お墓参りの際にお花を供える習慣があることを知っていても、「実際にどのようなお花を選んだらよいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
基本的に故人の好きだった花を選べばよいのですが、なかにはお供えに適さない花もあります。
この記事では、お墓に供える花の選ぶ際のポイントやおすすめな花・タブーな花を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
お墓参りでお供えする花を選ぶポイント
お墓参りの際にお供えする花に特別な制限はありませんが、その場に相応しいとされる供花があります。
どのような点を考慮したらよいのかをみてみましょう。
色と左右のバランスを考慮する
お墓にお供えする花は、色数を3~5色にまとめ、左右対称になるようバランスよく配置しましょう。
葬儀や法事といった仏教行事では白や紫の花を中心にお供えしますが、個人的なお墓参りでは、お好みの色を選んでも問題ありません。
ただし、墓前にお供えする花のため、派手すぎる色や奇抜なデザインは避けたほうがよいでしょう。
具体的な花の色の組み合わせ例は、以下の通りです。
3色の組み合わせ | 白・紫・黄 |
4色の組み合わせ | 白・紫・黄・赤 |
5色の組み合わせ | 白・紫・黄・赤・ピンク |
一般的なお墓には、供花を飾るための花立が左右に1つずつあります。
バランスよくお供えするには、花の色や本数を揃えた供花を2組用意するとよいでしょう。
故人の好きな花・好きな色を選ぶ
供花といえば菊やユリの花を連想される方も多いですが、故人の好きな花・好きな色を選ぶとよいでしょう。
なぜなら、供花は故人を偲んで供えるものだからです。
ただし、地域や宗派によっては古くからの習わしを優先させる場合もあるので、気になるようなら事前に確認しておきましょう。
お墓参りに年配の親族が同行される場合は、しきたりを重視される可能性が高いので、供花を購入する前に一確認しておくことをおすすめします。
費用相場
お墓参りでお供えする花の相場は、一般的に1,000~2,000円程度です。
場所や時期によって多少額が上下しますが、花屋やスーパー、ホームセンターなどでは仏花は1束500~1,000円程度で販売されています。
墓前の供花は2束1組でお供えするのが基本なので、総額で2束分の1,000~2,000円ほどになる計算です。
なお、色やバランス、故人の好きな花などを配慮した結果、相場の範囲内に収められなくてもマナー違反にはなりません。
お墓参りでお供えするのにおすすめな花
お墓参りでお供えするのにおすすめの花をご紹介します。
菊
供花の代表格である菊は薬草として日本に伝わり、邪気を払う効果がある花として長く愛され親しまれてきました。
「花もちがよい」「枯れる際に散乱しにくい」「暑さに強い」などの特徴があります。
長く楽しめるうえ季節を問わず手に入りやすいことから、墓前に供える花として重宝されています。
菊の花言葉 |
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カーネーション
カーネーションは、葬祭関係で菊に次いで2番目によく利用される花です。
母の日に贈る花として有名ですが、花もちがよいのでお墓参りの供花としてもおすすめです。
優しい雰囲気があり暑さに強いことから、お盆のお墓参り前にお供えする花にも適しています。
カーネーションの花言葉 |
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リンドウ
リンドウは、季節の花としてお盆や秋のお彼岸でよく利用される花です。
菊やカーネーションと同様に、花もちがよいのも供花に用いられる理由の一つになっています。
リンドウの花言葉 |
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蓮
仏教との関りが深い蓮は、墓前の供花として選ばれることが多い花です。
蓮は仏教では極楽浄土を象徴する花で、お盆に故人を迎えるのに相応しい花と言えるでしょう。
開花時期は7~8月でちょうどお盆の時期と重なっており、白や黄色、ピンクといった蓮の花は、無機質な墓前に優しい彩りを添えてくれます。
蓮の花言葉 |
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ミソハギ
ミソハギは、お盆の時期に咲くことから「盆花」「盆草」「精霊花」などと呼ばれており、田んぼの畔(あぜ)や小川の淵に生息する花です。
供花として用いられるようになった理由は、諸説あります。
その一つは、喉や口の渇きを抑える効果があり、お盆に帰ってくるご先祖様がミソハギの露を口にされるというものです。
地域によって少しずつ異なりますが、昔からお盆のお墓参りで好んで供えられてきました。
ミソハギの花言葉 |
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コウヤマキ
コウヤマキは常緑針葉樹の一種で、庭木として人気があります。
上の写真のように4月頃に丸みを帯びた薄茶色の花を咲かせますが、仏花に用いられるのは細長い葉の部分です。
また、多くが和歌山県の高野山に生えていることが名前の由来で、高野山ではコウヤマキは霊木とされています。
コウヤマキが墓前に供えられるようになったのは、高野山の「禁忌十則」で果樹、花樹、竹、漆などを植えることが禁止されており、花の代用とされたからです。
コウヤマキの花言葉 |
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お墓参りでお供えするのはタブーな花
冒頭で、お墓参りの際にお供えする花に特別な制限はないことをお伝えしましたが、一般的にタブーとされている花があります。
特にこだわりがないのであれば、以下のような花は避けたほうがよいでしょう。
トゲのある花
トゲのある供花がタブーとされるのは、触ると痛みを感じるトゲが殺生やケガを連想させるためです。
ただし、この考え方は仏教になぞらえたものであり、現代では変わりつつあります。
バラをあしらった葬儀・告別式が人気になっているのがその一例で、お墓参りの供花もバラ入りのものが市販されるケースが増えています。
とはいえ、故人がバラ好きだったなどの理由からお供えする場合は、危険なトゲは必ずすべて取り除いておきましょう。
お墓参りには小さなお子さんも訪れるほか、墓地を管理・清掃する方々もいますので、危険がないよう充分に配慮しましょう。
トゲのある花の種類 |
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毒がある花
毒がある花は、「死」を連想させることからタブーとされています。
害虫除けとして毒がある花を栽培しているケースもありますが、不特定多数の人が集まる墓地に、毒がある花をお供えするのは避けましょう。
毒がある花の種類 |
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香りが強い花
香りが強い花も、お墓参りの供花としては適しません。
芳香花と呼ばれるよい香りを放つ花であっても、不快に感じる方もいるからです。
また、香りに誘われて虫が集まることもあるので避けたほうがよいでしょう。
香りが強い花の種類 |
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花びらや花粉が落ちてしまう花
花びらや花粉が落ちてしまう花は、お墓やその周囲を散らかしたりお参りに来た人の服を汚したりする可能性があるので、おすすめできません。
特に花ごと落ちる椿は、首が落ちる姿を連想させるため、供花には不向きとされています。
花びらや花粉が落ちてしまう花の種類 |
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お墓にお花を供えるときのマナー
お墓にお花を供えるときに知っておきたいマナーについて、解説します。
お花の向きと本数
墓前では、お墓参りをしている側に花を向けてお供えします。
ご先祖様と向き合うために供養する側が心を清めるという意味合いからです。
お供えする花の本数は、左右それぞれ3・5・7本といった奇数にするとよいでしょう。
陽数である奇数は、縁起がよいと言われています。
造花でもOK
お墓参りの供花は造花でも問題ありません。
昔から造花を使っている地域があったり、造花を推奨している霊園もあったりします。
造花を利用することで、これまでタブーとされてきた花もお供えできるようになりました。
また「花がしおれない」「費用を抑えられる」といったメリットも魅力です。
しかし、古くからの行事ごとには地域や宗教によっていろいろな考え方があるため、マナー違反にならないように事前に確認しておくことをおすすめします。
お供えした生花は持ち帰るべき?
お供えした生花は、お墓参りから数日以内に持ち帰るのが一般的です。
住んでいる場所や時間の関係で何度も墓地を訪れることが難しい場合は、当日に持ち帰ったほうがよいでしょう。
長い期間放っておくと、墓地を汚す原因になるからです。
墓地や霊園によっては、花の片付けを管理人が行なってくれるケースもあるので、一度契約書を確認してみましょう。
誰かがお供えした花がすでにある場合はどうする?
誰かがお供えした花がすでにある場合、まずは花の様子を確認しましょう。
花が枯れていたら、持ってきたものと交換しても問題ありません。
枯れた花の処分方法は場所によって異なるので、管理者に確認してから行なってください。
花がきれいに咲いていて花立にゆとりがある場合は、自分の花を一緒に供えても問題ありません。
その際は、花数が縁起のよい奇数になるように気を付けましょう。
「お墓にお供えした花を家に持ち帰ることは縁起が悪い」と考えられている地域の場合は、自分の花は持ち帰ったほうがよいでしょう。
花立に余裕はないけれどどうしてもお供えしたい場合は、花束のまま墓前に置くという方法もあります。
ただし、花立以外の場所に花をお供えする際は、必ず当日に持ち帰って墓前を散らかさないようにしましょう。
お花を供える時期
お墓に花を供えるお盆の時期は一般的に毎年8月13日~16日ですが、一部の地域では7月13日~16日やその他の日程となっています。
旧暦から新暦に変更された際に、地域ごとにお盆の扱い方について意見が別れたからです。
月の動きに合わせる旧暦は1年が354日でしたが、新暦は太陽の動きを基準とするため1年が365日で、2つの暦には1か月ほどのズレがありました。
その影響で、お盆は「新盆」「月遅れ盆」「旧盆」の3つになったのです。
新盆:7月13日~16日
旧暦のお盆である7月13日~16日を新暦でも採用したのが、新盆です。
適用地域は東京都の一部、南関東の都市部、静岡旧市街地、函館、金沢旧市街地などです。
月遅れ盆:8月13日~16日
新暦と旧暦のズレを解消させるためお盆を1か月ずらしたのが、月遅れ盆です。
また農業を営む人が多く、繁忙期と重なるのを防ぐ目的があったとも言われています。
適用地域は新盆を適用していない殆どの地域です。
旧盆:旧暦7月13日~15/16日
その年によって、日にちが異なります。
適用地域は沖縄県、奄美など南西諸島の一部などです。
また、東京都多摩地区の一部など新暦盆・旧盆以外の日程でお盆を迎える地域もあります。
上記以外のお墓参りの時期について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
お花を供えるときの服装
共同墓地や霊園でお花を供えるときは、露出の多い服や奇抜な格好は避けましょう。
お盆のお墓参りはプライベートな行事なので、基本的に服装は自由です。
ただし、お墓参りに来る方の中には親しい人を亡くしたばかりの人もいるため、そのような方への気配りとして、露出の多い服や奇抜な格好は控えましょう。
また、お墓参りの前後で本堂の中に入るときは靴下をはくのがマナーなので、必要に応じて持参してください。
お墓参りのマナーについて更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
お花を供えるときに便利なアイテム
お花を供えるときに便利なアイテムとして、「ハサミ」「ライター」「植物用の栄養剤」の3つが挙げられます。
ハサミ
供花の長さを調整するハサミは、お墓によって花立のサイズが違うので、きれいに飾るためには必須のアイテムです。
茎をカットするので、剪定(せんてい)バサミや園芸用のハサミがよいでしょう。
先端の尖っているハサミは持ち運ぶ際に危険なので、先端が丸く加工してあるものかケース付きのものがおすすめです。
ライター
花を長持ちさせるため、茎の先端部分を火で炙る際に必要です。
茎の先端部分を火で炙ると殺菌効果で水の通りがよくなるほか、茎の先端2~5cmほどが炭のように黒くなるまで火を入れると、吸水力が高まって花もちがよくなります。
火で炙るときは普通のライターを使っても構いませんが、茎を炭化させるには少し時間がかかるので、チャッカマンのような柄の長いライターがおすすめです。
さらにターボ型なら風の影響を受けにくいので、作業もはかどります。
植物用の栄養剤
花を持ち帰らずそのまま供える場合に使います。
花を長持ちさせるには砂糖水を利用する方法もありますが、虫が寄ってくる可能性が高くなるので、栄養剤がおすすめです。
市販の商品では、栄養剤のほか、活力剤、延命剤、液体肥料などの名称が使われています。
お墓参りの持ち物について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
お供えした食べものは持ち帰る
お供えした食べものは持ち帰るのがマナーです。
墓前に食べものを残したままにしておくと、鳥や動物、虫が寄ってきてしまうほか、不審者が来るきっかけになることも考えられます。
結果として墓地を荒らしかねないので、お供えした食べものは必ず持ち帰りましょう。
墓石にお酒をかけるはNG!
故人がアルコールを好む方であったとしても、墓石にビールなどのお酒類をかけるのはやめましょう。
石材はアルコールに弱いため、劣化の原因になります。
また、お酒が飛び散って周囲に迷惑をかけたり、においで気分が悪くなる方が出たりするかもしれません。
お酒をお供えしたい場合は、瓶や缶の蓋を開けずそのままの状態で墓前に並べ、食べものと同様に必ず持ち帰りましょう。
まとめ
お墓参りでお供えする花は、基本的に故人の好きだった花・好だった色を選べばよいのですが、花数は縁起のよい奇数にしましょう。
どのようなお花を選んだらよいかわからない場合は、菊やカーネーション、リンドウなどがおすすめです。
反対に、毒のある花、香りが強い花、花びらや花粉が落ちてしまう花はできるだけ避けましょう。
墓前に花を供える行為は、故人に対する気持ちを形に表すことでもあります。
大切な人を思うあなたの気持ちが伝わるよう、ポイントをおさえた花の選び方や供え方を心がけましょう。