墓石は屋外で風雨にさらされ、少しずつ劣化していきます。
また、台風や地震といった自然災害が原因で倒壊してしまうこともあり、いずれは建て替えが必要になるでしょう。
本記事では、墓石の建て替え価格の相場や内訳などを解説します。
建て替えの手順や注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
墓石の建て替え価格はいくら?
お墓を建て替えるには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
ここでは、お墓を完全に撤去する場合とお墓の一部のみリフォームする場合の価格について、それぞれ解説します。
【パターン①】お墓を完全撤去するケース
台風や地震といった自然災害が原因で墓石が倒れてしまった場合は、お墓を完全撤去して建て替える必要があります。
お墓を完全撤去するには、どの程度の費用が必要になるのでしょうか。
墓石の撤去費用
墓石を解体して完全に撤去するには、1m²あたり10万円程度かかります。
ただし、お墓の基礎が硬い場合や山の中にある場合など、お墓の立地によっては、相場より高額になることもあるでしょう。
新しい墓石の購入費用
新しい墓石の購入価格は、大きさやデザインによって異なりますが、50~100万円程度が相場です。
墓石を建てる際は、新しい墓石代に加えて外柵代や墓誌代、文字彫刻代、砂利石代などが必要になり、総額で100~200万円程度かかります。
閉眼供養・開眼供養のお布施代
閉眼供養はお墓に宿っている故人の魂を抜き取る儀式で、開眼供養は新しいお墓に故人の魂を込める儀式です。
一般的に、墓石を撤去する前には閉眼供養を行い、お墓を建てた後には開眼供養を行います。
それぞれのお布施の相場は1~5万円程度ですが、価格は寺院によって異なるため、直接寺院に問い合わせるとよいでしょう。
【パターン➁】お墓の一部をリフォーム(修繕)するケース
次は、お墓の一部をリフォームするケースをみていきましょう。
リフォームの場合は、お墓を完全撤去して建て替えるよりも費用を抑えられます。
墓石のクリーニング費用
カビや花粉など長年積み重なった汚れは、自力できれいにするのが難しい場合もあるでしょう。
そのような場合は、業者に墓石のクリーニングのみを依頼できます。
墓石についた汚れを落として光沢を戻してもらう費用は、5,000~2万円程度が相場です。
クリーニング費用は業者によって異なるため、複数の業者から見積もりを取るとよいでしょう。
文字の塗り替え費用
墓石に彫刻している文字が消えてしまった場合は、石材店に文字の塗り替えを依頼します。
石材店に依頼する場合の費用は、1~4万円程度が相場です。
こちらも金額に幅があるため、複数の業者に見積もりを依頼するようにしましょう。
文字の変更費用
文字デザインを変更したい場合も、石材店に依頼して新しく彫刻してもらいましょう。
費用相場は、10~15万円程度です。
クリーニングや文字の塗り替えと同じように、複数の業者から見積もりを取りましょう。
植木の伐採費用
お墓の植木を植え替えたり伸びすぎた植木を伐採したりする費用は、2万円程度です。
植木が伸びすぎると、お墓の見た目が悪くなるだけでなく周辺の土地に迷惑が掛かることもあるため、定期的に管理して整えましょう。
付属品の設置費用
お墓に灯篭や地蔵などの付属品を設置する費用の相場は、5~20万円程度です。
付属品の種類や大きさ、お墓の立地によって金額に幅があります。
お墓を建て替えるタイミング
ここでは、お墓を建て替えるべき時期や最適なタイミングをお伝えします。
ヒビ・汚れなどの不具合を見つけたとき
ヒビや汚れなどの不具合を見つけたときは、お墓の建て替えを検討しましょう。
屋外に設置される墓石は、雨風や気温の変化などが原因で経年劣化します。
墓石の目地割れやヒビは、小さなものでも水が染み込み劣化が進行することがあるため、注意が必要です。
また、小さなトラブルだけでなく、台風や地震などの天災によって墓石が傾いたり倒れたりすることもあるでしょう。
こういった不具合や見た目の問題から、建て替えが必要になる可能性があります。
素人が判断することは難しいため、不具合があった場合は問題の大小に関係なく、一度石材店に相談してみましょう。
また墓参りをする人の高齢化により、墓地へのアクセスをバリアフリー化するリフォームが求められることもあり、同時に墓石の建て替えを行うケースもあります。
年忌法要・法事のタイミング
墓石の建て替えは、一周忌・三回忌・七回忌といった年忌法要や、お盆・お彼岸・命日など法事のタイミングで行うのが一般的です。
年忌法要や法事の際には僧侶に読経を依頼するため、そのときに閉眼供養や開眼供養の相談も行います。
とはいえ、墓石を建て替えるタイミングに決まりはありません。
閉眼供養の他にも、墓地管理者や親戚への相談や石材店での見積もり依頼など、墓石を建て替えるにはやるべきことが多くあります。
墓石の建て替えが決まったタイミングで、建て替えの段取りを進めていくとよいでしょう。
お墓を建て替える流れ
ここからは、お墓を建て替える手順や必要な書類について解説します。
お墓を建て替える手順
お墓を建て替える手順をみていきましょう。
寺院や霊園に相談
お墓の建て替えが決まったら、まずは寺院や霊園に建て替えを検討していることを伝え、相談しましょう。
また、墓石の建て替えにはいくつかの書類が必要です。
なかには寺院や霊園が管理している書類もあるため、相談の際に必要な書類についても確認しておきましょう。
石材店に建て替え・現地調査を依頼
寺院や霊園に伝えた後は、石材店に建て替えと現地調査を依頼します。
お墓の不具合や気になる点をしっかりと伝えて、現状を確認してもらいましょう。
見積もりを取る
現地調査の結果、修繕や建て替えが必要な場合は、見積もりを取ります。
先述のように石材店によって修繕や建て替え費用に幅があるため、複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
ただし、寺院や霊園が依頼する石材店を指定している場合があります。
寺院や霊園に相談する際に、石材店の指定がないかも確認しておきましょう。
契約・支払い方法の確認
見積もり内容に納得ができたら、契約を行います。
契約時には、支払い方法についても確認が必要です。
墓石の建て替え費用は高額になる場合も多く、一括で支払うのが難しい場合もあるかもしれません。
そのような場合は、ローンを利用して負担なく建て替えることも可能です。
お墓のローンについては、以下の記事を参考にしてください。
文字彫刻の打ち合わせ
お墓を建て替える際には、墓石に彫る文字彫刻の打ち合わせを行います。
打ち合わせ内容は、後から確認できるように文書に残しておきましょう。
閉眼供養
墓石を撤去する前に閉眼供養を行い、魂抜きをします。
僧侶を迎えて読経してもらい、法要が終わったらお布施を渡しましょう。
施工・引き渡し
閉眼供養が終わったら、工事が着手されます。
工事が完了した後には、いよいよ新しいお墓の引き渡しです。
新しい墓石の完成・開眼供養
新しい墓石が設置された後は開眼供養を行い、新たなお墓に故人の魂を込めましょう。
最後に納骨を行い、すべての手続きが完了します。
お墓を建て替える際の必要書類
建て替え手順を踏むと同時に、必要な書類を用意しましょう。
書類は1つでも欠けるとスムーズに建て替えられない可能性があるため、注意してください。
埋葬証明書
埋葬証明書とは、火葬許可証に火葬済みの印が押されている書類です。
火葬許可証は火葬をする際に火葬場に提出する書類で、火葬が終わると火葬済みの印が押され、埋葬証明書として返却されます。
現在のお墓に提出している埋葬証明書受け取り、新しいお墓の管理者に提出しましょう。
紛失した場合は、死亡届を出した自治体の窓口に再発行を申請する必要があります。
再発行の手数料は1通300円程度です。
受入証明書
受入証明書は、新しくお墓を建てる改装先の自治体で入手します。
受入証明書に故人の名前や住所・戸籍・没年月日・年齢などを記入して、自治体に提出してください。
なお、受入証明書に記入するためには、改葬元と改葬先の許可を取る必要があります。
受入証明書の発行手数料は、一般的に1,500円以下です。
改葬許可証
改葬許可証は、現在のお墓がある市区町村で取り扱っています。
役所の窓口またはホームページから入手可能で、発行手数料は300円以下のケースが一般的です。
改装許可証は、現在のお墓の管理者と新しく建てるお墓の管理者にそれぞれ提出します。
お墓を建て替える際の注意点
お墓を建て替える際に注意すべきことをお伝えします。
トラブルを避けるために、注意したいポイントをおさえておきましょう。
誰が費用を支払うのかを決めておく
お墓の建て替え費用は高額の場合が多いため、誰が費用を払うのかきちんと決めておく必要があります。
兄弟や親戚など、お墓にはさまざまな人が関わる可能性が高いため、費用の支払いについてあいまいな点があるとトラブルになりかねません。
たとえ費用が低額でも、誰が支払うのかを明確にしておきましょう。
なぜ建て替えが必要かを明確にしておく
お墓を建て替える際は、建て替える理由も明確にしておきましょう。
墓石の建て替えには多くの時間や手間がかかるため、反対する親族が出てくるかもしれません。
また、「小さなヒビなら、建て替えは必要ない」と思われる場合もあるでしょう。
トラブルを避けるためには、なぜ建て替えが必要かを、親族の誰もが納得できる形で説明できるようにしておきましょう。
お墓の管理者に事前相談しておく
親族だけでなく、お墓の管理者にも事前相談しておく必要があります。
お墓の建て替えは大がかりな工事になるため、関係者全員としっかりコミュニケーションを取り、それぞれの意見を尊重しながら進めることが大切です。
事前の相談なしにお墓の建て替えを進めてしまうと、後にトラブルの原因となる可能性があるため注意しましょう。
優先順位や継承するものを明確にする
お墓の建て替えでは、建て替える理由によって何を優先させるのかが異なります。
たとえば、墓石の破損が原因で建て替える場合は墓石自体の優先順位が高くなり、お墓参りをする人の高齢化のために建て替える場合は、環境の優先順位が高くなるでしょう。
また、建て替えるお墓の大きさやデザインによっては、すべてのものを継承できないこともあります。
何を継承させたいかは人によって考え方が異なる可能性があるため、自分だけで判断せず親族の意見も聞くことが大切です。
事前に親族間でしっかりと話し合いの場を設け、建て替えの優先順位や継承するものについて明確にしておきましょう。
親族に情報共有しておく
お墓を建て替える際は、親族に情報共有しておくことが大切です。
特に遠くに住んでいる親族の場合、建て替えの情報がまったく伝わっておらず、建て替え中のお墓参りができないという事態になりかねません。
また、お墓が新しくなったことで、どこにお墓があるかわからなくなる可能性もあります。
お墓を建て替えることや建て替えの時期、新しいお墓の場所、お墓のデザインなどは、親族にきちんと伝えておきましょう。
墓石の破損リスクに要注意!
お墓を取り外す際やクリーニングの最中に、墓石が破損してしまうリスクがあります。
万が一破損してしまったときには、どのように対処するのかについても契約前に業者に確認することが大切です。
破損時の補償や修復に関する対処法などを、明確にしておきましょう。
自分でデザインしたものなど特別な意味をもつ墓石の場合は、特に慎重な確認が必要です。
希少な石材や独自のデザインは再現が難しい場合もあるため、事前に納得のいく取り決めをしておきましょう。
【親族が墓石を建て替えたら】建碑祝いを贈ろう!
最後に、お墓を建て替えた人に贈る建碑祝いについて解説します。
建碑祝いとは
お墓を建てた人に贈るご祝儀を建碑祝いと言います。
親族が墓石を建て替えたら、建碑祝いを贈りましょう。
生前に自分や家族が入るお墓を建てることを「寿陵(じゅりょう)」と言い、寿陵を建てることは長寿や子孫繁栄を招く縁起のよいこととされています。
ご祝儀の表書きには「建碑御祝」または「建陵御祝」と書き、水引は紅白の蝶結びのものを選びましょう。
建碑祝いの相場
建碑祝いの相場は、家族がお墓を建てる際は3~10万円程度です。
また、親戚関係の場合は2~3万円、友人などの場合は1万円程度が相場です。
ただし建碑祝いの金額に明確なルールはなく、地域や習慣によって差異があります。
建碑式と納骨式を同時に行う場合はどうすればよい?
納骨式は不祝儀のため、お墓の建碑式と納骨式を同時に行う場合に建碑祝いを渡すのは避けましょう。
お墓を建て、建碑式と納骨式を同時に行う場合は、以下のように対処します。
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建碑祝いと香典をまとめて渡す場合は、納骨法要を優先して不祝儀袋を使用しましょう。
まとめ
お墓にはご先祖様が眠っているため、建て替えるのは簡単ではなく、さまざまな手続きを踏む必要があります。
また、お墓に対する想いは人それぞれで、建て替えには高額な費用がかかることも多いため、親族間のトラブルが起きやすい案件でもあるでしょう。
お墓の建て替えをスムーズに行うためには、事前の準備を入念に行い、関係者にはきちんと考えを共有しておきましょう。