故人の遺骨を複数のお墓に分けたいものの、本当に行なってもよいのか不安や疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
遺骨を分けて納骨する方法は分骨と呼ばれ、行なっても問題ありません。
本記事では、その理由や具体的な分骨の手順、注意点についても詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
遺骨は複数のお墓に分けてもよい!
遺骨を複数のお墓に分けて納める方法は分骨と呼ばれます。
ここでは、分骨の定義と法的・仏教的視点からみても問題がないのかを解説します。
分骨=遺骨を複数のお墓に分けて納める方法
分骨とは、文字通り故人の遺骨の一部を2つ以上の場所分けて保管・供養することです。
最近では、故人の遺骨を自宅などの身近な場所に置いて供養する手元供養や、海への散骨なども分骨の1つとして捉えられるようになっています。
分骨は法的・仏教的に問題ない
分骨は法律的にも仏教的にも問題がない行為です。
法律的には、「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」第5条で分骨の手続きについて明確に定められており、以下の要項に従うことで支障なく分骨ができます。
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参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律施行規則 第5条」
また、分骨は仏教的にも問題ありません。
実際にお釈迦様の遺骨は分骨されて世界各地で仏舎利(ぶっしゃり)としてお祀りされており、分骨は多くの人々に供養してもらえる善行として捉えられています。
分骨する主なケース
分骨する主なケースとして、以下の6つが挙げられます。
兄弟姉妹などが家族ごとにお墓を建てる
別々に暮らす兄弟姉妹などが家族ごとにお墓を建て、両親の遺骨を分骨するケースは珍しくありません。
納骨前に分骨するケースと、一度お墓に納骨した後に分骨するケースがあります。
遺骨の一部を自宅近くに埋葬
分骨の最も一般的な理由は、自宅がお墓から遠いことです。
遠方に自宅がある場合きちんとお参りすることが難しく、特に年配の方には身体的負担が大きくなってしまうため、より手厚い供養ができるように自宅近隣の霊園や納骨堂に分骨されます。
遺骨の一部を宗派の総本山に納骨
浄土真宗などの宗派では、古くから遺骨の一部を宗派の総本山に納める習慣があります。
これは宗祖への畏敬の念を込めた行為で、現在でも故人の遺言や遺族の希望により分骨されるケースが多くみられます。
ただし、遺骨を分けることに対して抵抗を感じる方もいるので、家族や親戚間での感情的なトラブルを避けるためにも、よく話し合うことが大切になるでしょう。
先祖代々のお墓と新しいお墓で供養
親族の手前や伝統を守るために先祖代々のお墓に納骨することが一般的ですが、新しく建てた夫婦のお墓にも故人の遺骨を納めるために分骨する方が増えています。
先祖代々のお墓が遠く離れた場所にある、地域の事情が変わった、家族構成が変わったなど、理由はさまざまです。
手元供養
故人との絆を感じながら日常的に供養を行うために、手元供養を望むケースもあります。
遺骨の一部を小さな骨壺に納めて仏壇やリビングに置く、ペンダントトップに少しの遺灰を入れて身に付けるなど、それぞれの生活スタイルに合わせた供養ができるのが特徴です。
散骨
故人の遺言で散骨を予定しているものの、「きちんとお墓参りもしたい」という思いから遺骨の一部をお墓に納骨する場合もあります。
故人の意向を大切にしつつ、遺族や関係者が心地よく供養を行うことができるでしょう。
【タイミング別】分骨の手順
納骨が行われるタイミングによって、手順や必要な書類が異なります。
タイミング別に分骨の流れをみていきましょう。
【タイミング①】納骨前(火葬時)に分骨を行う場合
分骨を行う負担が最も少ないタイミングは、納骨前(火葬時)です。
以下で一般的な分骨の流れと必要な書類を紹介します。
①葬儀業者・火葬場に分骨する意向を伝える
分骨を希望する場合は法的な手続きと許可が必要なため、あらかじめ火葬場の担当者に分骨する意向を伝えましょう。
通常は葬儀業者を通じて火葬場を手配するため、分骨したい旨を葬儀業者に伝えればスムーズに進められます。
遺族が直接手配する場合は、火葬場の担当者に分骨する旨を伝えてください。
➁必要数の骨壺を準備する
分骨を希望する遺族の人数や納骨予定の場所、供養方法に合わせて、必要な数の骨壺を準備します。
葬儀業者や火葬場が分骨用の骨壺を用意してくれる場合もあるので、確認してから手配するとよいでしょう。
③焼骨後に火葬証明書(分骨証明書)を受け取る
火葬が終わった後、火葬場から発行される「火葬証明書(分骨証明書)」を受け取ります。
この証明書は分骨を行なったことを証明するもので、納骨などの手続きに必要です。
火葬場によっても異なりますが、火葬前や火葬後に火葬証明書(分骨証明書)交付の申請書を記入しなければならないケースがあります。
④分骨した遺骨を供養する
分骨した遺骨を、散骨や手元供養など自身や家族の意向に沿って供養します。
お墓に納骨する場合は、墓地に「火葬証明書(分骨証明書)」の提出が必要です。
なお、一部の霊園では分骨が認められていないので、申し込みの際に必ず確認しましょう。
【タイミング➁】納骨後(埋葬済)に分骨を行う場合
すでにお墓に納められている遺骨を分骨する流れは、以下の通りです。
①分骨する骨壺を準備する
納骨後に分骨を行う場合は、新たに分骨用の骨壺を準備する必要があります。
通常の葬儀で使う骨壺の大きさは6~7寸が一般的ですが、分骨の際には2~4寸の小さめのものを利用する方が大半です。
骨壺は葬儀業者や墓地管理者が提供している場合があるほか、葬儀用品店やインターネット上のオンラインショップで購入することができます。
➁墓地・霊園管理者に分骨証明書の発行を依頼する
納骨されている墓地や霊園の管理者に、骨壺の数分の「分骨証明書」の発行を依頼します。
遺骨は亡くなった人の遺体の一部として扱われるため、法律上、必ず行わなければいけない手続きです。
なお、公営墓地の場合は、管理事務所のほか自治体の窓口でも分骨証明書発行の申請を受け付けています。
③墓石から遺骨を取り出す
証明書が発行されたら、墓石から遺骨を取り出します。
お墓から納骨棺(カロート)を取り出すために、石材店や専門業者に依頼して日取りの打ち合わせなどを行いましょう。
また、遺骨を取り出す際にはお墓から魂を抜く閉眼供養が必要なため、事前に菩提寺に相談しておくことも必要です。
④分骨した遺骨を新しい納骨先に納める
遺骨を分けたら、新しい納骨先の管理者に証明書を提出して遺骨を納めます。
墓地や霊園には独自の規約もあるので、事前に管理者に確認しておきましょう。
【分骨の前に知っておきたい】5つの注意点
不要なトラブルを避けるため、以下の5つの注意点に気を付けて分骨を行いましょう。
遺骨の所有者(墓地の継承者)の許可を得る
分骨を行うためには、遺骨の所有者である墓地の継承者の許可が必要です。
無断で分骨を行うと後々トラブルに発展する可能性があるため、必ず所有者の同意を得ましょう。
家族や親族に事前相談する
遺骨を分けることは、家族や親族にとって非常にナイーブな問題です。
また地域や宗派のしきたりなどもあるため、事前に相談して理解を得ることが、円満な分骨につながります。
本山への納骨など合祀された遺骨は分骨できない
合祀(ごうし)とは、「合わせて祀る(まつる)」という意味で、本山に納骨する場合や永代供養墓など不特定多数の遺骨と一緒に埋葬する方法です。
特定の人の遺骨を取り出すことは不可能なため、分骨を考える場合は念頭に入れておきましょう。
手元供養の場合も分骨証明書を取得する
手元供養をする場合に分骨証明書は必要ありませんが、後からお墓に納骨したくなったときのために取得しておくと安心です。
分骨証明書を取得していない場合でも、分骨前のお墓があった自治体で再発行が可能なため、故人の氏名・亡くなった年月日・火葬日をメモで残しておきましょう。
遺骨で重要な部分を理解する
遺骨の中でも仏教で特に大切にされる部分が、仏様が座禅を組んでいるように見える「喉仏(のどぼとけ)」です。
そのため、本山への納骨では喉仏を含めた遺骨を持参することが一般的になっています。
分骨する際は、重要とされる喉仏をどのお墓に納めるか慎重に相談しておきましょう。
【分骨にまつわるマメ知識】次男は先祖代々のお墓に入れる?
日本の慣習では、先祖代々続く本家のお墓には長男とその家族が入ることが一般的で、次男は通常は新たにお墓を建てる必要があると考えられています。
しかし、法律では1つのお墓に埋葬できる人の範囲を規定しておらず、所有者の許可があれば次男も本家のお墓に入ることが可能です。
次男が本家のお墓に入りやすいケースとしては、まず、次男が独身である場合が挙げられます。
お墓の関係者が煩雑化する心配もなく、お墓の所有者の許可も取りやすいでしょう。
また、既婚でも子どもがいない場合、新しくお墓を建てても継承者がいないという理由から、本家のお墓に入りやすいと言えます。
なお、墓地によっては埋葬できる人の範囲を本家の人間のみとしているケースもあるので注意が必要です。
本家のお墓に次男が入れるケースについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
▼次男はお墓を建てる必要がある?本家のお墓に入れるケースを紹介
まとめ
故人の遺骨を複数のお墓に分ける「分骨」は、正しい手順を踏むことや家族や親族としっかり相談することで、問題なく行えます。
納骨前と後では必要な書類が異なる点などに気を付けて、故人や遺族の希望に沿った分骨をしてください。