「お墓には相続税がかかるのか気になる」という方も多いのではないでしょうか。
お墓や墓地は非課税財産のため、相続税がかかりません。
また、お墓を購入するなら節税対策にもなる生前購入がおすすめです。
生前購入で節税できる理由や購入時の注意点などを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
お墓などの祭祀財産に相続税はかからない
お墓や仏具、仏壇などは祭祀財産と呼ばれ、相続税の対象にはなりません。
ここでは、祭祀財産の概要と祭祀財産を購入する際の注意点を解説します。
祭祀財産とは
祭祀財産(さいしざいさん)は神仏や先祖を祀るために必要な財産を指し、以下の3つに分かれています。
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お墓の場合は、購入代金だけでなく工事費用や墓地使用料、管理費などもすべて祭祀財産に含まれます。
【注意】祭祀財産のローン残額は相続税の債務控除の対象外
祭祀財産に相続税はかからないものの、生前にお墓をローンで購入する際は残額に気をつけなくてはなりません。
被相続人にローンなどの債務がある場合、通常は遺産総額から債務控除を行い、正味の総額を計算します。
しかし、祭祀財産は非課税財産のため、ローン残額は債務控除の対象外になり相続人に負担をかけてしまうのです。
お墓の生前購入を考えているなら、ローン残額を残さない現金一括払いにするなどの対策を講じておきましょう。
お墓を生前に購入すると節税対策になる!?
お墓を生前に購入しておくと節税対策になるほか、さまざまなメリットがあります。
ここでは、生前購入が節税につながる理由や相続税の具体的なシミュレーション、節税以外のメリットについてみていきましょう。
お墓の生前購入は相続税の節税対策に有効!
被相続人の死後に相続人が祭祀財産を購入する場合、購入費用(現金)は相続税の課税対象である相続財産になるため控除対象にはなりません。
その一方で、お墓や仏壇などの祭祀財産は相続税の課税対象外になるため、生前に購入しておくと相続税の節税対策に有効です。
生前にお墓や墓地を購入することを「縁起が悪い」と感じる方がいるかもしれませんが、実は長寿や子孫繁栄、家庭円満など縁起のよいこととされています。
相続税の節税対策を考えるなら、お墓の生前購入がおすすめです。
相続税対策のシミュレーション
お墓を生前購入した場合と、相続開始後に相続人がお墓を購入した場合の、相続税の違いをシミュレーションしてみましょう。
被相続人の父親に3,700万円の遺産があり、相続人は子ども1人とします。
父親が生前に200万円のお墓を購入した場合
生前に200万円のお墓を購入すると、遺産総額は3,500万円になります。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の計算式で算出されるため、この場合の基礎控除額は3,600万円です。
父親の遺産総額(3,500万円)が基礎控除額(3,600万)を下回るため、子どもに相続税は課税されません。
父親の死後に子どもが200万円のお墓を購入した場合
父親の遺産総額3,700万円を相続した子どもが200万円のお墓を購入した場合、遺産総額が減るわけではありません。
この場合、遺産総額(3,700万円)が基礎控除額(3,600万円)を上回るため、基礎控除額を超える100万円に対して子どもに相続税が課税されます。
お墓(墓地・墓石)の生前購入には相続税の節税以外にもメリットがある!
生前にお墓を購入するメリットは、節税だけではありません。
節税以外のメリットを4つ紹介します。
希望の場所にお墓を建てられる
早めにお墓を購入することで、人気のある墓地や好条件の墓地を手に入れられる可能性が高くなります。
高齢化社会が加速する現代では墓地の不足が懸念され、希望の場所にお墓を建てられないケースも増えるでしょう。
お墓の生前購入で希望の場所を早めに確保しておくことは、不安の解消につながります。
お墓の購入費用にかかる税金は消費税のみ
お墓の生前購入にかかる税金は、消費税のみです。
墓石の代金や工事費用、管理費に消費税はかかるものの、墓地の永代使用料は営利目的ではないため消費税がかかりません。
亡くなった後の名義変更は非課税
被相続人が亡くなった後は、お墓を相続する人への名義変更が必要です。
墓地は土地そのものを購入するのではなく使用権を購入するため、名義変更の際に固定資産税・都市計画税・不動産取得税などの負担は発生しません。
ただし、金額は霊園や墓地によって異なりますが、手数料が発生します。
相続放棄した人も祭祀財産は継承可能
相続放棄した人でも、祭祀財産は継承可能です。
祭祀財産は非課税財産で、相続財産でないからです。
生前購入されたお墓や仏壇などを相続放棄した人が継承しても、何ら問題はありません。
生前にお墓などの祭祀財産を購入する際の注意点
お墓などの祭祀財産を生前購入する前に、以下で解説する3つの注意点を把握しておきましょう。
節税目的で生前にお墓を購入しても、場合によっては相続税の課税対象になる場合があります。
不自然に高額な墓石・彫刻は控える
不自然に高額すぎる墓石や彫刻、仏具などの購入は、非課税財産とみなされない可能性があります。
祭祀財産は本来、毎日礼拝したり仏具として利用したりするものです。
しかし、高額で骨董価値の高い墓石や彫刻、純金の仏具などは投資対象や商品とみなされることが多く、祭祀財産として認められない可能性がある点には注意しましょう。
お寺などに貸している墓地用地や空地は相続税の課税対象
墓地やお墓は非課税財産ですが、お寺などに墓地用地として貸している場合や空き地で販売可能な場合は相続税の課税対象となります。
自身が祭祀や礼拝に利用しない墓地用地や空き地は、収益を目的とした土地とみなされるため、相続財産と判断されるのです。
ペット専用の墓地・霊園は相続税の課税対象
ペット専用の墓地や霊園は相続税の課税対象になるため、注意が必要です。
ペットは法律上「物」として扱われ、ペットのお墓や墓地は祭祀財産として認められません。
ただし、最近ではペットと人間が一緒に入れるお墓の販売も増えており、この場合はあくまでも人間のお墓として扱われるため、非課税財産となります。
お墓に相続税以外の税金はかかる?
お墓を含む祭祀財産は相続税の対象外とお伝えしましたが、相続税以外の税金は発生するのでしょうか。
お墓を他者に譲る場合は贈与税が、墓地を所有する場合は固定資産税が課税されると思われがちですが、実際はどちらも基本的には課税されません。
その理由を以下で解説します。
贈与税
お墓の所有者が生前に他者に継承する場合、相続ではなく贈与になり贈与税の対象となります。
ただし、実際にお墓に贈与税が発生することはほとんどありません。
その理由の1つに、多くの墓地や霊園が生前贈与を認めていない点が挙げられます。
つまり、お墓を贈与すること自体が難しいのです。
また、贈与額が基礎控除額を上回ることがほとんどない点も理由に挙げられます。
贈与税は、年間の贈与額から基礎控除額である110万円を差し引いて課税されます。
お墓の評価額が110万円以上であれば贈与税がかかるものの、一般的に墓地や墓石の合計評価額が110万円を超えるケースはほとんどありません。
したがって、お墓に贈与税が発生するケースは非常に稀です。
固定資産税
「お墓を建てる際に墓地を購入するのだから、固定資産税がかかるのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか。
固定資産税は、所有する土地や建物にかかる税金です。
先述したように、お墓を建てる際には墓地そのものを購入するのではなく使用権を購入するため、墓地を所有しているわけではありません。
墓地の区画を借りている状態のため、固定資産税は発生しないのです。
また、仮に自分で墓地を所有している場合も、原則として固定資産税はかかりません。
お墓は「墓地」に指定された地目にしか建てられず、地目が「墓地」の場合は固定資産税がかからないと法律で定められているからです。
以上のことから、お墓の購入に固定資産税が発生することはありません。
墓地やお墓と固定資産税の関係について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
お墓の費用は確定申告で税金控除される?
生前にお墓を購入したからといって、確定申告の際に税金控除されることは基本的にはありません。
ただし、災害によりお墓や墓地が破損・損壊した場合は災害減免法が適用され、所得税が控除されます。
また、天災や盗難により損害を受けた場合も、雑損控除を受けることが可能です。
お墓が被害を受けた際は、写真を撮るなどして記録を残しておくとよいでしょう。
まとめ
ここまで、お墓に相続税がかからない理由や生前購入のメリットについて解説しました。
とはいえ、お墓を含む祭祀財産は非課税財産であるものの、購入のタイミングには気をつけなくてはいけません。
また、高額すぎるお墓や貸している墓地用地、ペット専用のお墓は相続税の課税対象になることを覚えておきましょう。
お墓を生前購入することで、節税対策になるほか、希望の場所を確保しやすくなります。
生前購入は心のゆとりにもつながり、残された家族や相続人も安心できるでしょう。
本記事を参考に、お墓の購入計画を立ててみてください。