お墓に彫る文字に決まりはないため、好きな文字を入れられますが、「どのような事例があるのか知りたい」と思う方も多いでしょう。
この記事では、お墓のタイプ別に人気の文字を紹介します。
さらに、墓石に文字を刻む際の注意点や費用も解説するので、ぜひ参考にしてください。
お墓に彫る文字や書体に明確な決まりはない!
お墓に彫る文字や書体に、明確な規定はありません。
そのため、近頃では「〇〇家之墓」といった家名や「南無阿弥陀仏」などの題目ではなく、
「偲」や「心」「ありがとう」など、故人を思う気持ちや遺族へのメッセージを刻むケースが増えています。
ただし、お墓に彫る文字には以下のような風習があることも知っておきましょう。
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洋型墓石の場合、建立年月日と建立者名は左側に彫るのが一般的ですが、和型墓石の場合は裏面に彫るケースもあります。
また、正面に題目を彫る際は、宗派によって傾向があるため注意が必要です。
【デザインタイプ別】墓石に彫る文字の例
ここでは、お墓のデザイン別に墓石の正面に彫る文字の代表例を紹介します。
和型墓石
和型墓石とは直方体の石を使った縦に長いお墓で、江戸時代から普及している日本のお墓の定番です。
縦書きで1列に10文字程度の文字が彫れますが、見栄えを考えるなら7文字程度がおすすめです。
「〇〇家之墓」や「〇〇家先祖代々之墓」と家名を彫るケースが多い傾向にあります。
家名は宗派に関係なく使えるため、お墓に彫る文字としては最も一般的ですが、宗派別に以下のような文字が使われる傾向があります。
浄土真宗
浄土真宗では「南無阿弥陀仏」(なむあみだぶつ)と彫ります。
また、極楽浄土での再会を願う「倶会一処」(くえいっしょ)という言葉を刻む場合もあります。
天台宗
天台宗では、本尊の阿弥陀如来を深く信心する意味を込めて「南無阿弥陀仏」と彫ります。
また、「〇〇家之墓」の頭に梵字を彫るのも一般的です。
梵字は、阿弥陀如来(あみだにょらい)を表す「キリーク」や大日如来(だいにちにょらい)を表す「ア」、釈迦如来(しゃかにょらい)を表す「バク」のいずれかが使われます。
真言宗
真言宗では「南無大師遍照金剛」(なむだいしへんじょうこんごう)と彫ります。
また、「〇〇家之墓」の頭に大日如来を表す梵字「ア」を彫ることもあります。
浄土宗
浄土宗は、浄土真宗・天台宗と同じく阿弥陀如来を信仰しているため、「南無阿弥陀仏」と彫るほか、「倶会一処」と彫るのも一般的です。
また、阿弥陀如来を表す梵字「キリーク」のあとに「〇〇家之墓」と彫るケースもあります。
臨済宗・曹洞宗
臨済宗・曹洞宗ではお釈迦様を深く信心しますという意味の「南無釈迦牟尼佛」(なむしゃかむにぶつ)という文字を彫ります。
また、梵字ではなく円相といわれる○印を「〇〇家之墓」の頭に彫るケースも一般的です。
日蓮宗
日蓮宗では、妙法蓮華経を深く信心するという意味の「南無妙法蓮華経」という念仏を彫るのが一般的です。
また、「〇〇家之墓」の頭に「妙法」とだけ入れる場合もあります。
「南無妙法蓮華経」と「妙法」を彫る際は、髭題目と言われる独特な文字を使うのも日蓮宗の特徴です。
洋型墓石
洋型墓石とは、背が低く横に長い形をした欧米風のお墓のことです。
和型墓石のように宗派に囚われることなく、自由に文字が入れられます。
洋型墓石の彫刻面は正方形に近い形をしているため、1文字でもバランスがとれますが、一般的には、1〜3文字程度の文字を彫るケースが多いようです。
以下では、洋型墓石によく使われる文字を紹介します。
一文字の漢字
漢字1文字に決まった意味はなく、さまざまな思いを込めることができます。
故人を偲ぶ気持ちや遺族へのメッセージ、故人を連想させるような文字を選びましょう。
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二文字以上の漢字
2文字以上の言葉には、より具体的な意味を込めることができます。
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フレーズ
単語ではなくフレーズにすると、相手に自分の思いをしっかり伝えられます。
故人や遺族への思いを表現した、以下のようなメッセージが人気です。
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英語
洋型墓石の場合、日本語ではなく英語のメッセージを彫ることも可能です。
思いを込めた単語や英語圏のお墓に彫られているフレーズを用いるケースが多いようです。
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デザイン墓石
デザイン墓石とは、和型墓石や洋型墓石のような四角い形にこだわらず、自由に設計された墓石のことです。
故人をイメージして作られることが多く、将棋が好きなら将棋盤の形、読書が好きなら本の形などユニークなお墓が多く見られます。
墓石の形によって彫刻面の大きさが変わるため、入れられる文字数もさまざまですが、故人を表す文字を彫ることが多いようです。
オリジナルメッセージの例
デザイン墓石に彫る際は、お墓の形に合った文字を選ぶ傾向にあります。
デザインも文字も、故人を思い出すようなものをモチーフにするとよいでしょう。
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オリジナルメッセージのメリット
お墓に好きな文字やフレーズを彫ることで、継承者の名字が変わっても家名を刻み直す必要がありません。
結婚して姓が変わっても、家名が彫られていなければ違和感なく継承できます。
また、お墓参りの際に故人との思い出を回想しやすい点もメリットです。
故人を身近に感じられるため、お墓参りに通う頻度が増えるでしょう。
オリジナルメッセージのデメリット
家族や親族など複数の方の遺骨を納めるお墓の場合、個人的な意味の言葉や奇抜な文字はおすすめできません。
また墓地によっては、オリジナルメッセージを彫ることで周りから浮いてしまう可能性もあります。
お墓は何世代にも渡って継承されていくものであることをふまえ、お墓参りに来た人が不快にならない文字を選びましょう。
【要注意】タブーの言葉・文字
お墓に彫る文字に規定はなく自由に選べますが、マナー違反になりかねない場合があるので注意しましょう。
タブーとされている言葉や文字には、以下のようなものがあります。
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文字の書体と彫刻の仕方でお墓のイメージが変わる!
ここでは、文字の書体と彫刻の仕方について詳しく解説します。
書体例
お墓に彫る文字の書体は、お墓の印象に関わる大切なポイントです。
同じ言葉でも書体によって印象が異なるため、故人のイメージや彫る文字に合った書体を選びましょう。
ゴシック体
ゴシック体は、はねやはらいがなく線の太さが均一で見やすいことが特徴です。
安定感や力強さがあるカジュアルな印象で、横書きに向いています。
楷書体
楷書体は、筆で書いた文字のようにとめ・はね・はらいがあり、字形が分かりやすい書体です。
1文字ずつ明確に書かれており、読みやすくはっきりした印象で縦書き・横書きのどちらにも合うため、墓石に使われることが多い書体です。
草書体
草書体は、文字を速く書くために考えられた筆記体のような書体です。
読み解くのが難しいため、お墓に彫る文字として使用するケースは多くありません。
しかし「ありがとう」や「やすらかに」などひらがなのメッセージに使用すると、趣を感じられるのでおすすめです。
行書体
行書体は楷書体を崩し、つなげて書いたような文字で、なめらかな筆跡が美しい書体です。
草書体のように読みにくいことはないため、お墓に文字を彫る際によく使われます。
楷書体に比べてやわらかく繊細な印象があり、特に女性に人気です。
隷書体
隷書体は横長の運筆が特徴的な書体で、篆書体を読みやすくするために考案されました。
楷書体や行書体に比べて男性的で歴史を感じさせる落ち着いた雰囲気があり、世代を超えて継承されていくお墓にぴったりです。
普段の生活では見慣れない書体のため、たくさんの墓石が並ぶ中でも目をひきやすいでしょう。
文字彫刻の方法
お墓に文字彫刻の方法にも、さまざまな種類があります。
同じ書体でも彫刻方法によって印象が異なるため、お墓のイメージに合う方法を選びましょう。
なかには家紋やモチーフなどに適している方法もあるため、用途に合わせて選ぶことも重要なポイントです。
浮かし彫り
文字そのものを彫るのではなく、周りを彫って文字を浮き立たせる方法です。
彩色を施さなくても、文字を目立たせることができます。
棹石の文字に用いられるケースがありますが、一般的には水鉢や花立に家紋を彫る際に使われます。
ヤゲン彫り
文字の真ん中にスジが入るよう、V字に彫る方法です。
陰影がはっきりするため、文字に立体感が出ます。
文字をくっきり目立たせることができるので、漢字一文字や梵字を彫る際におすすめです。
平彫り
彫りの強弱を付けず、均等な深さで平らに彫っていく方法です。
文字に躍動感や力強さは感じられませんが、穏やかな静けさを表現できます。
また、彫ったところに水がたまりにくいため、彫る面が垂直でない洋型墓石におすすめです。
線彫り
細い線を彫る方法で、イラストをデザインする際に使われるケースが一般的です。
深く彫らずに浅い線を描いていくため繊細な表現が可能で、花などのモチーフのほか、フレーズや長い文章を彫る際におすすめです。
彫り込み
彫り込みは墓石に文字を彫る代表的な彫り方で、書道の「入り」と「止め」のところを深く掘り込むのが特徴です。
彫りの深さで強弱を表現でき、立体感のある文字に仕上がります。
ただし、彫りが深い部分に汚れがたまりやすいので、定期的なお手入れが必要です。
墓石に文字を刻む際の注意点
お墓に文字を彫る際の注意点をチェックしましょう。
寺院や霊園のルールを確認する
お墓に文字を彫る際は、お墓を管理している寺院や霊園のルールを事前に確認しましょう。
寺院や霊園によっては制約がある可能性があります。
特に菩提寺の境内にお墓がある場合は、宗派によって彫ってよい内容が異なるので、注意が必要です。
誤字に注意する
一度お墓に彫ってしまった文字を修正するには高額な費用がかかるため、誤字に気を付けて依頼しましょう。
特に旧字と新字体は間違えやすいため、位牌と照らし合わせてしっかりとチェックすることが大切です。
正字を使用する
一般的に、お墓に彫る文字は正字を使用します。
正字とは、略字や俗字ではなく元来の正しい文字のことです。
たとえば、「国」という字は略字で、正字では「國」と書きます。
普段使っている文字が正字でない可能性もあるため、不安な場合は業者へ確認するとよいでしょう。
文字の色
お墓に彫る文字は、白か黒または色を入れないのが一般的ですが、長崎などの九州地方では金文字を使うこともあります。
また、生前に戒名をもらってお墓に彫る場合など、生きている人の名前は朱色を入れます。
墓石に文字を刻む価格
ここでは、お墓に文字を彫る際の費用相場を紹介します。
文字彫刻の費用
新たにお墓を建立する場合は、表面に彫る家名などの他に側面に建立者日、建立者氏名などの彫刻が必要です。
これらの基礎彫刻にかかる費用は、4〜10万円が相場と言われています。
彫刻方法や家紋の有無などによっても費用が変わるため、事前に見積もりを依頼して確認するとよいでしょう。
追加で文字彫刻を依頼する場合の費用
追加で戒名や俗名などを彫る場合は、1人あたり5万円程度が相場と言われています。
ただし、棹石に追加の彫刻をする場合、ご先祖様の魂が宿ったままの状態では彫れないため、お性根抜きとお性根入れを行わねばなりません。
その場合は、僧侶へのお布施として1〜3万円程度を準備する必要があります。
模様を彫刻する費用
花や故人が好きだったもの、家紋などの模様を彫る場合は、10〜20万円程度の予算を検討しておくとよいでしょう。
追加で文字を彫るときと同様に、棹石に模様を施す場合はお性根抜きとお性根入れを行います。
また、現場で彫刻ができない場合は、墓石を石材店へ運ぶ運搬料などがかかる点に注意が必要です。
墓石の磨き直しと文字彫刻の追加費用
経年劣化で墓石が色褪せてしまったり、汚れがたまって文字が見にくくなってしまったりする場合は、磨き直しがおすすめです。
磨き直しの相場は30万円程度ですが、追加の文字彫刻を同時に行う場合は、さらに1人あたり5万円前後の費用がかかります。
文字を消して彫刻し直す費用
一度彫った文字を削って消す場合は、20〜50万円程度の費用がかかります。
消したい部分をパテで埋める場合は数万円程度でできますが、時間が経つと文字が彫られていない部分との境目が目立ってしまう可能性があるでしょう。
まとめ
お墓に彫る文字に明確な規定はないため、故人をイメージした言葉や遺族へのメッセージなど、好きな文字を入れられます。
ただし、宗派によって彫る内容が違ったり墓地や霊園によって制約があったりするため、注意が必要です。
お墓は何世代にも渡って継承されていくことを踏まえて、故人がやすらかに眠れるような文字を選びましょう。