相続税と贈与税どっちがお得?生前贈与・相続の税率や控除を比較解説!土地不動産は贈与より相続が◎

相続税 贈与税 アイキャッチ

「財産を相続すると莫大な相続税が発生し、損をしたような気持ちになる」そう感じている人が多いのではないでしょうか。

実は生前贈与を活用することで、相続税は大幅に減額できます。

この記事では、相続税贈与税それぞれの特徴に加えて、生前贈与を用いた相続税対策について紹介します。

【はじめに】相続税と贈与税の比較

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財産を残す方法には、生前に行う生前贈与と被相続人が亡くなった後に行う相続の2種類があります。

財産を残す点では同じですが、相続した際には相続税、生前贈与した際には贈与税がそれぞれかかります。

相続税について

相続税とは、相続を受けた相続人に対して財産を取得した際に課せられる税金です。

税率

相続税の税率や控除額は、下表のように相続で取得した財産の金額によって異なります。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

「法定相続分に応ずる取得金額」とは、遺産総額(プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた金額)から基礎控除額を控除した残額を指します。

また、相続税は法定相続により、相続したものと仮定して計算を行いましょう。

非課税枠について

相続税の非課税枠は「基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算できます。

たとえば、相続人が配偶者と子1人の場合は「3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円」となり、相続財産が4,200万円以下の場合、相続税は課されません。

特例・控除

相続税の計算をする際には、相続人の負担が大きくなって生活に支障が出ることを避けるため、以下のような特例と控除が設けられています。

小規模宅地等の特例 居住や事業、貸付用の住宅や土地を相続したとき一定条件に該当れば最大で評価額が8割減となる
配偶者の税額軽減 被相続人の配偶者の法定相続分または1億6,000万円までの相続であれば相続税は課されない
贈与税額控除、相続時精算課税制度による贈与税額の控除 相続発生前3年以内の生前贈与や相続時精算課税制度で取得した財産は相続財産に加算されるが、支払い済みの贈与税額は相続税額から控除される

上記以外にも、未成年の相続人がいる場合に適用される未成年の税額控除、85歳未満の障害者が相続人の場合は障害者の税額控除、前回の相続から10年以内に相続が発生した場合の相次相続控除などがあります。

贈与税について

贈与税は、生前に個人から年間110万円を超える財産を受け取った際に受贈者に対して課せられる税金で、贈与者と受贈者による「贈与契約の合意」のもとで贈与が行われた際に発生します。

なお、年間110万円の基礎控除額は受贈者ごとに適用されます。

税率

平成27年以降の贈与に関しては、贈与税の税率が「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されました。

一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない贈与財産で、兄弟姉妹間・夫婦間・親から未成年の子どもへの贈与などが当てはまります。

特例贈与財産とは、18歳以上の受贈者が直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与によって取得した贈与財産です。

税率と控除額は、下表の通り基礎控除後の課税価格によって異なります。

【一般贈与財産】

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

【特例贈与財産】

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税 率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

相続時精算課税制度について

相続時精算課税制度とは、贈与財産の種類にかかわらず、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与の累計が2,500万円までは、贈与税が非課税となる制度です。

相続時精算課税制度を選択すると撤回できず、暦年贈与(年間110万円まで贈与税がかからない非課税枠)には戻せなくなるので、注意してください。

相続時精算課税制度を適用することで年間110万円の非課税枠を失い、相続発生時には相続財産に加算されることを覚えておきましょう。

特例・控除

贈与税にも、以下のような特例や控除があります。

配偶者控除 婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産等の贈与については最大2,000万円までを控除できる
住宅取得資金贈与の特例 父母や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けたときに最大1,000万円までが非課税となる
教育資金の一括贈与に係る非課税措置 教育資金の贈与を受けた場合に最大1,500万円までが非課税となる

税率は高くても生前贈与のほうがお得?!

電卓とペン

ここまで、相続税と贈与税それぞれの税率や特例を解説してきました。

前述のように、贈与税の税率は相続税よりも高いですが、税率だけで判断してはいけません。

ここからは、相続税の減額につながる生前贈与について理解を深めていきましょう。

110万円以内であれば贈与税はかからない

毎年1月1日〜12月31日までの年間贈与額が110万円以下の場合は、贈与税がかかりません。

この制度を利用した相続方法を暦年贈与と言います。

また、財産が相続税の基礎控除額未満の場合は相続税が発生しないため、贈与の必要はありません。

生前贈与を行うことで相続税を減額できる

生前贈与は、相続税対策に有効です。

例として、被相続人(父)の資産総額が1億円、相続人が子2人の場合を見ていきましょう。

生前贈与を行わなかった場合

相続する際には基礎控除額を控除した残額によって遺産分割を行うものとして相続税を計算します。

1億円-(3,000万円+(600万円×2))=5,800万円

法定相続人分に応じる取得金額:5,800万円×1/2=2,900万円

子ども1人分の相続税額:2,900万円×15%=435万円

435万円×2名=870万円

相続した際にかかる相続税の総額は870万円です。

生前贈与(暦年贈与)を行なった場合

子ども2人に20年間をかけて年間100万円ずつ(総額 各2,000万円)の贈与を行なった場合を計算します。

この場合、基礎控除額110万円以下のため、贈与税はかかりません。

相続が発生した場合、非相続人の財産は「1億円-(100万円×20年×2名)=6,000万円」に減少しており、相続税は以下のように計算できます。

6,000万円-(3,000万円+(600万円×2))=1,800万円

法定相続人分に応じる取得金額:1,800円×1/2=900万円

子ども1人分の相続税額:900万円×10%=90万円

90万円×2名=180万円

上記のように、20年間に渡ってコツコツと生前贈与を行なったことにより、相続税を870万円から180万円まで減額でき、690万円の節税効果が得られます。

生前贈与の注意点

贈与税の申告書

生前贈与の4つの注意点について、以下でそれぞれ解説していきます。

一括贈与とみなされると課税対象になる

毎年贈与を続けていくことを「連年贈与」といい、贈与額が年間110万円以下であれば課税対象になりません。

しかし、10年などの長期にわたって一定額を贈与し続けると、最初から多額の贈与をするつもりだった、つまり一括贈与とみなされ、贈与額の総額に課税される場合があります。

上記の対策としては、贈与契約は毎年行う、毎年贈与の時期をずらす、毎年少額の贈与税を納める、受贈者が印鑑や通帳を保管しておく、贈与契約書を交わして公証人役場で確定日付を取っておくなどの方法があります。

相続発生前3年以内の生前贈与は相続税に加算される

相続発生前3年以内の生前贈与は、贈与がなかったものとみなされ相続税に加算される点にも注意が必要です。

被相続人が亡くなる直前に相続税の減額目的で親族などへ贈与することを防止するために、上記のルールが設けられています。

土地・不動産の生前贈与は損になる

土地や不動産は換金するのが難しいため、分割して贈与できません。

また、相続によって不動産を取得した場合は課税されませんが、生前贈与によって不動産を取得した場合は不動産取得税が課税される点にも注意が必要です。

名義預金とみなされると相続税が発生する

名義預金」とは、実際にお金を預金している人と口座名義人が異なる預金のことです。

以下のようなケースは名義預金とみなされて相続財産に含めねばならないため、相続税が課されます。

  • 夫のお金を妻の名義で預金していた場合
  • 親が作った子ども名義の預金口座の存在を、子どもが認識していない場合
  • 子ども名義の預金通帳や印鑑を親が管理している場合
  • 名義人の口座預金が生前贈与されたものではない場合

上記の対処法としては、生前贈与をする度に贈与契約書の作成をする、通帳や印鑑は名義人が管理する、毎年贈与税の申告をする、銀行送金で記録を残すなどが挙げられます。

生前に不動産や家を贈与したい場合はどうすればいい?

お金と家

生前に不動産や家の贈与を検討している人も多く見られます。

しかし、不動産は分割して贈与することができないため、通常の贈与ではなく「住宅取得等資金の非課税特例」の活用がおすすめです。

住宅取得等資金の非課税の特例とは

「住宅取得等資金の非課税の特例」とは、直系損族(親や祖父母)から住宅購入費用の援助を受けた際に、1人あたり最大1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。(令和5年12月31日までの贈与が対象)

この制度は基礎控除(110万円)との併用が可能です。

しかし、購入する住宅の契約日や省エネ等住宅かどうか、消費税が課税されているかどうかで非課税限度額が異なりますので、よく確認することをおすすめします。

また、この制度は相続発生前3年以内の生前贈与加算の対象に含まれないため、相続税対策に有効です。

贈与税申告書は必ず提出しましょう

「贈与税額が発生しない場合」でも「贈与税申告書」は必ず提出しましょう。

なぜなら、住宅取得等資金の非課税の特例を利用する際は、贈与税申告書の提出が必要だからです。

提出期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日です。

万が一、提出期限に遅れてしまうと特例が利用できず、贈与税が課税されてしまうので注意してください。

また、提出先は贈与を受けた人の居住地を管轄する税務署です。

【注意】小規模宅地等の特例が利用できなくなる可能性

小規模宅地等の特例」とは、相続税を計算する際に土地の評価額を最大80%まで減額できる制度です。

しかし、住宅取得等資金の非課税の特例を利用すると、この小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性があります。

なぜなら、小規模宅地等の特例の適用条件が「亡くなった人の配偶者や同居の親族であること」となっており、配偶者や同居親族がいない場合には「亡くなった人と別居しており、3年以上自分の持家に住んでいない親族」が対象となるからです。

つまり、別居している子どもに住宅取得等資金の非課税の特例を利用して自宅を持たせてしまうと、小規模宅地等の特例が利用できなくなってしまいます。

相続・生前贈与のご相談は株式会社林商会にお任せください

相続や生前贈与の際に課せられる相続税・贈与税についてご説明してきました。

相続や生前贈与の際にはさまざまな注意点や特例があり、難しいと感じる方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな不安は、ぜひ相続の専門家集団である林商会にご相談ください。

相続診断士、弁護士、司法書士などの相続のプロが、お悩みの一つひとつに寄り添い、きめ細かに対応させていただきます。

まずは無料相談、無料お問い合わせからお気軽にご連絡ください。

お問い合わせ

まとめ

電卓とお金

相続税と贈与税の税率を比較すると贈与税のほうが高くなりがちですが、贈与の方法を工夫することで相続税の減額につながります。

生前贈与を検討する際には、本記事でご紹介した特例や控除、贈与とみなされないための対策などをしっかりと押さえておきましょう。

また、生前贈与は早いうちから行うことをおすすめします。

不安なことがある際には、お気軽に専門家に相談してみてください。

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