「名義人が亡くなった銀行の預金口座を相続するには、どのような手続きが必要なんだろう?」と疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
銀行の相続手続きをスムーズに進めるためには、誰が手続きするのかを明確にする必要があります。
この記事では、手続きの流れや必要書類のほか、注意点について紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
目次
銀行の預金口座を相続する手続きの流れ

名義人が亡くなった銀行の預金口座を相続する、大まかな流れは下記の通りです。
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銀行や状況によっても異なりますが、必要書類を提出してから約1~2週間で手続きが完了します。
なお、銀行に相続手続きを申請した時点で預金口座は凍結され、入出金が一切できなくなるので、家賃などの引き落としがある場合は注意しましょう。
【銀行の相続手続きをスムーズに進めるために】誰が手続きするのかを明確に!

銀行の相続手続きを行う人は、遺言書の有無や遺言書の内容によって異なります。
ここでは、銀行の相続手続きをスムーズに進めるために、手続きする人の決め方をご紹介します。
相続人全員での手続きが一般的
遺言書がある場合は遺言書が最優先となり、その内容に従って手続きを進めますが、遺言書や遺産分割協議書がない場合、銀行口座の相続手続きは「相続人全員」でするのが一般的です。
ただし、相続人全員と言っても、実際は代表者を決めて手続きを進めます。
一方、相続人全員が遺産分割協議で口座受取人を決めて遺産分割協議書にまとめれば、その口座受取人が単独で手続き可能です。
遺言書に遺言執行者または受遺者が記載されている場合
遺言書の中に「遺言執行者」または「受遺者」の記載があれば、その人が銀行口座の相続手続きを進めます。
「遺言執行者」または「受遺者」と記載があるにもかかわらず、他の人が勝手に手続きを進めることはできません。
【注意】自筆の遺言書は内容確認の前に検認手続きを!
遺言書が自筆証書遺言と呼ばれる全文手書きの場合は、封のいかんを問わず、開封前に家庭裁判所の検認手続きが必要です。
自筆の遺言書を見つけたら、速やかに遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ検認の申立てを行いましょう。
検認とは、家庭裁判所で遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止したり、相続人に対し遺言書の存在と内容を知らせたりするための手続きです。
検認手続きをせずに遺言書の開封や執行をした場合は、5万円以下の過料に処せられ、相続人の地位がなくなる恐れもあります。
ただし、「自筆証書遺言書保管制度」を活用して法務局に保管されている自筆証書遺言や公正証書遺言の場合は、検認不要です。
銀行口座の相続手続きに必要な書類

銀行口座の相続手続きに必要な書類は、遺言書や遺産分割協議書の有無で異なります。
ここでは、それぞれの場合に必要な書類をご紹介するので、ご自身に必要な書類を確認のうえ準備しましょう。
遺言書なし・遺産分割協議書ありの場合
遺言書がなく遺産分割協議書を作成した場合は、遺産分割協議で指定した口座受取人が手続きを進めます。
その際に必要な書類は下記の6つです。
故人と相続人全員の戸籍謄本
まずは故人の出生から死亡まですべて記載された戸籍が必要です。
故人の本籍地を管轄する市区町村役場か、遠方の場合は郵送で請求しましょう。
次に、相続人全員の戸籍謄本も法定相続人の確認のために必要です。
相続関係によっては複数枚の戸籍謄本が必要ですが、それぞれの本籍地を管轄する市区町村役場か、遠方の場合は郵送で請求しましょう。
遺産分割協議書
資産を誰が受け取るか明確に記載された遺産分割協議書の原本が必要です。
相続人全員が署名・実印を捺印したものを準備します。
口座受取人の実印
口座受取人の本人確認として必要です。
実印を登録していない場合は、先にお住まいの市町村役場で印鑑登録の手続きをします。
口座受取人の印鑑登録証明書
印鑑登録証明書とは、実印が市区町村役場で登録されていることを証明する書類です。
実印登録した市区町村役場のほか、マイナンバーカードがあればコンビニでも取得できます。
相続届
各銀行の窓口で指定された書類を取得して準備しましょう。
銀行によって「相続手続依頼書」や「相続に関する依頼書」などと呼ばれます。
故人の通帳・キャッシュカード・印鑑
故人の通帳とキャッシュカード、印鑑があれば準備します。
ない場合でも手続きはできますが、銀行によっては追加の書類が必要です。
遺言書なし・相続人全員で共同相続する場合
遺言書がなく相続人全員で共同相続する場合は、代表者を決めて手続きを進めます。
その際に必要な書類は下記の5つです。
故人と相続人全員の戸籍謄本
まずは故人の出生から死亡まですべて記載された戸籍と相続人全員の現在戸籍が必要です。
それぞれの本籍地を管轄する市区町村役場か、遠方の場合は郵送で請求しましょう。
なお、故人の戸籍謄本で確認できれば相続人の戸籍は不要となる場合もありますが、基本的には本人確認のために複数枚の戸籍謄本が必要です。
代表者の実印
口座受取人の本人確認として必要です。
実印を登録していない場合は、先にお住まいの市町村役場で印鑑登録の手続きをします。
代表者の印鑑登録証明書
印鑑登録証明書とは、実印が市区町村役場で登録されていることを証明する書類です。
実印登録した市区町村役場のほか、マイナンバーカードがあればコンビニでも取得できます。
相続届
各銀行の窓口で指定された書類を取得して準備しましょう。
銀行によって「相続手続依頼書」や「相続に関する依頼書」などと呼ばれます。
故人の通帳・キャッシュカード・印鑑
故人の通帳とキャッシュカード、印鑑があれば準備します。
ない場合でも手続きはできますが、銀行によっては追加の書類が必要です。
遺言書ありの場合
遺言書がある場合には、指定された遺言執行者または受遺者が遺言書に従って手続きを進めます。
その際に必要な書類は下記の6つです。
故人の戸籍謄本
故人の本籍地にある市区町村役場か、遠方の場合は郵送請求で取得可能です。
遺言書の内容によっては、相続人を確認するために出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になる場合もあります。
遺言書の原本
遺言書がある場合は、以下のいずれかの原本が必要です
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遺言執行者または受遺者の実印
口座受取人の本人確認として必要です。
実印を登録していない場合は、先にお住まいの市町村役場で印鑑登録の手続きをします。
遺言執行者または受遺者の印鑑登録証明書
印鑑登録証明書とは、実印が市区町村役場で登録されていることを証明する書類です。
実印登録した市区町村役場またはマイナンバーカードがあればコンビニでも取得できます。
相続届
各銀行の窓口で指定された書類を取得して準備しましょう。
銀行によって「相続手続依頼書」や「相続に関する依頼書」などと呼ばれます。
故人の通帳・キャッシュカード・印鑑
故人の通帳とキャッシュカード、印鑑があれば準備します。
ない場合でも手続きはできますが、銀行によっては追加の書類が必要です。
銀行口座の相続手続きで注意したいこと

銀行口座の相続手続きには、注意点もあります。
相続前に預金引き出しをすると相続放棄できなくなる
相続手続きの前に口座から預金を引き出すと、単純承認とみなされ相続放棄できなくなる可能性があります。
相続放棄とは預金などのプラス財産だけでなく、ローンなどのマイナス財産の相続権もすべて放棄することです。
そのため、相続前にプラス財産である預金を引き出してしまうと、財産を受け取ったとみなされ、相続放棄できなくなる場合があります。
ほかにも、名義変更や口座の解約などを相続手続きの前に行うと、相続放棄はできません。
相続放棄できないケースについて更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
相続人が多い場合は戸籍謄本の収集に時間がかかる
遺言書がない場合は、故人の戸籍謄本以外に相続人全員の現在戸籍も必要です。
戸籍謄本は、それぞれの本籍地を管轄する市町村役場で取得しなければなりません。
結婚や引っ越しなどで本籍地が遠方の場合は郵送でも請求できますが、相続人が多ければ多いほど収集に時間がかかるでしょう。
そのため、あらかじめ相続人の範囲を確認し、余裕をもって準備を進める必要があります。
相続手続きを申請すると銀行口座は凍結される
銀行に相続手続きを申請した時点で預金口座は凍結され、入出金が一切できなくなるので注意しましょう。
凍結は遺産分割に関する手続きが完了し、財産の相続が確定するまで続きます。
公共料金や家賃などの支払い、クレジットカードなどの引き落としがある場合は予定を確認し、事前に口座の変更手続きを行いましょう。
放置していると休眠口座になってしまう
銀行口座の相続手続きが煩わしく感じる方もいるかもしれませんが、手続きをしないまま長期にわたって放置すると、休眠口座になってしまいます。
休眠口座になると残高証明書や取引履歴などの証明書が発行できない可能性があるほか、近年は休眠口座に対して手数料を導入していく銀行も増えているため注意しましょう。
休眠口座にしないために、生前に使用中の銀行口座を確認しておく、各銀行の窓口に故人の口座がないか問い合わせてみるなどの対策が必要です。
【銀行口座の相続】よくある質問

最後に、銀行口座の相続の際によくある質問を4つご紹介します。
銀行の相続手続きはいつまでにすればよい?
銀行の預貯金や株の相続手続きに期限はありません。
ただし、手続きをしないまま放置しておくと、相続人の誰かが勝手に使ってしまうなどトラブルにつながる恐れがあります。
さらに、長期にわたって放置すると休眠口座になってしまう可能性もあるでしょう。
適切に相続して預金の払い戻しを行うためにも、遺産分割協議がまとまって必要書類が揃った頃をめどに、手続きを始めるのがおすすめです。
亡くなった人の預金を引き出してもよい?
亡くなった人の預金を引き出すことは可能ですが、「引き出した預金の使途を明確に説明できない」など相続人同士のトラブルにつながるケースが多く見られます。
また、亡くなった人のために預金から引き出したお金は相続財産には含まれませんが、相続税対策として手元に置くために引き出していた場合は相続税の申告が必要です。
その他、亡くなった人の預金引き出しについて更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
残高証明書を取得するにはどうしたらよい?
遺産分割協議や相続税申告などの相続手続きを進める際には、被相続人の預貯金の残高証明書が必要です。
残高証明書は証明したい日付の正確な残高を公に証明するための書類で、被相続人の預金口座のある金融機関に発行申請を行なって取得しましょう。
被相続人が亡くなった日付を指定するなどの注意点や主要銀行別の取得方法など、残高証明書について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
名義預金とはどのような預金?
名義預金とは実際の預金者と口座の名義人が異なる預金で、亡くなった人が子どもや孫、配偶者の名義で残した預金などがその代表例です。
預金の資金源や管理者が亡くなった人の場合などは名義預金とみなされ、税務調査でばれると相続税の申告漏れでペナルティが課せられます。
名義預金とみなされないためには「贈与の事実を残す」「銀行振り込みで贈与の証拠を残す」などの事前対策を行うとよいでしょう。
名義預金について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
銀行の相続手続きに関する疑問やご相談は林商会にお任せください!
ここまで、銀行の相続手続きに必要な書類や注意点などについて解説してきました。
「銀行の相続手続きをしたいけれど、難しそうだし時間も取れそうにない」など、お困りの方も多いのではないでしょうか。
そのような方は、相続の知識と経験が豊富な専門家に任せると安心です。
林商会には税理士・司法書士・弁護士・行政書士など相続の専門家が在籍しており、お悩みの一つひとつに寄り添った丁寧な対応に定評があります。
どんな小さな疑問やお悩みにも真摯に対応し、最善の解決策をご提案しますので、まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。
まとめ

銀行の相続手続きは、遺言書の有無や遺言書の内容によって進める人が異なります。
遺言書で遺言執行者または受遺者が指定されている場合は遺言書に従って進めますが、遺言書がなければ相続人全員で手続きするか、遺産分割協議で指定した口座受取人が進めます。
また、それぞれの状況によって必要な書類も異なるため注意しましょう。
特に、相続人全員の戸籍謄本を収集するには時間がかかります。
手続きをスムーズに進めるために、あらかじめ相続人の範囲を確認し、余裕をもって準備してください。
不慣れな銀行の相続手続きの不安を解消するには、相続に詳しい専門家に相談するのがおすすめです。