仏壇を購入した場合や、引っ越し・リフォームした場合などは、仏壇の魂入れを行わなければなりません。
魂入れを行う場合は、菩提寺などに連絡をしてお坊さんを手配してもらう必要があります。
今回は仏壇の魂入れについて、当日までに準備しておくことや当日の流れなどを解説します。
目次
仏壇の魂入れとは?

仏壇の「魂入れ」という言葉を聞いたことがあっても、何のために行うのかまでは知らない方も多いのではないでしょうか。
まずは、仏壇の魂入れについて紹介します。
魂入れとは
魂入れとは、お坊さんの読経によって本尊や掛け軸などに魂を宿らせるための儀式のことです。
魂を宿らせることで「普通のもの」が礼拝の対象になるとされています。
また、魂入れは仏壇に対して行う儀式だと思う方もいますが、正しくは本尊・掛け軸・位牌に対して行います。
さまざまな呼び方がある
魂入れは、お住まいの地域や宗派によって「開眼供養」「開眼法要」「御霊入れ(みたまいれ)」「お性根入れ」などと呼ばれることもあります。
どれも同じ意味で使われますが、呼び方はさまざまです。
ちなみに「開眼供養」や「開眼法要」に使われている「開眼」という呼び方は、仏像を作る手順の最後に目を描き込むことに由来しています。
魂入れを行う意味
仏壇は本尊を祀るためにある家の中の小さなお寺であり、日々故人を供養するための場としての役割も果たしていますが、魂入れを行う前は「普通のもの」です。
しかし、お坊さんのお経によって魂入れを行うことで「普通のもの」から礼拝の対象になるとされています。
仏壇の魂入れが必要な場面について

魂入れが必要な場面について詳しくお伝えします。
仏壇を購入した場合
基本的には仏壇を新しく購入した場合と、仏壇に位牌を安置するときに魂入れを行います。
位牌の魂入れは、親族が亡くなってから四十九日法要と一緒に菩提寺のお坊さんに依頼することがほとんどです。
引っ越し・リフォームなどが完了した場合
引っ越しやリフォームなどが完了し、新居に仏壇を安置した場合も魂入れを行います。
この場合は、引っ越しやリフォームなどで仏壇を家の外に出す前に、一度ご先祖様の魂を抜く「魂抜き」の儀式が必要です。
その後、引っ越し先に仏壇を安置してから再び魂を入れるため、引っ越しをする場合は、必ず魂抜きと魂入れの儀式をセットで行いましょう。
仏壇の魂入れはどこに依頼すればいい?

ここでは、仏壇の魂入れを行なってくれるお寺や業者を紹介します。
お世話になっている菩提寺
仏壇の魂入れの際にはお坊さんにお経をあげてもらいますが、お経はそれぞれの宗派によって異なるため、一般的にはお世話になっている菩提寺へ依頼します。
もし、お住まいの地域が遠いなどの理由で菩提寺に依頼するのが難しい場合には、家の宗派と同じ宗派のお寺に依頼するか、菩提寺に相談してお住まいの近くにある同じ宗派のお寺を紹介してもらいましょう。
菩提寺がない場合
無宗教の方など、懇意にしている菩提寺がない場合は、お坊さんの手配サービスを利用するのも一つの方法です。
Webサイトに魂入れにかかる費用やお坊さんの派遣料がはっきり明記されているので、その金額を用意しておきましょう。
魂入れをするための準備について

仏壇の魂入れをするにあたって、必要な準備を知りたいという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、魂入れに必要な仏具やお供えものを紹介します。
魂入れに必要なお供えものを揃える
魂入れに必要なお供えものは下記の通りです。
ご飯 | 当日炊いた白米か赤飯を仏器(ぶっき)に盛ってお仏壇に供える |
お花 | 花屋さんで魂入れに合ったお花を購入し、仏壇の花立てにお花を生ける |
ロウソク | 火立に朱色のロウソクを立てて仏壇に置く |
お膳 | 霊供膳(れいぐぜん)に料理を供え、お箸を仏壇の方向に向けて置く |
その他 | 故人が好きだった果物やお菓子を高月などにのせて仏壇に供える |
魂入れの場所や日時を決める
仏壇の魂入れの儀式は、仏壇を安置する場所で行います。
お寺やお坊さんに連絡をして、都合を確認したうえで日時を決定してください。
魂入れに禁忌とされている六曜や時間帯はありませんが、人によっては「仏滅」「先勝の午後」「先負の午前」は避けることもあるようです。
どちらにせよ、お坊さんが忙しい時期もあるので、仏壇の魂入れが必要になった際は早めに相談して日時を決めましょう。
お布施・お車料の金額について
仏壇の魂入れを普段お付き合いのあるお坊さんにお願いする場合、お布施の相場は数万円程度とされています。
お車料は距離によっても変わりますが、5,000~1万円程度が一般的で、お布施・お車料ともに新札を用意するのがマナーです。
一方、お坊さんの派遣サービスを利用する場合は、Webサイトに明記された料金を用意します。
業者によってはお坊さんの派遣サービスを定額で行なっているため、比較的安く済む場合もあるでしょう。
魂入れ当日の流れ

仏壇の魂入れ当日の流れを紹介します。
当日、お坊さんに来てもらってから慌てないためにも、事前に流れを確認しておきましょう。
当日の服装について
仏壇の魂入れを四十九日や一周忌などの法要に続けて行う場合は、礼服や略礼装が一般的ですが、そうでない場合は平服でよいとされています。
厳かな儀式であることを踏まえて、カジュアルな服装や華美な服装は避けましょう。
具体的には、女性であれば落ち着いたカラーのワンピースや襟付きのシャツ、男性ならダーク系のスーツを着用すれば問題ありません。
魂入れの儀式の内容
魂入れの法要は、お坊さんに仏壇の前でお経を読んでいただき、仏壇に魂を込めます。
その後、参列者が順番に焼香をするのが大まかな流れです。
どの宗派にも大きな違いはありませんが、細かい部分は異なるため、心配な場合は事前に魂入れを依頼するお寺に確認しておきましょう。
なお、自宅での魂入れが難しい場合は、本尊と位牌をお寺に持ち込んで行う方法もあります。
お布施・お車料を渡すタイミング
仏壇の魂入れが終わった後に、感謝の言葉とともにお布施やお車料を渡します。
切手盆と呼ばれる四角いお盆に掛袱紗(かけふくさ)をしたり、お布施を袱紗に包んだりして渡すのがマナーです。
宗派別の魂入れの呼び方や作法

最後に、宗派別の魂入れの呼び方や作法をご紹介します。
ご自身の宗派に合った作法でご先祖様を供養しましょう。
浄土真宗
「魂」という概念をもたない浄土真宗では、新しく仏壇を購入したときや仏壇を移動したときなどは、他の宗派と異なる儀式を行います。
仏壇に供える香・灯明・仏花も、他の宗派と異なるため、注意しましょう。
香 |
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灯明 |
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仏花 |
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浄土真宗西本願寺派
浄土真宗西本願寺派では仏壇の魂入れのことを主に「入仏式」と呼びます。
入仏式は家に仏様を新しく迎えるおめでたいこととされ、お布施の他にのし袋もお坊さんに渡すのが作法です。
水引が紅白の「入仏式御礼」のし袋と、水引が無地の「御布施」を用意します。
浄土真宗東大谷派
浄土真宗東大谷派では仏壇の魂入れのことを主に「御移徙(おわたまし・ごいし)」と呼びます。
本願寺派と同じく、御移徙は家に仏様を新しく迎えるおめでたいこととされ、お布施の他にのし袋もお坊さんに渡すのが作法です。
水引が紅白の「御移徙御礼」のし袋と、水引が無地の「御布施」を用意します。
日蓮宗
日蓮宗では魂入れのことを「精入れ(しょういれ)」と呼び、「精」は魂のことを指します。
日蓮宗の宗祖、日蓮聖人は「造立したままの仏像・仏画には三十二相の内、梵音声が欠けている、これを補うに仏説を記述した経典を以ってすべし」と言われました。
このことから、日蓮宗の開眼は「法華経の力によって、新しくでき上がった仏像・神像等々に神(たましい)を入れること」とされています。
曹洞宗
曹洞宗では、新しく仏壇を購入したときは「開眼法要」、買い替えのときは「遷座(せんざ)法要」などと呼びます。
曹洞宗の魂入れはお経を読むだけでなく、「洒水器」という器に水を入れ、「洒水枝(しゃすいし)」という慶事用の赤い筆で水をそそいで煩悩やけがれを浄める儀式も行います。
お供えものは仏花やお菓子といった基本的なもの以外に、お餅・塩・清酒・生菜・お米・干菜などもお供えするのが作法です。
また「五供」の水は、正式には「献茶湯(けんちゃとう)」のため、お茶と砂糖湯(蜜糖)を使用します。
天台宗
天台宗では魂入れのことを「開眼法要」「精入れ」「仏壇開き」などと呼び、大安または先勝の午前中に行うことがよいとされています。
お供えものは小机に、上用饅頭・お米・酒・果物・海の幸・山の幸・里の幸を供え、お供えした上用饅頭などは後でいただくのが特徴です。
さらに、魂入れで使った白い布は縁起がよいものとされ、安産のお守りにもなると言われています。
真言宗
真言宗では魂入れのことを、ご本尊の眼を開くという意味で「開眼供養」と呼びます。
お供えものは、故人の好きだったものや果物の他に、海の幸・山の幸・畑の幸・沼の幸をお供えするのが丁寧な作法です。
ただし、仏壇だけを新しくしたときは開眼供養ではなく、ご本尊を移す「遷座」の法要を行います。
臨済宗
臨済宗では、魂入れのことを「ご心入れ」「精入れ」などと呼びます。
自宅で魂入れを行う際は、花一対・線香・菓子・果物の他にお湯やお茶なども仏壇にお供えするのが作法です。
まとめ
仏壇の魂入れは、お坊さんのお経によって本尊や掛け軸などに魂を宿らせるための儀式のことです。
魂を宿らせることで「普通のもの」が礼拝の対象になるとされています。
お世話になっている菩提寺に依頼するのが一般的ですが、最近ではお坊さんの手配サービスを利用する人も増えてきている印象です。
どの宗派でも魂入れの大まかな流れに違いはありませんが、呼び方や細かい作法は異なるため、事前に魂入れを依頼するお寺やお坊さんに確認しておくとよいでしょう。