お墓に立てる木の板は「卒塔婆」といい、読み方は「そとうば」または「そとば」です。
お墓でよく見かけますが、「何のために置かれているのだろう?」と疑問に感じた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、お墓に立てる卒塔婆の意味や費用相場を解説します。
卒塔婆を立てる時期や手順も解説しているので、法要の準備や卒塔婆の管理にぜひお役立てください。
目次
お墓に立てる木の板「卒塔婆」とは
卒塔婆とは、お釈迦様の遺骨を納めた仏塔を簡略化した木の板です。
日本のお寺では、五輪塔や五重塔などの仏塔がありますが、卒塔婆も同じものとして扱われます。
卒塔婆はただの木の板ではなく、先端が決められた形に加工されています。
これは、仏教の自然観における空・風・火・水・地の5要素を表すための形です。
五輪塔や五重塔も、同じように5要素を表現した形をしています。
卒塔婆は仏教の自然観における5要素に加え、梵字や故人の戒名・命日や経文・施主主・供養年月日などが記載されています。
お墓に卒塔婆を立てる目的
卒塔婆は故人の「追善供養」を行うために立てられます。
追善供養とは、亡くなった方に対して善行を積むための供養です。
仏教では、生者の善行は故人の善行ともみなされるため、。卒塔婆を立てることで故人の供養と冥福を祈れるのです。
卒塔婆の本数
卒塔婆を立てる本数には、原則決まりはありません。
一般的には、故人1人につき1本を立てますが、家族によっては世帯全体で1本立てる場合もあります。
施主が複数人の故人にそれぞれ卒塔婆を立てることも可能です。
ただし、あまりにも本数が多いと近くのお墓に迷惑がかかる点も踏まえておきましょう。
浄土真宗では卒塔婆を立てない
卒塔婆は多くのお墓で建てられていますが、宗派により卒塔婆を立てないところもあります。
たとえば、浄土真宗では亡くなってすぐに浄土へ往生できると考えられているため、卒塔婆は立てません。
卒塔婆は宗派や地域の習慣により扱い方が異なるため、事前に故人の宗派と正しいやり方を確認しておきましょう。
「卒塔婆」と「塔婆」の違い
結論、「卒塔婆」と「塔婆」に違いはありません。
地域によって呼び方が違うだけで、同じものを指します。
なお、正式名称は「卒塔婆」です。
卒塔婆の種類一覧
卒塔婆の主な種類を解説します。
板塔婆
「卒塔婆」と聞いて、最もイメージされやすいのが板塔婆でしょう。
高さ60〜180センチメートル・厚み1センチメートルほどの大きさで、卒塔婆の標準的なサイズです。
角塔婆
角塔婆は、板塔婆とは異なり細長い柱状の形をしています。
五輪塔の代わりとして供えられており、仏教の自然観を意味する5要素の文字が刻まれているのが特徴です。
墓標の代わりやお寺が完成したときの式典でも活用されています。
経木塔婆・水塔婆
板塔婆よりも小さく薄い卒塔婆で、高さ27〜36センチメートル・厚さ1ミリメートルほどの大きさです。
経木塔婆の「経木」は薄く切った材木を差します。
また、供養で川に流されることがあるため、「水」塔婆とも呼ばれます。
七本塔婆
七本塔婆は、高さ30〜40センチメートルほどの小さい卒塔婆です。
仏教では、故人は四十九日を迎えるまでの間、7日ごとに閻魔様に生前の行いを裁かれると言われています。
七本塔婆は、この7日ごとに1本ずつ立てていきます。
また、地域により供え方が以下のように異なるため、事前に確認しておきましょう。
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梢付塔婆・生木塔婆
梢付塔婆は、枝葉付きの生木を立てるため、「生木塔婆」とも呼ばれます。
三十三回忌や五十五回忌など、弔い上げのときに立てられる卒塔婆です。
弔い上げに使われるため、杉や松・柳などの神聖または特別な樹木を使って作られます。
使われる樹木が地域ごとに異なるのも特徴です。
卒塔婆に書かれる文字の意味
卒塔婆には、以下5つの内容が記載されています。
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法要や卒塔婆を管理するのに必要な情報が記載されているので、それぞれの意味を理解しておきましょう。
①梵字
卒塔婆には梵字で「空・風・火・水・地」を意味する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5文字が刻まれています。
卒塔婆の裏側にも梵字が刻まれていますが、これは大日如来を意味する「バン」です。
どれもサンスクリット語で、仏塔としての機能を果たすために刻まれています。
また、お寺によって経文が書かれることもあるようです。
②種子
「種子」は「しゅうじ」または「しゅじ」といい、仏様を表す梵字です。
「仏の種」の意味があり、年忌法要に関わる十三仏のうちいずれかを表しています。
十三仏は追善供養をつかさどっている仏様のことで、それぞれ供養する日により対応している仏様が異なります。
供養する日に関わる仏様が選ばれ、記載されるのが一般的です。
③戒名・年忌
卒塔婆には故人の戒名や年忌などの情報も記入され、どちらも一般的には卒塔婆の下部に刻まれています。
戒名は、仏様の弟子となった証としてお坊さんに付けてもらえる名前です。
年忌は、毎年めぐってくる故人の命日を差します。
卒塔婆には「〇回忌追善等」の形で記入されており、何回忌を迎えるかを確認できる仕組みです。
④卒塔婆を立てた年月日
大日如来の梵字の下部分には、卒塔婆を立てた年月日が記入されます。
卒塔婆は法事の際に立てられるため、いつ行ったか分からないときは確認しましょう。
⑤施主名
卒塔婆の裏側の下には、施主主が記載されています。
お墓を継ぐ方が卒塔婆を立てることが多いため、継承者の名前が記載されるケースがほとんどです。
とはいえ、卒塔婆は誰が立ててもよいため、施主主がだれかを気にする必要はないでしょう。
なお、宗派や地域により施主主が表側に記載されることもあります。
裏側の下部を見ても分からないときは、ほかの場所に書かれていないか確認しましょう。
お墓に卒塔婆を立てる費用相場
卒塔婆の費用は、3,000〜1万円ほどが目安です。
卒塔婆の種類や厚さ・高さにより価格を変えるなど、料金設定はお寺ごとに異なります。
料金を聞いても失礼には当たらず、快く応じてくれるケースがほとんどなため、分からないときは素直に質問しましょう。
お墓に卒塔婆を立てる時期
卒塔婆を立てる時期は、いつでも構いません。
とはいえ、一般的には四十九日、一周忌、法事などのタイミングで立てます。
供養の節目が近づいたら卒塔婆の準備を始めましょう。
注意点として、お盆やお彼岸の時期はお寺や霊園の繁忙期に当たり、法事や法要が近付いてから依頼すると間に合わない恐れがあります。
繁忙期に卒塔婆を立てたい場合は、早めに相談しましょう。
卒塔婆を立てる準備と手順
ここでは、卒塔婆を立てる際の一般的な準備の仕方と流れを解説します。
1.お寺・霊園に卒塔婆の作成を依頼する
まずはお寺や霊園に卒塔婆供養をしたい旨を連絡・相談します。
最初に「いつ卒塔婆を立てたいのか」を伝えましょう。
卒塔婆は文字を書き込む関係から、希望日の2週間前までには依頼しておく必要があります。
お盆やお彼岸などの繁忙期であれば、より余裕をもって相談したほうがよいでしょう。
卒塔婆を立てる日時を伝えたら、次は料金の相談です。
立てる卒塔婆の種類や本数を伝えたうえで、料金がいくらかかるか確認しておきましょう。
また、卒塔婆供養をしたい理由として、「遠方に住んでおりお墓参りにいけない」などの事情を抱えている方もいるのではないでしょうか。
このような場合も、供養したい気持ちや背景を事前に相談しておきましょう。
2.法要の準備をする
法要や法事をあわせて行う場合、その準備も必要です。
年忌法要の場合、法要後に行う会食や引き物も用意しなくてはなりません。
法要の日時が決まったら、参加人数を確認しましょう。
お寺や霊園により、会食などを行う会場を貸してくれるところもあります。
会場を借りて行う場合は、法要の相談をする時点で会場のレンタルや食事準備についても相談してください。
法要の後はお墓参りをします。
お墓参りに必要な道具や服装もあわせて用意しましょう。
お墓参りに必要な道具
お墓参りの道具は、以下を用意しましょう。
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法要の後は、普段のお墓参りよりも豪華なものを用意するのが一般的です。
また、お墓の掃除は法要前日までに済ませておきましょう。
お墓参りの服装
服装は喪服が一般的ですが、地域や家庭により三回忌以降は平服にするところもあります。
時期により喪服だと過ごしにくい場合は、軽装または厚着をしても問題ありません。
持ちものや服装は、事前に参加者全員に伝えておきましょう。
3.僧侶の案内を受けて卒塔婆を立てる
当日を迎えたら、僧侶の案内に従って卒塔婆を立てます。
僧侶が立ててくれるケースが多いですが、お寺や霊園によっては背主が立てるよう指示される場合もあります。
案内に従って卒塔婆を立てたら、次はお墓参りをします。
僧侶により、短いお経を読んでもらえる場合もあります。
4.お寺・霊園に塔婆料を支払う
お墓参りが終わったら、卒塔婆料を僧侶に渡します。
卒塔婆料は、白封筒に全員分のお金をまとめて入れて渡してください。
封筒は表書きに「御塔婆料」と書き、裏面には施主の住所・氏名・金額を記載しましょう。
法要の準備をする段階で、道具と一緒に封筒やお金も用意しておくと安心です。
渡すときは「ありがとうございます、塔婆料をお納めください」と伝えてください。
法要などがある場合は「おかげさまで滞りなく〇回忌法要を終えられました。お布施をお納めください」と申し出ます。
お布施と塔婆料は別々に用意しましょう。
古くなった卒塔婆を処分する方法
卒塔婆は木製なため、時間とともに劣化したり腐食したりします。
そのまま放置すると虫が湧き、お墓が汚れる原因になるため、古い卒塔婆は処分しましょう。
処分する際は、お墓の管理者と相談します。
お寺・霊園により処分する時期や方法は異なるため、事前に確認してください。
処分方法としては、決められた料金を支払い、お焚き上げしてもらうのが一般的です。
まとめ
卒塔婆は、お墓に立てることで追善供養ができ、故人の冥福を祈るために欠かせないものです。
卒塔婆の種類や費用などはお寺や霊園により異なるため、必ず事前に相談してから準備しましょう。
お墓に関するお悩みやお困りごとがあれば、終活のトータルサポートを行う林商会へお気軽にご相談ください。