久しぶりにお墓参りをしたら、びっしりコケに覆われていた…という経験はありませんか?
とはいえ知識もなく掃除をすると、大切なお墓を傷つける恐れもあります。
この記事では、墓石についたコケを掃除するのに必要な道具や手順を紹介しています。
頑固なコケの対処法や注意点もあわせて解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
【前提知識】墓石にコケが生える理由
墓石にコケが生えるのは、空気中を漂うコケの胞子が風に運ばれて墓石に付着するからです。
墓石に付着した胞子は、一定時間が経過すると発芽してコケになります。
コケは水分や栄養を葉や茎から直接吸収するので、石やコンクリートの表面でも生きていける植物です。
少しの日光と水分があれば成長できるため、放っておくと繁殖が進み、墓石をびっしり覆うことも珍しくありません。
見方によっては味わい深いといえるものの、有機物であるコケは墓石の風化を早める恐れがあり、定期的に取り除く必要があります。
墓石のコケ掃除に必要な道具
墓石のコケ掃除をする場合は、以下のような掃除道具を用意しましょう。
軍手
軍手は、墓石の表面についたコケを取り除くのに便利なほか、敷地内の雑草取りやゴミ拾いなどにも使えます。
素手で取り除くこともできますが、コケの間に小石やゴミ、鳥のフンなどが挟まっているケースもあり、安全・衛生面を考えて軍手を装着しましょう。
網目の荒い軍手だと小さな異物が入りやすいので、2枚重ねで着用するとより安心です。
歯ブラシ
墓石に刻まれた文字の奥など、指先の届かない部分のコケ掃除には歯ブラシを使用します。
歯ブラシの毛先は硬すぎると墓石を痛めやすく、柔らかすぎると効率的にコケを取り除けないので、平均的なの硬さを選びましょう。
墓石のデザインによっては、「毛足の長い台所用のブラシ」や100均などで売っている「ヘッドが小さいブラシ」などもあると便利です。
スポンジ
傷つきやすい墓石の表面を磨くには、研磨剤が含まれていない柔らかなスポンジが最適です。
キッチン用のスポンジでも十分効果がありますが、墓石専用のスポンジも数百円程度で手に入ります。
頻繁にお墓の掃除に行くのであれば、墓石専用のスポンジを購入するのもおすすめです。
洗剤(石材用)
墓石掃除では水洗いするのが基本ですが、コケや汚れがひどいときは洗剤も利用します。
その場合、家庭用洗剤では石材を変色させることがあるため、ホームセンターなどで販売されている石材用の洗剤を使用しましょう。
さらに、石材用の中でも、墓石の傷みや劣化を最小限に抑える墓石専用の洗剤が特におすすめです。
石材用は用途が限られた特殊な洗剤なので、使用前に取扱説明書をよく読んで正しい使い方をしてください。
墓石掃除に使える洗剤について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
雑巾
雑巾は、墓石を水で洗い流したあとに水分をふき取るのに使います。
そのため、昔ながらの綿の雑巾やマイクロファイバークロスなど、吸水性に優れたタイプを選びましょう。
以上が基本的な掃除道具ですが、夏場は帽子や虫除けスプレー、冬場なら水の冷たさを防ぐゴム手袋など、季節ごとの対策グッズもあると万全です。
墓石のコケを掃除する方法
コケ掃除は、墓石を傷めないように「優しく擦って除去する」のを基本に、以下の5ステップで進めましょう。
1.軍手でコケの塊を取り除く
まずは、軍手を着用して手で取れるコケの塊を取り除きます。
この段階で多くのコケを落としておくと後の作業が楽になりますが、墓石が傷んでいる可能性もあるので、状態を確認しながら慎重にはがしてください。
2.ブラシで細かなコケを擦る
次に、彫刻部分や墓石のつなぎ目などに残った細かなコケを、水でぬらしたブラシで優しくかき出すように擦ります。
強い摩擦を与えると墓石の表面が傷ついてしまうので、取りにくいときは無理に擦らず洗剤を使ってください。
3.洗剤とスポンジで磨く
洗剤を使うときは、少量をスポンジに含ませて墓石全体を優しく磨きます。
(ただし、洗剤によっては水で薄めたり直接スプレーで吹きかけたりするタイプもあるので、取扱説明書の指示を優先して作業してください。)
それでも取り除けない場合は、洗剤を浸み込ませた布を1~3分ほどコケに密着させておくと、洗剤の効果でコケが剥がれやすくなります。
注意点として、洗剤の種類や濃度によっては墓石が変色するおそれがあるので、あらかじめ確認してから使用してください。
4.水で洗い流す
コケを取り除いた後は、墓石全体を水で洗い流します。
通常の石材には無数の細かな穴が開いており、洗剤が残りやすくなっているため、水はたっぷり使いましょう。
5.乾いた雑巾で水分をふき取る
最後は、乾いた雑巾で墓石の上部から下部に向けて水分をふき取ります。
表面に凹凸がある場合は、雑巾を軽く抑えて水分を吸い上げるようにしましょう。
墓石の表面に水分が残っていると、空気中のチリやホコリ、花粉がなどが付着しやすいので、しっかりと拭き取ってください。
【取れない場合】頑固なコケの除去方法
ここでは、上記の手順で取り除けないような、頑固なコケの除去方法を4つ紹介します。
高圧洗浄機
高圧洗浄機は水を高圧で噴射するため、頑固なコケを除去しやすく、広範囲を短時間で掃除できます。
そのため、手作業と比べてスピーディーなコケ掃除が可能です。
高圧洗浄機を使用する場合は、最初に弱い水圧で墓石全体を洗い流し、徐々に水圧を強めながらコケを除去していきます。
水圧を強めすぎると墓石にダメージを与えてしまうので、除去しにくい場合は、歯ブラシやスポンジを併用してください。
最後にしっかり水分を拭き取ったらコケ掃除は終了です。
最近では、持ち運びやすいポータブルタイプや、電源の心配が要らない充電式の高圧洗浄機も数多くあり、手軽に持参できるようになりました。
また、レンタルサービスも充実してきているので、費用面のハードルも低くなっています。
手作業に疲れたら、高圧洗浄機を試してみるのもよいかもしれません。
高圧洗浄機の注意点
高圧洗浄機は、時間と労力を節約できるうえ、基本的に洗剤を必要とせず環境にも優しいというメリットがありますが、気を付けるべき点もいくつかあります。
第一に、使用時には大量の水が必要です。
墓地や霊園に自由に使える水道があればよいのですが、ない場合は自宅からポリタンクなどで持ち込まなければいけません。
必要な水量は、高圧洗浄機の出力や作業時間などで異なるため、取扱説明書に記載されている1分間あたりの吐出水量を参考にしてください。
ほかには、水が飛び散りやすい点や運転時の騒音が大きい点を踏まえ、周囲に迷惑がかからないように気を付ける必要があります。
重曹
ナチュラルクリーニングの主役として人気の重曹は、液質が弱アルカリ性なため、墓石についた酸性の汚れを中和する作用があります。
また、人体に無害な物質なので、小さなお子さんが一緒でも安心です。
重曹は、製造方法と品質基準によって医薬品用・食品用・工業用(掃除用)の3つのグレードに分類されています。
墓石の掃除ではどのグレードを使っても問題はありませんが、価格に差があるため、迷ったら安価な工業用(掃除用)を選びましょう。
小さじ1の重曹を100mlの水やぬるま湯に溶かして使用するのが一般的ですが、コケや汚れがひどい場合は重曹の量を少し増やしてもよいでしょう。
掃除の手順としては、最初にスプレーボトルを使用し、重曹水をコケや汚れに吹きかけます。
数分おくとコケや汚れが浮いてくるので、重曹の研磨作用に注意しつつ、スポンジや歯ブラシで取り除きましょう。
最後は重曹を水で洗い流し、しっかり水分を拭き取ってください。
また、墓石のコケ掃除で残った重曹は、自宅の掃除でも活用できます。
メラミンスポンジ
メラミンスポンジは、硬度の高いメラニンを素材にしたスポンジです。
きめ細かい網目状の骨格構造になっており、一般的なスポンジと比べて汚れを落としやすいという特性があります。
特に、墓石にこびりついた水あかのようなしつこい汚れを落とすのに最適でしょう。
使い方は簡単で、水滴が滴るくらいまで水分を含ませてから、軽く絞って汚れた部分を擦るだけで効果が見込め、洗剤も必要ありません。
ただし、研磨作用の強いスポンジなので、コーティングを剥がしたりツヤを消したりなどのリスクも踏まえておきましょう。
専門業者に依頼する
上記の方法でコケを取り除けない場合は、専門業者に依頼することで、墓石の素材や状態に合わせた最適な方法で除去してもらえます。
専門業者に依頼する場合の費用相場は、基本料金20,000円ほどです。
掃除に20,000円と聞くと高額に感じますが、お墓掃除の知識や技術、プロ仕様の道具の対価として考えると妥当ではないでしょうか。
一般的に、基本料金には、石塔、霊標それぞれ1基ずつのクリーニングや、敷地(1坪まで)内の除草、ゴミ拾いなどが含まれます。
ただし、サービス内容や料金設定は業者ごとに異なるため、数社を比較検討してから申し込みましょう。
お墓のクリーニングについて詳細を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【NG】墓石のコケ掃除をするときの注意点
墓石のコケ掃除をする際は、以下の4点に注意してください。
家庭用洗剤を使わない
洗濯洗剤や食器用洗剤のような家庭用の洗剤は、墓石のコケ掃除に適さない洗剤です。
石材用とは違い、家庭用の洗剤には墓石に吸収されるとシミや変色の原因になる成分が配合されています。
また、墓石の表面を傷つける研磨剤や強い酸性の物質、あるいは変色の可能性があるアルカリ性の物質が含まれている場合もあるので、コケ掃除への使用は控えましょう。
カビ取り材を使わない
コケが生えやすい場所にはカビも発生しやすいため、墓石のコケ掃除と同時にカビ退治も実施するケースが多数です。
とはいえ、家庭用のカビ取り剤の使用はおすすめしません。
家庭用のカビ取り剤を使用すると、家庭用洗剤と同様にシミや変色を引き起こす恐れがあります。
また、強力な薬剤が含まれており、腐食など墓石に悪影響を与えるリスクもあるので、カビ退治には墓石専用のカビ取り剤を使ってください。
市販の墓石専用カビ取り剤には、スプレーを吹きかけるだけで水洗いの必要もないタイプもあり、墓石を傷めずにカビ取りができます。
液体タイプ、酸性タイプ、無臭タイプなどさまざまな種類があるので、お墓の状態にあったカビ取り剤を購入しましょう。
なお、人体に影響を与える成分が含まれていることも多いので、使用方法や注意事項を確認し、目に入らないようにゴーグルやメガネを着用して作業するようにしてください。
硬いタワシで擦らない
スチールダワシなどの硬いタワシで墓石を擦ると、表面が傷ついて本来の風合いが変わったり刻まれた文字や装飾が欠けたりする可能性があります。
墓石掃除では、毛足のやわらかいタワシや歯ブラシ、スポンジを使って優しくコケを落としましょう。
洗剤や水分を残さない
墓石の表面の洗剤や水分が残っていると、シミや水あかの原因になるほか、コケやカビの温床にもなりえます。
せっかく手間と時間をかけて掃除をするのですから、新たなコケの発生を防ぐためにも、仕上げは丁寧に行いましょう。
まとめ
墓石に付着したコケは時間が経つにつれて増えていくため、定期的なメンテナンスが必要です。
石材用の洗剤やカビ取り剤を使用すること、硬いタワシを使わないこと、洗剤や水分を残さないことなどに注意し、適切な頻度で実施しましょう。
丁寧にコケを除去できれば、墓石をきれいな姿に戻し、長持ちさせることができますよ。