇専門業者があります。
引っ越し業者と仏壇専門業者のどっちがよい?
仏壇の引っ越しには、仏壇のことをよく理解している仏壇専門業者が最適です。
宗派別の仏具の扱い方やマナーについて詳しいプロの作業員が対応するため、引っ越しの最初から最後まで安心して任せられます。
引っ越し業者では仏壇を「美術品」として扱い、他の家具との優先順位やトラックへの積み方も理解している場合がほとんどです。
ただ、引っ越し業者は「ものを運ぶプロ」であって「仏壇を運ぶプロ」ではないため、仏壇への理解には限界があります。
なかには仏壇の運搬を行なっていないところもあるため、引っ越し業者を利用する場合には仏壇の運搬が可能かどうかの事前に確認をしておきましょう。
仏壇の移動だけなら引っ越し業者でもOK
必要な供養をして仏壇本体の梱包が済んでいるのであれば、引っ越し業者でも十分に対応可能です。
また、場合によっては仏壇の梱包をしてくれる引っ越し業者もあります。
仏壇の移動を引っ越し業者にお願いする際は、ご本尊や位牌などの仏具が残されていないかよく確認し、中が空の状態で引き渡しましょう。
費用の相場はどのくらい?
引っ越し業者と仏壇専門業者の費用は、どちらも仏壇のサイズと移動距離がポイントです。
仏壇が大きいほど運搬料金が高く、新居との距離が離れているとさらに費用がかさみます。
引っ越し時期にもよりますが、仏壇専門業者の費用の相場はおおむね1〜10万円です。
横幅が50〜80cmの場合は5万円前後、それ以上のサイズになると7〜10万円ほどの費用がかかります。
一方、引っ越し業者に依頼した場合の平均費用は1〜2万円です。
ただしこちらは仏壇の運搬に限った追加料金であるため、家そのものの引っ越し費用を含めると通常よりも割高になるかもしれません。
とはいえ総合的に見ると、仏壇専門業者よりも安い費用で行なってもらえるでしょう。
仏壇の引っ越しについて知っておきたいこと
仏壇の引っ越しでは、さまざまな理由から仏壇をすぐに祀ることが難しい場合があります。
そのような場合に備えて、次の2つのことを把握しておきましょう。
引っ越し時に仏壇を処分したい場合
「新居に仏壇を置くスペースがない」「仏壇の買い替えをしたい」などの事情によって仏壇を処分したい場合、次の4つの方法があります。
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仏壇・仏具店や仏壇処分の専門業者に依頼する際は、仏壇本体に数万円、仏具一式に2,000円ほどの処分費用が必要です。
また仏壇・仏具店では、古い仏壇を下取りし、新しく購入する仏壇の代金を割り引いてくれることもあります。
菩提寺に引き取ってもらう場合は、仏壇をお寺に運搬する費用やお布施代を納めなければなりません。
粗大ゴミとして処分する場合は、各自治体に連絡と確認をとってから廃棄します。
上記3つの方法と比べると処分費用が安く抑えられますが、近隣住民の目を引いてしまうという可能性も否めません。
いずれの方法においても、必ず魂抜きを行う必要があります。
建て替え中、仏壇は預かってもらえる?
建て替えやリフォームなどで仏壇を一時的に置けない場合は、仏具専門の引っ越し業者に預けられます。
その際の費用は、1か月で約2,000〜5,000円です。
まとめ
仏壇は毎日故人と向き合うための大切な存在だからこそ、引っ越しのときにはより丁寧に扱う必要があります。
特にサイズが大きくて重い仏壇は自分たちで無理に運ぼうとせず、プロの引っ越し業者にお願いするようにしましょう。
また、魂抜きや魂入れなどの供養をしっかりと行うためにも早めの準備が肝心です。
大変な引っ越し作業の後にはきっと、故人と家族が心穏やかに過ごせるような新居生活が待っていますよ。