「いらない土地や空き家などの不動産は相続放棄できるの?」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
土地や不動産は相続放棄できますが、相続放棄した後も管理責任が残るなど、さまざまな義務や注意点があります。
この記事では、相続人全員が相続放棄した際に必要な手続きについても解説します。
目次
土地や建物・空き家などの不動産を相続放棄できるのか?
土地(不動産)は相続放棄できる
相続をしても活用する予定がない土地や建物などの不動産は、相続放棄が可能です。
家庭裁判所に相続放棄の申し立てをして認められれば、相続放棄した土地や不動産にかかる固定資産税を支払う義務は生じません。
土地(不動産)だけの相続放棄はできない
相続財産の中で土地や不動産だけを相続放棄する、ということはできません。
理由は、相続財産にはプラスの財産だけではなく借金などマイナスの財産も含まれるため、一部の財産(マイナスの財産)だけを放棄することができないのです。
必要な資産は贈与で受け取る方法もある
相続した財産の中で土地だけを相続放棄することは不可能ですが、必要な資産だけを受け取ることは可能です。
これは「贈与」を利用する方法で、必要な財産を事前に贈与で受け取り、いらない土地を含む相続放棄したい財産だけを相続します。
ただし、非課税で贈与できるのは年間110万円までという点に注意が必要です。
土地(不動産)を相続放棄した場合のメリットとデメリット
メリット
使っていない土地や不動産でも、固定資産税は発生します。
相続放棄をすると、この固定資産税の支払いがなくなることが大きなメリットと言えるでしょう。
誰も住んでいない空き家や活用方法がない土地などは、相続放棄を検討する人が多い傾向にあります。
デメリット
家庭裁判所で相続放棄の申し立てが認められると相続人から外されるため、いらない土地や不動産以外の財産もすべて相続できなくなります。
また、預貯金などのプラスの財産はもちろん、他の相続人が土地や不動産を売却した際の利益も手にすることができません。
土地(不動産)を相続放棄する手続きと必要書類
手続きの流れ・必要書類・費用
相続放棄をする際は相続放棄申述書を作成し、相続が発生してから3か月以内の間に家庭裁判所に申し立てをします。
申し立ての際には以下の書類が必要です。
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申し立てが受理されると家庭裁判所から相続放棄受理通知書が届き、正式に相続放棄が認められます。
また、手続きを行う際には、以下の費用が発生します。
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相続放棄は個人で手続きができますが、手間を省くために専門家に依頼する場合には、司法書士や弁護士などへの報酬が発生します。
相続放棄の手続きの流れや必要書類・費用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
土地(不動産)を相続放棄する際の注意点
相続放棄の申立期限は3か月です。
財産について確認したり書類を集めたりするには思った以上に時間がかかります。
相続放棄をする可能性がある場合には、財産の調査を進めて放棄するかどうかを早めに判断し、行動するようにしましょう。
また、申し立てをする前に財産の一部を処分してしまうと相続放棄ができなくなります。
車や時計、貴金属などの売却や定期預金の解約は「単純相続」と判断されて相続放棄が認められなくなる可能性があるため、注意しましょう。
さらに、他の相続人がいる場合には、トラブル回避のためにもきちんと連絡をしておく必要があります。
相続人が複数名いる場合の相続放棄
複数の相続人のうち1人が相続放棄をした場合、他の相続人は相続放棄したことにはなりません。
相続放棄は各個人で手続きをする必要があり、他の相続人の分まで手続きはできない点に注意しましょう。
また、1人が相続放棄をすると他の人の相続割合が増えたり、次の法定相続人に相続権が移行したりするケースもあります。
相続に関係なかった人も巻き込むことになる場合には、事前に相談しておくことが必要です。
共有不動産の持分を相続放棄できるのか
複数の人が所有者となる共有不動産ですが、「自分の持分だけを相続放棄する」ということはできません。
しかし、他の財産も含めて相続放棄をする場合は、共有不動産の相続を免れることができます。
【注意】土地(不動産)を相続放棄しても管理義務がある
相続放棄した人はいつまで管理義務を負う?
土地や不動産を相続放棄しても、次の相続人もしくは相続財産管理人が管理をスタートするまでは管理義務があります。
もしも配偶者や子ども、親、兄弟姉妹となどすべての法定相続人が放棄した場合には、相続財産管理人を選任する必要が出てきます。
管理義務を怠るとどうなる?
管理責任を怠った結果、土地や不動産にトラブルが発生して被害者が出た場合、損害賠償請求を受けることになるので注意が必要です。
また、適切な管理をしないことで土地が荒れたり、建物の倒壊などで財産価値が下がってしまったりした場合、次の相続人から損害賠償請求されることもあります。
相続放棄した土地(不動産)の管理義務が問題になりやすいケース
土地や建物は日頃から管理をしておかないと、以下のようなトラブルにつながりかねません。
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被害を与えた近隣住人などの第三者から損害賠償請求されるだけでなく、自治体から注意や勧告、場合によっては改善命令が届く事もあるため、きちんと管理義務を果たす必要があります。
全員が土地(不動産)を相続放棄すると相続財産管理人の選任が必要
相続財産管理人の役割
すべての相続人が相続放棄をした場合、相続財産管理人を選任する必要があります。
相続財産管理人の役割は、相続人の代わりに相続財産の管理や精算を行うことです。
相続財産の保存行為・管理行為
相続放棄された土地や不動産は、次に所有する人のために常に正しく管理しておかねばなりません。
土地や建物、マンションなどの借入金返済や賃貸物件の賃料受領なども、相続財産管理人が行います。
相続財産の処分行為
相続財産管理人は、相続財産の土地や不動産などを売却したり、家電などその他の財産を処分したりする役割も担います。
被相続人に負債があった場合、土地や不動産を売却して返済に充てますが、売却の際には家庭裁判所へ申し出なくてはなりません。
相続財産管理人の選任方法
相続財産管理人を選任する際には、家庭裁判所に申し立てをします。
申し立てには、相続人がいないことを証明する以下の書類が必要です。
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被相続人の債権者が申し立てをする場合は、利害関係がわかる資料を提出します。
また、申し立ての際には予納金として30〜100万円程度が必要です。
相続財産に預貯金などがあれば、相続放棄をしている場合でも予納金として使用ができます。
相続放棄以外でいらない土地(不動産)を手放す方法
売却する
土地や不動産を売却するにはいくつかの方法があります。
1つ目は不動産会社に仲介を依頼する方法です。
不動産会社が買い手を見つけて売却するまでの時間はかかりますが、手間が少なく高値での買取が期待できます。
2つ目は不動産会社に直接売却する方法です。
多少買取価格は下がりますが、すぐに売却したい場合に適しています。
寄付する
個人への寄付
たとえば隣人の場合、持っている土地と隣り合っていれば用途がある可能性も考えられます。
ただし、個人間の土地や不動産の贈与には贈与税が発生する点に注意が必要です。
また、寄付をした際は必ず所有権の移転登記手続きも忘れないようにしましょう。
国・自治体への寄付
国や自治体が寄付を受けると、管理するための人件費などが発生するだけでなく、固定資産税の税収が減るため、あまりメリットがありません。
国や自治体が利用可能な土地であれば寄付を検討してもらえる可能性もありますが、一般的には国や自治体への寄付は難しいと考えておくほうがよいでしょう。
法人への寄付
営利法人へ土地や不動産を寄付すると、寄付する側に譲渡所得税が課税される可能性があります。
また、寄付を受けた法人には不動産取得税や登録免許税、法人税の支払いが発生するため、活用目的がある場合以外は寄付を受けてもらえる可能性は低いのが現状です。
その一方で、社会福祉法人や学校法人、宗教法人といった公益法人の場合、譲渡所得税や不動産取得税などは非課税であり、公益性のある目的のために寄付を受けてもらえる可能性があります。
手放す前に土地活用も検討しよう
建物は放置しておくと老朽化するだけですが、賃貸に出すことで収入が得られるでしょう。
また建物が古く、借り手がいないと判断した場合には、一度更地に戻して新しく建てた家を賃貸に出す方法もあります。
住宅以外にもコインランドリーや駐車場など、料金収入が期待できる施設を検討するのがおすすめです。
新たに成立した「相続土地国庫帰属法」でいらない土地を国に返せる
「相続土地国庫帰属法」とは?
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)」は2021年に交付され、2023年4月27日に施行開始されます。
この法律は、相続で取得した土地を手放したい場合に、国に引き取ってもらうことができるというものです。
今までは相続放棄をすると、土地だけでなく財産すべての相続を放棄しなければなりませんでした。
しかし相続土地国庫帰属法が施行されれば、土地は国に引き取ってもらい、他の財産は相続できるように変わります。
いらない土地を放棄するには負担金の支払いが必要
いらない土地の国庫帰属を請求するためには、まず申請書類を提出し、審査費用などの手数料を支払います。
そして審査を受けた後、その土地の標準的な管理費用の10年分を一括で支払いましょう。
また、土地に建物が建っている場合は申請前に撤去する必要があります。
「相続土地国庫帰属法」でも放棄できない土地とは
相続土地国庫帰属法が認められないのは以下のようなケースです。
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「空き家対策特別措置法」による“特定空家等”とは
年間を通して誰も住んでおらず、電気や水道、ガスなどが使用されていない住宅が「空き家」です。
以下では、空き家が抱える問題点や「空き家対策特別措置法」について解説します。
「空き家」の問題点
高齢化が進む日本では、団塊世代の老朽化した住宅の相続が増加し、全国に空き家が増え続けています。
放置された空き家が増えると、景観を損ねたりゴミの不法投棄につながったりするほか、倒壊の危険が増す可能性も出てきます。
そのため、近隣住人などに被害が出てしまう前に行政が対応できるよう、空き家対策特別措置法が制定されたのです。
「空き家対策特別措置法」とは
2014年5月26日に完全施行された空き家対策特別措置法では、空き家についてのさまざまな対策が定められています。
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空き家の中でも、以下のような問題のある住宅が「特定空き家」に指定されます。
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特定空き家に対しては所有者への改善命令が下され、過料を請求される場合もあるため、今まで以上に注意が必要です。
相続財産に「空き家」になりそうな不動産がある場合
住宅や別荘などを相続する際は、自分が住んだり賃貸に出したりするなどの活用方法がないかをよく考えておきましょう。
遺産分割協議や相続放棄によって、空き家になりそうな不動産の扱いを決めなければならないケースも多々ありますが、専門家に入ってもらい他の相続人も交えて相談するのがおすすめです。
田舎の家を相続した際の対処法
田舎の家を相続した場合に考えられる問題点や対処法について、正しく理解しておきましょう。
相続した田舎の家をそのままにするデメリット
固定資産税がかかる
誰も住んでいない空き家でも、固定資産税は納めなければなりません。
さらに、特定空き家に指定されてしまうと減額対象から外れるため、6倍もの固定資産税が請求される可能性があります。
近隣からの苦情が発生する
誰も住んでいない状態が続くと、土壌汚染や悪臭の発生、不法投棄などのトラブルが発生する可能性が高くなってしまいます。
そうした場合、近隣の住人に多大な迷惑がかかってしまい、苦情につながりかねません。
管理コストが発生する
家や庭、外壁などを定期的に修繕するための管理コストが発生します。
また、空き家が遠い場所にある場合は出向くための時間や交通費が発生します。
それも難しい場合には、管理を人に依頼する必要があり、人件費などがかかってしまうことになるでしょう。
田舎の家を相続するか相続放棄するかの判断基準
管理コストや固定資産税がかかっても相続するのか、それとも相続放棄すべきなのかを判断するためのチェックポイントは以下の通りです。
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相続する金融資産が少ない場合は、家の維持費が金融資産を食い潰しかねません。
そして、売却や賃貸に出すなどの活用ができるかを検討することも大切です。
古い家の場合、老朽化が激しく売ることも貸すこともできない可能性が考えられます。
また、更地にして土地を活用する場合も、立地が不便でニーズの見込めないケースもあるため、事前確認が必要です。
田舎の家を手放す方法
相続した田舎の家を手放すには、売却や寄付などの方法があります。
しかし、田舎の家はなかなか買い手が見つからなかったり、寄付が断られたりする場合も考えられます。
少しでも早く手放すためには、家を買いたい個人とつながることができる掲示板サイトや空き家バンクに登録をするなどの方法を試してみるといいでしょう。
土地や不動産の相続放棄をお考えの方は林商会にご相談ください
いらない土地や不動産を相続放棄する際には、さまざまな注意点があります。
煩雑な手続きも多いため、専門家に対応を任せたほうがスムーズで安心です。
林商会では、弁護士や司法書士などの専門家が、確かな知識と豊富な経験をもとにお悩み解決のお手伝いをさせていだきます。
まずは無料相談、無料お問い合わせからお気軽にご相談ください。
まとめ
相続財産にいらない土地や不動産がある場合、相続するのか放棄するのかを相続人同士でよく話し合ってから決めることが大切です。
相続放棄をする場合は申立期限も決められているため、スムーズに話し合いを進める必要があります。
土地や不動産の相続放棄を検討する際は、必要に応じて専門家の手も借りて正しく手続きを進めましょう。