近年では、お墓の景観をよくするために灯篭の設置を考える方も増えています。
しかし、灯篭の本来の意味や用途を知らない方も多いのではないでしょうか?
本記事では、お墓に設置する灯篭を中心に灯篭の意味や種類、設置方法などを解説します。
灯篭の価格相場や設置費用も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
お墓に設置する「灯篭」とは
灯篭とは、戸外で使われる照明器具のことで、風によって灯火が消えないよう石や木材、竹、金属などの素材を使って炎を囲む形をしています。
仏教とともに中国大陸から日本に伝わり、庭やお墓、寺院、神社など日本人の身近な場所で広く普及しました。
寺院や神社、仏前に置かれる場合は、献灯としての役割もあります。
また、お墓の前に設置する灯篭は「墓前灯篭」と呼ばれ、さまざまな意味をもちます。
墓前灯篭には大きく3つの意味がある
お墓の前に設置する墓前灯篭には、大きく以下の3つの意味があります。
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他にも、照明器具や電灯がなかった時代に、お墓を訪れた人たちが道に迷わないようにする目印の役割も担っていました。
現代では、このような本来の意味は薄れ、お墓の景観をよくするために建てられることが増えています。
墓前灯篭の形状と各部の名称
次に、墓前灯篭の形状と各部の名称を紹介します。
墓前灯篭の形状
墓前灯篭は、大きく丸型と四角型の2つに分かれます。
六角型や八角型の墓石灯篭も存在しますが、近年はほとんど見かけなくなっています。
仏式では丸型、神式では四角型が選ばれる傾向にありますが、特に規定はないため、好きなデザインのものを選んで問題ありません。
各部の名称
灯篭は、6つの部材で構成されています。
以下に、灯篭の各部の名称を上から順番にまとめました。
名称 | 特徴 |
玉(たま)・宝珠(ほうじゅ) | 丸や玉ねぎのような形をした頂上に載せてある飾りの部分です。 |
笠(かさ) | 灯火が入る火袋の屋根となる部分です。 六角・四角のものを中心に、八角や円形などさまざまな形をしています。 |
火袋(ひぶくろ) | 灯火が入る部分です。 景観目的の灯篭には灯火が入ることはありませんが、灯篭の主要部分のため省略はできません。 |
受(うけ) | 火袋を支える台の部分です。 基礎部分の地輪と対の形をしています。 |
柱(はしら) | 受と地輪をつなげる部分です。 円柱や角柱のものがありますが、低い灯篭の場合は省略されることもあります。 |
地輪(じりん) | 灯篭を支える基礎の部分で、受と対の形をしています。 六角形や円形が主流で、低い灯篭では複数の足状のものが採用されることもあります。 |
それぞれの部材は別々の石で造られ、バラバラの状態で現地に運ばれてその場で積み重ねられます。
墓前灯篭以外にも種類がある
ここでは、墓前灯篭以外の灯篭を紹介します。
春日灯篭
寺院の庭や日本庭園などに建てられることの多い灯篭です。
大きく存在感があり、柱が長く立派な火袋が高い位置に設置されています。
春日大社で使われていたことから、このような名前が付けられました。
雪見灯篭
柱がないため高さが低く、日本庭園などで主に水面を照らすために使われる灯篭です。
3~4本の足で支えているものが主流で、笠の部分は大きく開いた形をしています。
笠は六角形もしくは丸い形をしており、笠が六角形のものを六角雪見、笠が丸いものを丸雪見と言います。
置き灯篭
柱がなく、庭園などにある大きく平らな石の上に直接置かれていることの多い灯篭です。
暗い庭で足元を照らすために設置され、さまざまな形をしています。
笠の部分が大きいものや独特の形をしているものなど、置く場所の雰囲気に合わせて選ぶことができます。
織部灯篭
地面に直接埋め込んで設置する灯篭で、柱の上の部分が膨らんだ特徴的な形をしています。
これは、戦国武将で茶人でもある古田織部が考案した形です。
また柱の形が十字架にも見えることから、キリシタンであることを隠すために造られたとも言われており、柱にはアルファベットのような記号が彫刻されています。
墓前灯篭の価格相場・設置費用
墓前灯篭を設置するためには、どれくらいの費用が必要なのでしょうか。
ここでは、墓石灯篭の価格相場と設置費用について解説します。
墓前灯篭の価格相場
墓前灯篭の相場は3~10万円程度で、一般的には中国産の3~5万円ほどのものが人気です。
国産の高級な石を使用したものや伝統工芸士が造ったデザイン性に優れたものなど、価値が高いとされるものは数百万円の値段がつく場合もあります。
1万円程度の小さな灯篭で持ち運べるものなら、インターネットで購入して自分で設置することも可能です。
墓前灯篭の設置費用
墓前灯篭を設置する際は、1万円程度の施工費用がかかります。
灯篭代の3~10万円に加えて、1万円ほど多めに見積もっておきましょう。
また、古い灯篭を新しく取り替える場合は、古い灯篭の処分費用として数千~2万円程度が必要です。
お墓に灯篭を設置するには
お墓に灯篭を設置するために必要な区画面積や一般的な設置方法を紹介します。
設置できない場合の対処法もお伝えするので、参考にしてください。
設置に必要な面積
お墓に灯篭を設置する場合は、少なくとも3~7m²の面積が必要です。
墓前灯篭は一対で設置するのが一般的ですが、区画が十分確保できない場合などは1つだけ建てることもできます。
また、かつてはお墓に設置された灯篭が多く見られましたが、近年は区画面積や費用面の問題から灯篭を設けないお墓も増えています。
墓前灯篭の設置方法
墓前灯篭は、お墓より前の位置に設置します。
通常は一対で設置され、お墓のすぐ前に建てたり敷地の入り口に建てたりするのが一般的です。
設置できない場合
前述のように、お墓の面積などの理由で墓石灯篭を一対で設置できない場合は、1つだけ建てることもできます。
1つだけ建てる場合は、お墓の右側に設置するのが一般的です。
また、費用面などさまざまな理由で墓石灯篭を設置できないこともあるでしょう。
その場合は、ろうそくの火でも十分灯篭の役割を果たせます。
灯篭の形にこだわりたい場合は、灯篭型のろうそく立てを使用するのもおすすめです。
灯篭型のろうそく立てはコンパクトで扱いやすく、ステンレス製のものだけでなく御影石で造られたものもあります。
費用は1本7,000~4万円程度と幅広く、インターネットでもさまざまな素材や大きさのものが販売されています。
お墓の灯篭が壊れたら修理できる?
お墓の灯篭は雨風にさらされて傷んだり、台風や地震などの自然災害によって壊れてしまったりすることがあります。
灯篭が少し欠けるなど壊れた部分が小さければ、ホームセンターなどに売っているコーキング材を使って自分で修理することも可能です。
ただし、大きく破損してしまい自分で修理することが難しい場合は、石材店や専門業者に修理を依頼しましょう。
大規模な修理の場合は、修理費用よりも買い替える費用のほうが安く済むことも多いため、その点も踏まえて石材店に問い合わせてみることをおすすめします。
お墓の灯篭を処分する方法
お墓の灯篭を処分したいときは、石材店や解体業者に処分を依頼します。
人力で持ち運べないような大きな灯篭を処分する場合は、搬出するために行われる部材の分解や吊り上げなどの作業によって、費用が高額になる可能性がある点に注意しましょう。
また、中には不法投棄をしている悪徳業者も存在するため、あまりにも費用が安すぎるのも危険です。
処分を依頼する際は、複数の業者から見積りを取り比較検討するようにしましょう。
また、お墓の灯篭は、処分する際のお清めも大切です。
長年にわたってどのような用途で使われてきたのかを確認し、正しい方法で処分しましょう。
まとめ
墓前灯篭はお墓の景観をよくするだけでなく、故人を供養するための道灯りや暗闇を照らす邪気払いの意味があります。
近年は、設置するスペースや費用面から墓前灯篭を設けないお墓が増えていますが、灯篭型のろうそく立てなど、限られたスペースで安価に設置できる灯篭も数多く展開されるようになりました。
お墓の景観や灯火を使った供養に関心のある方は、本記事を参考に自身のお墓に最適な墓前灯篭を見つけてみてください。