仏壇のご本尊・掛軸を飾る場合は何をすればいい?選び方や手入れ・処分の仕方について解説

仏壇 仏壇 掛け軸(本尊)) アイキャッチ

仏壇に飾るご本尊や掛軸は、宗派によってどんなものを飾るのかが異なります。

また、手入れや処分の方法についても、きちんと把握しておきましょう。

今回は、仏壇の掛軸やご本尊について解説します。

ご本尊について

仏壇のご本尊-

お寺や各家庭の仏壇で、必ずと言ってよいほど見かけられるご本尊ですが、仏壇に置くことにはしっかりとした意味があります。

ご先祖様や故人のよりよい供養のためにも、まずはご本尊の必要性について把握しておきましょう。

ご本尊とは

ご本尊とは、仏教の信仰対象物となる仏像(彫刻品)や掛軸のことで、家庭用仏壇だけでなく寺院の仏壇にも飾られています。

基本的には仏壇の上段中央に置かれ、先祖代々から受け継がれてきたご本尊を祀るケースがほとんどです。

しかし、現代におけるライフスタイルの多様化によって、仏壇を新しく購入したり買い替えたりする人が増えています。

新しい仏壇を迎えるときには、ご本尊も一緒に購入したほうがよいとされますが、宗派によって用意するものが異なるため、それぞれの違いを理解しておくことが大切と言えるでしょう。

仏壇におけるご本尊

本来は仏教の信仰対象であったご本尊ですが、一般家庭にも仏壇が置かれるようになったことで、遺族の「心のよりどころ」としての意味合いが強くなりつつあります。

日頃の供養において人々が仏壇へと手を合わせるとき、実は故人ではなくご本尊を拝んでいます。

もちろん亡くなった人の位牌に向けて拝むというときもありますが、そもそもの目的は仏教の教えを具現化しているご本尊を通してご先祖様や故人と対話し、感謝の気持ちを伝えることです。

また、大切な人が亡くなったときもご本尊に向かって手を合わせることで、故人の冥福を祈り、遺族の悲しみを和らげるという意味があります。

ご本尊は、長い歴史の中で私たちに寄り添い続け、ご先祖様との命のつながりを確認させてくれるのみならず、残された人たちの悲しみを癒してくれているのです。

仏像と掛軸がある

ご本尊の中には絵画や書もありますが、仏像と掛軸を飾るのが一般的です。

仏像の場合は木や土、金属、石などが素材として使われており、特に木でできたものが重宝されています。

代表的な木材に白木柘植(つげ)、白檀(びゃくだん)が挙げられ、使用するものによって仏像の見栄えが変わるのが特徴です。

なかでも柘植は上品な木目が魅力的で、経年変化による色合いの違いを楽しめます。

また楠は古くから用いられてきた木材で、美しい色艶や心地よい香りに加え、防虫効果の高さがポイントです。

さらに最近では松や檜を使ったものも増え、他の木材と比べて安く購入できます。

一方、掛軸には手書きやプリントのものがあり、大きさや形も幅広く展開されているため、さまざまな仏壇に配置が可能です。

一見手軽そうに思われる掛軸ですが、実は古くから仏教で使われてきた重要な仏具です。

詳しくは次の項目で解説します。

掛軸について

掛軸のご本尊

ひと昔前は宗派によって仏像か掛軸か明確に決められていましたが、近年のライフスタイルの多様化を受け、今ではどちらを祀っても問題ないとされています。

また大きな仏像を置けない、仏壇・仏具にお金をかけられないといった理由で掛軸を選択している人がいるのも事実です。

ご本尊を仏像にするか掛軸にするか迷っている人、掛軸を購入する予定がある人は特に、これから解説する内容をよく確認しましょう。

掛軸とは

掛軸とは仏様の姿を描いた書画に布や紙を貼り付けたもので、多くの人が鑑賞用として床の間に掛けられているものを想像するのではないでしょうか。

しかし、掛軸はもともと中国に由来する仏画であり、日本で使われるようになったのは飛鳥時代に入ってからです。

掛軸という言葉には「掛けて礼拝する」という意味があり、仏様を象徴する仏具の一つとされています。

仏壇では仏像と同じ扱い

仏像も掛軸も仏様の依り代であり、仏壇に置ける役割は変わりません。

違いは彫刻であるか、絵像であるかだけです。

どちらも仏壇の上段中央に祀ってよいのですが、より丁寧に飾りたいのであれば仏像の本尊を中心として、両脇に「脇掛け」と呼ばれる「祖師像(そしぞう)」(脇侍とも言う)などの掛軸を飾ります。

ただし、仏像と掛軸の安置方法は宗派によっても異なるため、注意が必要です。

詳しくは後ほど解説するので、掛軸を購入する際の参考としてください。

ご本尊の開眼供養について

法要を執り行う僧侶

仏具店などで新たに購入したご本尊は、仏壇に置く前に開眼供養をしなければなりません。

開眼供養の際は、次のような注意点に沿って行いましょう。

菩薩寺で開眼供養を済ませる

ご本尊の開眼供養は魂入れ、入仏式入魂法要とも呼ばれ、風習として先祖代々からお世話になっている菩提寺(ぼだいじ)に依頼します。

購入後すぐの仏像や掛軸は単なる「もの」であるため、魂を入れてご本尊として祀ることが目的です。

開眼供養のタイミングに決まりはありませんが、家族が亡くなった場合には、位牌ができる四十九日にあわせて法要を行うとよいでしょう。

ちなみに、ご本尊の開眼供養で気を付けるべきマナーは、その他の法要時と変わりありません。

服装は礼服、四十九日と併せて行う際は弔事用のものを着用してください。

また菩提寺に渡すお布施やお車代の用意も必要です。

お布施の相場は1〜3万円ですが、菩提寺や地域によって異なります。

どのくらいの金額を包めばよいのかわからない場合には、依頼先のお寺に確認してみるとよいでしょう。

掛軸も同様に開眼供養をする

掛軸も仏像と同じ役割をもっているため、開眼供養が必要です。

人の形を成していないからといって、法要が必要ないわけではありませんので注意してください。

ご本尊は宗派によって異なる

仏像と掛軸を組み合わせて祀った仏壇

ご本尊には基本的に如来仏が用いられますが、宗派によって信仰対象が異なります。

ご本尊の両脇に安置される祖師像の組み合わせも異なるので、ご自身が信仰する宗派の内容を押さえておきましょう。

真言宗

真言宗の本尊は大日如来で、右には弘法大師(空海)、左には不動明王の祖師像を安置します。

弘法大師は開祖、不動明王は大日如来の化身とされ、真言宗にとっては大切な信仰の対象です。

浄土宗

浄土宗は、ご本尊に阿弥陀如来、脇侍として右に高祖である善導大師、左に法然上人を祀ります。

また左に勢至菩薩(せいしぼさつ)像、右に観音菩薩像を飾るケースもあるので注意しましょう。

浄土真宗

浄土真宗のご本尊は阿弥陀如来ですが、掛軸によって祀ることを基本とし、本願寺派と大谷派で祖師像が違います。

本願寺派の場合は、右に親鸞(しんらん)聖人、左に蓮如聖人を安置するのが通例です。

対して大谷派では、祖師像ではなく右に「十字名号」、左に「九字名号」という名号(みょうごう)を書いた脇掛けを飾ります。

名号とは仏や菩薩の名のことであり、「南無阿弥陀仏」(六字名号)や「南無不可思議光如来」(九字名号)などが代表的です。

また両派で阿弥陀如来の光背(こうはい)の本数が異なり、本願寺派は8本、大谷派は6本描かれています。

一口に浄土真宗とはいっても、宗派で若干の違いがあるので注意しましょう。

天台宗

天台宗は久遠実成無作(くおんじつじょうむさ)の本仏・釈迦如来をご本尊に祀ります。

ただし、阿弥陀如来や薬師如来、観世音菩薩、不動明王、毘沙門天などを安置することも多く、特定のご本尊がないと言ってもよいでしょう。

脇侍は右に天台大師像、左に伝教大師を飾りますが、脇侍を設けないケースも多いようです。

曹洞宗

曹洞宗のご本尊は釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)です。

三尊仏形式が原則であり、お釈迦様を一仏として右に高祖 承陽大師 道元禅師、左に太祖 常済大師 瑩山禅師(けいざんぜんし)の両祖を祀ります。

この三尊は「一仏両祖」と呼ばれ、曹洞宗の教えにおいて非常に大切な仏様です。

日蓮宗

日蓮宗では、大曼荼羅(十界曼荼羅)、釈迦牟尼仏三宝尊のいずれかをご本尊として祀ります。

両脇侍には右に鬼子母神、左に大黒天を安置してください。

掛軸の選び方

仏壇の中の掛軸

仏壇の掛軸には、サイズ宗派素材に至るまでさまざまなものがあります。

掛軸を選ぶうえでのポイントにもなるので、しっかりと押さえておきましょう。

サイズ

掛軸の大きさを表す単位には「(しろ・たい)」が使われ、小さいもので20代(7.5cm巾・20cm)、大きいもので300代(30cm巾・97cm)にもなります。

一般的な家庭用仏壇には20〜50代、大きめの床置き仏壇であれば60〜200代の掛軸を選ぶとよいでしょう。

また、最近では20代よりも小さい豆代や極豆代の掛軸も販売されているため、マンション住まいの人に人気のミニ仏壇にも飾れます。

ただし、仏壇に適したサイズのものを選ぶ必要があるので、あらかじめ家庭にある仏壇の寸法を測っておくことが肝心です。

菩提寺の宗派に合わせる

先ほど述べたように、宗派によって信仰するご本尊と両脇侍は異なります。

したがって、掛軸を購入する際は菩提寺の宗派をよく確認したうえで選ぶようにしましょう。

また大半の仏具店では、ご本尊と祖師像がセットで販売されています。

どの掛軸を選べばよいのか不明なときは、お世話になっている菩提寺や仏具店の販売員に相談しましょう。

素材の違いについて

掛軸にも素材の違いがあり、高価なものとして平織の絹地に職人自らが手作業で描いた「絹本(けんぽん)」という掛軸があります。

対して、仏像をプリントした掛軸は比較的安価なものが多く、最近ではおしゃれでモダンなデザインのものも登場しています。

またスタンド型や三つ折りタイプの掛軸もあり、ミニ仏壇やコンパクト仏壇でも問題なく配置が可能です。

素材によって価格が大きく異なるうえ、雰囲気も変わるため、なるべく実物を見て仏像とのバランスを考えながら購入しましょう。

掛軸の供養や処分の仕方

仏壇の買い替えなどによって掛軸を処分する場合、そのまま捨ててしまうのはよくありません。

要らなくなった掛軸を処分する際には、閉眼供養が必要です。

また供養後の処分方法についても解説するので、今後の参考としてください。

閉眼供養をする

閉眼供養とは依り代に宿った魂を抜く儀式のことで、お性根抜きまたは抜魂式とも呼ばれます。

仏様の魂が宿るとされる掛軸も例外ではなく、処分の際には必ず行わなければなりません。

閉眼供養は、開眼供養を行なった菩提寺に依頼するのが一般的です。

開眼供養と同様のマナーで行いましょう。

お焚き上げ

閉眼供養によって魂が抜けた掛軸は、単なる「絵」として扱えるので、家庭ごみとして処分しても問題はありません。

ただし、ご本尊であったものをごみに出すのがはばかられるといった心情的な理由があるのであれば、菩提寺やご供養仕舞い専門業者お焚き上げを依頼するのも一つの手です。

菩提寺や供養の手配を代行してくれる専門業者に依頼しましょう。

その際、全国送付に対応している供養じまい専門業者に依頼するのがおすすめです。

閉眼供養からお焚き上げを一括してお願いでき、郵送で取引をするため、掛軸を処分する手間や時間がかかりません。

費用相場は掛軸1巾につき、5,000円から行なってもらえます。

掛軸のお手入れ方法

掛軸を長持ちさせるには、安置場所やお手入れ方法にも気を付けましょう。

掛軸は、大変デリケートな仏具です。

無理な手入れをしてしまっては、逆効果になってしまう可能性もあります。

湿気や直射日光をさける

掛軸を湿気が多い場所に置いてしまうと、シミやカビが発生します。

できる限り風通しのよい場所で祀り、適宜換気を行いましょう。

また、直射日光が当たると色あせたり劣化が早まったりする可能性があるため、日陰に置くことも重要です。

やさしくほこりを払う

掛軸にほこりが付いている場合は、やわらかい筆でやさしく取り除きましょう。

ただし、必ず乾いたものを使用してください。

濡れたものを使った場合、掛軸に付着した水分が、シミやカビ、変色の原因となる恐れがあります。

専門店に依頼する

どんなに丁寧に扱ったとしても、やはり経年劣化は避けられません。

専門店によっては、古くなった掛軸を修繕してくれる可能性があるため、見積もりも含めて相談してみるとよいでしょう。

もし掛軸を預けるのであれば閉眼供養を行い、戻ってきた後に魂を入れ直す必要があります。

掛軸はどこで買える?

インターネットの通信販売においてもさまざまな掛軸が販売され、いつでも気軽に購入できるようになりました。

また、複数の通信販売サイトを1度に閲覧できるため、比較しながら選べることもメリットと言えるでしょう。

ただし、実物を見られないことで、デザインやサイズが仏壇にあっているかどうか判断しにくいというデメリットがあります。

一方、仏壇仏具店では非常に多くの掛軸が取り揃えられており、あらゆる宗派や仏壇にあわせて選べるのが魅力です。

実物の大きさや質感、色合いなどを確認できるうえ、専門知識を備えている販売員に相談しながら掛軸を選択できます。

取扱方法や注意点も聞けるので、ぜひ1度専門の販売店に足を運んでみてください。

まとめ

ご本尊に向かって手を合わせる様子

掛軸は仏像と並び、仏壇供養に欠かせない大切な仏具です。

比較的リーズナブルで扱いやすいため、実際に掛軸をご本尊として選ぶ人も増えています。

また宗派によって多くの違いがあり、用意する際にはさまざまな配慮が必要とされますが、仏教の教えを体現するご本尊を祀ることは、よりよい仏壇供養にもつながります。

ご先祖様や故人があの世で幸せに過ごせるようにするためにも、ご本尊に対して心を込めて手を合わせるということが大切なのです。

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