少子高齢化社会の日本において、高齢者の孤独死は社会的問題になりつつあります。
すべての高齢者が介護施設や高齢者施設に入居できるわけではないので、万が一のことを考えて不動産賃貸を生業にしている方は孤独死があった物件への対応を学ぶことが重要です。
今回は孤独死があった物件は事故物件になるのか、物件の事後対応について併せて解説します。
目次
孤独死のあった物件は“事故物件”に該当する?
結論から述べると、孤独死があっても事故物件にはなりません。
ただし、状況次第では事故物件に該当するものもあります。
最初に事故物件が孤独死に該当しない理由や、事故物件に該当するケースを解説しますので、ぜひ覚えておいてください。
事故物件に求められる「告知義務」とは?
事故物件は売却や貸し出しをする際に、買主・借主に対して物件の瑕疵(欠陥)があった際にどのような瑕疵があるのかを伝える義務があり、この義務が告知義務です。
告知義務が必要になる瑕疵には「物理的な瑕疵」「環境的瑕疵」「心理的瑕疵」「法律的瑕疵」の4種類があります。
孤独死のあった物件が事故物件にならない理由
孤独死が事故物件に該当するのは「心理的瑕疵(しんりてきかし)がある物件」の場合です。
より簡単に説明すると「居住する際に嫌な気持ちになる要因がある物件」のことですが、人によって不快な気持ちになるかの基準があいまいなため、事故物件には具体的な定義はありません。
よって、事故物件に該当するかは国土交通省が2021年に発表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を基準としています。
孤独死に多い老衰、病死は「自然死」、階段や浴室での転倒、食事中の誤嚥は「不慮の事故」に分類され、どちらも告知義務がないことが孤独死のあった物件=事故物件にならない理由です。
孤独死があった物件のうち事故物件に該当するケース
ただし、孤独死物件が事故物件に該当するケースもあるので注意が必要です。
「宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドライン」によると、特殊清掃の有無によって心証が大きく影響されるとされています。
孤独死で特殊清掃が必要なパターンに該当するのは、発見まで時間がかかり遺体が腐敗していたケースです。
一般的に遺体の腐敗は夏場で1~2日、冬場で2種間程度とされていますが、エアコンなどの使用状況によっても異なります。
そのため、特殊清掃が必要となる物件は遺体が長期間放置された可能性が高く、事故物件に該当しやすいでしょう。
事故物件に該当する孤独死で起こるリスク
事故物件に該当するような孤独死が起きてしまった場合、さまざまなリスクも同時に発生します。
賃貸物件や持ち家を問わず起こるリスクなので、事前にどのようなリスクがあるのかを把握し、対策を考えましょう。
原状回復が難しい
事故物件扱いになる孤独死では、一般的な清掃だけでは原状回復ができません。
仮に見た目はきれいになったとしても、においなどの問題もあるため、専門的スキルを有する業者に依頼し、特殊清掃が必要です。
一般的に特殊清掃はワンルームで3~8万円程度が相場とされていますが、遺品整理や残留物の処分をする場合はさらに費用がかかります。
また、変色や臭気は追加費用が必要になることもあるので、原状回復が困難なだけでなく、多くの費用が費用がかかるリスクが高いといえるでしょう。
空き部屋になるリスクがある
事故物件扱いになると心理的瑕疵に該当するため、入居者が決まりづらく、空き部屋となるリスクがあります。
そのため、事故物件では相場よりも賃料を下げることで入居者を募りますが、賃料を下げたからと言って必ずしも借主が現れるとは限りません。
また、借主が現れたとしても、賃料を他の物件よりも下げるで家賃収入が減少してしまいます。
他の物件の借主も事故物件から近い場所に住んでいる場合、引越しをする可能性があるので、空き部屋が増加しかねません。
売却が困難になるリスクがある
持ち家の場合も、買主に対して告知義務があるので、心理的瑕疵によって買主が見つかりにくく売却が困難になる可能性があります。
不動産業者に売却することで買主が見つからないリスクへの対処はできますが、相場よりも低い金額での買取になる可能性がある点にも注意をしなければなりません。
孤独死のあった物件の対処法
孤独死があった物件は適切な対処が必要です。こちらで対処法について説明しますので、参考にしてください。
特殊清掃をする
特殊清掃では、体液による汚れの清掃、害虫駆除、消臭などを徹底的に行います。
ただし汚損がひどく、特殊清掃でも原状回復が難しい場合は、フローリングや壁紙の張替えなどのリフォームも必要です。
原状回復にかかる費用は、相続人に依頼して負担してもらうことになりますが、相続人がいない場合は、オーナーや管理会社で負担しなければなりません。
また、残留物や遺品の対応も必要です。
賃貸・売却時の告知
事故物件扱いになった不動産を賃貸に出す、または売却する場合は告知義務があります。
具体的には、売買・賃貸契約の締結前に、重要事項として文章化し宅建士の資格をもつスタッフが説明をしなければなりません。
告知義務を怠った場合、賃貸や売買の契約が解約されるだけでなく、最悪の場合は宅地建物取引業法違反となり損害賠償が発生する可能性があります。
不動産業者に買取を依頼する場合
不動産の売却を考えている場合、自力で買主を見つけられない場合は不動産業者へ売却する方法もあります。
不動産業者は不動産に関するノウハウがあるため、事故物件扱いの不動産でも安心して任せられるでしょう。
事故物件の不動産は自力での買手が見つけづらいので、候補に入れておくことをおすすめします。
孤独死による事故物件対策として「孤独死保険」がある
孤独死による事故物件の対策方法として、最近は孤独死保険が登場しました。
ここでは孤独死保険がどのようなものかを簡単に説明します。
「家主型」孤独死保険
家主型孤独死保険は、オーナーが契約者となり保険料を負担し、賃貸住宅の居室内などで入居者が死亡した際に、オーナーが被る損失を補償する保険です。
対象になるのは、居室の原状回復にかかる費用だけでなく、家賃を減額しなければならない場合の損失分です。
保険料の相場は、1室につき月額数百円程度ですが、居室が多いと負担が大きくなるので注意しましょう。
「入居者型」孤独死保険
入居書型孤独死保険は、賃貸住宅の入居者が保険の契約者となり、「孤独死した方の遺族」が保険金を受け取れる保険です。
賃貸物件で孤独死が発生した場合、原状回復の費用は遺族が負担することになります。
そのため、入居者型孤独死保険では原状回復費用や遺品整理にかかる費用の負担を軽減できるような保険が誕生しました。
保険料の相場は、1室につき月額300円程度ですが、単独での保険契約ではなく入居時の「家財保険の特約」として加入するのが一般的です。
孤独死保険の選び方
孤独死保険の選び方で重要なのは、補償範囲、補償金額、補償期間の3つです。
補償範囲
孤独死保険は保証範囲が商品によって異なります。
孤独死保険は、原則として契約している居室内での孤独死が対象ですが、病室など居室以外で死亡した場合も遺品整理の費用が補償対象になるものもあります。
補償金額
他の保険同様に、孤独死保険でも上限金額は設けられています。
日本少額短期保険協会の孤独死現状レポートでは、原状回復で約39万円、残留物処分に約23万円が平均でかかると発表されていました。
よって、60万円程度を目安として判断するとよいでしょう。
なお、入居者型に比べて家主型のほうが補償金額は高い傾向にあります。
補償期間
補償期間は家主型の場合、よく確認しておきましょう。
補償期間も保険によって異なり、半年程度や12か月などさまざまです。
そのため、家賃の値下げで発生する収入損失をどの程度カバーしたいのかで判断するとよいでしょう。
特殊清掃は株式会社林商会へ
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まとめ 単身世帯にとって孤独死対策は必須
孤独死は気づかれるまで時間がどれくらいかかるかも不明で、場合によっては物件や遺族に大きな負担をかけかねません。
頼れる人が身近なところにいなくても、できる対策はあるので、年齢を問わず単身世帯は孤独死対策をしておくとよいでしょう。
とくに孤独死保険は、リーズナブルに加入できるものもあります。 気になった方は保険の見直しや、加入についても相談してみてください。