近年増加している「孤独死」。孤独死=高齢者というイメージがありますが、現代では若者の孤独死も増加しているのはご存知ですか?
今や孤独死はかなり身近なものと言えます。もしも孤独死を発見したらどう対処するべきなのでしょうか?
今回はどういった原因や状況で起こるのかも、実例とともにご紹介します。
孤独死の増加は社会問題となっています。しかし、未然に防ぐ方法はたくさんあります。
孤独死が少しでも減少するよう、それぞれが意識を持って生活していきましょう。
目次
そもそも孤独死とは
1人暮らしをおくる高齢者の増加や相互扶助を行ってきた共同体の消滅などにより、社会問題として取り上げられるまでに増加した孤独死ですが、具体的にどのような状況を孤独死というのでしょうか。
孤独死の定義から、日本での孤独死の発生件数について解説します。
孤独死の定義
孤独死という言葉が有名になりましたが、孤独死は明確にどのような定義なのか定められていません。
一般的には、一人暮らしをしていた人が、誰にも看取られることなく住居内で亡くなった場合を孤独死と呼びますが、遺体の発見までの経過日数が3日以上経った場合を指す場合もあります。
死後経過日数だけがポイントではなく、市区町村や医者、大学教授などがそれぞれに異なった基準による孤独死の定義を提唱していて、明確な基準は定められていません。
また、単独世帯などで死後日数がたってからの遺体の発見があった際には、まず警察が亡くなられた方の死を孤独死ではなく不審死として取扱い、死が犯罪によるものではないかを調べるために検死を行います。
増加傾向にある孤独死の数
高齢者の孤独死件数は年々増加の傾向にあり、厚生省の調査によると東京都23区内での65歳以上の高齢者の自宅での孤独死件数は、「平成14年の1,364人から20年は2,211人と1.6倍に増加」し、平成28年には3,179人にまで達しました。
参照元:厚生労働省
また、一人暮らし世帯で60歳以上の方は45.4%が、意識調査で孤独死を身近なものであると感じていると回答しました。
今や孤独死はかなり身近に起こりうることなのです。
孤独死が起こる原因とは
ここ10年前後で発生件数が大幅に増加した、孤独死の発生する原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
孤独死の起こる原因について、環境的原因と心因的原因に分けて解説します。
環境的原因
①核家族化の進行
日本での高齢者の孤独死件数の増加の環境的原因としては、まず一つ目に核家族化の進行があげられます。
日本の都市化や高度経済成長が進むにつれて夫婦とその子供による世帯が増えて、逆に3世代の同居などの世帯が減りました。
昔の日本では、一般的に高齢者の介護などを同居する子供が行う場合が多かったですが、田舎に限らず都市部でも一人暮らしの高齢者が増え、介護を行える人材が不足しています。
➁介護の人手不足・貧困化
介護の人手不足と合わせて、貧困化によっても苦境に追いやられるケースがあります。
高齢の親と未婚の子供の2人暮らしで、親の介護をきっかけに離職、そして生活保護を受給せざるを得なくなるケースが大変増えています。
貧困のまま親子二人きりでで生活し、貧困がゆえに冠婚葬祭などへの参加ができず親戚や友人知人と疎遠になり、孤立した結果二人とも孤独死してしまうというケースもあります。
経済力があれば介護システムを導入するなど選択肢も広がるので、孤独死しないためにも貯蓄には余裕を持っておきたいですね。
③地域付き合いの減少
昔の日本であれば地域の人々で助け合うという風習がありました。
高齢者の一人暮らしだと近所の人で声を掛け合ったりしていたのですが、現代ではご近所付き合い自体減ってきているのです。
単身で生活をする高齢者が、家族や社会、地域からも孤立するという環境によって、孤独死が増えているのです。
心因的原因
①頼る人がいない
環境的原因でも述べたとおり、子供や地域との関係が希薄になり孤立する高齢者が増えています。
一人暮らしを行う高齢者の中には、他者との会話すら数日に1回というケースが増えています。
また、近所付き合いというものがなくなったことでも日常生活で他者とかかわることが減り、仮に体調を崩したとしても誰にも気づいてもらえない、いざというときに頼る人がいないという状況に陥ります。
➁アダルトチルドレンの増加
さらに、アダルトチルドレンの増加も深刻な問題です。
アダルトチルドレンとは、アルコール依存症やギャンブル依存症などの問題を抱えた親の元で育った子供が、成人しても親との関わりの中でトラウマを抱えているという状況のことです。
子供と親のなかで、虐待や家族間での不仲、生活的困窮といった問題が発生する原因となり、それによって孤独死につながります。
③子供の引きこもり
それ以外には引きこもりも社会問題になっており、80歳の「親」と引きこもる50歳の「子供」の8050問題というのも取り沙汰されています。
子供が引きこもりとなった世帯において、親が二人とも死んでしまった場合生活力を持てません。周囲や社会との関わりを持たない子供は周りに頼ることが出来ず、孤独のうちに死んでしまうということも起きています。
孤独死は単純に孤立した環境だから起こるものではなく、心理的にも孤独になってどうしようもなくなった場合に起きてしまうような気がします。
文字通り身も心も孤独なまま無くなっていくことを孤独死というのでしょうか。
詳しくはこちらの記事をお読みください。
孤独死の事例
高齢者だけの問題であると考えられがちな孤独死ですが、実は若年層にも起こりうるということをご存知ですか?
また、高齢者の孤独死では男性の割合が多いことや、実際の孤独死の死因などについても解説します。
若年層にも孤独死は起こっている
孤独死には、一人暮らしの高齢者が自宅で死んでしまうというイメージがありますが、近年若年世代でも孤独死してしまうケースがあります。
若者の孤独死の要因としては、半数近くを自殺が占めています。
特に現代の30代は、就活氷河期にあったり派遣という形態が始まった世代であるために、貧困な人口が多いと問題となっているのです。
非正規雇用、もしくは就職難の中貧困に苦しみ、将来に希望が持てないがために自ら孤独の中命を絶ち孤独死として発見されるのです。
また子供時代にいじめにあうなどで、他人とのコミュニケーションや社会生活に苦痛を感じるようになり、引きこもってしまったり自殺を選んでしまうことも…。
さらに、30~40代で自殺する人は、男性より女性の方が多い傾向にあります。
給料の安さから男性よりも金銭的苦境に立たされやすく、貧困に陥りやすいことが原因です。
生活の苦しさに加えて、人間関係でのトラブルによって孤立してしまい、セルフネグレクトという自己を放任してしまう状態になることもあります。
過去に実際起きた孤独死の事例では、離婚をきっかけに孤独になり、アルコールに依存してしまって不摂生な生活から亡くなられたケースがあります。
高齢者では孤独死は男性に多い
高齢者では、女性よりも男性の方が孤独死する割合が高くなります。
まず一つ目の理由としては、高齢男性は女性よりも掃除や料理といった家事が苦手な場合が多く、核家族化が進む中では夫婦での二人暮らしの高齢者が増えていて、妻と死別するなどの要因で一人暮らしになった時に、栄養バランスや衛生面等の管理ができずに生活が荒れてしまうことがあります。
また、女性に比べて男性はご近所との付き合いなどのコミュニケーションも苦手な傾向があります。仕事を辞めた途端、周囲との接点がなくなってしまいがちです。
そのため、体調を崩しても気軽に頼れる人間が周囲に居ず、誰にも助けを求められないまま亡くなられる方も多いです。
孤独死に多い死因
孤独死に多い死因としては、まず心筋梗塞や脳疾患、脳溢血などの急性の発作があげられます。
早期に発見されて病院に搬送されれば助かる場合でも、誰にも気づいてもらえないためそのまま亡くなってしまうのです。
また、普通の風邪をこじらせてしまったり、転倒して骨折してしまったりといった普通であれば大事には陥らないようなことでも、気にかけてくれる人がいないために悪化させてしまうことがあります。
そういった、病死等の次に多いのが、自殺です。
若年層の孤独死の半数は自殺によるものであると記述しましたが、高齢者層でも一人の生活で人生に希望が持てず、自死を選んでしまうケースがあります。
また、地震等の災害で自分一人では避難が出来なかったり、注意してくれる人がいないためにアルコール依存症に陥ったりして亡くなられることもあります。
本人の意思とは異なり、思わぬ場面で孤独死してしまう可能性があるということですね。
以下の記事では、実際にあった孤独死の事例をまとめました。
孤独死があった際にすべき対処
孤独死の発見者は、
・管理会社やオーナーが発見者:約27% ・親族が発見者:約20% ・自治体などの福祉関係者が発見者:約20% |
となっています。
郵便物がたまっていたり、異臭から隣室の住人が発見することもあります。
自分がいつ孤独死の発見者となるかわかりません。
もしもに備えて孤独死を見つけたときの適切な対処について知っておきましょう。
遺体発見からの対処の流れ
まず、住宅内で倒れている人を見つけた場合には、警察か救急に連絡を入れなければいけません。
異臭がする、腐敗しているなどで死亡が確実であると判断できる場合は警察に連絡を入れてください。
また、死亡が自分で確認できない場合には、直ちに救急車を呼ばなければいけません。
速やかに病院に搬送することで、命が助かるかもしれません。
警察が来て検死を済ませるまでは、死の要因の事件性の有無がわからないため不審死として扱われます。
警察が検証するため、現場のものを動かしたりせず、現場を保存しておかなければいけません。
発見者が大家さんであれば、警察または救急の次に、家族や保証人に連絡を入れてください。
そこからの流れとしては、警察の検証を経た後で遺族のもとに遺体が返され、葬式や火葬といった法要を行います。
孤独死のあった部屋では特殊清掃が必須
孤独死が起きた場合、季節や発見までの日数によっては遺体が腐食してしまいます。
おおよそ3日ほど経過すると、体液が体から流れ落ち、床や布団に染み込んでしまい強烈な異臭を放ちます。
また、疫病の原因となるような蛆や蠅などの害虫が発生することもあります。
遺体から流れた体液が、床下の基盤部分にまで染み込んでしまうこともあり、そういったケースでのお部屋の清掃は素人の手におえるものではありません。
そういった場合には、孤独死後のお部屋の掃除を行う特殊清掃のプロがいますので依頼してください。
特殊清掃は、お部屋の遺留物の掃除から、汚れた家具等の搬出、害虫の特殊な薬剤による駆除から消臭などを行います。
孤独死では無縁死者になることも珍しくない
孤独死された故人は、身元が判明しないために引き取り手がいない場合や、遺族が引き取りを拒否するということも珍しくはありません。
引き取り手のいない遺体は、行旅病人及行旅死亡人取扱法という法律によって地方自治体が火葬を行います。
そして、遺骨を保管しますが、引き取り手が見つからない場合には無縁仏として埋葬されます。
孤独死が起こった際の対処方法は、以下の記事で詳しくご説明しています。
もし孤独死現場に直面してしまっても慌てないよう、対処方法の流れを詳しく知っておきましょう。
孤独死があることで起こるトラブル
孤独死が起きた場合、ご遺族と家主や近隣住人とトラブルが起きてしまうことがあります。
どういったことが原因でトラブルになるか、金銭的なトラブルではどの程度の負担になるのかなどを解説します。
家主(管理会社)とのトラブル
①家賃の滞納
まず考えられるのは家賃の滞納についてです。
身内が孤独死した際に家賃の滞納等があれば、親族に支払いを要求されます。
➁特殊清掃・原状回復費用
孤独死が起きた場合、発見までの日数によっては遺体から漏れ出た体液等で室内が汚染されてしまいます。
害虫の発生や家屋への浸食、異臭など、簡単には処理できない状況に陥いることもあります。
その際に部屋の原状回復を大家さんから要求されますが、プロの清掃業者の手配や、浸食具合によってはリフォームまで必要となるかもしれません。
近隣住人とのトラブル
マンションなどの集合住宅で孤独死が起きてしまった場合には、近隣住人にとっても被害が及びかねません。
具体的には、遺体から発生した疫病を広めかねない害虫や、異臭などによる被害です。
また、きれいに部屋の原状回復を行ったとしても、孤独死が起きた部屋というのは借り手がなかなかつかないということもあります。
金銭的なトラブル
身内の孤独死に際しては、大家と遺族の間での金銭的トラブルが発生してしまうこともあります。
最小限の費用で収めたい遺族と、完璧な修復を求める大家の間で、意見が食い違ってしまうケースなどです。
家主側は親族に清掃費用や空室期間の補償などのお金を請求しますが、高額の請求となるために親族が相続放棄を選択する場合もあります。
そうなると家主側に負担がかかるために、さらに家主側が高圧的に抗議してもめてしまうということも少なくありません。
孤独死でのトラブルを抑えるためには
孤独死は親族と家主の間で金銭的なトラブルが起きかねないとのことですが、事前に対策できることがあるならやっておきたいですよね。
家主・入居者共に加入できる孤独死保険や、万が一に備えた生前の遺品整理について解説します。
孤独死保険
孤独死保険には、家主が加入するものと入居者が加入するものの2種類があります。
家主の加入する保険は、孤独死等の死亡事故が発生した場合に起きる損失を補償できるもので、入居者が加入する保険は死亡事故への補償を行ってくれるものです。
保険に入るメリットやデメリットも知っておきましょう。
メリット:加入のメリットは大きく、孤独死が起きた場合には双方とも被害費用を小さくすることが可能。 デメリット:保険の費用がかかる。しかし数百円で済むこともあり、大きな出費にはならない。 |
孤独死が起こった場合の物件の対処方法や詳しい保険については、以下の記事でご紹介しています。
生前整理(遺品整理)を行っておく
高齢者の独り暮らしなどの場合には、事前に遺品の整理を行っておくことが大切です。
万が一孤独死を起こしてしまった場合には、遺体の周囲にあった遺品などにもニオイや体液が染み込んでしまい、遺品はすべて捨てざるをえないことがほとんどです。
死臭が染みついてしまった遺品を整理するのはとても大変です。
事前に生前整理しておくことで遺族に掛かる負担が最小限に抑えられるので、心おきなく生活を送ることができるのではないでしょうか。
株式会社林商会では生前整理も行っております。早めの生前整理をし、残りの人生を有意義に過ごしませんか?
その他相続や不動産などのご相談もお受けしております。お気軽にお問合せ下さい。
遺品整理について詳しく知りたい方はこちらの記事もお読みください。
孤独死を防ぐための対策
孤独死の原因やかかる費用などについて解説しましたが、孤独死を未然に防ぐことが出来れば一番ですよね。
対策方法をご紹介していきます。
行政が行っている孤独死対策や民間サービスを知る
孤独死が社会問題となったことで、それに備えた行政の対策や民間サービスが増えてきています。
①民間の見守りサービスを利用する
まず民間のサービスとしては、自治体に委託されて行う企業のみまもりサービスがあります。
ホームセキュリティーで有名なアルソックもみまもりサービスを行っていて、万が一の際に緊急通報を行える器具を設置し、24時間体制でガードマンに来てもらうことができるサービスや、健康相談なども可能です。
➁行政のサービスを利用する
また、行政も孤独死対策をかねて高齢者の自宅への声掛けや訪問といったサービスを行っています。
近隣の住人の様子がおかしかったり、新聞などの郵便物が溜まっていたりした場合には、地域に相談するための窓口も用意されています。
そのほかにも高齢者に対して地域で協力して支援しようと取り組んでいる自治体も存在し、定期的な職員による安否確認を導入している地域もあります。
施設への入所
高齢での一人暮らしが心配になってきたら、老人ホーム等への施設に入所するという選択肢もあります。
老人ホームに入居して、職員の介護の中で余生を過ごすことができれば孤独死のリスクから逃れることができます。
ただ、入居者が順番待ちをしていたり、費用が高かったりといった問題もあり、それは日本全国での課題となっています。
入居料なしで月々の利用料だけの公的な介護保険施設もありますが、予約が空くのを待たないといけないケースもるようです。早めに問い合わせするよう心がけた方が良いかもしれません。
老人ホームのほかに定期的に訪問介護などを行ってくれるデイサービスにも加入しておけば、孤独死のリスクも大きく減らすことが可能です。
以下の記事では孤独死の対策方法をさらに詳しくまとめてあります。
事前に対策方法を理解し、対策しておきましょう。
まとめ
孤独死は、現代の日本の地域の共同体の喪失や、核家族化など、発展によって失われてきたものによる代償として、大きな社会問題の一つとなっています。
孤独死は、孤独死する本人の苦痛もさることながら、残された遺族も精神的ダメージのみならず、金銭的負担といった形で痛手を追うことになりかねません。
一人暮らしをする高齢の親族がいる場合には、行政のサービスの利用や親族の日常的な連絡によって、孤独死のリスクを抑えられるようにしたいですね。