墓じまいのメリット・デメリットとは?手続きの流れと費用、ご遺骨の供養方法、トラブルを避けるための注意点も解説

墓じまい アイキャッチ

墓じまいとは、既存のお墓を撤去し、取り出した遺骨を別の方法で供養することです。

昨今、お墓の継承問題や金銭的な負担から、墓じまいの件数が増えています。

とはいえ親族間のトラブルにつながる恐れもあり、手続きも複雑なため、実施するか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、墓じまいのメリットデメリット手順、さらには費用相場まで解説しているので、。ぜひ参考にしてください。

墓じまいとは

納骨

墓じまいとは、お墓を解体・撤去し、お墓があった土地を更地にして墓地管理者へ返還したあと、取り出した遺骨を別の方法で供養する一連の流れを指します。

取り出した遺骨は、永代供養や新しいお墓に改葬して供養するのが一般的です。

墓じまいを検討する際は、下記のメリットとデメリットを把握しておきましょう。

墓じまいのメリット

墓じまいの主なメリットを4つ紹介します。

お墓の手入れがしやすくなる

遠方にあるお墓を近隣に改葬すれば、お墓参りや手入れが容易になるでしょう。

お墓を放置していると、雨水や花粉、雑草などでお墓が荒れてしまいます。

そこで、いつでもお参りできる場所にお墓を移すことで、お墓をきれいに保てるのです。

<h4>継承者がいなくてもずっと供養してもらえる</h4>
墓じまいをして取り出した遺骨を永代供養すれば、お墓の継承者がいなくても永代にわたって供養してもらえます。

永代供養とは、遺族や子孫に代わって霊園や寺院が遺骨を管理・供養することです。

自分以外にお墓の継承者がいない場合、永代供養をしておけば無縁墓にならずに済むでしょう。

お墓にかかる費用負担を減らせる

墓じまいをすれば、金銭的負担を軽減できます。

お墓を維持するためには、墓地の使用料檀家料などさまざまな管理費用がかかります。

墓じまいで散骨や永代供養をすれば、将来的な費用負担を減らせるでしょう。

継承者の負担を減らせる

墓じまいをしておけば、子どもや孫にかかる負担を減らすことができます。

故郷を離れて暮らしている子どもに、墓守の負担を負わせたくないと考える方もいらっしゃるでしょう。

墓じまいをすれば、お墓を管理する必要がなくなり、継承者問題を解決できます。

墓じまいのデメリット

墓じまいにまつわるデメリットも把握しておきましょう。

墓じまいの費用が高額な場合がある

墓じまいには高額な費用がかかる場合があります。

墓じまいには、主にお墓の撤去行政手続き取り出した遺骨の供養などの費用がかかり、檀家を離れる際には離檀料も納めなければなりません。

離檀料をめぐって寺院とトラブルになるケースもあるため、事前にきちんと確認・相談しましょう。

親族とトラブルになる場合がある

墓じまいを実施するときは、親族としっかり話し合ってから決めましょう。

自分だけでなく複数の継承者がいる場合は、「費用を誰が払うのか」や「新しい納骨先はどうするのか」などを事前に協議しておくことが大切です。

独断で進めてしまうと、あとから親族間でトラブルになる場合があります。

遺骨が取り出せなくなる場合がある

合祀すると、遺骨を取り出したり改葬したりできなくなるので注意しましょう。

合祀とは不特定多数の人の遺骨と一緒に納骨することで、永代供養の埋葬方法は合祀が一般的です。

墓じまいをする際は、取り出した遺骨をどのように供養するのか、事前に検討しましょう。

墓じまいが増加している理由

増加

厚生労働省の衛生行政報告例を見ると、2010年度は72,180件だった改葬件数が、2018年には115,384件と増加していることがわかります。

ここでは、墓じまいが増えている理由を4つの観点から解説します。

お墓の遠方に住んでいる

故郷を離れて遠方に住んでいる人が増えたことは、墓じまいが増加している大きな要因です。

就職や結婚などを機にお墓のある故郷から遠く離れてしまうと、お墓参りのために度々帰省するのは容易ではありません。

そこで、定期的にお墓参りや手入れができるよう、近隣の墓地へ改葬する方が増えているのです。

お墓を承継する親族がいない

自分以外にお墓を継承する親族がいないため、墓じまいをするケースも少なくありません。

子どものいない夫婦や生涯独身の方など、自分の死後にお墓を継承する人がいなければ、そのお墓は無縁墓になってしまうでしょう。

墓じまいをすれば先祖の遺骨をしっかり供養できるので、終活の一環で墓じまいを検討する方が増えています。

両家のお墓をお世話する負担が大きい

両家のお墓を世話する負担を減らすために墓じまいを選択する、というケースもあります。

また、今あるお墓の墓じまいをして、先祖や夫婦の複数のお墓を1つにまとめる寄せ墓を行う方も増えています。

寄せ墓について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

▼寄せ墓でお墓をまとめる方法や費用について解説

お墓に対する価値観が変わった

お墓に対する価値観が変わったことも、墓じまいが増えた理由の1つです。

お墓は「先祖を祀り代々受け継がれていくもの」と考えられていましたが、昨今では1人用のお墓次の世代に引き継がないことが前提のお墓など、さまざまなタイプのお墓が選べるようになりました。

墓じまいの増加には、お墓に対するさまざまな考え方が受け入れられるようになったことも影響しているでしょう。

お墓に対する価値観の変化や、お墓はいらない人におすすめの供養方法については、以下の記事も参考にしてください。

▼お墓はいらない人におすすめの供養方法について解説

墓じまいの方法と流れ

方法

墓じまいの方法と流れについて確認しましょう。

1.墓地管理者に連絡する

墓じまいをする際は、まず墓地管理者に連絡をし、埋蔵証明書の発行を依頼しましょう。

埋蔵証明書とは、現在の墓地に遺骨が納骨されていることを証明する書類で、改葬許可証を取得するために必要です。

墓地管理者は、寺院墓地であればご住職、霊園であれば管理事務所が該当します。

墓地管理者とのトラブルを避けるためにも、墓じまいに至った経緯と、代々お世話になったお礼を丁寧に伝えましょう。

2.移転先を決定する

次に、取り出した遺骨の新しい納骨先を決めましょう。

遺骨を勝手に廃棄することは法律で禁止されているため、永代供養または他の墓地へ改葬する必要があります。

ほかにも手元供養散骨などさまざまな供養方法があるので、管理の仕方や費用などを比較し、自分に合った移転先を選びましょう。

3.改葬許可証を取得する

新しいお墓に納骨する際に必要な改葬許可証を取得しましょう。

改葬許可証の交付を受けるには、現在の墓地所在地の自治体が発行する改葬許可申請書に必要事項を記入し、埋蔵証明書受入証明書を添えて提出する必要があります。

申請書類の提出から改葬許可証の交付までには1週間ほどかかる場合があるので、スケジュールに余裕をもって進めましょう。

4.ご遺骨を取り出す

現在のお墓から遺骨を取り出すために、住職に依頼して閉眼供養を行いましょう。

閉眼供養とは、墓石から魂を抜いて「物」に戻すことで、地域によっては魂抜きお性根抜きなどと呼ばれています。

遺骨を取り出すには墓石を動かさなければいけないため、閉眼供養が済んでから石材店や代行業者に頼んで遺骨を取り出してもらいましょう。

お墓の開け方について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

▼お墓の開け方や注意点について詳しく解説

5.お墓を撤去・更地化する

遺骨を取り出したら、お墓を撤去し墓地を更地化して返還します。

お墓の撤去には、墓石の移動の他に基礎の解体工事も必要です。

墓石解体について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

▼墓石の解体や再利用について詳しく解説

お墓の撤去更地化の費用は、墓地の広さや墓石の大きさによって変わるため、事前に見積もりを取っておくとよいでしょう。

更地化について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

▼お墓の更地化や売却について知っておきたいことを詳しく解説

6.移転先に納骨する

お墓の撤去・墓地の返還が済んだら、新しい墓地で納骨を行いましょう。

納骨の際は、墓地管理者への改葬許可証の提出が必須です。

また、納骨式の法要を依頼する場合は、お布施も準備しておきましょう。

墓じまい後の供養方法

納骨堂

墓じまい後の主な供養方法を6つ紹介します。

①一般墓に改葬

遠方にあったお墓を近隣に移したり複数のお墓を1か所にまとめたりする場合は、一般墓に改葬するケースが多くみられます。

一般墓は永代供養合祀墓とは異なり、これまでのように先祖の供養を続けられる方法です。

新しくお墓を建てる場合は他の供養方法と比べて費用がかかるので、よく検討しましょう。

②納骨堂に改葬

お参りのしやすさや予算の面から、納骨堂に改葬する方が増えています。

納骨堂とは遺骨を収蔵できる屋内施設のことで、駅の近くや市街地など交通の便がよい場所に建てられている場合が多く、通いやすい点がメリットです。

また、一般墓に比べて低予算で改葬でき、お墓の管理にも手間がかかりません。

お墓参りをしたいけれどお墓の手入れや管理を負担に感じる場合は、納骨堂への改装がおすすめです。

③手元供養

遺骨を小さめの骨壷やペンダントなどに収めて自宅で保管する手元供養といわれる方法もあります。

お墓参りをしなくても故人を身近に感じられるうえに、新しいお墓を建てる費用もかかりません。

ただし、手元供養ができなくなったからといって勝手に庭などに埋葬することは法律で禁止されています。

手元供養をする際は、将来的にその遺骨をどうするかをきちんと考えてから実施しましょう。

④永代供養

永代供養とは、寺院や霊園の墓地管理者が永代にわたって遺骨を管理・供養する方法です。

お墓の管理が難しい場合や自分以外に継承者がいない場合におすすめです。

一度永代供養をすると、遺骨は合祀されて他の遺骨と混ざり、永遠に取り出せなくなるので注意しましょう。

⑤散骨

遺骨を2mm以下の粉状に粉砕して海や山などに撒くことを散骨といいます。

「死後は自然に還りたい」という故人の遺志によって行われることも多い方法です。

他の納骨方法と違って、維持の必要がないので供養の負担は少ないですが、手元に何も残らない点を寂しく感じるかもしれません。

⑥樹木葬

樹木葬とは、墓石の代わりに樹木を墓標とする方法です。

一般墓の墓地にはない明るい雰囲気や美しい景観が特徴で、自然志向の方におすすめの方法です。

霊園によって、他の方の遺骨と混ぜる合祀型のほか、一人分のスペースを分けて埋葬する共同埋葬型、個々の区画に埋葬する個別埋葬型などの種類があります。

墓じまいの費用相場

お金の疑問

墓じまいにかかる主な費用の相場を紹介します。

解体・撤去工事費用 墓じまいによって既存のお墓を解体・撤去する際に必要な費用です。
墓域の広さ、墓石の大きさ、遺骨の数のほか、作業日数や作業人数などによって異なります。
1m²あたり10万円程度
書類交付費用 埋葬証明書や改葬許可証など、墓じまいに必要な書類を発行する際にかかる費用です。
詳細な金額は自治体によって異なります。
数百〜1,000円程度
お布施など 遺骨を取り出すときや新規墓所で納骨をする際、僧侶に支払うお礼です。
決まった金額がなく、地域によって異なる場合があります。
2〜5万円程度
離檀料 これまでお世話になったお礼として渡すものであり、支払いの義務はありません。
檀家として付き合った年数や関係性によって金額が異なります。
3〜20万円程度
遺骨のメンテナンス費用 取り出した遺骨をきれいに洗ったり細かくしたりする費用です。 2万円程度
粉骨する場合は1万円程度
新規墓所にかかる費用 取り出した遺骨を供養するための費用です。
納骨の方法によって費用が大きく変わります。
10〜50万円程度
新たにお墓を建てる場合は
墓石代・開眼供養費も必要

墓じまいの費用について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

▼墓じまいの費用相場や手続きについて詳しく解説

墓じまいでトラブルを避けるための注意点

注意点

墓じまいでトラブルを避けるため、次の33つのポイントに気をつけましょう。

親族の同意を得る

墓じまいは、親族にきちんと説明をして同意を得てから実施しましょう。

先祖代々守ってきたお墓をなくすことに抵抗を感じる方もいます。

墓じまい後には親族がお参りをする機会が失われる可能性があるほか、供養方法によっては高額な費用がかかるケースもあるため、事前にしっかり話し合うことが大切です。

また、トラブルを避けるために、取り出した遺骨の供養方法支払いの分担についても話し合っておきましょう。

墓地管理者に経緯やお礼を伝える

必ず、事前に墓地管理者へ相談をし、了承を得た際にはきちんとお礼を伝えましょう。

特に、長い間檀家としてお世話になった寺院が管理者の場合、墓じまいに至った経緯を丁寧に説明し理解してもらうことが大切です。

墓じまいは、管理者の了承がなければ手続きできません。

円満に計画を進めるためにも、誠意をもった対応を心がけましょう。

専門業者に相談する

墓じまいでお墓を解体・撤去したり埋葬されている遺骨を取り出したりする際は、専門業者に相談をしましょう。

墓石は産業廃棄物として適切に処理しなくてはなりません。

違法業者による不法投棄のトラブルも発生しているため、業者選びは慎重に行いましょう。

まとめ

墓じまいをすれば、お墓の管理・維持や金銭的な負担を軽減でき、先祖代々受け継がれてきたお墓が無縁墓になる心配もなくなります。

とはいえ、勝手に進めてしまうとトラブルにもつながるため、親族や墓地管理者と事前にきちんと話し合うことが大切です。

専門業者に相談することで、墓じまいをスムーズに進められるでしょう。

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