【被相続人(亡くなった人)の預金引き出し】凍結口座の解除に必要な書類や改正相続法による仮払制度、相続税申告について解説

相続預金引き出し アイキャッチ

被相続人(亡くなった人)の預金引き出しは可能ですが、相続人間のトラブルになりやすいため注意が必要です。

また被相続人(亡くなった人)銀行口座は凍結され、家族でも預金を引き出せなくなってしまいますが、相続手続きを行うことで凍結が解除され、引き出しが可能になります。

この記事では、預金の相続手続きに必要な書類や死亡の前後に引き出した預金の相続税申告について解説します。

目次

【はじめに】被相続人(亡くなった人)の預金引き出しについて

通帳とお金

被相続人が亡くなると銀行口座は凍結されるため、預金引き出しができなくなります。

しかし、お金を引き出すことが完全にできなくなるわけではありません。

葬儀や入院費用の精算などで被相続人の預金を引き出すためにはどうすればよいのか、詳しく見ていきましょう。

被相続人(亡くなった人)の預金引き出しができる3つのケース

亡くなった人の預金引き出しが可能になるのは、基本的には遺産分割協議が終わってからですが、例外もあります。

ここからは、遺産分割協議前に被相続人の預金引き出しができる3つのケースについて解説していきます。

遺言書で預金を相続した

遺言書に預金を相続する人や配分について具体的に記されている場合、受遺者もしくは遺言執行者が単独で預金を引き出すことができます。

改正相続法による預貯金の仮払制度を利用した

令和元年7月に改正された相続法により、亡くなった人と生活を共にしていた人の生活費や葬儀費用を確保するために「預貯金の仮払制度」が制定されました。

この法改正により、遺産分割協議の前でも預金を引き出せるようになりました。

引き出しできるのは「150万円」もしくは「死亡日現在の預貯金額×3分の1×各法定相続分」のいずれか少ない方の金額です。

裁判所で仮分割の仮処分が認められた

仮払制度を利用して引き出せる金額では必要金額に届かない場合は、裁判所に仮分割の仮処分の申し立てを行い、認められれば預貯金を引き出すことができます。

「預貯金債権の仮分割の仮処分」の申し立てが認められる要件は、以下の通りです。

  • 家庭裁判所への遺産分割の調停、審判の申し立てが行われている
  • 遺産である預貯金を払い戻す必要性があると認められる
  • 他の相続人の利益を害さない

被相続人(亡くなった人)の預金引き出しにありがちなトラブル

被相続人の預金引き出しにありがちなのが、相続人同士のトラブルです。

必要に応じて預金を引き出したとしても、他の相続人からすると納得できない場合もありえるため、注意が必要です。

遺産分割前に相続分以上の金額を引き出した

相続分の範囲内での引き出しであれば、他の相続人も納得できるかもしれませんが、遺産分割前に相続分以上の預金を引き出すと、トラブルになりがちです。

遺産分割前は実際に自分が相続する金額は明確になっていないため、引き出す際は必要最小限にとどめておきましょう。

使途を明確に説明できない

預金の使途がはっきりしない場合、「個人的に使ったのではないか」など他の相続人から疑いをかけられてしまうかもしれません。

遺産分割前に預金を引き出した際は、引き出した目的、使途を他の相続人に説明する必要があります。

  • 入院費の精算
  • 施設への支払い
  • 故人の借入の精算
  • 葬儀費用

など、被相続人のために使ったことがわかるように、領収書明細などの記録を残しておきましょう。

引き出したことを隠していた

「引き出していたことを話すと批判されるのではないか」と考えて、凍結前の口座からお金を引き出したことを隠してしまうのは賢明ではありません。

遺産を黙って引き出したことが後から判明すると他の相続人からの心象が悪く、トラブルに発展してしまいかねません。

遺産分割前に預金を引き出した場合には、そのことを早めに他の相続人に報告しましょう。

注意!被相続人(亡くなった人)の銀行預金は凍結される

被相続人の口座は、家族などから銀行への死亡連絡が届くと凍結され、引き出しや振り込みなどができなくなります。

役所から銀行に死亡連絡が入ることはないので、死亡連絡をする前であれば預金の引き出しは可能です。

被相続人と同居していた家族であれば、通帳やキャッシュカード、暗証番号を把握している場合もあるでしょう。

被相続人のために使用するお金を、必要に応じて凍結前の預金から引き出すことは違法にはなりません。

凍結された相続預金の解除方法

銀行の入り口

凍結された銀行口座を解除するためには、手続きが必要です。

ここからは、解除手続きの流れや必要書類について詳しく見ていきましょう。

相続預金の解除手続きの流れ

被相続人の預金口座を凍結し、解除するまでの流れは以下の通りです。

①被相続人(亡くなった人)の預金の凍結

個人が持っていた預金口座を特定し、被相続人が亡くなったことを金融機関に連絡しましょう。

連絡を受けた金融機関が直ちにその預金口座の凍結を行い、預金の引き出し振り込み引き落としなどができなくなります。

②被相続人(亡くなった人)の預金を相続する人が決定

預金を相続する人は、遺産分割について遺言書が遺されていた場合は、その内容に従います。

遺言書がなければ、相続人による遺産分割協議が行われます。

預金を相続する人が決まれば、金融機関へ凍結解除を申請しましょう。

凍結解除を申請できるのは、預金を受け取る「相続人」「遺言執行者」「相続財産管理人」「相続人から依頼された人」です。

③必要書類を準備して、金融機関に提出

口座の凍結解除をするために必要な書類を準備して、金融機関へ提出します。

必要書類は遺産分割の状況によって異なるため、後述の内容を確認のうえで準備しましょう。

④被相続人の口座の解約

金融機関による書類確認が終わり問題がなければ、被相続人の口座が解約され、相続人の口座へ預金が振り込まれます。

相続預金の解除手続きに必要な書類

凍結されている相続預金の解除に必要な書類は、遺産分割の状況によって異なります。

遺言書がある場合

  • 遺言書(遺言公正証書もしくは検認済みの遺言書)
  • 通帳
  • 検認調書もしくは検認済み証明書
  • 被相続人の戸籍謄本もしくは全部事項証明書
  • 預金相続人の印鑑証明書

遺言執行者が選任されている場合ば、遺言執行者の選任審判書謄本も必要です。

遺言書がなく遺産分割協議書がある場合

  • 遺産分割協議書
  • 通帳
  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本もしくは全部事項証明書
  • すべての法定相続人の戸籍謄本もしくは全部事項証明書
  • すべての法定相続人の印鑑証明書

遺産分割協議書には、すべての法定相続人の署名と捺印が必要です。

遺言書も遺産分割協議書もない場合

  • 通帳
  • 相続関係届出書
  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本もしくは全部事項証明書
  • すべての法定相続人の戸籍謄本もしくは全部事項証明書
  • すべての法定相続人の印鑑証明書

金融機関によっては、遺言書も遺産分割協議書もない場合は相続凍結ができない可能性がある点には注意が必要です。

生前からできる!銀行預金の凍結に備えた事前対策

遺言書の作成

銀行預金を相続するためにはさまざまな手続き書類が必要で、手間や時間がかかります。

そのときになって慌てることがないように、生前から準備を進めておきましょう。

銀行預金の一覧表を作る

預金を持っている銀行口座を一覧表にしておくと、遺された家族がスムーズに相続手続きを行うことができます。

以下のような口座情報をまとめておけば、家族が一つひとつ口座を探して確認する手間が省けるでしょう。

  • 銀行名
  • 支店名
  • 口座の種類
  • 口座番号

銀行口座をできるだけ統一しておく

複数の銀行に口座を持っていると、銀行ごとに口座の凍結・解除手続きを行わなければなりません。

最小限の銀行口座に統一しておけば、手間や時間を減らせます。

また、何十年も前に開設して存在を忘れている口座があるかもしれません。

高齢になると忘れやすくなったり認知症を患ったりする可能性が高いため、早めに銀行口座を整理しておくと安心です。

遺言書を作成する

遺言書がない場合は遺産分割協議が必要になり、協議がまとまるまでに時間がかかったり相続人同士のトラブルに発展したりする可能性もあるでしょう。

口座預金を含めた相続をスムーズに進めるためには、遺言書の作成をおすすめします。

死亡の前後に預金を引き出した場合の相続税申告

相続税の申告

被相続人が亡くなる前後に預金を引き出すことは、正当な理由があり正しく相続税申告をすれば問題ありません。

死亡の前後に預金を引き出す理由

被相続人の死亡前後に預金を引き出す一般的な理由をご紹介します。

葬儀費用などを確保しておきたい

葬儀や入院費用の精算などのさまざまな支払いに備えて、あらかじめ預金を引き出す方が多く見られます。

また、差し当たっての生活費が必要という理由で、被相続人の口座から預金を引き出す場合もあります。

なかには、すぐに口座が凍結されると勘違いをして慌てて預金を引き出す人もいますが、口座が自動的に凍結されることはないため、死亡後でも預金を引き出すことは可能です。

被相続人から依頼された

自分で金融機関に出向くことができない被相続人から、預金の引き出しを依頼されるケースもあります。

自分のお金を手元に置いておきたい、遺産として残すのではなくお世話になった人に配りたいなど、さまざまな思いから預金の引き出しを依頼するようです。

相続税対策になると思った

銀行預金ではなく、現金で手元に置いておけば相続税対策になると考える人もいます。

しかし、実際には口座に入っている預金も手元にある現金も同じ遺産であり、相続税の申告が必要です。

もしも手元の現金を遺産に含めず相続税を免れようとした場合には、脱税とみなされてペナルティが課されるため、注意しましょう。

遺産を隠して自分の取り分を増やしたい

被相続人が亡くなる前後に預金を引き出し、遺産分割に含めずに自分のものにしてしまおうとする人がいます。

このような方法は、預金通帳を確認すればすぐにバレてトラブルに発展してしまいます。

後に判明して他の相続人から不当利得返還請求損害賠償請求をされる可能性もあるため、引き出した預金は遺産に戻すのが賢明です。

亡くなった人のために預金を引き出した場合

亡くなる前から入院していたり寝たきりだったりしたために、預金の管理を家族に任せていたケースも多く見られます。

亡くなった人のために使う目的で家族が代理で預金を引き出した場合、そのお金は相続財産になりませんが、もしもそのお金を亡くなった人以外が使っていた場合は、相続財産とみなされます。

亡くなった人の預金を引き出した場合は、使途理由金額の証拠になる領収書などを残しておきましょう。

お金の流れを明確にしておくことで、他の相続人も預金引き出しに対する不満を抱くことなく、スムーズに遺産相続協議を進めることができます。

遺産相続前に預金を引き出した場合

遺言が残されていない場合、遺産分割協議で遺産分割をしてから預金を引き出す流れが基本でした。

しかし令和元年の相続法改正により、現在は遺産相続前の預金引き出し(仮払)が可能です。

仮払を受けた場合、遺産の一部を取得したことになるため、後から相続放棄をすることはできなくなります。

亡くなる直前に預金を引き出した場合

亡くなる直前に預金を引き出した場合は、引き出した金額から死亡した時点までに使った金額を引いた額が「手許(てもと)現金」として相続税の申告対象に含まれます。

そのため、入院や寝たきりで動けない家族の代わりに預金を引き出した際には、使ったお金の金額や用途などを記録しておくようにしましょう。

  • 医療費
  • 介護費
  • 税金
  • 保険料
  • 生活費

など、亡くなった人のために生前に使った金額以外が、手許現金に該当します。

亡くなった後に支払う葬儀費用入院費医療費などは手許現金に含まれますが、相続税申告の際には「債務控除」の対象とみなされ相続財産にはなりません。

亡くなった人の銀行口座を放置したらどうなる?

アンティークな時計

銀行口座の相続手続きは、提出書類が多いため面倒に感じる人も多いでしょう。

亡くなった人が持っていた銀行口座の凍結や解約の手続きをしないまま放置したら、どうなるのか、詳しく見ていきましょう。

預金の相続手続きに時効は無い

預金の相続手続きに時効はありません。

相続手続きに必要な書類を提出すれば、いつでも解約や払い戻しが可能です。

亡くなった人の口座を放置すると3つのリスクがある

時効がないとはいえ、亡くなった人の口座をそのまま放置するとリスクが伴います。

預金を引き出されてしまう

口座が凍結されていない状態のままで放置していると、通帳やキャッシュカード、暗証番号があれば誰でも入出金できてしまいます。

そのため、相続の話し合いがまとまっていない段階でも、遺産を守るため早めに口座を凍結しておくと安心です。

相続関係が複雑になってしまう

遺言書があれば、銀行口座の相続手続きは相続する本人や遺言執行者が単独で行うことができます。

しかし、遺産分割協議で相続が決まった場合、銀行口座の相続にはすべての相続人の戸籍や実印が必要です。

また、相続手続きをしないまま長い期間放置してしまうと、相続人の中で亡くなる人も出てきます。

亡くなった人が持っていた相続権はその相続人へと移るため、時間が経過するほどに相続人が増えてしまい、手続きがどんどん複雑になってしまうのです。

休眠口座になってしまう可能性がある

2009年以降、入出金や振り込み、口座振替などが行われないまま10年以上経過した口座は「休眠口座」として「預金保険機構」が管理することになりました。

預金保険機構へと移った口座は、払い戻しの際に通常よりも煩雑な手続きが必要です。

また、最後の利用が2008年以前の口座は、預金保険機構に移されることがない代わりに、時効によって払い戻し請求権がなくなることもあります。

時効完成の時期
銀行口座 最後に利用してから5年
信用金庫などの口座 最後に利用してから10年

相続した預金引き出しの疑問や相談は林商会にお任せください!

亡くなった人の預金引き出しは必ずしも違法ではありませんが、相続人同士のトラブルにつながりやすいため、専門家に相談すると安心です。

相続のプロ集団である林商会には、税理士・弁護士・司法書士・行政書士・相続診断士など相続の専門家が在籍しています。

正しい知識と豊富な経験をもとに、お悩みに丁寧に寄り添って最善の解決策をご提案しますので、安心してご相談ください。

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まとめ

お金を持つ手

亡くなった人の預金を引き出すことは法律的には可能です。

しかし、他の相続人との間でのトラブルにつながる可能性があるため、ルールを守り他の相続人が納得できる形で引き出すことが重要です。

亡くなられた方のためにも、相続人同士がスムーズにに相続を進められるよう、適切な手順を踏んで預金引き出しを行いましょう。

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