「管理が難しくなったから墓地を売却したい」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お墓や墓地は、原則として売却できません。
本記事では、墓地を売却できない理由を詳しく解説します。
どうしても墓地を売却したい人がすべきことついても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
墓地の売却はできない!その理由は?
墓地の売却は住宅地を売却するよりも難しく、原則として墓地の売却はできません。
お墓を購入する際には、墓地そのものや所有権を引き渡すのではなく使用権を売買するため、墓地を使用しなくなった場合は所有者に返却するのが一般的です。
実際の所有権は寺院や霊園などにあるため、勝手に売ることはできません。
墓地を売却することは法律に違反しているわけではありませんが、墓地の管理者と交わした譲渡禁止特約によって墓地の売却が禁止されています。
譲渡禁止特約とは、所有者の了承を得ずに権利や地位を第三者に譲渡することを禁止する契約のことです。
ただし、所有者と使用者の二者間の契約にすぎないため、どうしても売却しなければならない事情がある場合は、協議のうえ売却することもできます。
墓地の売却時に重要なカギを握る【永代使用権】
墓地を売却する際に重要になるのが、永代使用権と呼ばれる権利です。
ここでは、永代使用権とは何かについて詳しく解説します。
【永代使用権】とは
永代使用権とは墓地を代々に渡って使用していくことを許可する権利で、墓地のもともとの所有者と契約することで取得できます。
原則、この永代使用権を第三者へ売却や譲渡することはできませんが、病気などで管理が難しくなったなど、やむを得ない場合には生前に継承することが可能です。
ただし、仮に永代使用権の承継が認められたとしても、ほとんどの寺院や霊園で親族規制が設けられています。
親族規制の例として「6親等以内の血族または、3親等以内の姻族」があります。
6親族以内の血族は以下の通りです。
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また、3親等以内の姻族は以下の通りです。
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参考:「厚生労働省|6親等以内の血族」
永代使用権も譲渡禁止特約と同様、法律で認められている権利ではありません。
民法や公法、私法に記載されていない、古くから使用されている習慣上の用語であるため、売却や譲渡の可否は契約前にあらかじめ確認しておきましょう。
【永代使用権】を得るには【永代使用料】の支払いが必要!
永代使用権を得るには、永代使用料の支払いが必要です。
永代使用料は一般的に、墓地の購入時に一括で支払います。
立地環境や管理施設の規模などによって金額は異なりますが、おおよそ30〜100万円程度が相場です。
もし墓地を売却することになっても、支払った永代使用料が返還されることはありません。
ただし、あまりにも使用年数が少なすぎるなど特殊なケースでは返還されることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておきましょう。
注意!永代使用権が消滅するケース
お墓の利用状況によっては永代使用権が消滅するケースがあるため、注意が必要です。
永代使用権は法律ではなくあくまで二者間の契約に過ぎないことから、契約解除や取消もあり得ます。
以下のようなケースでは永代使用権が消滅するため、注意しましょう。
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個人墓地を所有している場合も売却・譲渡は難しい!
墓地の所有者が団体ではく個人の墓地を、個人墓地と言います。
寺院や霊園から墓地の使用権を得ている場合と同様に、個人墓地も基本的に売却や譲渡ができません。
ここでは、個人墓地の売却が難しい理由を解説します。
墓地運営には区市町村長の許可が必要
墓地を運営するには区市町村長の許可が必要であることが、「墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓埋法)」によって定められています。
個人墓地の多くは墓埋法が施行される前に建てられたものであり、行政から許可を受けた「みなし墓地」です。
法律の規制が厳しくなった現在、個人で墓地を所有するには厳しい審査と複雑な書類の提出を経て許可を得なければならず、新設するのは難しいでしょう。
つまり、個人墓地の売却は墓地の運営者が新たに変わる「墓地の新設」と同じ扱いになるため、売却は難しいのです。
墓地を売却するには地目の変更が必要
どうしても墓地を売却したい場合には、墓地の廃止許可と地目の変更が必要です。
地目とは、登記所の登記官によって決められたその土地の用途を言います。
まずは役所で墓地の廃止許可申請を行い、区市町村長から墓地を廃止する許可を取得しなければいけません。
廃止許可申請が受理された後、墓地がある地域を管轄する法務局で地目変更登記申請を行います。
地目変更登記申請が受理されたら、墓地を売却できるようになります。
注意!売却価格は一般的な土地相場より低くなる
墓地を売却する場合、売却価格が一般的な土地相場よりも低くなることを理解しておかなければいけません。
墓地は、周囲の人から嫌われる嫌悪施設とされています。
そのため、もともと墓地として利用されていたことは売却価格に大きく影響するでしょう。
仮に墓地の売却を不動産会社に依頼した場合、不動産会社は売却相手にその土地が何に使われていたのかを説明する義務があります。
加えて、土地の利用状況は法務省で調べられるため、墓地であったことを隠して高い価格で売却することはできません。
どうしても墓地を売却したい人がすべきこと
いくら墓地の売却が困難であっても、さまざまな理由で墓地を売却したい方もいらっしゃるでしょう。
以下では、墓地を売却するためにすべきことについて詳しく解説します。
墓じまいをして墓地を更地化する
墓地を売却したい場合は、墓じまいを行います。
墓じまいとは、墓を解体・撤去して更地にすることです。
墓じまいをして取り出した遺骨は通常、新しい墓地に改葬して供養するか永代供養を行います。
新しい墓地を家から近い場所に移動できれば、お墓参りや手入れなどの管理が簡単になるでしょう。
ただし、墓じまいには当然費用がかかります。
費用総額の相場は、おおよそ30万〜300万円程度です。
決して安い金額ではないため、精査したうえで墓じまいするか決めるとよいでしょう。
墓じまいの手順は以下の通りです。
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詳細は以下の記事をご覧ください。
墓地の所有権を購入する
墓地を売却するにためは、墓地の所有権が必要です。
永代使用権を取得する際に所有権も購入している場合は、墓地を売却できます。
どうしても墓地を売りたい場合は、永代使用権とは別に所有権も購入しているか、さらに所有権登記も行なっているかを確認しておきましょう。
墓地の売買でよくあるトラブル
墓地の売買時には、トラブルになるケースもあります。
事前にトラブルを防ぐためにも、墓地の売買でどんなトラブルがあるのか把握しておきましょう。
親族の理解を得られず関係が悪化する
さまざまな理由から、墓地を手放すことに対して反対する親族もいるでしょう。
墓地を遺骨の埋葬場所として考えるだけでなく、心の拠り所とする人も少なくありません。
そのため親族全員の合意がないまま墓地を売却してしまうと、親族との関係を悪化させることにつながります。
また、霊園にある墓地を売却する場合には親族の了承が必須です。
もちろん墓地の権利は名義人にありますが、関係悪化を防ぐためにも、売却する際は親族に相談・合意を得るようにしましょう。
元墓地である説明が不十分なまま売却して訴えられる
墓地を売却する際、売却相手にその土地が墓地であったことを説明しておく必要があります。
もし仮に墓地であったことを説明せずに売却した場合、説明しなければいけないことを隠ぺいして不当に販売したとして、相手から訴訟される可能性もゼロではありません。
たとえ墓地が嫌悪施設で売却に不利であったとしても、必ず説明するようにしましょう。
お墓の売却に関するよくある質問
お墓の売却に関するよくある質問を紹介します。
墓地を売却したら税金はかかる?
墓地を売却する場合、以下のケースでは税金が発生します。
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ただし、墓地を所有していること自体に税金はかかりません。
土地を所有している場合には固定資産税がかかりますが、墓地は固定資産ではなく祭祀財産とみなされるため、税金が発生しないのです。
墓石は売却できる?
墓石の売却は可能です。
墓石は墓地とは違い、使用者に所有権があるため、売却してはいけないという決まりはありません。
ただし、どんなに高価な石材を使った墓石でも、他の家庭が使用した墓石を買いたいという人は少ないでしょう。
墓石の磨き直しや運搬にかかる費用を考えても、墓石の売却は現実的ではありません。
お墓を解約したら永代使用料は返金される?
お墓を解約した場合、永代使用料は返金されません。
仮にお墓を建てる前の区画が未使用の状態でも、同様です。
永代使用料は、お布施(神仏や僧侶へのお礼)として扱われるケースが多く、僧侶へのお礼や仏様への感謝を表す寄付金として支払っているため、返金されることがありません。
たとえるならお賽銭と同じで、初詣などでお賽銭箱に投げ入れた小銭が返金されないのと同様であることを、あらかじめ理解しておきましょう。
まとめ
墓地の売却は、権利の関係などによって非常に困難です。
ただし、不可能というわけではなく、所有者や親族と相談して正しい手続きを行うことで売却できます。
墓地の管理が難しいなどの理由で売却を検討している方は、本記事で紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。