お墓を検討中の方にとって、墓石の値上がりは気になるところですよね。
この記事では、墓石の価格上昇の理由を解説するとともに、価格を決める要素や経済的な負担を減らす方法も紹介します。
墓石選びの不安を少しでも解消しつつ納得のいく選択をするために、ぜひご一読ください。
目次
墓石が値上がりしている理由
ここでは、墓石が値上がりしている理由を3つの観点から解説します。
【前提】国内で建てられる墓石の8割以上が中国産
日本で販売される墓石は、1990年頃より中国の石材加工工場で製造されることが増えました。
現在では、国内の墓地や霊園で見かける墓石のうち、8割以上が中国産となっています。
中国は広大な土地を有し、年間の採石量は日本の100倍以上です。
供給量の豊富さや石材の安さが、選ばれている要因といえるでしょう。
この中国産の墓石が値上がり傾向を示している主な理由について、以下で解説します。
1.中国の人件費高騰
墓石が値上がりしている理由の1つは、中国での人件費の高騰です。
中国は経済大国として急速に成長し、人々の生活水準も向上しました。
このような状況下では、石材の採掘や加工など体力を必要とする仕事の労働者の確保が難しく、賃金を引き上げる必要が生じたのです。
結果として中国産の墓石の製造原価が上がり、販売価格も上昇しました。
2.中国の環境規制
中国では環境問題が深刻化しており、環境保護のための規制が強化されています。
石材の採掘や加工は環境に大きな影響を及ぼすため、規制も厳しさを増しており、日本向けの石材加工工場の閉鎖や採石地の閉山といったケースも珍しくありません。
こうした事態が安価な石材の供給不足の原因となり、墓石の価格に影響を及ぼしています。
3.円安と原油価格高騰
円安や原油価格高騰といった世界的な要因も、墓石の値上がりを引き起こします。
通常、墓石を輸入する際の支払いはドル建て(=米ドルで取引すること)で実施されるため、円安に傾くと輸入コストが上昇し、墓石の価格に反映されます。
たとえば、1万ドルの墓石を購入する際に為替レートが1ドル112円から150円になった場合、これまで112万円で仕入れていた墓石が150万円になるのです。
原油価格の高騰は、墓石を製造する際に必要な、石材の運搬や加工に必要なエネルギーコストの増加に直結します。
墓石の価格に上乗せされる結果となり、墓石の値上がりが一層進むのです。
墓石の購入費用はどうやって決まる?
墓石の費用は、お墓を建てる地域や石材の種類、産地などによって異なりますが、竿石や中台などのすべてのパーツを含めた場合の相場は70~250万円です。
では、購入費用を左右する要素や内訳を見てみましょう。
石材の種類
墓石に使用される石材は、大きく花崗岩・安山岩・斑レイ岩・閃緑岩(せんりょくがん)の4種類に分類されます。
特に、墓石としてよく利用されるのは、「御影石」とも称される花崗岩です。
美しい色合いや高い耐久性が特徴的で、墓石以外でも多様なシーンで使用されています。
また、これらの石材は硬さや色、石目などの特性によってランク(等級)付けされ、バリエーションは、国内では50種類以上、海外産では100種類以上です。
石材の種類によって価格も異なるため、墓石を選ぶ際には予算に合った適切な石材を選ぶことが重要です。
石材の産地
石材の産地は、墓石の品質に大きな影響を及ぼす要因であり、価格を左右する重要な要素です。
海外の主要な産地としては、石材の価格がリーズナブルな中国が最も多く、他にもインドや南アフリカなどがあります。
日本にも複数の産地が存在しますが、資源が限られているために希少価値が高く、国産の石材は比較的高価です。
特に香川県で採掘される庵治石(あじいし)は、「花崗岩のダイヤモンド」とも呼ばれ最高級石材として知られています。
石材の使用量
墓石に使用される石材の量は、墓石の大きさや形状によって異なり、墓石の購入費用に大きく影響します。
一般的に、伝統的な縦長の和型墓石よりも、背が低く横に長い洋型墓石のほうが石材の使用量が少ないです。
費用を抑えたい場合は、異なる形状やタイプの墓石を比較検討することをおすすめします。
基礎工事費
基礎工事は、墓石の安定性や耐久性を確保するために不可欠です。
墓石を設置する地盤の状態や墓石の大きさによって必要な工事内容が変わります。
費用は通常、墓石代に含まれる場合が多いのですが、墓地や業者によって異なることもあるので、念のため確認しましょう。
加工費
加工費は、石材を墓石の形状やデザインに仕上げるための工程にかかる費用です。
石材の種類や形状、デザインによって加工難易度が異なり、それに応じて費用も変動します。
一般的に、国内よりも外国での加工の方が費用が比較的安価です。
加工費の見積もりを取る際には、希望するデザインや仕上がりをあらかじめ伝えておき、施工内容や費用もしっかり確認しましょう。
彫刻費
彫刻費は、墓石に文字や家紋などを彫る際にかかる費用です。
彫刻費の目安は、戒名の彫刻で3~5万円程度、飾り彫刻については約10万円からを想定しましょう。
墓石周辺の飾りの加工費</h3>
お墓参りを便利にするための設備として、水鉢や花立て、香炉などを設置するケースもあります。
また、多数の遺骨を同じお墓に埋葬する際、故人の改名が墓石に彫刻しきれない場合に、墓誌(ぼし)も必要になるでしょう。
これらの飾りの加工費も、墓石の最終価格に影響を及ぼす要素です。
耐震施工費
一般的な耐震施工として、竿石・中台・下台を1つの石で作る一体墓工法、墓石の間に金属の棒を差し連結させるピン工法、接着剤で接合する接着剤工法などが挙げられます。
これらの耐震施工は、地震による墓石のズレや倒壊、ひびなどを防止するのに効果的です。
耐震施工には一定の費用がかかりますが、長い目で見れば、墓石を維持するための費用の節約につながります。
お墓の値段について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
費用面だけで石材店や墓石を選ぶのは危険?
費用だけを重視した石材店・墓石選びはリスクを伴います。
たとえば、安価な墓石は耐震性や建立後の保証内容が十分でないケースがあり、注意が必要です。
墓石は高価な買い物となるため「少しでも節約したい」という気持ちにもなりますが、一定の品質を望む場合は、ある程度の費用をかける必要もあります。
また、一度契約した石材店とは長い付き合いになるため、信頼性やアフターサポートが十分であるかも考慮したい要素です。
安価な選択が後悔を招かないように、価格だけでなく品質や信頼性にもこだわり、総合的に判断しましょう。
とはいえ、お墓をできるだけ安く買いたいという方は以下の記事も参考にしてください。
墓石の値上がり負担を減らしたい人におすすめの埋葬方法
故人の供養には、必ずしも墓石を建てなくてはならないものではありません。
墓石の値上がりが大きな負担となる場合、以下の埋葬方法も検討しましょう。
永代供養
永代供養とは、霊園や寺院などが故人の遺骨を管理・供養する方法です。
一般的なお墓を建てるよりも費用が安く済むことが多く、お墓の掃除など維持・管理の手間も必要ありません。
また、生前に申し込むことができ、後継者のいない方でも契約できます。
ただし、他の人たちと一緒に埋葬されるため、個人の遺骨を後から取り出すことはできなくなることや、お参りの仕方に制限が設けられている場合がある点に注意が必要です。
納骨堂
納骨堂は、骨壺や遺骨の一部を保管する施設です。
お墓が不足しがちな都市部を中心に導入が進み、遺骨の保管と供養を合理的に行える方法として注目されています。
室内なのでお墓参りにも便利ですが、納骨堂によっては生花や線香、ローソクなどが制限されている場合もあります。
費用の目安:10~200万円程度
樹木葬
樹木葬は、お墓の代わりに樹木を墓標として遺骨を埋葬する供養方法です。
自然に還りたいと考える方を中心に人気です。
遺族や参拝者が自然の中で故人を偲ぶことができるため、心穏やかな時間を過ごせるでしょう。
樹木葬は寺院のほか、公営霊園や民営霊園でも多く導入されています。
費用の目安:3~200万円程度
手元供養
手元供養は、故人の遺骨を自宅など身近な場所で保管し供養する方法です。
骨壺をリビングに置いたり遺灰をペンダントトップに入れて身に付けたりすることで、故人とのつながりを感じられるでしょう。
費用もあまりかからず、個々のライフスタイルに合った供養方法として浸透してきています。
費用の目安:0~50万円程度
散骨
散骨は、遺骨を粉状に砕いて海や山などの自然に還す供養方法です。
故人の遺志に従って実施されるケースが多く、法的な観点でも「葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り問題ない」とされています。
粉骨を個人で行うことは難しいため、専門業者に相談・依頼するのがおすすめです。
費用の目安:5~30万円
まとめ
墓石の値上がりは、中国での人件費の高騰や環境規制のほか、円安や原油価格の高騰が主な理由となっています。
もともとの費用が高額なこともあり、値上がりによる影響は計り知れません。
とはいえ、一定の品質を望むなら適切な費用が必要であることを念頭に入れ、信頼できる業者を選びましょう。
また、経済的な負担が大きすぎると感じる場合は、他の埋葬方法を検討することも大切です。