真言宗は、日本で信仰されている仏教の中でも信者数の多い宗派です。
真言宗の仏壇の選び方に厳格なルールはありませんが、本尊の飾り方などを間違えないよう注意しましょう。
今回は、真言宗の仏壇の選び方や飾り方について解説します。
目次
真言宗の仏壇の選び方
真言宗は平安時代に空海(弘法大使)が開いた宗派で、現在は18の分派が存在しています。
真言宗では唐木仏壇を用いるケースが多く見られますが、仏壇についての細かいルールはなく、金仏壇以外であればどの仏壇を選んでも問題はありません。
棚や台の上に置く「上置き型」や床に直接設置する「床置き型」など、大きさも自由に選べるので、お部屋の広さや雰囲気、ライフスタイルに合わせて選びましょう。
真言宗の仏壇を置く向きについて
仏教の教えではどの方角にも仏様がいらっしゃると考えられているので、仏壇の向きに関しての禁止事項はありません。
ただし、宗派によっては望ましい仏壇の向きを定めている場合もあり、真言宗では「本山中心説」を推奨しています。
「本山中心説」とは、仏壇にお参りをしたときに宗派の本山(金剛峯寺)に向かうように設置することをいい、同じ宗派でも、自宅の方角によって仏壇を置くべき向きが変わるのが特徴です。
しかし、必ず本山に向けるという厳格な決まりではないため、どの向きで仏壇を設置しても問題はありません。
真言宗の仏壇の飾り方
本尊の飾り方
真言宗のご本尊は大日如来を仏壇丈夫の中央に祀るのが基本です。
しかし、大日如来は姿形にとらわれず存在する仏様であり、その他の仏様は大日如来が姿を変えたものと言われています。
したがって、観世音菩薩や薬師如来、不動明王、弘法大師など、ご自身が信仰する仏様を祀ることも可能です。
迷った場合は、菩提寺に合わせて選んだり大日如来や弘法大師を祀ったりするとよいでしょう。
ご本尊は仏像と掛け軸のどちらを選んでも問題ありません。
脇侍の飾り方
脇侍とは、ご本尊の両脇に控えて仏様を支える存在です。
真言宗では、仏壇に向かって左側に不動明王、右側に弘法大師を安置します。
しかし、分派によっては不動明王の代わりに興教大師を祀る場合もあります。
脇侍は仏像と掛け軸のどちらを選んでもよいですが、一般的にはご本尊が仏像で脇侍は掛け軸という組み合わせがほとんどです。
もしも、掛け軸を左右どちらに祀ればよいかわからなくなった場合は、描かれているお顔の向きを見るとよいでしょう。
左右の掛け軸のお顔が向き合い、ご本尊に対して背を向けないように祀るのが、正しい飾り方です。
位牌の飾り方
真言宗では、位牌を必ず設けます。
位牌はご本尊の高さを超えないようなものを用意し、一段下に安置しましょう。
コンパクトな仏壇や仏像の場合は、位牌の高さがご本尊よりも高くならないように、特に注意が必要です。
また、複数の位牌がある場合は、右側上段を上座として1本目(最も古いご先祖様)から以下のように置いていきます。
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仏具の飾り方
真言宗の仏具の飾り方は、仏壇の大きさやデザイン、段数などによって変わります。
今回は、床置き3段の仏壇を想定してご紹介します。
仏壇にお供えする五供(ごくう)は宗派によって異なる場合もありますが、真言宗では以下の5つを仏壇に供えるのが基本です。
供え方や意味 | |
香 | 線香を炊いて、心身を清めること。また、仏様は香りを召し上がるとも言われている。真言宗では線香を3本使用する。 |
花 | 花を供えること。供花とも呼ばれ、香と同様に花の香りも仏様が召し上がると言われている。一般的な仏花以外に、庭の花や故人が好きだった花でもよい。 |
灯明 | ろうそくの明かりを灯すこと。参拝する人の心の闇や煩悩を照らし、取り除いてくれるという意味もある。消す際は、息ではなく手で消すのがマナー。 |
水 | 水やお茶を供えること。常に喉が渇いているご先祖様にとって、最も大切なお供えもの。水道の一番水や一番茶などが一般的。 |
飲食 | 主食を供えること。自分たちが食べる前に供えることで、仏様やご先祖様とつながることができる。 |
仏飯器
仏様にお供えするご飯を盛る器が仏飯器で、ご本尊の1段下の中央に置きます。
毎日食べものに困らずに生活できていることへの感謝を込めて、炊き立てのご飯を用意しましょう。
茶湯器
仏飯器の左隣に置くのが茶湯器です。
ご先祖様は常に喉が渇いていると考えられているので、仏壇には水かお茶をお供えします。
高月
仏飯器や茶湯器の1段下の中央には、高月(高杯)を2つ置きます。
上に半紙を敷いて、お菓子や果物をお供えしましょう。
花立
高月の左隣に置くのが花立です。
花の香りは邪気を払うと言われており、故人が好きだった花や季節の花を飾ります。
棘のある花や香りが強い花、傷みやすい花は避けたほうがよいでしょう。
過去帳・見台
高月の右隣に置くのが過去帳と見台です。
過去帳はご先祖様の没年月日や戒名などが記されているもので、普段は仏壇の収納に保管しておきます。
供養をするときの覚書として使うため、法要などの際には見台の上に乗せ、弔う方のページを開いて使用しましょう。
前香炉
最下段の中央には、お線香を炊くための前香炉を置きます。
中に香炉灰を敷き詰めて線香を立てて使うタイプの香炉で、基本的な仏具の一つです。
火立
前香炉の隣には、ろうそくを立てるための火立(燭台)を置きます。
香炉・花立と合わせて基本の仏具である「三具足」と呼ばれており、仏壇の大きさなどによっては、火立と花立を各1対にした「五具足」で飾られる場合もあります。
線香差し
お参りに使う線香は、線香差しに入れて最下段に配置しましょう。
線香は仏壇の収納部分に入れておいても問題はないのですが、線香差しを使用したほうが、日々のお参りの際にスムーズに取り出せて便利です。
おりん
おりんは、仏様に手を合わせるタイミングを知らせる仏具です。
また、おりんには空間を清める意味に加え、ご先祖様を弔う気持ちをその音色に乗せて届ける意味もあると言われています。
おりんも、線香差しと同様に最下段(右側)に配置します。
仏壇を設置した後は魂入れをする
仏壇を新しく設置したら、お坊さんに読経していただいてご本尊に魂を入れる「開眼供養」を行います。
開眼供養は、以下のタイミングで行うのが一般的です。
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四十九日法要のタイミングで一緒に開眼供養を行う場合は、参列者へもその旨を伝えておくとよいでしょう。
また、四十九日法要を控えていない場合には、必要に応じて菩薩寺に相談し、ご本尊と位牌を持参して開眼供養を行います。
真言宗とはどんな宗教?
真言宗は高野山金剛峯寺を本山とし、大日如来をご本尊とする仏教の宗派で、真言密教とも呼ばれています。
平安時代に空海(弘法大師)が中国の密教を伝えたのが始まりです。
真言宗の教えの基本は「即身成仏」と呼ばれるもので、体・言葉・心の修行を行うことで誰もがその体のままで仏になれると説いています。
まとめ
ご先祖様や仏様を祀る仏壇は、お家の中の小さなお寺であり、家族の拠りどころでもあります。
真言宗には、仏壇の選び方に厳しいルールはありませんが、ご本尊や脇侍、位牌、仏具の飾り方などは宗派に沿ったものにしなければなりません。
故人を弔う気持ちが届くように、正しく仏壇を飾って日々のお参りを行いましょう。