近年、墓石の石材やデザインの選択肢は多様化しています。
その中で、美しい見た目の一方であまり使われていないのが「大理石」です。
この記事では、なぜ日本では墓石に大理石があまり用いられないのか、その理由を探りつつ、大理石の特徴、メリット、デメリットについても解説していきます。
墓石選びに悩んでいる方や大理石を検討している方は、ぜひ購入時の参考にしてください。
目次
大理石ってどんな石材?
そもそも大理石とはどのような特徴があり、何に使われている石材なのでしょうか。
まずは大理石の概要をみていきましょう。
大理石の特徴
大理石は、その美しい模様と独特の風合いで知られる石材です。
正確には、結晶質石灰岩(石灰岩がマグマの熱により溶けて圧縮されたもの)を磨いたものが大理石と呼ばれます。
また、水面に多色の絵の具を流し込んだようなマーブル模様が特徴的です。
これは、地層が圧力と高温に晒され、炭酸カルシウムが結晶化する過程で生じます。
さらに、白からクリーム色、ピンク、グリーン、ブラウン、グレー、黒などさまざまな色と柄の種類が存在するため、デザインの幅が広がり、多彩な用途に使われるのです。
産地としては地中海沿岸部や中国南西部が多く、特にイタリア・ギリシャ・ポルトガルは大理石の世界3大産地として有名です。
また、他の石材と混ぜ合わせた人造大理石や樹脂で固めた人工大理石も、コストの低さから広く利用されています。
大理石の使用例
大理石は、その美しい外観と特性から、さまざまな用途に使用されています。
特にヨーロッパの歴史的な建築物で多くみられ、ローマのコロッセオやギリシャのパルテノン神殿などにも用いられています。
日本では明治時代以降に普及し、主に洋風建築に使われるようになりました。
現代では建物の内装に使用されるケースが多く、玄関、キッチン、バスルームなど、豪華で高級感のある空間を演出するために利用されています。
さらには、その緻密な質感と加工のしやすさを活かし、芸術作品や記念碑にも使われることの多い石材です。
大理石で墓石を作るメリット
ここでは、大理石を墓石に使用する2つのメリットを解説します。
美しい模様をデザインに活かせる
大理石はその美しいマーブル模様が特長であり、墓石においてもデザインの美しさを際立たせるのに適しています。
墓石は故人への敬意を示すものであり、親族が長く付き合い続けるものでもあるため、見た目の美しさも重要です。
美しい模様の大理石を使用すれば、気品を感じさせるデザインになり、永遠の記念としての存在感を高められるでしょう。
加工や彫刻がしやすい
大理石はモース硬度(鉱物の硬さを1〜10で表す尺度)が3と比較的やわらかい石材であるため、彫刻や加工をしやすい側面があります。
そのため、独自のデザインや細かな彫刻を施しやすく、故人や親族の意向を反映した唯一無二の墓石を作成できるのです。
大理石で墓石を作るデメリット
一方で、大理石を使用した墓石にはデメリットもあります。
耐久性が低い
大理石は比較的柔らかいため、加工のしやすさの反面、耐久性には欠けます。
日本の墓石によく使用される御影石(モース硬度6〜6.5)に対し、大理石(モース硬度3)は傷がつきやすい石材です。
特に、墓石は屋外に設置されるのが前提なため、雨風による風化や汚れによる劣化が懸念されます。
熱や酸に弱い
大理石には、主成分である炭酸カルシウムの特性から、酸や熱に弱いという側面もあります。
そのため、環境の変化や汚染物質によって、表面が損傷することがあります。
日本で墓石に大理石が使われない理由とは
外国に比べ、日本では大理石を使った墓石が少ないのが現状です。
ここでは「なぜ墓石に大理石が使われないのか?」について、日本特有の理由を解説します。
雨や湿気が多い気候だから
そもそもの前提として日本には四季があり、気候の変化が激しくみられます。
さらに1年を通して雨が多く、湿度の高い地域が大半です。
大理石には湿気を吸収しやすい特性があり、それが劣化や変色を引き起こす要因となります。
せっかく美しい光沢や模様も、傷ついたりサビになったりしてしまうと活かせません。
このため、大理石は日本の墓石にはあまり選ばれないのです。
地震が多いから
2つ目の理由として、日本は地震が頻繁に発生する地域であり、地震の際に大理石の墓石が割れたり崩れたりすることが懸念されます。
衝撃吸収剤や耐震工事によりある程度は耐震設計を施せますが、他の石材と比べて倒れやすい点は変わりません。
そのため、地震大国の日本において、耐久性に難がある大理石は墓石材として扱いにくいのです。
墓石が劣化するのが好まれないから
日本においては、「故人への敬意を表すために墓石の美しさや存在感を長く保たなければならない」という考え方が主流です。
一方のヨーロッパでは、墓石の劣化がそれほど気にされません。
時間の経過や雨風によって墓石が傷ついたとしても、「建てたときに美しければそれでよい」という価値観があります。
大理石は環境の影響を受けやすいため、その美しさが短期間で失われることがあり、日本ではあまり選択されません。
日本の墓石では御影石がよく使用される!
日本では、大理石の代わりに御影石がよく墓石に使用されます。
御影石とは、地下のマグマが時間をかけて固まった石材で、磨き上げた後の鏡面のような光沢は大理石にも劣りません。
御影石という呼称は日本独自のものであり、海外では「花岡岩」という名称が使用されます。
大理石と比べると非常に硬く、日本の自然環境や地震にも耐えうる強度が魅力です。
また、吸水性が低いため、雨の多い地域でも美しい状態を保てるでしょう。
このように、御影石は耐久性が高く、美しい模様をもちながらも湿気や酸に強いため、日本の環境に適しているのです。
御影石を使用した墓石の詳細はこちらの記事もご覧ください。
▼墓石に使われる御影石の費用相場
大理石で墓石を作る際のポイント
とはいえ、高級感のある見た目や加工のしやすさから「大理石で墓石を作りたい」という方もいるでしょう。
ここでは、大理石で墓石を作る際に意識したい3つのポイントを紹介します。
撥水加工のコーティングを施す
大理石の墓石を長持ちさせるためには、撥水加工を施すことが何より重要です。
大理石は吸水性が高いため、無加工だと雨によるシミの発生を防げません。
撥水加工のコーティングをすれば、湿気や雨からの保護が可能となり、劣化を遅らせられるでしょう。
定期的にメンテナンスする
大理石の墓石は、定期的なメンテナンスが大切です。
こまめにお墓参りを実施し、墓石のお手入れや掃除をしましょう。
お墓の遠方に住んでいる場合や、仕事で忙しいという方は、清掃代行サービスを利用するのも1つの手です。
一定の手間や費用はかかりますが、汚れや劣化を早期に発見し、修復することで、美しさを長く保てます。
石材店に相談する
墓石の購入や管理に悩んだら、石材店に相談しましょう。
石材店は墓石を扱う専門家であり、その特性や事例に精通しています。
耐震施工や撥水コーティングなど、大理石の弱みをカバーするプランを提案してもらえるかもしれません。
また、地域の気候や環境に合わせて適切な石材を紹介してもらえるでしょう。
墓石の価格や購入時のポイントはこちらの記事も参考にしてください。
まとめ
大理石はその美しい模様と独特の風合いから多くの人々に愛されていますが、日本の墓石としてはあまり選ばれていません。
耐久性が低く風化しやすい大理石は、雨や地震が多い日本の自然環境との相性がよくないためです。
一方で、光沢や模様の美しさやデザインの自由度は魅力的であり、適切なケアとメンテナンスを重ねれば、墓石としても十分に使用できます。
購入の際には、地域の気候や家族の希望も考慮し、専門家のアドバイスを受けながら検討しましょう。