仏壇は「古くなれば買い替える」というものではなく、修理をしながら代々受け継いでいくものです。
毎日見ていると気付きにくいものですが、購入してから年月が経った仏壇は修理が必要になっている場合があります。
では、どのような症状が現れたときに仏壇を修理すればよいのでしょうか?
今回は仏壇を修理すべき症状やタイミング、修理の種類や相場について解説します。
目次
仏壇の修理の種類
仏壇の修理には、主に3種類あります。
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部分修理
仏壇の部分修理とは、壊れてしまった特定の部分のみ修理することを指します。
たとえば、「扉に歪みが生じて開閉しにくい」という場合に、歪みを解消してスムーズに開閉できるように修理するなどです。
部分修理では、修理の過程で必要な場合を除いて「洗浄」を行いません。
あくまで、壊れた部分の機能を回復させるのが部分修理です。
部分修復
仏壇の部分修復とは、壊れた部分を機能的に回復させることに加えて、外見も購入時と同じ状態に修復することを指します。
たとえば、くすみや色あせの補修、彫刻部分の「欠け」や傷の補修などです。
他にも、金箔の剥がれを直したり漆を塗り直したりすることも部分修復に含まれます。
部分修復は購入時の状態に戻すことが目的のため、対象箇所が汚れていれば「洗浄」も行います。
完全修復
仏壇の完全修復とは、新品の仏壇を作るときと同じ工程で修復することです。
仏壇のクリーニング(お洗濯)とも呼ばれており、専門の職人が仏壇をパーツごとに分解し、すべてのパーツを洗浄・修復します。
完全修復では、具体的に以下のような修復を行います。
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細かい部分の破損まで完璧に修理できる完全修復を行うことで、仏壇は新品同様の美しさを取り戻します。
ただし、完全修復は非常に時間がかかるため、仏壇が必要になる法要の時期などと重ならないように注意しなければなりません。
金仏壇の場合、修理に平均2〜4か月ほどかかります。
仏壇を修理する流れ
見積もりをとる
仏壇を修理する際は、まず見積もりを取りましょう。
多くの修理業者がホームページなどで料金を掲載していますが、それはあくまで目安の金額と考えてください。
仏壇の大きさや種類、状態によって修理費用は異なるため、仏壇の現状を伝えて正確な料金を提示してもらうことが大切です。
あらかじめ予算を決めて伝えておけば、予算内で可能な最善の修理方法を業者が提案してくれます。
提示された見積もりが納得できる金額であれば、正式に修理を依頼しましょう。
見積もりに納得がいかなければ、断ってもまったく問題はありません。
また、金額だけでなく修復にかかる日数も必ず確認しておいてください。
仏壇の状態によっては、修復に数か月かかる場合があります。
「大切な法要のときに仏壇がない」という事態を避けるためにも、日数を確認しておくことが大切です。
出張修理の場合
「出張修理」とは、専門の職人が自宅まで出張して仏壇を修理してくれるサービスのことです。
出張修理であれば、仏壇を運び出したり元に戻したりする必要がありません。
部分修理や部分修復の場合は、出張修理で対応してもらうほうが便利だと言えます。
ただし、すべての業者が出張修理をしてくれるとは限らないため、見積もりを取る段階で対応可能かどうか確認しておきましょう。
預かり修理の場合
仏壇を業者に預けて修理してもらうのが、「預かり修理」です。
預かり修理の場合、仏壇の運び出しや運び込み・設置は業者が行なってくれます。
完全修復を行う場合は、預かり修理に出すのが一般的です。
預かり修理を依頼するなら、仏壇を修理に出してから自宅に戻ってくるまでの日数を必ず確認しておきましょう。
仏壇の修理が必要になるのはどんな症状?
仏壇の修理が必要になる症状には、主に以下のものがあります。
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くすみ
仏壇は年月が経過すると透明感や光沢・ツヤが失われ、少しずつ濁った印象(=くすみ)に変化していきます。
毎日仏壇を見ているとなかなか気付かないものですが、「くすみ」を修復することで、仏壇は購入時の美しさを取り戻せます。
歪み
仏壇を長年使用していると、外部からの刺激で「歪み」が生じることがあります。
木で作られている仏壇は熱に弱く、ろうそくや線香の熱によって歪んでしまったり、ストーブやエアコンなどの温風で歪みが生じたりするのです。
また、地震の影響や仏壇自体の重さによって歪みが生じることもあります。
歪みを放置すると、扉が閉まらなくなったり仏壇が傾いたりする可能性もあるため、早期の修理が必要です。
剥がれ
金仏壇の金箔部分や漆塗りの部分が、剥げてしまったり傷付いたりするのが「剥がれ」です。
特に金箔は非常に薄いため、少し触れただけで剥がれてしまうことがあります。
剥がれがあると金仏壇の美しさが損なわれてしまうため、できる限り早く修理するのがおすすめです。
色あせ
仏壇を長年使用していると、少しずつ色あせが生じてきます。
天然の銘木から作られた高級な仏壇であれば、色あせも味わい深いものでしょう。
しかし、木目を印刷した安価な唐木仏壇などの場合は、色あせがひどければ見苦しい印象になってしまいます。
色あせを修理すれば、また美しい木目の仏壇に戻ります。
仏壇を修理するタイミング
購入後10~20年
仏壇は購入後10~20年くらい経つと、よく触れる部分にこびりついた「手垢」や「小さな傷」などが目立ち始めます。
このタイミングでは、仏壇の部分修理を行うのがおすすめです。
手垢をきれいにして小さな傷を修理するだけでも、仏壇は購入時に近い状態に戻るでしょう。
購入後20~30年
購入後20年ほど経過した頃から、仏壇には小さな傷に加えて歪みが生じてきます。
歪みが生じると扉が開閉しにくくなるなどの支障が出るため、このタイミングで仏壇を部分修復に出すのがおすすめです。
30年以上経っていないのであれば、完全修復するにはまだ少し早いと言えます。
部分修復で気になる部分をきれいに直しておきましょう。
購入後30年以上
仏壇を購入して30年以上経過すると、仏壇のさまざまな部分が劣化してきます。
唐木仏壇の場合は色あせやくすみが目立つようになり、木の割れ・反りが見られるようになるでしょう。
また、金仏壇の場合は金箔や漆の剥げた箇所が増えてくるため、このタイミングで完全修復するのがおすすめです。
仏壇の修理の相場は?
仏壇の修理費用は、仏壇の大きさや種類によって大きく異なります。
一般的な修理費用の相場は以下の通りです。
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小型と大型では5倍ほどの価格差があり、唐木仏壇と金仏壇では3倍ほどの価格差が生じる場合もあります。
また、傷みや汚れがひどい仏壇を完全修復する場合は、100万円以上かかることも珍しくありません。
仏壇の大きさや種類だけでなく、汚れや破損の状況によっても修理費用が異なるため、必ず事前に見積もりを取るようにしましょう。
仏壇の修理はどこに頼めばいい?
仏壇の修理は、「仏壇修理の専門業者」や「仏壇・仏具店」に依頼できます。
仏壇・仏具店に依頼する場合は、自社内に専門の職人を抱える「仏壇の製造も行う仏壇・仏具店」を選びましょう。
ただし、自社から購入された仏壇でなければ対応してくれない場合もあるため、注意が必要です。
仏壇修理の専門業者に依頼する場合は、口コミや評判をしっかり確認し、複数業者から相見積もりをとることをおすすめします。
専門業者は幅広いタイプの仏壇を修理できますが、業者によって品質や料金に大きな差があるためです。
仏壇を修理する際の注意点
修理できない場合がある
仏壇であればどんなものでも修理できるというわけではありません。
なかには修理できない仏壇もあるため、事前に専門業者や仏壇・仏具店に確認しましょう。
一般的に、「価格の安すぎる仏壇は修復できない場合が多い」という傾向があります。
価格が安い仏壇の中には「素材」や「作り」のクオリティが低いものがあり、「木目の印刷が剥がれている」「歪みがひどすぎる」など、修復不可能な状態になっている場合が多いためです。
一方、金額の高い仏壇のほとんどは修復が可能と考えてよいでしょう。
魂抜きと魂入れを忘れずに行う
仏壇を修復に出す際は、魂抜き・魂入れを忘れずに行いましょう。
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一般的に、魂が宿った状態のまま仏壇を動かすのはご先祖様に失礼とされています。
そのため、仏壇を動かす前には必ず魂抜きを行い、修復が終わって戻ってきた仏壇には再び魂入れを行いましょう。
魂抜き・魂入れは、先祖代々のお墓があるお寺(=菩提寺)のご住職に依頼します。
菩提寺が近くにない場合は、「お坊さん手配サービス」を利用するのも一つの方法です。
魂抜き・魂入れの儀式の際は、ご住職にお布施を渡します。
一般的には1~3万円が相場ですが、わからない場合は菩提寺に相談しても失礼に当たりません。
「他の方はどのくらい包まれていますか?」と聞けば、ほとんどの菩提寺が相場を教えてくれるでしょう。
まとめ
ご先祖様の魂が宿る仏壇は、きれいな状態に保つことが大切です。
古くなった仏壇を修理して美しい状態に戻すことは、ご先祖様への感謝の気持ちや敬意を表すことにもつながります。
仏壇を購入してからの年月や仏壇の症状に応じて、「部分修理」「部分修復」「完全修復」の中から適切な修理を依頼しましょう。
ただし、仏壇の種類や状態によって修理費用が異なるため、まずは見積もりを取ることをおすすめします。
専門業者の多くは無料で見積もりを出してくれるため、気軽に相談してみるのもよいでしょう。