お墓参りの際に墓石のひび割れやズレを見つけ、「修理したほうがよいの?」「きれいに直すにはどうすればよいの?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、墓石の修理が必要なケースや修理の流れを詳しく解説します。
また、墓石の修理にかかる費用相場や自分で修理を行う手順も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
墓石の修理やリフォームが必要なのはどんなとき?
お墓を建ててから年数が経過すると、雨風や地震などの影響で亀裂やひび割れ、ズレや傾きなどの劣化が進みます。
墓石を修理せずに放置していると、たとえ小さなトラブルでも時間の経過とともに徐々に広がり、傾いたり倒れたりなどの大きなトラブルに発展しかねません。
まずは墓石の修理やリフォームが必要なケースを紹介しますので、しっかりと把握しておきましょう。
目地が割れている
目地の割れは、墓石の修理が必要なケースで最も多いトラブルの1つです。
目地とは墓石と墓石のつなぎ目を指し、時間の経過とともに発生する収縮が原因で割れてしまいます。
放置していると目地の割れ目から雨水が入り、シミやカビなどによる墓石の劣化が進んでしまいかねません。
墓石に欠け・ひび割れがある
欠け・ひび割れも、墓石の修理が必要なケースで多く見られるトラブルです。
墓石には、一見わかりづらい小さな穴がたくさん空いています。
雨水がその小さな穴に入り込むと亀裂ができてしまい、墓石が欠けたりひび割れたりしてしまうのです。
墓石の欠け・ひび割れを放置していると、劣化が進み修理費用もかさんでしまいます。
墓石がズレている
近年、地震の発生が増加しており、墓石のズレも増加傾向にあります。
墓石のズレの原因は、地震の揺れによる目地の切断です。
さらに、雨水が地盤を浸食することで沈下が発生し、墓石がズレるケースもあります。
墓石が傾いている
墓石の傾きは、墓石が建っている土台の傾きが引き起こすトラブルです。
土台の傾きは、雨水の浸食が引き起こす地盤沈下のほか、土砂崩れなどの自然災害が原因で発生します。
また、墓地や霊園に植え込まれている木の根が原因のケースも見られます。
墓石が倒れている
墓石の倒れも修理が必要なケースです。
日本のお墓に多く見られる和型墓石は縦長のため、強風や地震の揺れなどの影響を受けやすい傾向にあります。
墓石が倒れてしまうと、大きな割れや欠けが発生して元の状態に戻すのが難しく、墓石を作り直さなければなりません。
また、倒れた墓石が隣の墓石を傷つけたり倒してしまったりすることもあり、高額な費用が発生してしまう可能性があります。
墓石の表面が汚れている
墓石の表面の汚れには、以下のような種類があります。
|
水あかは専用の薬剤である程度は落とすことが可能ですが、石の表面にある無数の小さい穴から薬剤が内部に染み込む可能性がある点には注意が必要です。
サビが発生すると墓石の表面が少し黄ばんでしまいますが、拭き掃除では落とせないため、墓石の磨き直しを依頼するとよいでしょう。
彫刻文字が色褪せている
彫刻文字が色褪せると、お墓全体が古めかしい印象になり、文字が読みづらくなる可能性もあります。
お墓に文字彫刻をする際には黒・白・金・赤などの色を使うケースが一般的ですが、建ててから年数が建つと塗料が落ちてしまい、色褪せを引き起こしてしまうのです。
色褪せた彫刻部分に水性塗料を塗るほか、文字色が金色の場合は金箔を押すケースもあります。
墓石の修理を放置するリスクに注意!
墓石の修理を放置すると、隣のお墓や訪れた人に被害を与えてしまうリスクがあります。
阪神淡路大震災や東日本大震災のような大きな自然災害が発生した際には、責任を問われることはありません。
しかし、お墓の修理を怠って第三者に被害を与えたと認定されると、損害賠償責任を問われるだけでなく、原状回復の義務も負うことになります。
このようなリスクを回避するためにも、定期的なメンテナンスを行うほか、遠方などの理由で頻繁にお墓参りできない場合は改葬も検討するとよいでしょう。
墓石の修理にかかる費用相場
次に、墓石の修理にかかる費用を見てみましょう。
目地の割れ
目地の割れを修理する費用相場は、3~5万円程度です。
以前はモルタルを使用した修理が多く見られましたが、経年劣化が起きやすく耐久性には難がありました。
そのため、近年では耐久性・防水性・耐震性・耐衝撃性に優れた、シリコン系のコーキング剤を使用した修理が主流になっています。
まずは割れた目地を壊しながらきれいに取り除き、シリコン系コーキング剤を充填していきましょう。
墓石の欠け・ひび割れ
墓石の欠け・ひび割れを修理する費用相場は、3~5万円程度です。
軽度の欠け・ひび割れの修理には、目地と同様にシリコン系コーキング剤を使用します。
墓石の角が欠けた場合には、欠けた箇所を電気工具(グラインダーなど)で研磨する修理方法が一般的です。
ただし、大きな欠け・ひび割れがある場合は、墓石を建て替えたり新たな墓石と交換したりなどの大がかりな修理をしなければならない可能性があります。
墓石のズレ
墓石のズレを修理する費用相場は、ズレの度合いによって異なりますが3~10万円程度です。
ズレを直すだけでなく、ズレが引き起こした目地の修理も発生します。
また、墓石のズレが大きい場合は墓石の積み直しが必要な可能性もあり、費用相場は30万円程度に跳ね上がってしまう点には注意が必要です。
墓石の傾き
墓石の傾きを修理する費用相場は、100~200万円程度です。
先述の通り、墓石の傾きの原因は、お墓の土台部分の地盤沈下や植え込まれた木の根などと言われています。
そのため、墓石の傾きを修理する際には、墓石とお墓の土台部分を一度撤去し、新しい墓石を建てるための地盤改良工事が必要です。
大規模な工事が必要なため、新たにお墓を建てる際と同等の費用がかかってしまいます。
倒れた墓石
倒れた墓石を修理する費用相場は、30~100万円程度です。
墓石が倒れた際に発生した欠け・ひび割れの修理のほか、墓石の積み直しに使用する重機や墓石を作業場まで運ぶ運搬費もかかります。
墓石の欠け・ひび割れのレベルや状態によって、費用は大きく変動する可能性がある点を心にとめておくとよいでしょう。
墓石表面の汚れ
竿石や石塔など、墓石表面の汚れを修理する費用相場は、15,000円程度です。
お墓を建ててからの年数や石材のサイズによって、費用には幅があります。
また、墓石表面の汚れを落とした後にはコーティングも可能で、費用相場は3万円程度~です。
墓石は雨風や紫外線の影響を受けやすく、クリーニングをしても汚れてしまいます。
コーティングで汚れを防ぐと、メンテナンスの手間も軽減できるでしょう。
文字の色褪せ
文字の色褪せを修理する費用相場は、5,000円程度~です。
赤色は紫外線を吸収しやすいため退色しがちなほか、白色も薄れて文字が見づらくなりやすい傾向があります。
色褪せた文字の彫刻部分に水性塗料を塗り、色の入れ直しを行います。
ただし、文字色が金色で金箔を入れる場合には、費用は高くなるでしょう。
【注意】お布施など修理以外にかかる費用
墓石の修理以外にかかる費用として、墓石を作業場などに移動する際に僧侶に納めるお布施が挙げられます。
墓地で墓石の修理を行う場合は、お布施は不要ですが、石材店で修理を行う場合には墓石を移動させなければなりません。
そのような場合、墓石を撤去する際には魂抜き(閉眼供養)・お墓の修理が完了して新しいお墓が完成した際には魂入れ(開眼供養)を行います。
2回の法要それぞれにお布施が必要なほか、お車代が発生するケースもあるでしょう。
お布施の相場は1~5万円程度、お車代の相場は5,000~1万円程度です。
【墓石の修理】依頼先と流れ
ここからは、お墓の修理の依頼先と流れを解説します。
①お墓を建てた石材店を確認する
まずは、修理が必要なお墓を建てた石材店を確認しましょう。
お墓を建てる際に依頼した石材店に修理を依頼することで、スムーズに施工が進みやすくなります。
新たにお墓を立て直す場合は、今後お墓の修理が発生する可能性を考慮して、修理サービスを提供している石材店を選択するのがおすすめです。
なお、先祖代々受け継がれているお墓の場合は、お墓を建てた石材店が営業していない可能性もあるため、他の石材店を探しましょう。
②修理費用の見積もりを依頼する
お墓の修理には最低でも数万円の費用がかかるため、石材店に見積もりを出してもらい、想定した予算内で修理ができるかを確認しましょう。
なかには法外な費用を請求する悪質な業者も存在する点には、注意が必要です。
見積もりを取った際に法外な金額を提示された場合は、他の石材店にも見積もりを依頼して比較検討することをおすすめします。
③施工スタート
石材店に提示された見積もり金額に納得ができたら、施工スタートです。
修理の内容や状況によっては立ち会いを求められる場合もあるため、石材店にスケジュールを確認したうえで必要に応じて調整を行いましょう。
墓石の修理は自分でできる?
墓石の修理は、石材店に依頼せず自分で行うことも可能なのでしょうか?
墓石の修理は自分でもできる!
墓石の修理は、目地のひび割れなど範囲が小さく軽度のものであれば、自分で行うことができます。
墓石の修理を自分で行うメリットは、費用が安く済むことです。
石材店に修理を依頼すると最低でも3~5万円かかる一方、自分で修理をすれば5,000円程度の費用で済みます。
墓石の修理を自分で行うデメリットは、墓石の状態や修理内容によっては危険を伴う可能性があることと、状態を悪化させる可能性があることです。
墓石は大きく重いため、作業中に倒れたり崩壊したりすると非常に危険です。
また、修理の際にひび割れやぐらつきを触っていると、状況を悪化させてしまう可能性もあります。
スムーズかつ確実に墓石を修理したい場合は、専門知識が豊富な石材店に依頼するとよいでしょう。
墓石の修理に必要な道具
セメント
セメントは、花立てなどの付属品がぐらついている際に底面に塗って固定したり、外柵のズレの隙間に埋め込んで応急処置をしたりする際に使用します。
また、基礎工事や石材を水平に保つ際にも有効です。
水性塗料と筆
水性塗料は、彫刻文字に色を入れる際に使用します。
黒・白・赤など、数百円で購入可能です。
筆は、100円ショップで購入したものでも問題ありません。
文字を彫刻している部分に、慎重に上から色を入れていくとよいでしょう。
スクレーパー
スクレーパーは薄いヘラ状の工具で、墓石に付いた水あかなどの汚れを削ったり削ぎ落としたりする際に使用します。
彫刻文字に色を入れる際に、墓石に付いてしまった水性塗料を削ぎ落とす際にも有効です。
ただし、スクレーパーの先端は鋭利なため、墓石を傷つけないように平行に当てましょう。
墓石の接着剤
セメント
従来は墓石の修理にセメントを使用するケースが大半でしたが、経年劣化や割れが起こりやすく衝撃にも弱い点が難点です。
とはいえ、水鉢など修理中に何度も移動しなければならない箇所のほか、お墓を解体して修理する可能性がある場合には、あえてセメントを使用することもあります。
コーキングボンド
シリコン系コーキングボンドは、現在使われている墓石の接着剤で最も一般的なものです。
ホームセンターで、石材用と記載されているコーキングボンドと石材専用のコーキングガンの2つを購入しましょう。
安価なものであれば、2つ購入しても2,000~3,000円程度で購入可能です。
墓石の修理を行う手順
シリコン系コーキングボンドを使用した目地のひび割れを修理する手順は、以下の通りです。
|
【墓石の修理費用を抑えるために】定期的なメンテナンスを行おう!
墓石の修理費用を少しでも安く抑えるためには、定期メンテナンスが有効です。
ここからは、墓石の劣化を引き起こす原因と定期メンテナンスの手順を紹介します。
【墓石の劣化】原因は3つ
墓石の劣化を引き起こす原因は、以下の3つです。
経年劣化
お墓は長年にわたって代々受け継がれていくものです。
屋外で雨風にさらされ続けるため、メンテナンスを怠ると時間の経過とともに劣化してしまいます。
カビや苔
墓石の損傷部分から侵入したカビや苔が内部で繁殖して腐敗を引き起こし、徐々に墓石全体へと広がっていきます。
カビや苔は湿度の高い場所に繁殖しやすいため、雨や霧の多い地域のお墓は注意が必要です。
自然災害
台風や地震などの自然災害が原因で、お墓が倒れる可能性があります。
自然災害の後は、状況が落ち着いた段階で、安全を確保しながらお墓の状況を確認しましょう。
定期メンテナンスの手順
先述の通り、お墓は屋外で雨風にさらされ続けるため、経年劣化が避けられません。
汚れが蓄積して劣化が進むと、修理費用がかさんでしまいます。
お墓参りに行った際には、以下の手順で定期メンテナンスを行いましょう。
|
こまめなメンテナンスを行うことで、墓石の大がかりな修理を防げます。
まとめ
お墓は屋外で雨風にさらされ続けるため、年数が建つと劣化してしまいます。
劣化や破損を放置していると、お墓の倒壊などの大きなトラブルにつながりかねないため、定期的なメンテナンスを行いましょう。
トラブルの種類や度合いにもよりますが、お墓の修理にかかる費用相場は最低でも3~5万円必要です。
軽度なトラブルは自分で修理することもできますが、スムーズで確実な修理を行いたい場合は、石材店に依頼するとよいでしょう。