ほとんどの人が、一度は仏壇にお参りをしたことがあるのではないでしょうか。
ですが、仏壇にある仏具がどんなものであるかや、仏壇に何を飾るべきかについてきちんと知っているという人はあまり多くありません。
そこで今回は、仏壇の飾り方について、必要な仏具などと併せて解説します。
目次
仏壇を購入したらまずは仏具を揃える

そもそも仏壇とは
仏壇は、亡くなった親族やご先祖様の位牌を納めるものであり、仏像や仏具を飾って仏様を祀る箱のことを言います。
その役割は寺院の本堂にある「内陣」と同じなので、仏壇はまさに「家の中の小さなお寺」です。
揃えるべき仏具について
まず必要なものは自分の宗派の仏様であるご本尊、そして故人の位牌です。
その他にも仏壇に飾る仏具にはさまざまなものがあり、それぞれに役割があります。
花立(はなたて) | 花を供えるための花器 |
香炉(こうろ) | お香を焚くための道具 |
燭台(しょくだい) | ろうそくを立てる台 |
仏飯器(ぶっぱんき) | お供えのご飯を盛る器 |
線香差し(せんこうさし) | 線香を差す道具 |
マッチ消し | 使用したマッチを入れる容器 |
茶湯器(ちゃとうき) | お供えの水やお茶を入れる小さな湯のみ茶碗 |
りん、りん棒 | 読経の際など仏様をお呼びする際に鳴らす梵音具 |
仏器膳(ぶっきぜん) | 茶湯器や仏飯器を置く台 |
高杯(たかつき) | お供えのお菓子や果物を置く台 |
見台(けんだい) | 書物を載せる台 |
過去帳(かこちょう) | 亡くなった故人の名前や戒名、没年月日、享年などを書いておく系譜 |
花立と香炉、燭台はセットで「三具足(みつぐそく)」と呼ばれ、故人を供養するためにどの宗派でも必要な仏具です。
仏具が揃ったら開眼供養(魂入れ)をする
仏壇を設置し、ご本尊や位牌などの主な仏具が揃ったら、お坊さんを招いて開眼供養を行いましょう。
お坊さんに読経をしていただくことでご本尊と位牌に魂が宿り、はじめて故人やご先祖様を弔い、供養できるようになるのです。
基本的な仏壇の飾り方

仏壇の中央に本尊を置く
ご本尊は、最上段の中央にお祀りしましょう。
その両脇には、掛軸もしくは仏像を設置します。
掛軸には仏像と同じ役割があり、宗派によっては仏像ではなく掛軸を3本飾る場合もあります。
位牌を置く
位牌は本尊と同じ段か一段下に安置します。
いずれの場合も、正面から見た際にご本尊が隠れないように置きましょう。
仏飯器・茶湯器・仏器膳・高杯を置く
位牌を安置したさらに一段下には仏器膳を置きましょう。
中央に置いた仏器膳の上に仏飯器と茶湯器を配置し、その左右に高杯を並べます。
三具足やりんなどを置く
一番下の段には三具足を置きます。
ご本尊に向かって左側に花立、中央に香炉、右側に燭台の順です。
その他線香差しやマッチ消し、りんなども一番下の段に置きましょう。
宗派別の仏壇の飾り方

真言宗
最上段 | 中央にご本尊の大日如来を安置、右には弘法大師、左に不動明王の掛軸をお祀りする。 |
上から2段目 | ご本尊が隠れないように位牌を安置し、中央に茶湯器と仏飯器を置く。 |
下から2段目 | 真ん中に2つの高杯を置き、ご本尊に向かって左に花立、右に見台と過去帳を設置。 |
最下段 | 香炉や燭台、線香差し、りんなどを置く。 |
仏壇の段数が少ない場合には、前後で置くなど工夫をします。
ただし、分派も多いため、飾り方はこれに限りません。
浄土宗
最上段 | 中央にご本尊の阿弥陀如来像を、右に善導大師、左に法然上人の掛軸もしくは仏像をお祀りする。 |
上から2段目 | 位牌は正面から見たときにご本尊が隠れない場所に安置し、茶湯器と仏飯器を中央に置く。 |
下から2段目 | 高杯を中央に置いて、左に花立、右に見台と過去帳を置く。 |
最下段 | 香炉、燭台、線香差し、りんなどを置く。 |
仏壇以外に、厨子の前に戸張という布を垂らす場合もあります。
浄土真宗
本願寺派
最上段 | 中央のご本尊は阿弥陀如来像か掛軸、右に親鸞聖人、左に蓮如聖人の仏像か掛軸を祀る。 |
上から2段目 | 中央に茶湯器と仏飯器を置き、両脇に高杯を設置する。 |
下から2段目 | ご本尊に向かって左に花立、右に過去帳と見台を置く。 |
最下段 | 香炉、燭台、線香差し、りんなどを置く。 |
菊輪灯という、天井から吊るして仏壇を明るく照らす仏具を使用するのも特徴の一つです。
大谷派
最上段 | 中央に阿弥陀如来の掛軸か仏画、右に十字名号、左に九字名号の掛軸を祀る。 |
上から2段目 | 茶湯器と仏飯器を配置した両脇に高杯を置く。 |
下から2段目 | ご本尊に向かって左に花立、右に過去帳と見台を配置する。 |
最下段 | 香炉、燭台、線香差し、りんなどを置く。 |
装飾品の荘厳具(しょうごんぐ)である瓔珞(ようらく)や、弦(つる)の輪灯を使います。
天台宗
最上段 | ご本尊には釈迦如来を祀り、脇侍を祀る場合には右に天台大師像、左に伝教大師像を安置する。 |
上から2段目 | ご本尊が隠れないよう端に位牌を安置し、中央に茶湯器と仏飯器を置く。 |
下から2段目 | 中央に高杯、左に花立を置いて右に見台と過去帳を設置する。 |
最下段 | 香炉、燭台、線香差し、りんなどを設置する。 |
ご本尊は阿弥陀如来を祀ることも多いでしょう。
ただし、信仰によっては薬師如来や観世音菩薩、不動明王、または毘沙門天などを祀る場合もあります。
曹洞宗
最上段 | 中央に釈迦牟尼仏像、右に高祖承陽大師道元禅師、左に太祖常済大師瑩山禅師の掛軸を配置して三尊仏形式として祀ります。 |
上から2段目 | ご本尊が隠れないように位牌を安置し、中央に茶湯器と仏飯器を置く。 |
下から2段目 | 高杯を中央に配置し、左に花立、右に見台と過去帳を置く。 |
最下段 | 香炉、燭台、線香差し、りんなどを設置する。 |
曹洞宗や臨済宗などの禅宗系では、仏壇に祀るご本尊は定められていません。
家庭の仏壇では一般的に釈迦牟尼仏像を祀りますが、お寺ではそれぞれの由来によって違う仏像が祀られていることがあります。
日蓮宗
最上段 | ご本尊には、大曼荼羅か釈迦牟尼仏、三宝尊のどれかの掛軸を祀り、右に鬼子母神と左に大黒天の掛軸を飾る。 |
上から2段目 | 中央に茶湯器と仏飯器を配置し、ご本尊が隠れないように位牌を安置する。 |
下から2段目 | 中央には高杯を置き、左に花立、右に見台と過去帳を設置する。 |
最下段 | 香炉、燭台、線香差し、りんなどを設置する。 |
より丁寧に飾る場合には、ご本尊の掛軸の前に日蓮上人の仏像を飾る場合もあります。
特別な日の仏壇の飾り方

お盆
お盆の日の仏壇の飾り方について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
命日
命日だからといって、仏壇の飾り方に決まったルールはありませんが、命日には普段よりも丁寧に掃除をするというマナーはあります。
また、綺麗にした仏壇をいつもより少し豪華に飾って、ご先祖様を偲ぶ気持ちを表してみてはいかがでしょうか。
いつもの花立、香炉、燭台の三具足を、命日には五具足(花立と燭台を2つずつ)にし、お花も豪華なものを選ぶと仏壇の周りが華やかになります。
仏壇を置く場所や向き
仏壇を置く場所や向きについて詳しく知りたいという方はこちらの記事をご覧ください。
仏壇はいつ買えばいい?

仏壇は仏様をお祀りするためのものなので、人が亡くなっていないときに仏壇を買っても間違いではありません。
よく言われている「仏壇を買うと新仏が出るから縁起が悪い」というのは迷信です。
とはいえ仏壇を持っていない場合に購入する方は少なく、家族や親族が亡くなったことをきっかけに考える人がほとんどです。
四十九日の法要までに位牌を白木のものから本位牌に書き換える必要があるので、それに合わせて仏壇を購入しましょう。
また、すでに仏壇を持っていて買い換えを検討する場合は、さまざまな理由があります。
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最近は狭い住環境でも置きやすいコンパクトなものや、洋室の多い現代に合わせたモダンなデザインの仏壇が増えているので、買い換えを検討する人も増加傾向にあります。
仏壇のお参りの仕方

お参りの手順
基本的な手順をご紹介します。
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毎日すること
仏様や仏壇へのお勤めは、毎日継続することが大切です。
朝 |
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昼 |
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夜 |
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日中、仏壇のある部屋の掃除をする際は、ほこりが入らないように扉を閉めましょう。
お土産や頂きものについて
お菓子や果物などのお土産・頂きものは、仏壇に供えた後、お下がりをいただくようにします。
また、季節の初物も、最初は仏壇に供えましょう。
線香やろうそくの火は手かロウソク消しで消す
線香やろうそくの火を口で吹き消すことは、無礼な行いであり厳禁です。
その理由は、仏教で「人の口」や「人の息」は穢れたものであると考えられているためです。
仏壇で火を消すときは、手のひらであおぐか「ロウソク消し」「仏扇」「香箸」などの道具を使って消しましょう。
同じ家に仏壇を2つ飾っても大丈夫?

一般的には同じ家に仏壇を2つ置くのは「仏様が安らげない」と考えられたり、お坊さんへの配慮の面から好ましくないと考えられたりしています。
しかし、親族内で仏壇を継承する人がいない場合や結婚をして嫁ぎ先に仏壇を引き継がなければならない場合など、やむを得ず同じ家に仏壇を2つ置く必要があることも考えられます。
この場合、できれば別の部屋に置くほうが好ましいですが、どうしても2つの仏壇を同じ部屋に置く場合は、両方とも東向きで置きましょう。
まとめ

仏壇は基本や宗派による違いを理解して、正しい飾り方で仏具を安置することが大事です。
最近はコンパクトな仏壇やモダンでシンプルな仏壇も増えてきていますが、どんな仏壇でも基本的な飾り方を参考にして仏具を配置してください。
正しい飾り方で仏壇を整えたら、毎日のお参りでご先祖様を偲ぶ時間を持ちましょう。