仏壇用の花瓶は、仏具店以外のさまざまな場所で購入できます。
ただし、花瓶を飾る際にはいくつかルールがあるため、選ぶ際は注意が必要です。
そこで今回は、仏壇に飾る花瓶について解説します。
目次
仏壇用花瓶について
仏壇用花瓶は、唐木仏壇やモダン仏壇、ミニ仏壇など仏壇の種類や大きさによって選ぶものが異なります。
ご自宅の仏壇に最適な花瓶を選べるよう、まずは仏壇用花瓶がどんなものか押さえておきましょう。
仏壇用花瓶とは
仏壇用花瓶とは仏壇に飾られる仏具の一つで、「花立て(はなたて)」とも呼ばれています。
名の通りお花を供えるために使用され、材質やサイズ、デザインもさまざまです。
日々の供養はもちろん、お盆やお彼岸、命日などの特別な日にも用いられています。
花瓶は三具足
仏具の中には最低限揃えなければならない「三具足(みつぐそく)」と呼ばれるものがあります。
三具足には燭台(しょくだい)・香炉のほか、花瓶も含まれており、どの宗派においてもすべて欠かすことはできません。
また、正式な荘厳の形式や法要では「五具足(ごぐそく)」が供えられ、その中でも花瓶が必要とされています。
つまり、花瓶は仏教にとっても大変重要であり、故人の供養に欠かせない仏具ということです。
なぜお花を添えるのか
仏壇にお花を添えるようになったのか、それはお釈迦様が修行の最中に出会った仏様へお花を供えたという逸話に由来しています。
このことは「瑞応経」と呼ばれるお経の中にも記されており、供花は仏教の世界でも重要なおつとめの一つとされていました。
そのため、人々はお墓や仏壇にお花を供えることを古くからの慣わしとし、仏様へ日頃の感謝を伝えてきたのです。
現代では故人に対する想いをあらわすという意味も加わり、仏様への信仰心を深めることにつながるとされています。
仏壇にお花を飾るときのルール
仏壇に供える花を「仏花(ぶっか)」といい、お供え物の基本である「五供(ごくう)」の一つとされています。
仏花を飾る際にはいくつかのルールとマナーがあるため、必ず確認しておきましょう。
本数
仏壇に飾るお花の本数は、3・5・7といった奇数にするのが基本です。
奇数にすることで、見た目をバランスのよいひし形に整えられます。
生ける際は背の高い花が中央に集まるよう、花の色や高さを考えながら挿していくのがポイントです。
花の種類
仏花には故人が生前に好んでいたお花を選ぶのがよいとされています。
また、季節のお花を供えるのもおすすめです。
それぞれの季節に最適なお花を次のようにまとめたので、仏花を選ぶ際の参考としてください。
季節 | 花の種類 |
春 | キンセンカ・アイリス・桜・カーネーション |
夏 | リンドウ・ケイトウ・グラジオラス・トルコキキョウ |
秋 | ホオズキ・ミソハギ・コスモス |
冬 | 菊・百花草・ストック |
なかでも菊は傷みにくく、色やサイズのバリエーションが豊富なため、仏花によく使われています。
気品が高く、邪気を払うとされているのも仏花に選ばれる理由のようです。
反対に次のようなお花は仏教において禁忌とされ、仏花には相応しくありません。
特徴 | 花の例 | 理由 |
棘があるもの | バラ・アザミなど | 棘は血を流すことを連想させ、殺生を禁じる仏教に適していません。 |
毒があるもの | 彼岸花・チューリップ
・水仙など |
殺生をイメージさせるうえに、仏様や故人に毒を供えることになってしまいます。 |
香りが強いもの | ユリ・クチナシなど | 線香の香りを妨げてしまうだけでなく、香りを召し上がる故人にとっても刺激が強いと言われています。 |
ツルがあるもの | アサガオ・ジャスミンなど | 仏壇やその他の仏具に絡みついてしまい、昇天できないイメージがつくとされています。 |
仏壇やその他の仏具に絡みついてしまい、昇天できないイメージがつくとされています。
この他四十九日までは白色または淡い色のお花を供えるといったマナーもあります。
生花以外の仏花としては、枯れないよう特殊加工を施したプリザーブドフラワーやハスの花をかたどった常花も人気です。
花瓶の数
仏壇用花瓶は五具足にしたがって2つ用意し、仏壇の両端に一対で飾るのが基本です。
ただし、モダン仏壇やミニ仏壇といった小さな仏壇は、花瓶を2つ置くだけのスペースを十分に確保できないことがあります。
そのような場合は花瓶を1つに減らし、「三具足」として飾っても問題ありません。
花瓶はどこで買う?
仏壇用花瓶は仏具店や100円ショップ、ホームセンター、インターネット通販などで購入できます。
購入先によって花瓶の傾向や価格が異なるため、それぞれのメリットやデメリットを踏まえて商品を選ぶようにしましょう。
仏具店
仏具店は仏壇に合った花瓶を選びたい人に最適です。
仏壇や仏具を専門に取り揃えており、花瓶もさまざまな色やデザインのものがあります。
また専門知識をもった販売員がいるため、宗派による違いを確認しながら選べるのも魅力です。
場合によっては、花瓶の飾り方やお手入れ方法も教えてくれます。
100円ショップ
仏壇に置く花瓶は通常の花瓶を代用しても構いません。
そのため、100円ショップで販売されている花瓶も仏具として使用が可能です。
100円ショップにはさまざまな色やデザインの花瓶があり、費用を安く抑えられます。
仏壇用であることにこだわりがない人や、よりおしゃれなデザインを好む人におすすめです。
ただし、仏壇に置く花瓶として機能的に問題がないか、しっかりと判断する必要があります。
ホームセンター
ホームセンターは実物を見られるだけでなく、比較的リーズナブルな価格で花瓶を購入できます。
シンプルなデザインのものが多く、家庭にある仏壇と合わせやすいのもメリットです。
花瓶以外にも香炉や燭台といった仏具もあり、仏壇供養に必要な仏具一式を揃えられます。
インターネット通販
インターネット通販は自宅にいながら花瓶を購入できるという利点があります。
また数多くの通販サイトや仏具店のオンラインショップから商品を比較できるため、好みの色やデザインのものが見つかりやすいのもポイントです。
「手軽に花瓶を購入したい」「色やデザインにこだわりたい」という人には最適な購入方法と言えるでしょう。
一方、実物を確認できないといったデメリットもあります。
花瓶の素材
花瓶にはプラスチックや陶器、アルミ、真鍮(しんちゅう)といった素材が主に使われていますが、仏壇用花瓶だからといって素材が決められているわけではありません。
したがって、仏壇との相性や故人・遺族の好みによって選ぶとよいでしょう。
また素材によって金額が数百〜数万円と前後するため、予算に応じて選ぶのがおすすめです。
プラスチック
プラスチック製の花瓶は扱いやすく低価格な点が魅力ですが、高級感に欠けます。
そのため、プラスチックの花瓶を選ぶ際には、質感や色、デザインをよく見ることが大切です。
陶器
花瓶の中でも1番多いのが陶器を素材としたものです。
それゆえ価格や品質の幅が広く、100円ショップなどで買える安価なものから、有田焼や信楽焼といった高価なものまであります。
陶器そのもののデザイン性が優れているため、安くても十分な品質のものが手に入るでしょう。
アルミ
アルミ製の花瓶は軽く高い耐久性があり、変色にも強いのが特徴です。
アルミの質感を生かしたデザインはシンプルなのものが多く、モダンな雰囲気を演出できます。
価格がリーズナブルで、手入れがしやすいこともメリットと言えるでしょう。
真鍮
真鍮とは、5円硬貨などに使われる黄銅のことを指します。
浄土真宗大谷派では、真鍮を素材とした仏具の使用が原則とされるため、花瓶も例外ではありません。
真鍮製の花瓶は重厚感と高級感があり、昔ながらの唐木仏壇や金仏壇によく合います。
そのため、他宗派の場合でもあえて真鍮を選ぶ人も多いようです。
ただし価格が高く、こまめな手入れが必要とされます。
花瓶のサイズに決まりはある?
仏壇用花瓶のサイズに明確な決まりはありませんが、モダン仏壇やミニ仏壇といったコンパクトな仏壇に飾る場合は高さに注意が必要です。
小さな仏壇は通常よりも低く設計されているため、大きな花瓶にしてしまうとお花が仏壇に入り切らず、全体の見栄えも悪くなりかねません。
そのため、花瓶を選ぶときは花瓶本体だけでなく、お花を生けた際の全体の大きさと仏壇の高さを照らし合わせて決めることが肝心です。
まとめ
仏壇用花瓶にはさまざまな素材が使われ、最近ではデザインに凝ったものも登場しています。
仏教の世界において、仏壇に花を添えることは欠かせませんが、1番大切なのは故人を想いながら飾るということです。
仏壇用花瓶は仏壇によく合ったものを選び、故人に楽しんでもらえるようなお花を供えましょう。