石碑(墓碑)について、名前は聞いたことはあるけれど「お墓と何が違うのだろう?」と思っている人は多いのではないでしょうか。
この記事では、お墓の石碑(墓碑)の意味や、墓石、墓誌、墓標との違いを解説しています。
さらに、石碑の建て方も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
お墓に建てる石碑(墓碑)の意味
お墓に建てる石塔を、石碑(墓碑)といいます。
石碑(墓碑)には、故人の名前、家紋、没年月日のほか、故人が好きな言葉や追悼の言葉など、さまざまな文字が刻まれるのが一般的です。
参拝対象という側面もあり、お参りに訪れた人は石碑に向かって参拝します。
墓石と墓碑には似た意味がありますが、「文字が刻まれている」点が「墓碑」ならではの特徴です。
また、著名人や歴史的に知られる人物のお墓も、「墓碑」と呼ばれることがあります。
墓石、墓誌、墓標との違い
石碑(墓碑)と似た言葉に「墓石」「墓誌」「墓標」があります。
それぞれどのような意味があるのか、石碑(墓碑)との違いをみていきましょう。
墓石との違い
墓石は墓碑とほぼ同じ意味ですが、墓地に建てられる石塔や石板全体を指します。
墓碑は「墓石最上部にあるお参り対象の石碑」を指しますが、墓石は「墓碑も含めたお墓全体」を指しているのです。
敷地内にある外柵や灯籠などの装飾物も墓石であり、お墓のために使用される石材はすべて「墓石」であるといえます。
墓誌との違い
墓誌は墓石の一部で、主となる墓石の隣に置かれている石板のことです。
埋葬された故人の没年月日などが記されており、石碑(墓碑)とは違って参拝の対象ではありません。
墓標との違い
墓標とは、遺体や遺骨を埋葬した場所を示す目印で、素材は石材に限られていません。
土葬が一般的だった時代は、木の棒に故人の名前や没年月日を記し、墓標として土に挿していた地域も多くありました。
現代でも、墓石が建つ前に遺骨を埋葬する際には、白木の角柱が墓標に使用されます。
石碑(墓碑)に刻む文字
石碑(墓碑)には、「誰のお墓なのか」がわかるように文字が刻まれます。
お墓は先祖代々受け継がれるものであったため、従来は家族にまつわる固有名詞を刻むのが一般的でした。
とはいえ最近は、家庭の事情やお墓の種類、お墓を建立する人の希望を踏まえて、さまざまな文字が選ばれています。
どのような文字を刻む墓碑が多いのか、3つのパターンをみていきましょう。
家族名
代々受け継がれるお墓に適しているのが、「〇〇家之墓」など家族名を石碑に刻む方法です。
パッと見て一目で自分の家のお墓であるとわかり、家系のつながりを実感できるため、昔から多くのお墓に採用されてきました。
しかし近年では、「お墓を継ぐ人がいない」などの理由で、昔ながらの「先祖代々之墓」や「〇〇家之墓」という表現がふさわしくないとされるケースも増えています。
そのため、家族名以外の選択肢が増えてきているのが現状です。
また、家庭の事情で家族名が刻まれたお墓を再利用して、別の文字を刻むことも可能です。
その際には石塔を削って新たに文字を刻むので、使用している石材が脆いと倒壊してしまう恐れがあります。
お墓の状態や石材の特性に合わせた対応が必要なので、石材業者と相談して決めましょう。
個人名・戒名
お墓を継承する人がいなかったり納骨する人が決まっていたりする場合にしばしば選ばれるのが、1人用や夫婦用のお墓です。
このようなお墓を建立する際には、石碑に個人名(俗名や戒名)が刻まれます。
夫婦墓の場合は、男性の名前を右側に、女性の名前を左側に並べます。
名前を入れた人がまだ生きている場合は、名前に「朱」を入れて生きている旨がわかるようにするのが一般的です。
印象的な言葉やメッセージ
「どれくらいお墓が継承されるのかがはっきりしない状態で、家族名や個人名を入れるのは不安…」という場合に選ばれるのが、印象的な言葉やメッセージです。
また、寺院の墓地に建立するお墓の場合は、宗派に合わせて決まった題目を入れます。
漢字1文字 | 空、徳、和、愛、歩、縁、絆、輝、想、緑、風、道 など |
漢字2文字 | 自然、清心、感謝、平和、永遠 など |
メッセージ | やすらかに、一期一会、ありがとう、また会いましょう、ほほえみ、Thank You など |
題目 | 南無妙法蓮華経、南無阿弥陀仏、南無大師遍照金剛 など |
石碑(墓碑)の費用
石碑(墓碑)の費用は、材料である石材の量や性質などによって大きく異なります。
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これらの基本的な項目は石碑の費用に含まれますが、石材の加工や設置、彫刻の費用は別途発生します。
実際の費用は、石材業者に見積もりを出してもらって確認しましょう。
加工〜設置費
石材の加工費用は石碑代に含まれ、相場は50〜180万円程度です。
石材を石碑に加工する際、オリジナルの細工や繊細なデザインを施すほど加工費は高くなるので、費用相場は参考程度に見ておくとよいでしょう。
また、お墓のタイプ(和型、洋型、デザイン墓石など)によって使う石材の量が違ったり設置のしやすさに差があったりします。
石材の量や設置のしやすさ、運搬のしやすさなど、さまざまなポイントで費用は変化するので、見積もりの時点で確認しておくと安心です。
彫刻費
一般的に新しく石碑を建立する場合は、家名、題字、題目、建立者名、建立日は「基礎彫刻」として石碑の費用に含まれています。
別途費用が発生するのは、戒名の彫刻や2人目以降について刻む場合です。
1人追加するごとに彫刻費が3〜5万円前後発生しますが、内容によって変動するので、詳細は石材店に確認しましょう。
また最近は、文字以外のモチーフ(花など)を彫刻したいという依頼も増えています。
彫刻を入れすぎると費用がかさむだけでなく、見た目のバランスも損なわれるので、石材業者と相談しつつ決めましょう。
石碑(墓碑)の建て方
お墓は、建てる場所によって宗教や宗派の縛りがあったり石碑の大きさや種類に制限があったりします。
お墓をどこに建てるのかが決まったら、いよいよ石碑を作る段階です。
ここからは、実際に石碑を建てる流れを紹介します。
1.石材業者に問い合わせる
まずは石碑の建立を依頼する石材業者を決めます。
民営霊園や寺院墓地に建立する場合は指定石材店が決まっている場合が多いので、その中から選びましょう。
お墓選びは決して小さな出費ではなく、これから長くお付き合いしていくものでもあります。
複数の石材業者を比較検討したうえで、実際に依頼する業者を決めましょう。
依頼の際は、「どのような理由でお墓を建てたいのか」を詳細に伝えることが大切です。
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また、石材業者によっては希望する石材やデザインに対応してもらえない場合もあるので、細かい部分まで事前に確認しましょう。
予算については、民営霊園や寺院墓地の場合、同じ霊園で販売する石材店同士で価格帯を揃えているため、選ぶ業者によって費用に差が出ることはほとんどありません。
しかし、指定石材店がない公営霊園では石材業者によって価格が大きく違う場合もあるので、相見積もりをとって比較しましょう。
2.現地調査してもらう
石碑の大きさや形、石材を決めるために、石碑を建てる墓地を現地調査してもらいます。
現地調査は、墓地の広さや立地などを確認する工程です。
「どのような石碑が適しているか」や「倒壊リスクを減らすためにはどのような形がよいか」を検討します。
日本のお墓の石碑は縦長の「和型」タイプが主流で、和型に合わせた広さの墓地が大半です。
ただし、最近では地震の際にも壊れにくい横長の「洋型」タイプを選ぶ人も増えています。
加えて、霊園によっては石碑の大きさや高さ、形に制限が設けられている場合もあるので、現地調査で確認する必要があるのです。
3.石材を決める
現地調査が終われば、石碑に必要な石材を決定します。
石材には国産と海外産があり、それぞれにメリットとデメリットがあるので、納得して依頼できるものを選びましょう。
国産の石材は価格こそ高めですが、古くから石碑として使われてきた実績があり、安心感があります。
耐久性の高い石材が多く、高級感のある石碑を建てたい人におすすめです。
それに対して、費用を抑えたい場合には海外産の石材も候補にあがるでしょう。
海外産の石材にも膨大な種類があり、日本のお墓でよく使われているものからまだ実績が少ないものまでさまざまです。
長く使うものなので価格の安さだけでは決めず、安全で信頼できる石材を選びましょう。
4.彫刻内容を決める
石材が決まったら、石碑に刻む文字や家紋を決定します。
選べる書体や色、彫刻方法は石材業者によって違うので、業者選びの段階で確認しておくのが安心です。
文字の色は石材との相性だけでなく、地域によって決められている場合もあります。
石材業者のアドバイスを参考にし、彫刻内容を決めましょう。
また、最終的に彫刻内容が決定すると、その内容を依頼者が確認して校正します。
名前や戒名、没年月日など、一度間違ってしまったら取り返しがつきません。
石碑は将来にわたり形に残るものであり、彫刻は故人への感謝や敬意を表すものなので、打ち合わせや校正作業は慎重に進めましょう。
まとめ
「石碑(墓碑)」はお参りの対象であり、埋葬されている故人について知ることができる大切なものです。
また、お墓全体を指す「墓石」、埋葬されている人について記録するための「墓誌」、遺体や遺骨が埋まっている印となる「墓標」とは異なる役割があります。
お墓を建てる際には、それぞれの意味を理解したうえで正しく建立しましょう。