【相続の寄与分とは!?】長年の介護で被相続人に貢献した相続人は相続額を増やせる!計算方法や民法改正についても解説します

相続 寄与分 アイキャッチ

「何十年もの間、親の介護をしてきた」「親の事業を引き継いで業績を大幅に伸ばした」といった方は、民法で定められた寄与分により、遺産分割時の相続分が増えるかもしれません。

寄与分が認められるためには、証拠を揃えて自ら主張することが必要です。

今回の記事では、寄与分が認められる要件や具体的な行為のほか、寄与分を主張する手続きの流れ、計算方法についても解説します。

目次

【はじめに】寄与分の基礎知識

寄与分の基礎知識

はじめに、寄与分の概要や認められる要件について詳しく見ていきましょう。

寄与分とは

寄与分とは、被相続人の財産維持や増加に貢献した相続人に対し、相続財産を法定相続分に上乗せする制度です。

財産分割の際に生じる不公平をなくすために制定されました。

【注意】寄与分に時効はないが、遺産分割が成立するまでに早めに主張を!

寄与分の請求に時効はありません。

なぜなら、「寄与分」そのものは債権ではなく、遺産分割の目安となる相続分を決定する要素に過ぎないからです。

しかし、遺産分割の成立後は内容を覆すことができないため、遺産分割の合意が成立するまでの間に寄与分を主張する必要があります。

寄与分が認められる要件とは?

寄与分が認められる要件は、以下の6つです。

相続人である

寄与分は相続人同士の公平を図る制度であるため、寄与分が認められるには相続人であることが条件です。

相続人でない場合は、たとえ被相続人に寄与をしている場合でも寄与分は認められません。

ただし、特別寄与料であれば親族でも請求が可能です。

被相続人の財産の維持または増加に貢献した行為を行なった

寄与分が認められるのは、「被相続人の財産の維持または増加に貢献した行為」のみです。

そのため、被相続人に貢献をしていても、その行為が財産の維持や増加につながらない場合は寄与分として認められません。

期待される以上に貢献した行為である「特別の寄与」を行なった

寄与分として認められるには、被相続人に対する貢献が「特別寄与」に該当する必要があります。

民法によって「直系血族および同居の親族は、互いに扶け合わなければならない」ことや、「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」ことのような助け合いの義務が定められていますが、これらの法律で義務付けられた範囲を超えた貢献でないと、特別寄与としては認められません。

無償または無償に近い行為を行なった

寄与分と認められるのは、無償または無償に近い行為です。

したがって、被相続人から寄与に対する報酬や生活費をもらっている場合は、基本的に寄与分が認められません。

しかし、報酬を受け取っている場合でも、第三者に依頼した場合の一般的な報酬に比べて著しく報酬が低い場合は、無償に近い行為としてみなされます。

継続性がある行為を行なった

寄与分が認められるのは、被相続人への貢献が継続的である場合です。

具体的な継続期間や基準は設けられていませんが、ほとんどの場合、年単位での継続が求められます。

相続開始時までの寄与である

寄与分が認められるのは、相続開始時までの寄与までです。

したがって、葬儀費用の提供や遺品整理などは、寄与分として考慮されません。

こんな場合は、寄与分を主張できる?

被相続人に寄与していた人物が、代襲相続人もしくは包括受遺者である場合、寄与分の主張は可能なのでしょうか。

代襲相続人

代襲相続人とは、被相続人の死亡前に相続人が亡くなっていた場合、その相続人に代わって相続をする子や孫のことです。

代襲相続人は共同相続人であるため、寄与分を主張できます。

包括受遺者

包括受遺者とは、プラスの財産やマイナスの財産に関係なく、一定の割合の遺贈を受ける人のことです。

包括受遺者は相続人と同一の権利義務がありますが、すでに寄与の程度に応じた包括遺贈がされているため、寄与分の主張はできません。

寄与分は認められにくい!?その理由とは

寄与分は認められにくい

以下では、寄与分が認められにくい主な理由を2つ紹介します。

相続のトラブルになりやすい

寄与分を認める・認めないという話は、相続でよく起こるトラブルの一つです。

先述の通り、被相続人に貢献していた相続人の寄与分を認めた場合、他の相続人の相続分は減ってしまいます。

そのため、他の相続人に対して何の説明もなく急に寄与分を請求してしまうと、反感を買ってしまう可能性があるのです。

被相続人への「特別の寄与」の要件が厳しい

寄与分として認められるのは、被相続人への貢献が「特別の寄与」の要件を満たしている場合です。

しかし、特別寄与の要件は「無償もしくは無償に近い行為であること」や「法律の範囲を超えた寄与であること」などと厳しく、認められないことがほとんどです。

寄与分が認められるのはどんな行為?

寄与分と認められる行為

被相続人に貢献をしても、その行為が法律で定められている要件を満たしていなければ、寄与分として認められません。

以下では、寄与分が認められるケースを5つ紹介します。

家事従事型

家事従事型である場合は、寄与分が認められます。

家事従事型に該当するのは、被相続人が営んでいた家業を長年にわたって手伝っていたケースです。

しかし先述の通り、寄与分は無償もしくは無償に近い行為でなければ認められないため、労働に見合った報酬が支払われていた場合は寄与分の対象にはなりません。

金銭等出資型

金銭等出資型には、被相続人に対してお金を支給したケースが該当します。

具体的には、建物や土地の購入に資金を提供した場合や、老人ホームへの入居金を負担したケースなどです。

しかし、被相続人が営んでいる会社に出資したお金は出資対象が会社になるため、被相続人への貢献としてはみなされません。

療養看護型

療養介護型には、被相続人の介護や病気の看病を長年にわたって行なった場合が当てはまります。

療養看護型として寄与分が認められるためには、自らの介護療養によってどれくらいの支出が抑えられたのかを主張することが大切です。

扶養型

自分の力で生活することが難しい被相続人の面倒を見ていた場合は、扶養型に当てはまります。

ただし、十分生活できる収入や能力のある被相続人に対しての扶養は、寄与分として認められません。

財産管理型

財産管理型に該当するのは、被相続人の財産を管理したことによって、その財産を維持もしくは増やしたケースです。

具体的には、賃貸不動産の管理や資産を株式や投資信託によって運用することなどが該当します。

寄与分の計算方法

電卓で計算

以下では、寄与分を決める際に役立つ計算方法を紹介します。

【パターン別】寄与分の計算方法

計算方法は寄与のパターンによって異なります。

家事従事型

家事従事型の寄与分の計算方法は以下の通りです。

特別寄与者が通常得られたであろう給与額(年間)×(1−生活費控除割合)×寄与年数

特別寄与者が通常得られたであろう給与額は、政府の調査結果に基づく資料である「賃金構造基本統計調査」を参考に算出されます。

生活費控除割合とは、被相続人との同居で節約された生活費を控除することです。

また、生活費控除割合は被相続人の属性によって異なります。

属性と割合は以下の通りです。

被相続人の属性 割合
被相続人が一家の支柱であった場合 ●     被扶養者が1名:40%

●     被扶養者が2名以上:30%

被相続人が一家の支柱以外であった場合 ●     被相続人が女性:30%

●     被相続人が男性:50%

金銭等出資型

金銭等出資型の寄与分の計算方法は以下の通りです。

【不動産を贈与した場合】

相続開始時の不動産価格×裁量的割合

 

【不動産を無償で貸した場合】

相続開始時の賃料相当額×使用期間×裁量的割合

 

【金銭を贈与した場合】

贈与金額 × 貨幣価格変動率 × 裁量的割合

なお、裁量的割合とは、裁判所が個別の事情に応じて寄与分の額を調整するために用いられる割合のことで、0.5〜0.8で設定されることが多いと言われています。

療養看護型

療養看護型の寄与分の計算方法は以下の通りです。

介護日数×介護報酬相当額×裁量的割合

注意点として、介護位日数には、入院期間や施設入所期間、介護サービスを受けた期間は含まれません。

介護報酬相当額は、厚生労働省によって定められている介護報酬を参考に算出されます。

扶養型

扶養型の寄与分の計算方法は以下の通りです。

負担した扶養額 × 扶養した期間 × (1−扶養義務がある寄与相続人の法定相続割合)

負担した扶養額が不明である場合は、生活保護基準等を参考に算出することもあります。

財産管理型

財産管理型の寄与分の計算方法は以下の通りです。

第三者に委任した場合の報酬額×裁量的割合

第三者に委託した場合の報酬額は、弁護士や不動産業者などのプロに依頼した場合の報酬額であるため、親族が管理を行なった場合は減額される可能性があります。

寄与分の上限は「相続財産マイナス遺贈」の金額

寄与分の上限は民法904条によって、「被相続人が相続開始時に保有していた財産の価額から遺贈の価額を控除した残額」と定められています。

つまり、寄与分は相続財産の中から支払われるため、遺贈金額を差し引いた相続財産を超える額の請求はできないということです。

遺産相続での寄与分と遺贈・遺留分の優先順位は?

遺産相続の際には寄与分のほか、遺贈遺留分を考慮する必要があります。

遺贈とは、故人の遺言書に従って財産を譲ることで、遺留分とは一定の法定相続人に最低限保障される遺産取得分です。

以下では、寄与分と遺贈・遺留分の優先順位について見ていきましょう。

寄与分と遺贈の優先順位

寄与分と遺贈では、遺贈が優先されます。

したがって、寄与分と遺贈が両方ある場合、寄与分の上限は遺贈を除いた財産が該当します。

ただし、すべての相続財産が遺贈の対象である場合は、寄与分はありません。

寄与分と遺留分の優先順位

民法では、寄与分と遺留分の明確な優先順位は定められていません。

また、寄与分の金額が遺留分の侵害額に相当していたとしても法律的には問題ないため、寄与分を有している相続人に対して遺留分侵害額請求を行うことは不可能です。

寄与分がある場合の相続分の計算方法

寄与分がある場合の相続分の計算方法は、以下の通りです。

(相続財産-寄与分)×法定相続分=具体的相続分+寄与分

具体例として、相続財産が4,000万円とし、寄与分が1,000万円ある長男と次男の2人が相続人であった場合の相続分を考えてみましょう。

上記の計算式に当てはめて計算をすると、長男の相続分は(4,000万円−1,000万円)×1/2=1,500万円+1,000万円で2,500万円で、寄与分のない次男の相続分は、1,500万円と算出できます。

遺産相続で寄与分を主張するための手続きの流れ

手続きの流れ

以下では、寄与分を主張するための手続きの流れと、寄与分を主張する場について解説します。

寄与分を認めてもらうための証拠収集

寄与分を主張し、認めてもらうには証拠収集が欠かせません。

以下では、寄与分を主張する際に必要となる証拠をパターン別に紹介します。

証拠として提出できる資料も併せて見ていきましょう。

家事従事型

家事従事型の寄与分を主張する際には、以下のような労務を提供するようになった経緯や労務を行なっていた期間、被相続人との同居の有無などがわかる資料を収集することが大切です。

<労務の実態がわかる資料>

●     寄与した相続人の確定申告書

●     給与明細書

●     預貯金通帳

●     業務日報 など

<被相続人の財産の推移がわかる資料>

●     被相続人の確定申告書

●   預貯金通帳(会社の場合は税務申告書や会計帳簿) など

金銭等出資型

金銭出資型の寄与分を主張する際は、財産給付をした事実を証明することが重要です。

● (被相続人および寄与した相続人の)預貯金通帳
● クレジットカードの使用履歴
● 不動産売買契約書
● 被相続人の家計簿 など

療養看護型

療養看護型は寄与分額がわかりにくいため、寄与行為の証拠をしっかりと提示することが大切です。

● 診断書
● 要介護認定結果通知書
● 介護ヘルパーの利用明細書 など

扶養型

扶養型の寄与分を主張する際は、被相続人の生活費を負担していたことがわかる資料を収集しましょう。

● 預貯金通帳
● 寄与した相続人の預貯金通帳
● カードの利用明細書
● 家計簿
● レシート など

財産管理型

財産管理型の寄与分を主張する際は、財産管理の内容とその結果がわかる資料を集めるのがポイントです。

<被相続人所有の賃貸不動産の管理をした場合>
● 賃貸借契約書
● 口座管理の記録
● 賃借人とのやり取りに関する記録<被相続人所有の土地を売却した場合>
● 売買契約書
● 交渉記録<被相続人所有の不動産の修繕費や公租公課などを負担した場合>
● 修繕前後の写真
● 預貯金通帳のコピー
● 領収書

遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人同士で相続分を決める話し合いの場です。

寄与分の主張は、この遺産分割協議で行われます。

遺産分割調停

遺産分割調停とは、遺産分割協議で相続分が決まらなかった場合に行う裁判所での手続きです。

相続人間の話し合いである遺産分割協議とは異なり、遺産分割調停では裁判所から選出された2名の「調停委員」が、中立的な立場で解決策を提案してくれます。

遺産分割審判

遺産分割調停でも話がまとまらなかった場合には、遺産分割審判が行われます。

遺産分割審判では、裁判所が遺産分割方法を決定し、当事者はその決定に従わねばなりません。

話し合いの結果や提出資料などをもとに裁判所が審判をくだすため、寄与分も法的な根拠や客観的な証拠をもとに主張することが大切です。

寄与分との違いは?特別寄与料について

特別寄与料

寄与分と似た制度に、特別寄与料があります。

以下では、寄与分と特別寄与料の違いを詳しく解説します。

長年の介護が報われる!特別寄与料は親族も請求できる

寄与分を主張できるのは相続人のみでしたが、特別寄与料は親族も請求できます。

以下では、特別寄与料の要件や上限、負担額について見ていきましょう。

特別寄与料の要件

特別寄与料の要件は以下の通りです。

1. 被相続人の親族であること
2. 被相続人の親族が被相続人に対して療養看護やその他の労務の提供をしたこと
3. 被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたこと
4. 被相続人の寄与が無償であること

相続人の寄与分と異なり、特別寄与料において財産上の給付は考慮されません。

特別寄与料の上限

特別寄与料は寄与分と同様、被相続人が相続開始時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えられません。

仮に、被相続人が自身の相続財産について分配方法をすべて遺言で指定していた場合、特別寄与者は相続人に対して金銭の支払請求ができなくなります。

相続人の負担額

特別寄与料は、相続人と特別寄与者との話し合いで決定し、相続人が相続分で負担します。

相続人が複数名いる場合、各相続人の特別寄与料の負担額は、以下の式で算出可能です。

「特別寄与料の額 × 相続人の相続分」

特別寄与料を主張できる親族は誰?

特別寄与料を主張できる親族は、相続人や相続放棄した者、相続人の欠格事由に該当する者および廃除された者を除いた、6親等内の血族と配偶者、3親等内の姻族です。

なお、6親等内の血族には、はとこやいとこ、6世代後の子どもなどを含み、3親等内の姻族には配偶者の曽祖父や曾孫、叔父叔母などの婚姻によって発生する親族を含みます。

【注意】請求期間には期限がある

特別寄与料には6か月の消滅時効と1年の除斥期間(権利行使が可能な期間)があるため、注意が必要です。

相続開始から6か月を過ぎると特別寄与料請求権が消滅してしまい、1年が過ぎると裁判による請求が一切できなくなります。

【2023年4月1日に施行】2021年の民法改正で寄与分制度はどう変わった?

法律

2021年に行われた民法改正により、寄与分制度はどのように変わったのでしょうか。

改正前の問題点

民法改正前の問題点は、遺産分割についての期限がなかったことです。

遺産分割がないまま長期間経過してしまうと、寄与分に関する証拠がばらばらになってしまうなどして記憶が薄れてしまい、具体的相続分(事案ごとに修正して算出する相続割合)の算定が難しくなるケースがありました。

【新ルール】相続開始後10年を経過した遺産分割は、法定相続分で行う

民法改正によって、相続開始後10年を経過した遺産分割は法定相続分で行うというルールが設けられました。

しかし、以下2つのケースに該当する場合は、相続人同士の話し合いによる遺産分割が可能です。

1. 10年経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
2. 10年の期間満了前6か月以内に、相続人に遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由があり、当該事由の消滅時から6か月経過前に家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき

【注意】新ルールは改正法の施行日前の遺産分割にも適用される

先述した新ルールは、施行日前に相続が開始した遺産分割にも適用されます。

ただし、施行日前に発生した相続に新ルールを適用する場合でも、少なくとも施行時から5年の猶予期間が設けられています。

相続の寄与分についての相談や依頼は林商会にお任せください

今回の記事では、相続の寄与分についてご紹介してきました。

寄与分は長年の介護などを相続に上乗せする制度ですが、他の相続人の相続分が減ってしまうため、トラブルになりがちです。

「寄与分を主張したいけれど、具体的にどうしたらよいかわからない」というお悩みや疑問点は、ぜひ相続の専門家集団である林商会にご相談ください。

お一人ひとりの状況に寄り添いながら、最善の解決策をご提案いたします。

まずは無料相談、無料お問い合わせからお気軽にご連絡ください。

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まとめ

相続の寄与分や特別寄与料は、被相続人に対しての貢献が特別な行為である場合に認められます。

そのため、寄与分や特別寄与料を主張する際は、寄与したことがわかる資料を収集し、提示することが大切です。

また、民法改正によって2023年4月1日から遺産分割についてのルールが変わるため、事前によく確認しておきましょう。

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