仏壇のりんは、誰もが一度は鳴らしたことがあるのではないでしょうか。
実は、りんには正しい鳴らし方が存在します。
そこで今回は、仏壇のりんの正しい鳴らし方のほか、選び方やお手入れ方法などについて紹介します。
目次
仏壇のりんとは
梵音具の一つ
りんは、木魚や太鼓などのように音を出して使う「梵音具(ぼんおんぐ)」と呼ばれる仏具の一つです。
漢字では「鈴」や「輪」と書き、「鈴台(りんだい)」と呼ばれる台座に「鈴布団(りんふとん)」を敷き、その上に置くのが一般的です。
「りん棒」で縁を叩くとその名の通り「リーン」という美しい音が鳴ります。
もともとは禅宗で使われていましたが、現在は仏教のすべての宗派で使われるようになりました。
りんの役割
りんから響く綺麗な音にはさまざまな意味や目的があります。
その一つが、人の邪念を払う役割です。
透明感のある美しい音色は、その場の空気を浄化してくれます。
そして、伸びのあるりんの音は極楽浄土にまで届くとも言われており、仏様やご先祖様、故人への祈りや供養の気持ちをりんの音に乗せて届けてくれるのです。
元来お坊さんがお経を読む際の始まりや区切り・終わりを示すものとして鳴らすものでしたが、日常のお参りの際に鳴らす人もいます。
りんの種類
鉢型
最も基本的な形で、丸みのあるお椀のような形をしているのが鉢型です。
りんを鳴らす際に使うりん棒とりんを置く鈴台、さらに鈴台の上に敷く鈴布団がセットになっています。
印金
お墓で法要を行う際などにお坊さんが携帯するのが印金(いんきん)です。
小さいりんとりん布団には持ち手が付いており、片手にりんを持ち、もう片方でりん棒を持って鳴らします。
高台りん
高台りんは、りん本体に脚が付いており、鈴台が不要です。
場合によっては下に薄い「りん敷き」という敷物を敷いて使います。
りんの鳴らし方
読経の際に鳴らす
りんはいつでも鳴らしてよいものではなく、読経の最初や最中、終わりとタイミングがあります。
りんの音は、読経のリズムや音程を整える役目もあるため、経本に示されている箇所に合わせて鳴らしましょう。
正しいタイミングは?
りんを叩くタイミングは宗派によって決められた作法がありますが、日常的にお参りをする際は細かく気にする必要はありません。
ただし、仏壇に手を合わせる際には、仏様の心と自分の心を一つにするという意味合いで2回りんを鳴らしてからお参りをするのが一般的です。
仏様を呼びつけるように鳴らすのはよくないので、「お参りに来ました」「今から供養をします」という気持ちでりんを鳴らしましょう。
宗派によって回数が違う場合も
真言宗
1回目は優しく、2回目はそれよりも少し強めに鳴らします。
曹洞宗
同じ宗派の中でもお寺によって、3回鳴らすところと内側を2回叩いて鳴らすところに分かれます。
浄土宗
りんを鳴らすのは読経のときのみであるため、普段のお参りなどの際には鳴らしません。
経本の中で指示されたタイミングで鳴らします。
浄土真宗
仏様の前で読経をするおつとめ(勤行)の際にりんを鳴らします。
普段のお参りの合掌礼拝時には鳴らしません。
りんの選び方
音色で選ぶ
りんには美しい音でその場の邪気を払ってお清めし、音に乗せて故人への祈りを届けるという意味もあるため、音はりんを選ぶ際の重要なポイントと言えます。
りんの音は、サイズや形、素材のほか、製法などによっても変わります。
サイズ
直径が小さいものは音が高く、大きいものは低く伸びのある音が鳴ります。
形
鉢のような形のものは音が伸びやすい特徴があります。
また、壺のように長さがあって口が小さくすぼまっているものは残響が長く残るでしょう。
素材
一般的なりんは「真鍮(しんちゅう)」や「シルジン青銅」という素材を使っています。
より響きや伸びがよい音のりんを選ぶなら、銅・鉛・すずで作られた「サハリ」や「金」のりんがおすすめです。
製法
りんの製造法には、金型に溶かした金属を流し込んで作る「鋳造」と、熱した金属の塊を叩いて作る「鍛造」の2種類があります。
職人が手作業で作る「鍛造」のりんは、細かな調整を加えて作られるため、透明感のある美しい響きが特徴です。
サイズやデザインに合わせる
りんは仏壇に並べたときに違和感がなく、自然になじむようなサイズやデザインのものを選ぶ必要があります。
サイズは「寸」で表記されているものが多く、1寸は約3cmです。
買い替えであれば、今あるりんのサイズを参考にして選びましょう。
最近は小型の仏壇やモダン仏壇などさまざまなタイプの仏壇があるため、りんも仏壇に合わせてスタイリッシュなデザインのものが登場しています。
宗派によって決まりがある場合も
浄土真宗ではりんは自由に選ぶことができるのですが、鈴台や鈴布団に関しては宗派によって決まりがあります。
浄土真宗本願寺派の場合、鈴台は丸型か六角形のものを選び、その上に鈴布団を敷いてからりんを置くのが一般的です。
それに対して浄土真宗大谷派は、四角形の鈴台が使われます。
その上に、「金襴輪(きんらんわ)」という輪っかを置いてりんを乗せるのが決まりです。
仏壇のりんはどこで購入すればいい?
りんは仏壇仏具店だけでなく、ホームセンターなどでも購入できます。
また、最近では通信販売での購入も可能です。
サイズやデザインを相談したい場合や、音を実際に聴いてみて選びたい場合には実店舗で購入するとよいでしょう。
宗派によるルールや仏壇とのバランス、予算などを相談しながら選びたい場合には、仏具に詳しい専門家のいる仏壇仏具店で選ぶと安心です。
仏壇のお手入れ方法
基本は布で磨く
りんの日頃のお手入れは、やわらかい布やタオルなどでほこりを払い、軽く磨く程度で十分です。
りんが変色してきたら、専用のクリーナーを使って汚れを落としましょう。
研磨剤を使う際のお手入れ方法
表面を着色しているものやメッキ加工をしているりん以外であれば、研磨剤を使って磨くことができます。
ただし、使用するのはりん専用の研磨剤や金属磨き用の研磨剤です。
やわらかい布や新聞紙を使ってりん全体に研磨剤を塗り、力を入れずに優しく磨いていきましょう。
研磨剤が黒ずんできたら、綺麗な乾いた布で拭き取ります。
りんが傷ついてしまうので、研磨剤を使って磨く際はしっかり素材を確認してから使いましょう。
サビを落とす場合はお酢を使うのも効果的
サビは金属と酸素が結びつくことで発生しますが、酢に含まれている酢酸成分がその結びつきを離す働きをするため、サビを落とすことができます。
お酢にりんを浸して、サビが浮いてお酢が黒ずんできたらりんを取り出して水洗いをしましょう。
砂糖や塩などの調味料が入ったお酢だとベタつくため、使用するお酢はホワイトビネガーや穀物酢などがおすすめです。
業者に依頼するのも一つの方法
りんは、毎日仏壇に手を合わせる際にこまめにお手入れをしておくことで、綺麗な状態を保てます。
それでもりんの劣化や汚れがひどい場合や、仏壇や仏具などりん以外のものも合わせてお手入れをしたい場合には、業者に依頼してもよいでしょう。
まとめ
読経のときだけでなく、近年では普段仏壇に手を合わせる際にも鳴らす人が多い「りん」は、とても身近な仏具です。
正しい鳴らし方やお手入れの方法を知ることで、正しく大切に扱うことができます。
ご先祖様や故人を偲ぶ気持ちを、りんの美しい音に乗せて届けましょう。