お墓がたくさんあったり、離れた場所にあったりすると、それぞれのお墓を管理しなければなりません。
すべてのお墓を掃除したり、お花やお供物を用意したりなどの負担が大きく、供養が疎かになってしまう…というケースもあるでしょう。
そんな問題を解決する方法のひとつが、お墓をまとめる「寄せ墓」です。
この記事では、お墓をまとめる方法や費用に加えて、事前に確認すべき点も紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
お墓を1つにまとめる方法「寄せ墓」
昔は、個人や夫婦ごとにお墓を建てるのが一般的だったため、今でも古い墓所では複数のお墓が並んでいることもあります。
そういったお墓を1つにまとめることを「寄せ墓」と呼びます。
お墓がいくつもあると、それぞれを掃除したりお花や水を供えたりするのが大変です。
お墓を1つにして管理しやすくするのが、寄せ墓の大きなメリットと言えるでしょう。
その他にも、「離れた場所にお墓があって管理をするのが大変…」という理由で寄せ墓を検討している人もいます。
お墓をまとめる基本の手順とは
寄せ墓を行うにはどのようにすればいいのか、手順を紹介します。
1.墓地または霊園の管理者に相談する
墓地や霊園の管理者に、寄せ墓を検討していることを相談しましょう。
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寄せ墓で新たにお墓を作る場合は広い墓所に複数の遺骨を納めるため、サイズが大きくなる可能性があります。
相談するときに、お墓の規格についても確認しておきましょう。
2.石材店に見積もりを依頼・契約する
元の墓石を撤去して新しいお墓を建てる場合は、石材店に見積もりを依頼します。
寺院墓地だと石材店の指定があるかもしれませんが、指定がなければ複数の石材店で見積もりを出してもらって費用を比較するのがおすすめです。
依頼する石材店を決めたら、契約に進みましょう。
3.閉眼法要を行い、遺骨を取り出す
遺骨が入っているお墓は、ご先祖様の魂が入っていると考えられています。
そのためお墓から遺骨を取り出す際は、お寺に依頼して閉眼法要(魂抜き)が必要です。
閉眼法要によってお墓を礼拝の対象から「石」に戻したうえで、解体撤去を行います。
4.お墓を新設するための工事が始まる
元の墓石を撤去して、新しくお墓を建てます。
5.最後に開眼法要を行い、納骨する
新しいお墓が完成したら、墓石に魂を入れるための開眼法要(魂入れ)を行います。
法要を行うことで、墓石は石から「お墓」になり、礼拝の対象となります。
最後に遺骨をお墓に納骨して、寄せ墓は完了です。
【状況別】お墓をまとめる方法
お墓をまとめる方法は、状況によって異なります。
さまざまなケースを例に、お墓をまとめる方法を見ていきましょう。
違う場所にあるお墓をまとめる場合
違う場所にあるお墓をまとめる方法には、2つの種類があります。
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違う場所にあるお墓をまとめる場合は、片方もしくは両方のお墓の「墓じまい」をすることになります。
墓じまいをして別の場所に遺骨を移すためには、市町村の役所にて手続きが必要です。
▽改葬許可証の交付までの流れ
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二世帯のお墓をまとめる場合
1つのお墓に異なる姓の故人を埋葬する「二世帯墓」や「両家墓」は、お墓を受け継ぐ人がいないなどの理由で最近少しずつ増えています。
二世帯のお墓をまとめる方法には、いくつかの種類があります。
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なかでも1つの納骨室に複数の遺骨を納めてその上に五輪塔を建てる方法は、古くから行われる歴史のある方法です。
しかし、墓地や霊園によっては二世帯墓や両家墓を禁止しているところもあるので注意しましょう。
また家同士の宗教や宗派が異なる場合も、お墓をまとめられなかったり改宗や改派が必要になったりします。
問題なくお墓をまとめられることが決まっったら、改葬許可申請の手続きを行いましょう。
古いお墓(土葬)をまとめる場合
昭和の中頃に火葬が一般的になるまでは、遺体を土に埋葬する土葬が行われていました。
土葬された古いお墓をまとめる場合は、土を掘り起こして遺骨を取り出すための費用がかかる点に注意が必要です。
なお、遺体は長い年月をかけて土に還っていくので、古いお墓の場合は遺骨が出てこない可能性もあり、出てこなければ埋葬場所の土をもらいます。
遺骨が出てきたら、洗浄・火葬してから新たなお墓に埋葬します。
お墓のある市町村の役所で改葬許可証の交付を受ける際に、火葬許可証も合わせて交付してもらいましょう。
寄せ墓の費用相場と抑えるポイント
寄せ墓の費用は、元のお墓のある場所や状態、お墓をまとめる方法などによって変動します。
ここからは、寄せ墓にかかる費用相場と費用を抑えるためのポイントを詳しく見ていきます。
解体工事費
寄せ墓をするために、今あるお墓を解体しなければなりません。
一般的なお墓の解体工事費は、1m²につき8〜10万円程度です
複数のお墓を解体する場合は、お墓ごとに費用がかかります。
新設工事費
今あるお墓にまとめるのではなく、新たに墓石を建てるのであれば、新設工事費がかかります。
墓所の広さによっても費用は変わりますが、広い墓所に建てるのであれば100〜300万円ほどになるでしょう。
法要のお布施
お墓は信仰の対象であり、今あるお墓を解体するときや新しいお墓を建てたときには、お寺に依頼して法要を行う必要があります。
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法要で支払うお布施は、それぞれ1〜5万円ほどです。
お墓がお寺以外の場所にあるときは、お布施に加えてお車代として5,000〜1万円ほどお渡しします。
寄せ墓の費用を抑えるポイント
費用を抑えて寄せ墓にする方法は、2つあります。
古い墓石を解体しない
遺骨が入っていないお墓は信仰の対象ではない「石」なので、そのまま置いていても問題はありません。
広い墓所であれば、遺骨を移動させた後の古いお墓を解体しないで残しておく場合もあります。
墓石の解体工事費が不要になるので、寄せ墓の費用が抑えられるでしょう。
お墓を新設しない
寄せ墓をする際に、今あるお墓の1つに他のお墓の遺骨をまとめると、お墓を建てる費用が不要です。
寄せ墓の費用を抑えたい場合は、どのようにお墓をまとめるかをよく検討しましょう。
お墓をまとめる前に確認すべきこと
お墓をまとめる際に、気をつけるべき注意点を確認しておきましょう。
宗派が異なる場合は相談する
寺院墓地では、お寺と同じ宗派でなければ納骨できない場合がほとんどです。
そのため宗派によっては、遺骨をまとめることができなかったり、改派を求められたりするケースもあります。
また、墓石の形や墓石に刻む文字数が決まっている場合もあるので、よく確認しておきましょう。
遺骨を納めきれない場合がある
まとめるお墓の数が多いと、必然的に遺骨の数も多くなります。
遺骨が納めきれない場合は、スペースを広げるなどの工夫が必要です。
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また、何世代も前のご先祖様の遺骨は、納骨室の地面に埋めて土に還す場合もあります。
墓石は持ち込めない場合が多い
寄せ墓で墓じまいをした後、墓石を取り壊さずにまとめる先の墓地に移したいと考える人もいます。
しかし、多くの墓地では墓石の持ち込みを禁止しているので、古い墓石を残しておくのは難しいでしょう。
ただし、墓石を再利用する方法も存在します。
墓石の再利用について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
寄せ墓に関するよくある質問
最後に、寄せ墓に関するよくある質問を紹介します。
お墓をまとめると不幸になるって本当?
古い迷信で、寄せ墓をすると不幸になるというものがありますが、根拠のない言い伝えです。
お墓が離れた場所にあるからとお参りに行かなかったり、お墓の数が多くて掃除やお供えが行き届かなかったりするよりも、お墓をまとめて供養しやすい状態にするほうがご先祖様は喜ばれるでしょう。
墓じまいにかかる費用の相場はいくら?
墓じまいをする際の費用は、30〜300万円ほどで、内訳は以下の通りです。
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墓じまいの費用は、お墓の立地やお墓の大きさ、お布施の金額などによって変動します。
墓じまいの費用について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
お墓をまとめる寄せ墓は、お墓の管理や供養をしやすくする方法のひとつです。
同じ墓所にあるお墓をまとめるのか、離れた場所にあるお墓をまとめるのかなど、状況によってまとめる方法は異なるので、よく検討してから寄せ墓を進めましょう。
また、費用を抑えてお墓をまとめたい場合は、複数の石材店で見積もりを出してもらって比較するのがおすすめです。