お墓の文字彫刻を依頼する際に、名前入れが必要なのか疑問をもった経験はありませんか。
この記事では、お墓への名前入れが必須かどうかを解説するほか、文字彫刻にかかる価格相場やおすすめの書体を紹介します。
お墓に名前を刻む際のルールや手順も詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
お墓への名前入れは必須ではない!
お墓に文字彫刻を施す際は、「故人の名前を必ず入れなければならない」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、お墓の名前入れに特定のルールは定められていないため、お墓に名前を彫刻しなくても特に問題はありません。
ただし、名前入れのないお墓は探すのが困難になる可能性があるため、お墓の文字彫刻を検討する際は、家族間で話し合うことが大切です。
3世代以上のお墓であれば、名前を彫刻することでご先祖様とのつながりを実感できるでしょう。
お墓に刻む名前について
ここからは、お墓に刻む名前について解説します。
戒名とは
戒名の由来は、お釈迦様の弟子や出家した弟子になった証として生前に授けられた名前です。
仏教では、亡くなった人が戒名を授けられると極楽浄土へ迷わず導かれると考えられており、日本独自の風習として現代に受け継がれています。
お墓に名前を入れる理由
お墓に故人の名前を入れる理由は、以下の2つです。
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お墓に刻まれた名前は、ご先祖様が生きた証を次の世代に受け継ぎ、過去と現在をつなぐ役目も果たします。
俗名(生前の名前)を入れるケースも増加中
宗教離れが進む現代では、戒名を授かるための費用(お布施)を節約したいと考える人も多いため、俗名(生前の名前)をお墓に刻むケースが増加しています。
ただし、すでに寺院から故人の戒名を受け取っているのであれば、寺院や宗派の作法に従い、お墓に戒名を入れてもらうのがおすすめです。
墓石のどこに名前を彫る?
ここからは、墓石のどこに名前入れをするか解説します。
竿石(さおいし)
竿石とは、墓石の最上部にある石を指します。
和型墓石の場合は、故人の名前を竿石の側面に彫刻するケースが大半です。
文字の大きさで彫刻する名前の数を調節できるため、左右側面に合わせて8名まで彫刻可能です。
洋型墓石の場合は、故人の名前を竿石の背面や納骨室の蓋部分に彫刻するケースもあります。
墓誌
墓誌とは、墓石の脇などに置かれている板状の石のことで、以下の表題のあとに名前を彫刻します。
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棹石と同様に墓誌や文字の大きさで彫刻する名前の数を調節できるため、片面で約8〜10名、両面で約15〜20名の彫刻が可能です。
彫刻スペースが足りない場合の対処法
ここからは、彫刻スペースが足りない場合の対処法を紹介します。
墓誌を新たに設置する
お墓の名前を刻むスペースが足りない場合は、墓誌を新たに設置するのがおすすめです。
墓誌を設置する際はお墓の周りに間隔を空けなければなりませんが、以下のようなメリットがあります。
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すでに墓誌を設置している場合は、古いものを右から順に並べるとよいでしょう。
ご先祖様をまとめる
33回忌を終えたご先祖様がいる場合は、まとめて墓誌に彫刻する方法もおすすめです。
墓誌は文字彫刻を消せば再度名前を刻めるため、ご先祖様を「先祖代々之墓」などの表記でまとめて彫刻すれば、空いたスペースを故人の名前入れに活用できます。
棹石を作り直す
お墓に墓誌を設置するスペースがない場合は、棹石を作り直すのがおすすめです。
ただし、棹石を新たに作り直すと約50〜100万円の費用がかかるため、設置スペースや費用を比較してから検討するとよいでしょう。
墓石の裏面
墓石の裏面には、お墓を建てた人の名前や建立年月日を刻むのが一般的です。
近年では、存命中にお墓を建てて名前を朱色で彫刻するケースも増えています。
彫刻されている名前が戒名の場合は、建立者が亡くなった後に朱色の文字を削って白色にしますが、俗名の場合はそのままでも問題ありません。
お墓に彫刻する名前の順番
ここからは、お墓に彫刻する名前の順番を解説します。
亡くなった順に彫刻する
お墓に名前を刻む際は、墓石や墓誌の右側から亡くなった順に彫刻しましょう。
故人との関係性を記録しておきたい場合は、続柄の彫刻も可能です。
夫婦が横並びになるように彫刻する
夫婦でお墓を建てる場合は、関係性が分かりやすくなるように、夫婦の名前を横に並べて彫刻しましょう。
妻が先に亡くなった場合は、夫の名前を入れる間隔を空けて妻の名前を刻むケースが多い傾向にあります。
しかし、名前を彫刻する間隔を事前に空けておく点に抵抗を感じる場合もあるため、日頃からお墓の名前入れについて夫婦間で話し合っておくとよいでしょう。
お墓に名前を彫刻するタイミングと手順
ここからは、お墓に名前を彫刻するタイミングと手順を解説します。
納骨式までに行うケースが一般的
お墓の名前入れは納骨式までに行うケースが多いため、納骨式の1か月前までに石材店へ相談しておくと安心です。
納骨式は四十九日法要の後に行うケースが一般的ですが、日程に明確なルールは定められていないため、お墓に名前を彫刻する日程が変動しても問題はありません。
お墓の名前入れを石材店に依頼する流れ
ここからは、お墓の名前入れを石材店に依頼する際の流れを紹介します。
①指定石材店の有無を確認する
まずは、指定石材店の有無を確認しましょう。
公営霊園は石材店を指定していないケースがほとんどですが、民間霊園やお寺の多くは石材店を指定しているため、管理者に前もって指定石材店の有無を確認しておくと安心です。
また、お寺や霊園が指定石材店を設定していない場合は、複数の石材店に見積もりを依頼して費用を比較して検討するとよいでしょう。
お墓の名前入れの費用相場は、3〜5万円です。
②1か月前には石材店に依頼する
指定石材店の有無が確認できたら、彫刻日の1か月前までに石材店へ依頼します。
お墓の名前入れには2週間~1か月程度かかるため、時間に余裕をもって依頼しておくと安心です。
また、石材店に依頼する際は、以下の情報を伝えておくとよいでしょう。
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③文字確認を行う
石材店への依頼が完了したら、以下の項目を依頼先の石材店と確認します。
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すでに設置されているお墓に名前を入れてもらう場合は、お墓に彫刻された文字と相違点がないか確認しておくことも大切です。
④文字原稿を起こす
お墓に彫刻する文字の確認ができたら、石材店に文字原稿を起こしてもらいましょう。
文字原稿は、内容に誤りがないか入念に確認することが大切です。
⑤魂抜き
棹石の名前入れを依頼する場合は、工事前に魂抜きの法要を行わなければなりません。
魂抜きを行う際は、運搬費やお布施、交通費も必要なため、コスト面が気になる場合は事前に確認しておくと安心です。
⑥施工
魂抜きが完了したら、彫刻工事が行われます。
昔は工場での施工が主流でしたが、機械工学が発達した現代では現場で施工するケースが多く、名前入れ作業の所要時間は1人あたり約2時間です。
⑦工事の完了確認・支払い
お墓の彫刻工事が完了したら、石材店の立ち会いのもとで完了確認を行います。
文字の誤りや不備の有無を確認し、問題がなければ施工費用を支払いましょう。
お墓と自宅に距離があり、施工部分の確認に直接立ち会うのが難しい場合は、写真で確認する方法もおすすめです。
⑧魂入れ・納骨式
彫刻工事の支払いが完了したら、魂入れや納骨式を行いましょう。
棹石に名前を彫刻する際に魂抜きの法要を行なった場合は、納骨式と時期を合わせて魂入れの法要を依頼できます。
また、納骨式はお寺の立ち会いのもとで行うのが一般的ですが、家族のみで行なっても問題ありません。
お墓に名前を彫る費用
ここからは、お墓に名前を彫る費用を解説します。
墓石に名前を追加彫刻する場合
墓石に名前を追加彫刻する場合の費用の内訳は、以下の通りです。
彫刻費 | 約3〜5万円 |
運搬費 | 約1〜3万円 |
お布施 | 約1〜5万円 |
僧侶の交通費 | 約5,000〜1万円 |
墓石に追加で彫刻する際は、石材店への墓石の運搬費に加えて、魂抜き・魂入れの法要にかかるお布施も必要です。
合計で約6〜15万円かかるため、追加で彫刻する際は事前に費用を見積もっておくと安心です。
墓誌を新たに設置する場合
墓誌を新たに設置する場合の費用の内訳は、以下の通りです。
墓誌本体の費用 | 約5〜20万円 |
彫刻費 | 約3〜5万円 |
墓誌の設置費用 | 約1〜2万円 |
お布施 | 約1〜3万円 |
墓誌本体の費用は石材の価格に左右されるため、コストを抑えたい場合は外国産の石材を選ぶとよいでしょう。
墓石に彫った名前を消す3つの方法
ここからは、墓石に彫った名前を消す方法を3つ紹介します。
①墓石に彫刻された文字を削る
まず1つ目は、墓石に彫刻された文字を削る方法です。
工程の最後に表面を磨くため、文字を削った部分もきれいに仕上げられます。
しかし、墓石を削ると他の面と色艶の違いが出るため、墓石の統一感を損なう可能性がある点に注意しましょう。
また、墓石の文字彫刻を削る作業は石材店に運搬して行わなければならないため、約20〜50万円の費用がかかります。
②新しい墓石に交換する
墓石に彫った名前を消したければ、新しい墓石に交換する方法もあります。
しかし、以下のデメリットがあるため慎重に検討しましょう。
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③パテで埋める
墓石の彫刻を消す際は、パテで埋める方法もあります。
数万円の費用で仕上げられるため、彫刻を手軽に消せる点がメリットですが、彫刻を完全には消せないため、簡易的な方法として認識しておくとよいでしょう。
【併せて知っておきたい】お墓の文字彫刻について
お墓の文字彫刻の内容・位置に明確なルールはありません。
しかし、和型墓石に名前を刻む場合は古くからの風習に従い、一定のルールを定めているお寺や霊園もあるため、事前に確認しておくと安心です。
お墓に文字彫刻を施す際の内容は、以下を参考にしてください。
正面 | 家名、題目(南無阿弥陀仏など)、好きな言葉やメッセージ |
右側面 | 埋葬者の戒名、没年月日、俗名、享年 |
左側面 | 建立年月日、建立者名 |
裏面(和型墓石のみ) | 建立年月日、建立者名 |
また、お墓の文字彫刻は書体や彫り方で印象が変わるため、文字の見やすさや故人の好み・イメージなどに合わせて検討するとよいでしょう。
お墓の文字彫刻に使用される主な書体・彫り方は、以下の通りです。
【書体】
【彫り方】
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加えて、お墓の文字に関する情報を詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください。
まとめ
お墓に文字を彫刻する際は、名前を入れなくても問題ありません。
すでにあるお墓に追加で名前を刻む場合は、運搬費やお布施も支払わなければならないため、家族間で話し合って決めることが大切です。
また、お墓に彫刻する文字は書体や彫り方で印象が異なるため、文字の見やすさや故人の好み・イメージなどに合わせて検討するとよいでしょう。