仏壇に供える花は「仏花」と呼ばれ、花屋ではそのまま飾れる状態のものが売られています。
しかし、「たまには違う花を飾りたい」「故人が好きだった花を飾りたい」と思うこともあるでしょう。
仏壇に造花を飾ることは問題ありませんが、仏花にはマナーがあるため、選び方には気を付けなければいけません。
この記事では、仏花を選ぶ際のマナーについてご紹介します。
目次
仏壇に花を供える理由
「仏壇に花はなぜ供えるのだろう」
「慣例でやっていたけど、今までなぜ供えるのかについて深く考えたことはなかった」
仏壇に花を供えるのは日本人として一般的な行為ではありますが、理由を知っているという人は少ないかもしれません。
まずは、その意味や由来について解説をしていきます。
仏壇に花を供える意味とは
仏壇に花を供える意味で最も多いのは「故人を偲ぶ気持ちを花によって表現する」ことです。
故人が好んでいた花を供えることで、供養の気持ちを強く表せます。
また、故人に伝えたい言葉や思いを花言葉にして伝えるという意味合いもあります。
花はお香や灯籠と同じく故人を供養する大切なものとして位置づけられており、弔いの気持ちを故人に伝える際には欠かせません。
また、「つらい環境でも花を咲かせる」という点が修業をする人間の姿を想起させ、仏教の教えに重なることから用いられていると言えるでしょう。
仏壇に花を供えるようになった由来
仏壇に花を供えるようになった由来は、仏教の開祖である釈迦にあると言われています。
釈迦がまだ悟りを開く前、「燃灯仏」という仏の供養を行おうとした際、釈迦が必要な仏具を持っていなかったため、代わりに足元に咲いていた青蓮華を摘んで捧げました。
この逸話が由来となり、今日まで仏壇に花を供える文化が続いているのです。
仏壇に花を飾る場所
仏壇やお墓には、左右で一対になる位置に花瓶を配置するのが一般的です。
そのため、花束は2つ用意して花瓶に飾り、花の向きはお参りする方向に向けましょう。
花束の花を飾る際、1番長い花を中心に置き、ひし形になるようにセッティングするのがよいとされています。
仏壇に供える花の種類
仏壇に新しい花を供える際に、どの花を供えればよいか迷う人もいるかもしれません。
そこでここからは、仏壇に供える花の種類を解説していきます。
菊が一般的だが季節で変えてもよい
仏壇に供える際に一般的とされる花は菊です。
菊は仏花として用いられることが多く、長持ちすることや邪気を払うとされる点が尊ばれています。
しかし、仏壇に供える花は必ずしも菊でなければいけないという決まりはありません。
たとえば、以下のような花があります。
春 | キンセンカ・アイリス |
夏 | りんどう・ケイトウ・グラジオラス |
秋 | ほおずき・ミソハギ |
また年間を通しては、菊の他に百日草やカーネーションを供えることをおすすめします。
仏花にふさわしい花の色
仏花は何の花でもいいというわけではありません。
供える花の色は故人が亡くなってからの日数と密接に関係しており、それぞれにふさわしい色の花を用意する必要があります。
四十九日までの間は、故人が亡くなってから日が浅いため、供える花は白でまとめるのがよいとされています。
四十九日以降は、白、黄、紫、ピンク、赤の五色の花を供えるとよいでしょう。
仏壇では避けたほうがよい花
仏壇には以下のような花を供えるのは避けたほうがよいとされています。
また、地域によっては洋花も適さないという場合もあります。
それぞれの理由についてみていきましょう。
とげがあるもの
アザミやバラといったとげがある花は仏花として好まれません。
仏花は故人に捧げる花でありその思いが届くものとされているため、触ると痛みを感じるような花はふさわしくないとされています。
毒があるもの
彼岸花やチューリップなどの毒がある花は、上記と同様の理由で好ましくありません。
故人に毒を供えることになるため、避けましょう。
ツル状のもの
朝顔やスイートピーなどツル状になっている花は、枯れやすいことから仏花に適しません。
また、仏壇に巻き付いてしまう可能性もあるため、仏花としては用いないようにしましょう。
香りが強いもの
ユリなどの香りが強い花は、線香の香りを打ち消してしまうでしょう。
なるべく香りの弱い花を選ぶことをおすすめします。
仏壇に飾るのは造花でもよい?!
昔は「仏壇に造花を飾るのは好ましくない」との風潮がありましたが、現代においてはその価値観が変化しつつあります。
造花が仏花として選ばれる理由を説明していきましょう。
仏花が造花でもよい理由
従来、仏花として仏壇に供える花は生花がよいとされてきました。
それは、生花が少しずつ枯れていく過程で「命の尊さ」を感じながら故人を偲ぶという思いが大切にされてきたからです。
しかし価値観の変化によって、造花でも構わないという世代の人が増えてきました。
花屋さんや仏具屋においても仏壇用の造花が売られていることから、必ずしも生花を飾らなくてはならないとの風潮は薄れつつあります。
造花を飾るメリット
仏壇に造花を飾る最も大きなメリットは、花が枯れることがない点です。
生花を仏壇に供える場合には、日々手入れをする必要があり、時間的にもコスト的にも負担がかかります。
しかし造花は枯れることがなく、交換の手間も必要ありません。
プリザーブドフラワーもおすすめ
近年、仏花としてはプリザーブドフラワーの採用も進んでいます。
生花を長持ちさせる加工がされているため、造花と同じ形で利用が可能です。
プリザーブドフラワーや造花、生花のどれを供えるにしろ、一番大切なのは故人を偲ぶ気持ちです。
生花がふさわしいことに変わりはありませんが、造花やプリザーブドフラワーを飾っても故人が悲しむことはないでしょう。
仏花の飾り方
仏花を飾る際には一定のルールがあるため、そのルールに従って花を供えましょう。
一つひとつのルールをしっかり守ることが、故人を偲ぶ気持ちにつながります。
花立を用意する
花立とは、仏壇に用いる花器の総称であり、さまざまな仏具の中でも使用頻度が高い仏具です。
仏壇に花を供える際には必ず花立に飾るのが基本で、一対ずつ使用します。
花立に花を飾る際には、全体の形がひし形になるようにバランスを整えるのが望ましいとされています。
自らを正面におき、その上で全体の状態を整えながら生けていきましょう。
花の向きを自分に向けて飾る
花は仏様からの慈悲の心を表すと考えられています。
そのため、仏心が自らに向くように、花の向きは自分に向けて飾りましょう。
花の数は左右ともに奇数
仏花の本数は、左右ともに奇数で供えるのがマナーです。
そのため、一般的には3本、5本、7本のいずれかの本数を供えるようにしましょう。
また、本数に応じて望ましい色も変わってきます。
3本 | 白・黄・紫 |
5本 | 白・黄・紫・赤・ピンク |
7本 | 白・黄・紫・赤・ピンク+2色 |
生花を供える際の手入れの方法
仏壇やお墓に生花を供える際には、できるだけ花が枯れないように手入れをする必要があります。
手入れについて、抑えておくべきポイントを解説していきます。
こまめに水を変える
生花を供える場合には、こまめに水を変えてきれいで清潔な状態を保つことが大切です。
花立に花が浸かっている状態が続くと、花の切り口が腐ってしまい、水も汚れてきます。
水が汚れると花が早く枯れてしまうため、できるだけこまめに交換するようにしましょう。
できれば毎日、難しくとも2~3日おきに交換するのが望ましいとされています。
長持ちさせる方法
生花を長持ちさせるためには、水に浸かる部分が茎だけとなるようにしましょう。
葉を残したままにしておくと、バクテリアが繁殖して腐る原因につながります。
状態が悪くなってきた花は、黄色くなったり黒ずんできたりするなど、わかりすいサインが現れます。
生花や水に悪影響を及ぼさないように、色が変化した葉は早めに取り除きましょう。
花を処分する方法
枯れてしまった花は、基本的には土に還すことが推奨されています。
燃えるゴミとして処分することも可能ですが、故人に捧げた花であるという観点から考えても自然に還すことが望ましいでしょう。
故人や花に対して感謝の気持ちを表しつつ処分することが理想です。
まとめ
この記事では、仏壇に飾るお花を選ぶ際のマナーなどについて解説をしてきました。
しっかりとマナーを抑えておくことは、仏様やご先祖様への敬愛や尊敬の心を表すことにつながります。
生花を用意や手入れが難しい場合には、造花やプリザーブドフラワーを代用しましょう。
飾り方のマナーと偲ぶ気持ちの双方を大事にすることが大切です。