お正月は「年神様」を迎える神道の行事です。
しかし、仏教においても大事な先祖祭祀の行事なので、仏壇にはお供えものや飾り付けを施しましょう。
今回は、お正月のお供えものや仏花、飾り付けについて紹介します。
家に仏壇がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
お正月を迎える前にまず仏壇掃除を
新年を迎えるにあたって、ご先祖様や神様に敬意を示すためにも、仏壇の中をきれいに掃除しましょう。
ここでは、お正月に向けての仏壇掃除の手順を紹介します。
仏壇掃除の手順
年末の忙しい時期、なかなか仏壇にまで掃除の手が回らないこともあるでしょう。
しかし、仏壇は仏様やご先祖様がおられる場所でもあります。
よりよい1年を過ごすためにも、新年を迎える前に仏壇掃除はしておきましょう。
掃除を始める前に
仏壇を掃除するときは、初めに仏様やご先祖様に報告します。
黙って掃除を始めるのは、仏様やご先祖様の失礼にあたるとされているためです。
お参りをするときと同様に、手を合わせて掃除をさせていただく旨を伝えましょう。
報告が終われば、次に仏壇掃除で使う道具を準備します。
以下の道具はすべて仏具店で揃うので、この機会に準備しておくとよいでしょう。
毛ばたき | 仏壇用のはけ。大小揃えておくと便利 |
クロス | 仏壇専用クロス |
仏壇専用クリーム | 仏壇のほか、木製全般に使用可能 |
ロウ落とし | ロウソクに付いたロウを落とす |
金属磨き | 仏壇の金属部分を磨くときに使用 |
筆 | 仏壇掃除用の筆。細かい部分のホコリ取りに使用 |
綿棒 | 細かい部分の掃除に使用 |
新聞紙 | 仏具などの一時置きに使用 |
特に、毛ばたきと仏壇専用クロスは準備しておくと便利なアイテムです。
毛ばたきを使用する際には、ホコリが舞うため、マスクを着用して行いましょう。
また、仏壇や仏具を傷付けないように、白手袋を用意するのもおすすめです。
白手袋とは、骨董品や宝石を扱う際に使用するもので、100円ショップなどで手軽に購入できます。
仏壇の掃除
準備が整ったら、仏具をすべて取り出してから仏壇の掃除を始めましょう。
仏壇の掃除は、基本的に上から下に向かって行います。
①優しくホコリを落とす
まずは仏壇の上のほうに溜まっているホコリを落とし、上部分をきれいにしてから下部分のホコリを払っていきます。
手が届きづらい場所は、毛ばたきを使用しホコリを払います。
手が届く場所では、仏壇掃除専用の小さなはけや筆を使用し、丁寧にホコリを落としていきましょう。
はけで汚れが落ちない部分には、専用クロスを使用して汚れを取ります。
隙間に溜まっているホコリには掃除用の筆を用いるのがおすすめですが、落ちない場合は、綿棒を使用するとよいでしょう。
②布で拭く
仏壇は木で作られているため、掃除に水は使用できません。
ホコリを落としたら、専用クロスや乾いたやわらかい布で仏壇を丁寧に拭きましょう。
汚れがひどい場合は、仏壇専用クリームを使用しますが、決して無理にこすり落とそうとしないでください。
また、金箔が使われている部分はデリケートで傷付きやすいため、触らないように気を付けましょう。
③油や煙の汚れを取る
ロウソクや線香の油煙が付いている部分は、ロウ落としや仏壇専用クリームなどを使用して優しく磨きます。
仏壇専用以外の洗剤やアルコールを使用すると、仏壇が変色する恐れがあるので使わないようにしましょう。
仏具の掃除
次に、仏具の掃除手順を解説します。
ガラス・陶器の仏具
ガラスや陶器の仏具は、普段使用しているガラスや陶器のものを扱うのと同じように手入れします。
水洗いができるので、汚れがひどい場合は食器用洗剤などを使用して洗いましょう。
水洗い後は、水滴の跡が残らないようにしっかりと拭き上げてください。
真鍮製の仏具
真鍮製の仏具は、金属磨きを使用します。
乾いた布に金属磨きを付けて優しくこすりましょう。
色付き・メッキ加工の仏具
色付きやメッキ加工の仏具には金属磨きは使用せず、やわらかい布を使用してから拭きをするのがよいでしょう。
金属磨きを使用すると、金メッキや色が剥がれてしまう可能性があります。
また、金が施された部分は、強くこすると取れてしまう可能性があるので注意しましょう。
金仏壇の掃除
金仏壇を掃除する場合、金箔部分や蒔絵(まきえ)が施された場所は決してに水拭きせず、仏壇クロスでから拭きをするか、毛ばたきで優しく払う程度にします。
ホコリやゴミが付着したまま拭き掃除をすると、金箔が剝がれてしまう恐れがあるので、必ず毛ばたきでホコリを払ったあとに優しくから拭きしましょう。
お正月におすすめのお供えもの
仏壇や仏具の掃除を終えたら、お正月に向けてお供えものの準備をしましょう。
ここでは、お正月の仏壇におすすめのお供えものと、宗派ごとのお供えの違いについてご紹介します。
お正月に仏壇へ供えるものは、普段より少し華やかなものにするとよいでしょう。
お供えものの基本「五供」も華やかに
仏壇には香炉・花瓶・ロウソク立てがあり、これら3つを「三具足(みつぐそく)」と言います。
お正月はここに花瓶とロウソク立てを1つずつ増やして「五具足(ごぐそく)」にしましょう。
ただし、仏壇にスペースがない場合や仏具が揃っていない場合は、三具足のままでも問題ありません。
そして、仏壇には「五供(ごくう)」をお供えします。
五供には「香」「花」「灯明」「水」「飲食」の5つの基本があり、それぞれ意味があります。
香
五供における「香」とは、線香や抹香のことです。
香には、仏壇へ手を合わせる私たちの心身を清める意味が含まれています。
線香から放たれる香りが空間の隅々まで行き渡ることが、すべてのものに平等で差別のない「仏様の慈悲」を表していると言われています。
また、仏様は香りを召し上がるとされているため、線香をあげることは供養にもつながります。
天に昇っていく煙が、この世とあの世を結ぶものであるという考えもあるようです。
お正月には、いつもより少し高価な香を用意するとよいでしょう。
また、近年は煙があがらないライト型のものも販売されています。
「香りや煙が気になる」「小さい子どもがいる」などの場合は、ライト型のものを使用するとよいでしょう。
香は、宗派によって作法が異なるため、注意が必要です。
宗派 | 線香のあげ方 |
浄土宗 | 1本の線香を2本に折る、または2本の線香を使う。 2本同時に火をつけ、まとめて香炉の中央に立てる。 |
浄土真宗 | 1本の線香を2~3本に折り、同時に点火する。 線香を1つにまとめ、引火している部分を左側にして香炉に置く。 香炉からはみ出さないサイズに折る。 |
曹洞宗・臨済宗 | 1~2本の線香を立てる。 |
日蓮宗 | 1本の線香を香炉の中央に立てる。 |
真言宗 | 3本の線香を、三角形になるよう香炉に立てる。 三角形の2つの頂点が仏壇側に、1つの頂点が自分側になるように作る。 |
花
お正月に仏壇にお供えする「花」は、菊などの定番の花でも問題ありませんが、若松や若竹、梅などを飾ると華やさとお正月らしさが出るのでおすすめです。
他にも、故人が好きだった花や季節ものを選ぶのもよいでしょう。
また、花は毎日こまめに水を入れ替えることで長持ちします。
「水を替える時間がない」「どうしても生花を枯らしてしまう」などの場合は、造花でも問題ありません。
「お正月のような大切な日にはできるだけ生花を使用し、普段は造花を飾る」など、場合によって使い分けてみましょう。
お供えする花は、「長く飾れる」「長持ちする」「水はけがよい」などの点を考慮して選ぶのがおすすめです。
より長持ちさせたいときは、鮮度保冷剤などを活用してもよいでしょう。
灯明
「灯明」はロウソクの火のことで、「仏様のいる場所を明るく照らす」「煩悩を消して心に安らぎを与える」などの意味を持ち合わせていると言われています。
普段は白いロウソクで問題ありませんが、お正月用に松竹梅の絵があしらわれた縁起のよいロウソクもあります。
また、ご先祖様に向かって息を吹きかけることは不浄であり失礼にあたるため、ロウソクの火は手で仰いで消しましょう。
また、ロウソクにもライト型のものがあるので、小さな子どもがいる家庭などでは、ライト型のロウソクを使用しても問題ありません。
水
仏壇に清らかで新鮮な「水」を供えることには、「私たちの心が洗われる」という意味があります。
普段は水道水で構いませんが、お正月にお供えする水やお茶は、いつもより少し特別なものを準備しましょう。
たとえば、天然水や玉露などランクの高い緑茶、または故人が好きだったお茶などをお供えします。
ただし、浄土真宗では水をお供えしないとする考えもあるため、宗派には注意しましょう。
飲食
「飲食(おんじき)」は、普段食べている食事を仏壇に供えることを意味します。
普段はご飯だけでもよいのですが、お正月には故人の好物だったものやおせちなどをお供えするとよいでしょう。
お供えして手を合わせたら、お供えしたものは傷む前に下げて食べるのがマナーです。
傷んでしまうまで仏壇に供えることはないようにしてください。
宗派によるお供えものの違いに注意
お供えものは、宗派によって異なるため、自分の宗派はきちんと確認しておきましょう。
宗派 | お供えもの |
浄土宗 | 花、季節の野菜、果物、菓子などのお盛りもの |
浄土真宗 | ご先祖様に食べてもらいたいもの |
曹洞宗 | 線香、霊膳、果物、菓子、嗜好品(酒・たばこなど)、花、灯明、水 |
日蓮宗 | お茶、ご飯、好みのお供えもの(菓子・果物・野菜などのお盛りもの)、水の子、花 |
真言宗 | 季節の食べもの、野菜の煮物、果物、菓子、お茶、箸 |
臨済宗 | 花、果物、季節の食べもの、菓子 |
お正月の仏壇には飾り付けを
お正月の仏壇には飾り付けをしてみましょう。
12月13日の「正月事始め」を過ぎてからの飾り付けが一般的ですが、12月29日にすると「二重苦で縁起が悪い」と言われています。
また、31日も葬儀の一夜飾りを連想させてしまうため、ふさわしくありません。
そのため、末広がりを意味する12月28日に飾り付けるのがよいでしょう。
しかし、宗派によっては29日の「二重苦」のような迷信は否定されているので、飾り付けができる日で問題がない場合もあります。
では、早速お正月の仏壇の飾り付け方について見ていきましょう。
①打敷
打敷(うちしき)は、仏具を置くための台「上卓(じょうたく)」や「前卓(まえじょく)」の上に敷いて使用します。
浄土真宗では三角形になるように折り、五具足の下に敷きます。
その他の宗派では四角形のまま使用し、打敷を膳引きの上に置いて、その上に仏膳を乗せるのが一般的です。
仏壇の全面に打敷が垂れるようなスタイルで飾ります。
お正月には派手な柄(赤や金)の打敷を選んで、仏壇を荘厳しましょう。
②仏前
仏前(霊供膳)は、仏壇にお供えするお膳のことで、白飯と一汁一菜からなる精進料理です。
霊供膳は、「ご飯・汁物・煮物・香の物や酢の物・煮豆や和え物」で構成されています。
精進料理では、三厭五薫(さんえんごくん)を除くのが基本となっているので注意して作りましょう。
三厭五薫とは、三厭(肉、鳥、魚)と五薫(ネギ、ニラ、ニンニクなどの香味野菜)のことです。
煮物で使う出汁も、しいたけなどの野菜からとったものを使用します。
自分で作っても問題ありませんが、三が日には火や水を使ってはいけない決まりがあるため、近年ではそのままおせちを用いるほうが手軽という考え方も広まっているようです。
③鏡餅
鏡餅は、神事によく使用される鏡と人の魂を丸い形の餅で表したものです。
古来より餅は神聖なものとして、神道のお祭りやお祝いに欠かせない食べものとされてきました。
そのため、鏡餅は神道のイメージが強いかもしれませんが、仏教においても重要なお供えものです。
一般的には、神棚や床の間などに鏡餅をお供えしますが、家の宗派が浄土真宗の場合には仏壇に鏡餅を供える必要があります。
鏡餅の大きさに特に決まりはないので、家の仏壇に飾れる大きさのもので問題ありません。
鏡餅のお供え方法
鏡餅は、家の宗派が浄土真宗の場合、供花・供笥(くげ)に乗せてお供えしましょう。
浄土真宗以外の宗派の場合は、高月(高杯)を使用します。
供花や高月は、仏壇用にお菓子や果物などのお供えものを乗せる器のことです。
鏡餅を飾る際は台に直接置かず、折った半紙を敷いてから乗せます。
鏡餅は、1月7日の松の内(関西では1月15日)を過ぎたら下げて、鏡開きの日である1月11日(関西では1月20日)に割り、お雑煮などにして家族でいただきましょう。
まとめ
気持ちよく新年を迎えるためにも、仏壇を掃除してお正月ならではのお供えものを用意してみましょう。
年末年始は何かと忙しい時期なので、仏壇に必ずしも飾り付けをしなければならない決まりはありませんが、普段より少し華やかにすればご先祖様や故人にも喜んでいただけるかもしれません。
お正月を清々しい気持ちで迎えられるように、仏壇の掃除方法やお供えについての知識を正しく身に付けることが大切です。
宗派や地域ごとの違いにも注意して、ご先祖様や故人に失礼のないようにしましょう。