【アパートの相続】兄弟でのおすすめ分割方法や注意点のほか、小規模宅地等の特例など相続税対策も紹介

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アパートの模型を持つ人

近年、相続税対策としてアパート経営を行う人が増えています。

「親が経営するアパートを相続すべきかどうかの判断基準が知りたい」「兄弟でアパートを相続する方法が知りたい」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の記事では、アパートの相続を決める前に確認しておきたいポイントや兄弟間でのトラブルを防ぐ遺産分割方法、アパートの相続税対策などについて解説します。

目次

ここに注目!アパートの相続を決める前に確認したいポイント

指をさすスーツ姿の女性

まずは、アパートの相続を決める前に確認すべきポイントをご紹介します。

ローン残債がないか

相続するアパートにローン残債がある場合、相続人には支払い義務が発生するため、相続を決める前に、ローン残債がないか必ず確認しておきましょう。

ただし、債務者が亡くなったり障害を負ったりするとローンが完済できる「団体信用生命保険」に加入している場合は、保険による完済が可能です。

維持費がどのくらいかかるか

アパートを相続する際には、維持費も重要なチェックポイントです。

アパートにかかる主な維持費は、以下の通りです。

  • 共用部分の水道光熱費・清掃費
  • 建物内設備のメンテナンス費用
  • 修繕費
  • 消防点検費

想定外の出費に慌てないためにも、アパートの維持費を事前に把握しておきましょう。

築15年以下または築古でも修繕計画が立てられているか

築年数の古いアパートを相続する場合には、修繕計画がきちんと立てられているか確認しておくのも大切なポイントです。

修繕計画に以下の項目が明記されているか、確認しましょう。

  • 屋外共用部の防水工事
  • 外壁工事
  • 金属部分の塗装工事
  • 給排水設備の修繕や取り換え
  • 電気設備・空調設備の修理や取り換え

収益性を保っているか

相続するアパートの収益性も、重要なチェックポイントです。

収益性が高く保たれている場合は問題ありませんが、経営を続けるのが困難なほどに収益性が低い場合は、アパートの売却も視野に入れましょう。

家賃滞納や入居者間トラブルがないか

相続するアパートに、家賃滞納者や入居者間トラブルがないかどうかも確認すべきポイントです。

家賃滞納が発生すると、経営に必要な収入源を十分に確保できません。

また、入居者間トラブルが絶えないアパートは、空き家率が高まるリスクがあるため、長期間家賃収入が停滞する恐れもあります。

【注意】確定申告の条件

アパート相続後の収益が20万円を超える場合は、毎年確定申告を行い、所得税を納めなければなりません。

また、アパートを相続した年の1月1日から相続発生日までの収益は、被相続人の収入として準確定申告が必要です。

さらに、副業を原則禁止されている国家公務員や地方公務員がアパートを相続して賃貸業を営む場合は、次の条件を満たす必要があります。

  • 家賃収入が年間500万円以下である
  • 賃貸物件が5棟・10室以下
  • 自身が賃貸物件の管理業務に携わらない

親のアパート、相続よりも生前贈与がおすすめなケースがある!?

生前贈与を検討する家族

アパートを親から引き継ぐ場合は、相続よりも生前贈与がおすすめなケースがあります。

相続のメリットとデメリット、おすすめなケース

まずは、相続のメリット・デメリット、おすすめなケースを確認しましょう。

相続するメリット

アパートの相続を行う主なメリットは、以下の3点です。

  • 家賃収入を得られる
  • 資産を形成できる
  • 相続税の対策になる

ローン残債がなく、修繕計画や積み立てがしっかり行われているアパートであれば、安定した家賃収入による資産形成が可能です。

また、不動産の相続は現金よりも財産評価額が低い傾向にあるため、相続税対策としても有効です。

相続するデメリット

アパートの相続によるデメリットは、以下の3点です。

  • ローン残債がある場合は、支払い義務が発生する
  • 複数人で相続する場合は、トラブルに発展しやすい
  • 経営悪化のリスクがある

ローン残債がある場合は、相続人に支払いの義務が生じるため、アパートの収益率によっては生計を圧迫する恐れがあり、アパートの売却や自己破産を視野に入れなければならない可能性もあります。

また複数人での相続を検討する場合は、相続分割の協議中にトラブルに発展するケースも多く、専門家への依頼料など追加費用が必要となる恐れもあります。

さらに、アパート経営には以下のようなリスクがあることを事前に知っておきましょう。

  • 空き家や家賃滞納による経営悪化のリスク
  • 自然災害による建物の倒壊や大規模修繕のリスク
  • 築年数の経過による修繕費用の増加や家賃下落のリスク

相続がおすすめなケース

アパートの相続がおすすめなケースは、以下の通りです。

  • 経営が安定している
  • 立地環境がよい
  • 不動産管理の経験がある

アパートの経営が安定している場合はもちろん、アパートの立地環境がよい場合にも相続がおすすめです。

再開発を見込んだ地域であれば、将来的に安定した収益を得られる可能性もあります。

また、アパート経営では幅広い業務をこなす必要がありますが、過去に不動産の管理経験がある方であれば、相続後も安定した収益を得られるでしょう。

生前贈与のメリットとデメリット・おすすめなケース

続いて、生前贈与のメリット・デメリット、おすすめなケースを確認しましょう。

生前贈与するメリット

アパートの生前贈与を行う主なメリットは、以下の3点です。

  • 確実に財産を贈与できる
  • 相続税の節税ができる
  • 受贈者が家賃収入を得られる

確実に財産を贈与できるだけでなく、家賃収入を受贈者が受け取って相続財産の増加を抑えることで、相続税の節税にも有効です。

また、受贈者が得た家賃収入を将来負担すべき納税資金として貯蓄できるのも嬉しいポイントです。

生前贈与するデメリット

アパートの生前贈与を行う主なデメリットは、以下の3点です。

  • 相続税が多くかかる場合がある
  • 不動産取得税がかかる
  • 不動産の登録免許税がかかる
  • 他の相続人が不公平感を感じてトラブルにつながりやすい

アパートの生前贈与では、小規模宅地等の特例が適用されないケースも多く、相続する場合よりもかえって相続税を多く負担しなければならない可能性があります。

また、不動産の登録免許税は相続登記の5倍のコストがかかる点には注意が必要です。

生前贈与がおすすめなケース

アパートの生前贈与は、相続財産の増加を抑えたい場合におすすめです。

再開発などで土地価格の上昇が見込まれる場合には、早めの生前贈与を心がけるとよいでしょう。

トラブルを回避!兄弟姉妹でアパートを相続するおすすめの分割方法

笑顔で会話をする男女

兄弟姉妹など複数人でアパートを相続する場合は、トラブルに発展してしまう恐れがあります。

ここからは、兄弟姉妹でアパートを相続する際におすすめの分割方法を解説します。

代償分割

代償分割は、遺産の現物を取得した相続人が、他の相続人に代償金を支払う方法です。

代償分割の具体例を見ていきましょう。

  • 相続人は配偶者Aと子B・C
  • 代償分割により時価4,000万円の土地を子Bが取得する

このケースでは、Bに代償金の支払い義務が生じます。

法定相続分は、配偶者が1/2、子は1/4です。

したがって、代償分割によりBが支払う代償金は、Aに対して2,000万円、Cに対して1,000万円となります。

換価分割

対価分割は、相続財産の売却代金を分割する方法です。

対価分割の具体例を見ていきましょう。

  • 相続人は配偶者Aと子B・C
  • 土地の売却代金は4,000万円

このケースで対価分割を行う場合は、法定相続分をもとにAに2,000万円、BとCにそれぞれ1,000万円が相続されます。

現物分割

現物分割は、遺産を現物のまま分割して相続する方法です。

現物分割の具体例を見ていきましょう。

  • 相続人は配偶者Aと子B・C
  • 3,000万円の自宅と1,500万円の別荘・預金

このケースで現物分割を行う場合は、法定相続分をもとにAに2,000万円の自宅、BとCには1,500万円の別荘または預金が相続されます。

アパートの相続後すぐに対応すべきこと

チェックリストと赤いペン

ここからは、アパートの相続後すぐに対応すべきポイントを解説します。

アパートの相続登記(名義変更)をする

アパートの相続後には、まず相続登記(名義変更)を行いましょう。

相続登記を行うためには、以下の書類が必要です。

  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 不動産を取得する人の住民票
  • 不動産の固定資産評価証明書
  • 遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書(遺産分割協議を行う場合のみ)
  • 遺言書(ある場合のみ)

また、相続登記で使用された書類は申請後すぐに返却されるため、相続税の申告前に行うのがおすすめです。

相続登記に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらの記事をお読みください。

相続登記に必要な書類や手続き について解説

【1か月以内】賃料振込口座を変更して入居者に連絡する

アパートを相続する際は、1か月以内に振込口座の変更やアパート入居者への連絡を行う必要があります。

賃料振込口座が凍結されると家賃が支払われなくなるため、忘れずに行っておきましょう。

アパートのローンが残っている場合は金融機関に相談する

アパートのローン残債がある場合は、相続人が引き継いで支払わなければなりません。

ローン残債に関する内容は、金融機関に相談するとよいでしょう。

また、相続人が複数いる場合は、債権者である金融機関の承諾を得たうえで、ローン残債を誰が支払うか遺産分割協議で話し合う必要があります。

金融機関の承諾を得ないまま協議を進めてしまうと、相続人全員に債務を負う義務が課されるため注意しましょう。

【4か月以内】被相続人の準確定申告をする

アパートの相続後は、その年の1月1日から相続発生日までの収益に関する被相続人の準確定申告も忘れずに行いましょう。

準確定申告が必要となる条件は、以下の通りです。

  • 事業所得や不動産所得がある
  • 2,000万円以上の給与所得がある
  • 複数の企業から給料を得ている
  • 年金の年間受給額が400万円以上
  • 副業などで20万円以上の収入がある

アパートの相続・生前贈与時に発生する税金や費用

電卓とお金とマイホーム

ここからは、アパートの相続・生前贈与時に発生する税金や費用をご紹介します。

アパートの相続時に発生する税金や費用

アパートの相続時に発生する税金や費用は、以下の通りです。

税金
  • 相続税
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 所得税
  • 住民税
名義変更時の登録免許税
  • 固定資産評価額の0.2%
必要書類の取得費用
  • 5,000円程度
遺産分割協議書
  • 司法書士・行政書士に依頼:10万円程度
  • 税理士に依頼:遺産総額の0.3~1%
不動産登記を司法書士に依頼する場合
  • 6~7万円程度

アパートの生前贈与時に発生する税金や費用

アパートの生前贈与時に発生する税金や費用は、以下の通りです。

税金
  • 贈与税
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 所得税
  • 住民税
不動産取得税
  • 原則4%
名義変更時の登録免許税
  • 固定資産評価額の2%
専門家への依頼料
  • 5~10万円

贈与税は、受贈者が未成年の場合は一般税率成人の場合は特例税率が適用されます。

一般税率と特例税率は、以下の通りです。

【一般税率】

税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

【特例税率】

税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

必読!アパートの相続税を節税する方法

減少を示す青いグラフ

ここからは、アパートの相続税を節税する方法をご紹介します。

小規模宅地等の特例を活用する

小規模宅地等の特例」は、アパートの土地面積のうち最大200m²までの範囲であれば、相続税評価額を50%減額できる制度です。

ただし、空室の面積は除外されるため注意しましょう。

相続時精算課税制度を活用する

生前贈与の際に適用される「相続時精算課税制度」は、生前贈与に必要な税金の支払いを先送りできる制度です。

ただし、相続時精算課税制度を利用する際は、以下のデメリットに注意しましょう。

  • 適用後は自動的に継続され、取り消せない
  • 暦年贈与(年間110万円までは非課税)ができなくなる
  • 贈与額が2,500万円を超えると贈与税がかかる

分筆(登記簿上1つの土地を2つの土地に分けること)を行う

1つの土地を複数に分割する「分筆」を行うと、1つの土地をそのまま相続したときと比較して相続税を減額できます。

分筆には他にも以下のようなメリットがあります。

  • 被相続人が亡くなった後でも対応できる
  • 複数の相続人が相続できる
  • 分筆した土地を別々に処分・活用できる

ただし、土地を分筆するためには土地家屋調査士への依頼費用が40~50万円程度かかるため、分筆の検討は慎重に行いましょう。

アパート管理を一括借り上げにする

アパートを不動産会社が一括で借り上げる「サブリース契約」も、相続税を節税する手段の一つです。

サブリース契約では、常に入居率100%の状態で相続税が計算されるため、節税効果を最大限に受けられます。

ただし、サブリース契約の賃料は定期的に見直されるため、一定期間が経過すると家賃が減額するリスクがあります。

アパートの立地環境などを確認したうえで、サブリース契約をするか検討するとよいでしょう。

借入金を増やしておく

借入金を増やしておけば相続税評価額を下げられます。

ただし、相続税負担の一時的な軽減が可能ですが、長期的にみると利息分の余計な支払いが発生するため、借入金はできる限り少なくしておくのが望ましいと言えるでしょう。

賃貸割合を上げて評価額を下げる

相続税の課税時に貸し出している部屋の割合を示す「賃貸割合」を上げるのも、節税につながるポイントです。

アパートなどの賃貸物件では、賃貸割合を上げることで相続税評価額を下げられます。

満室であれば100%となり、相続税評価額を最小限に抑えることが可能です。

築30年の老朽化したアパートを相続したときの注意点と対策

家の形をした積み木と砂時計

ここからは、築年数が古いアパートを相続した場合の注意点や対策を解説します。

空室が多くなる

築年数の古いアパートは、見た目の悪さや設備の古さから、空室が増えやすい傾向にあります。

空室率が増加すると、その分の家賃収入が得られません。

築年数の古いアパートで安定した経営を目指すためには、建物の大規模修繕や設備交換を検討するだけでなく、リノベーションも視野に入れるとよいでしょう。

修繕費の負担が発生

老朽化したアパートは、大規模な修繕費が必要なケースがほとんどです。

想定外のコストに慌てないためにも、修繕計画や修繕費用の積み立てがきちんとされているか事前にチェックしておきましょう。

老朽化した古いアパートの相続対策は?

老朽化した古いアパートの主な相続対策は、以下の通りです。

  • そのままアパート経営を継続する
  • アパートを修繕または建て替える
  • アパートを売却する

ローン残債や収益率をふまえながら、最適な手段を選択しましょう。

アパートの相続や相続税対策についてのご相談は林商会にお任せください!

ここまで、アパートの相続や相続税対策について紹介してきました。

相続と生前贈与のどちらを選ぶかの判断ポイントやアパートの節税対策には、専門知識が必要です。

また手続きも煩雑なため、不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような不安やお悩みは、相続のプロが多数在籍している林商会にお任せください。

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まとめ

アパートの相続は、ローン残債や維持費、修繕計画を事前に確認し、収益性などのメリットを考慮したうえで検討するとよいでしょう。

親族など複数人での相続を希望する場合には、相続人全員が納得できる分割方法を選ぶのも大切なポイントです。

また、相続財産の増加を抑えたい場合には、生前贈与も視野に入れておきましょう。

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