近年はお墓に対する価値観や家族構成の変化に伴い、お墓参りをしない家庭も増えてきました。
「使わなくなった古い墓石は再利用できるの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
墓石は、適切な処分方法を理解していないとトラブルの原因になりかねません。
本記事では古い墓石を再利用する4つの方法や手順、注意点を解説するので、これから墓じまいをしたい人はぜひ最後まで目を通してみてください。
墓石を再利用(リサイクル)する4つの方法

墓石の再利用(リサイクル)におすすめの、4つの方法を紹介します。
①墓石の文字を加工する
墓石に刻まれた文字を消したり書き換えたりして加工すれば、再利用が可能です。
一般的に家名や家紋、宗派ごとの題目は一度彫刻されたら消せませんが、やむを得ない事情がある場合は、文字の面をカットします。
墓石を削る必要があるので、もともとの墓石よりもサイズが小さくなることを想定してカットするようにしましょう。
➁産業廃棄物として処理後、土木資材に再利用する
回収された墓石は産業廃棄物として処理された後、砂利や路盤材などの土木資材として再利用できます。
路盤材はアスファルトの下にある道路の基盤となる資材で、負荷に耐えるために丈夫な砕石が必要です。
そのため、良質な石が使われている墓石は路盤材に向いていると言えます。
墓石の処分を業者に依頼すると1tあたり約1万円かかり、墓じまいをした石材店が業者の手配まで行うのが一般的です。
墓じまいの見積金額を出してもらう際は、その内訳に墓石の処分費用が含まれていると考えてよいでしょう。
③数珠・小さな仏像などお墓以外のものに加工する
お墓以外のものに再加工して、墓石の一部を手元に残すのも一つの手段です。
たとえば、数珠や地蔵、小さな置物などが挙げられます。
「お墓は先祖代々引き継いできたものだから、簡単に手放せない」と考える人にも、墓石の一部を再加工すれば手元に残しておけるのでおすすめです。
墓石を再加工するためには、まずは墓石の再加工が可能な業者を探し、業者を見つけたら加工後のイメージを伝えて依頼しましょう。
石材店が加工に対応している場合は墓じまいも依頼することが可能ですが、加工に対応していない場合は、墓じまいを依頼する石材店に墓石の一部を残せるか確認が必要です。
④お墓をリフォームして利用し続ける
古くなったお墓は、墓石をリフォームして利用し続けるのもおすすめです。
墓石をリフォームすれば、先祖代々引き継いできたお墓を長く引き継いでいけます。
リフォームの目安は建墓から約10年と言われているので、お墓を建ててから10年以上経っている場合は石材店に相談しましょう。
お墓のリフォームは、お墓を建てた石材店に依頼するのが一般的です。
リフォーム費用は石材店によって異なるので、相見積もりを取るとよいでしょう。
墓地を移転して墓石を再利用する方法もある!

墓じまいした墓石を別の墓地で使う方法
一部の霊園では、墓じまいした墓石を持ち込んで再利用できます。
別の墓地で墓石を使う場合は、石塔のみ持ち込みできるのが一般的です。
墓石の外柵や納骨室は霊園の区画サイズに合わせて造られるので、移転先と区画面積が異なる場合が多く再利用は困難でしょう。
なお、墓石を傷つけないように解体・運搬するための費用総額は、新しくお墓を建てる場合と同等かそれ以上のケースが大半です。
費用を安く抑えたい人は、墓石を再利用せずに新しく建てることをおすすめします。
墓じまいして墓石を移転する手順
墓じまいをして墓石を新しい場所に移転する手順は、以下の通りです。
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移転の過程で証明書や許可書が必要なので、忘れずに取得しましょう。
墓じまいの詳細について詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
墓石を移転する際に注意すべき点

墓石を持ち込める霊園の事前リサーチが必須
墓石の再利用を検討する場合は、墓石を持ち込める霊園の事前リサーチが欠かせません。
霊園の規定で墓石の持ち込みが禁止されているとケースがほとんどなので、移転手続きを進める前に、必ず墓石の持ち込みが可能な霊園を見つけておきましょう。
また、墓石の持ち込みができる霊園でも、墓石のサイズや形に条件がある場合があります。
規定によっては墓石の持ち込み時に再加工が必要なので、事前に改葬先の霊園に相談してみましょう。
親族への事前連絡・相談を怠らない
親族などお墓参りに来る可能性がある人には、墓石を移転したい旨を事前に連絡・相談しておきましょう。
お墓参りに行ったのにお墓がないと、親族間でトラブルに発展する可能性があります。
近縁や習慣的にお墓参りをしている人には事前に連絡・相談をして、こちらの事情や想いをしっかり伝えましょう。
今お墓がある寺院への連絡も忘れずに!
お墓が建てられている寺院への連絡も、忘れずに行いましょう。
寺院の境内にあるお墓の場合は、離檀の手続きが発生する可能性があります。
移転して引き続き同じ寺院にお参りに来てもらう場合は、離檀の必要はなく墓石と遺骨の引っ越しだけで済みます。
しかし、遠方に墓石を移転してしまい寺院のお参りが不可能になる場合などは、離壇しなくてはいけません。
地方の過疎化の影響で離壇に寛大な寺院もありますが、檀家の減少は寺院にとって悩ましい問題です。
決して家族や親族だけで話を進めず、必ず寺院へ連絡しておきましょう。
移転先の墓地での墓石の納め方を検討する
移転前の墓地と移転先の墓地で面積が同じケースは殆どないので、移転先での墓石の納め方を検討する必要があります。
お墓は土台となる根石と上部の石塔で構成されますが、墓地の面積次第で構造が変わるので、そのまま納めることは不可能なケースが大半です。
そのため、今のお墓をカットしたり加工したりして再利用するか、新調しなくてはいけません。
墓石の一部を加工しても再利用できない場合は、古い墓石を処分してお墓を新調することも検討しましょう。
墓石の撤去と据付を同じ石材店に依頼できるか確認する
墓石の移転には「撤去・運搬・据付」の3つのステップがありますが、これらをすべて同じ石材店に依頼できるか確認してみましょう。
移転先に墓石を納めるためには石材の新調や加工が必要な場合もあるので、同じ石材店に依頼するのが最も効率的です。
とはいえ、霊園によっては指定石材店制度があり、霊園内の工事業者を指定されるケースがあります。
もし移転前と移転先の霊園のどちらも石材店が指定されていたら、それぞれの業者に依頼しなくてはいけないないので、必ず事前確認を行いましょう。
墓じまいして古い墓石を撤去する際に知っておきたいこと

墓じまい後の古い墓石を撤去して再利用する流れ
【ステップ①】墓地で墓石を解体・撤去する
まずは墓石を取り外してから土台の根石(巻石)を解体し、平らにならします。
また、墓石の解体時には石・コンクリートガラ・金属片・残土などをすべて分別しなくてはいけません。
【ステップ➁】運搬業者が回収・リサイクル業者が砕石にする
墓石の竿石や台石、長尺の根石など大きな部品は、削岩機で処理しやすい大きさに割ります。
分別された石材やコンクリートガラなどはそれぞれの廃棄業者が処理し、運搬許可を得た業者が墓石を回収するのが一般的な流れです。
回収された墓石は中間処理業者によってさらに細かく分類され、産業廃棄物処理業者が採石します。
墓石の撤去費用は?墓じまいの費用について
墓じまいの総額費用は、平均で約30万~300万円です。
墓石の撤去のみであれば20万円程度で済みますが、遺骨の放置や廃棄は法律で禁じられているので、新たな納骨先に遺骨を納めるまでの費用が、墓じまいの費用総額と言えます。
費用相場に大きな幅があるのは地域による差ではなく、閉眼供養を依頼するお寺へのお布施の額や納骨先の価格によって異なるからです。
なお、墓じまいの費用は「お墓の撤去・行政手続き・新しい納骨先」の3つに分けられます。
墓じまいの費用について詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
【社会問題化する不法投棄を避けるために】業者選びの際に確認したいこと
「産業廃棄物収集運搬業」の許可をもっているか?
墓じまいを依頼する業者を選ぶ際には「産業廃棄物収集運搬業」の許可をもっているか確認してください。
産業廃棄物収集運搬業とは産業廃棄物の収集や運搬、処理を適切に行なっている業者を指します。
許可の申請は事業展開している各都道府県で行なっており、各都道府県知事の許可を得ている業者は不正を行う心配が少ないと言えるでしょう。
マニフェストを発行してくれるか?
産業廃棄物を廃棄をしたあとに「マニフェスト」を発行してくれる業者を選ぶことも、重要です。
マニフェストとは産業廃棄物を法律に従って適切な手順で廃棄したことを証明する書類です。
マニフェストには産業廃棄物の処分状態が明記されているので、墓石が適切な手順を経て処理されたことを確認できます。
そのため、マニフェストを発行している業者であれば、安心して依頼できる依頼先と考えてよいでしょう。
費用が安すぎないか?
費用が安すぎると、墓石を正しい手順で処理していない可能性があります。
墓じまいには墓石の運搬や処理が必要で、費用相場は約20~30万円です。
この相場を大きく下回っている業者は、一度費用の内訳を確認してみることをおすすめします。
墓石の再利用にまつわるマメ知識

墓石の買取サービス・中古のお墓はない!
墓じまいをしたあとの墓石買取サービスや中古のお墓がない理由は、大きく分けて2つあります。
まずは墓石の運搬・解体費用がかかることです。
墓石は一度施工するとよい状態のままで取り外すのは難しく、経年劣化で墓石の価値が下がったり墓石の運搬に費用がかかったりして、コストが上がります。
さらに墓石の持ち込みができる霊園は少なく、中古の墓石を販売して利益を出すのは難しいでしょう。
もう一つの理由は、中古の墓石を使用することに抵抗がある人が多いことです。
故人の魂が宿る場所とされる墓石には親族の想いが詰まっていて、中には墓石の再利用は禁忌にあたると考える人も多いようです。
中古で買えるお墓の土地もない!
お墓の土地に関しても同様で、中古の土地は存在しません。
お墓の土地契約は「永代使用権」の契約と呼ばれ、その土地を永久に借り受けて墓石を建立し、供養するための場所として使用する権利を購入します。
つまり、お墓の土地は使用者の所有物ではないので、売買ができません。
永代使用権はお墓の管理料の支払いなどを怠ると剥奪されるケースもあり、霊園や寺院側がお墓を強制撤去することも可能です。
もし管理料の支払い状況が分からない場合は、早急に霊園や寺院との契約書を見直しましょう。
五輪の塔や香炉などの部品なら中古品もある!
中古の墓石や土地の中古はありませんが、五輪の塔や香炉などの部品なら中古品として再利用が可能です。
もしお墓の部品を中古で購入しようと検討している場合は、ヤフオクやメルカリなどをチェックしてみましょう。
まとめ
今回は墓石の再利用するための4つの方法や、墓じまいの手順と注意点、再利用にあたってのポイントを解説しました。
古い墓石をどのように再利用すればよいのかが分かれば、墓じまいもスムーズに進められます。
本記事の内容を参考にして、適切な方法と手順で墓石のリサイクルに取り組みましょう。