相続にはお金が絡むため、家族間でトラブルに発展してしまうケースも珍しくありません。
「仲のよかった親族と揉めて、疎遠になってしまった…」という事態を避けるためにも、解決策を確認しておきましょう。
今回の記事ではよくある相続トラブル事例や対処法、事前にできる対策を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
【はじめに】相続争いはどの家庭でも起こりうる
「相続争いなんてうちの家族には無縁だろう…」と考えている方は多いのではないでしょうか。
そこで、まずは「どの家庭でも起こりうる」相続争いの現状について解説します。
相続のトラブル件数は増加傾向にある
司法統計年表によると、令和3年の遺産分割事件総数は全国で13,447件でした。
10年前の平成23年の遺産分割事件総数10,793件と比較すると、約3,000件も増加していることが分かります。
年々増加傾向にあり、今後も増えていく見込みです。
相続のトラブルは遺産価額1,000万円以下が多い
相続のトラブルは「相続財産が多いほど発生しやすい」とイメージされる方が多いのではないでしょうか。
ところが、実際は遺産価格が少ない場合の方がトラブルが起こりやすいのです。
司法統計年表によると、遺産分割事件のうち遺産額別1,000万円以下の事例が全体の約3分1を占めています。
5,000万円以下だと、おおよそ半数にものぼります。
【トラブル事例】相続争いの7つの要因と対処法
ここでは、相続トラブルにつながりやすい要因を7つ紹介します。
それぞれの概要と対処法を知っておくことでトラブルを回避しましょう。
兄弟間で意見が対立している
遺産分割では兄弟間での意見が対立しトラブルになることがあります。
あらかじめ遺産が多いと分かっている場合は、遺産分割について弁護士に相談しておくなど、事前に何か対策されているケースがほとんどです。
一方で、1,000万円以下の遺産だと事前に対策していない場合が多く、相続発生後にトラブルが発生する確率が高まります。
対処法としては、兄弟間のトラブルを回避するために、遺産分配比率を確認しましょう。
主なケースは次のとおりです。
相続人 | 分配比率 |
被相続人の配偶者と子ども |
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被相続人の配偶者とその親 |
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被相続人の配偶者とその兄弟姉妹 |
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配偶者がいない場合 |
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特定の相続人が遺産を独占している
たとえば、長男という理由で遺産を独占している場合があります。
昔は長男が遺産をすべて継承する「家督相続」が行われていた時代もありましたが、現在では法律上の権利に基づいて是正を求める必要があります。
対処法としては、遺言によって遺産のすべてを相続した長男に対して遺留分(相続人に対して法律上確保された最低限の財産)を主張し、遺留分侵害額請求を行いましょう。
介護を担っていた相続人が寄与分を主張している
介護など、被相続人の生前に財産の維持や増加に貢献した相続人には、遺産分割時に寄与分が特別に考慮されます。
たとえば、長男が親の介護をしてきた場合、子どもがもらえる遺産の割合は同じですが、それでは不公平さが生じるでしょう。
また、次男の妻が介護してきた場合でも、子どもの妻に相続権はありませんが、それでは納得いかないこともあるはずです。
一方で、寄与分の主張に対して、他の子どもが「介護したくてもできなかった」などと反論すればトラブルに発展してしまいます。
対処法として、寄与分が認められる要件をあらかじめ確認しておきましょう。
【寄与分が認められる要件】
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また、特別な寄与として認定されるには、下記3つを満たしていることが重要です。
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ただし、寄与分の請求は「相続人と相続人の一定の親族」に限られることは踏まえておきましょう。
特定の相続人が高額の生前贈与を受けていた
生前贈与とは、被相続人の生前に財産を贈与することです。
高額の生前贈与を受けた場合は「特別受益の持ち戻し計算」を行い、遺産相続分を減額される可能性があります。
この際に「どの財産が生前贈与に該当するのか」や「本当に生前贈与があったのか」などが不明確であれば、トラブルにつながります。
対処法としては、生前贈与時に贈与契約書などを作成し、誰にどの財産をどれだけ贈与するかを明確にしておくようにしましょう。
被相続人が土地や実家などの不動産を所有していた
土地や実家などの「分けられないもの」や「評価の難しいもの」が財産に含まれる場合には、注意が必要です。
このような資産は、相続人同士で評価方式をめぐって意見が対立しやすく、トラブルに発展するケースが後を絶ちません。
たとえば、土地や家の資産を分割方法は4つあります。
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対処法としては、分割方法の種類を確認し、「誰にどのように相続させるか」を遺言書に残しておくのが有効です。
被相続人に内縁の配偶者がいる
内縁の配偶者には相続権はありません。
そのため、被相続人の遺産がもらえず生活に困ってしまう…というケースがみられます。
対処法としては、遺言書に内縁の配偶者への遺産分配についても明記しておくことで、配偶者の不利益を減らせるでしょう。
ただし、法定相続人との間でトラブルが起きないよう、遺留分を除いた相続内容にするのがポイントです。
また、特別縁故者になることでも相続の権利が与えられます。
特別縁故者になるには家庭裁判所への申し立てが必要で、申し立てを行っても認められなければ特別縁故者になることはできません。
遺言書の内容が偏っている
遺言書の内容は被相続人が自由に決められるため、偏りがあることも少なくありません。
また、「遺言書の形式が無効の場合」や「遺留分を無視した内容である場合」などはトラブルにつながりやすいケースです。
対処法としては、遺言書作成時の判断能力や状況などを考慮し、遺言書の効力を詳しく確認してみましょう。
相続争いが解決しない場合はどうする?
トラブル回避のための対策を講じたけれど、結局意見が対立してしまった…ということもあるでしょう。。
相続争いが長引く場合は、遺産分割調停を申立てるのが有効です。
遺産分割調停を申立てる
遺産分割調停とは、相続人同士では遺産分割協議が思うように進まない場合に、家庭裁判所に介入してもらう方法です。
遺産分割調停申立書および関連資料を作成し、管轄の家庭裁判所に申し立てます。
調停で解決しない場合は審判に移行する
遺産分割調停でも話がまとまらない場合は、裁判による解決しか方法はありません。
話し合いが不成立だった場合、遺産分割審判の手続きが進められ、法律に従って裁判所の判断にゆだねられます。
【トラブル対策】相続争いを予防する8つの方法
相続争いを予防するためには、生前から準備しておくことが大切です。
ここからは、8つのトラブル対策を紹介します。
家族で話し合って情報共有しておく
何より大切なのが、生前から家族でしっかり話し合っておくことです。
被相続人の希望や相続財産の確認、管理方法などを家族で共有しておきましょう。
財産目録を作成する
財産目録とは、被相続人の財産を一覧にしたものです。
作成義務はありませんが、遺言書と共に準備しておくことで、相続の際に分かりやすい資料となります。
また、遺産分割調停の申し立てをする場合には、家庭裁判所への提出が必要になるので、事前に作成しておくとよいでしょう。
遺言書を作成する
遺言書は優先的に準備しておきましょう。
遺言書を作成する際は、遺留分を考慮し、内容の偏りを避けることが重要です。
また、形式無効とならないために、公正証書遺言の利用もおすすめです。
家族信託を利用する
家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族に託し、管理や処分を任せる財産管理の方法です。
家族信託を利用することで、生前から財産管理や財産の帰属先を決められるため、相続の際にトラブルを回避できます。
成年後見制度を利用する
認知症などへの不安があるなら、成年後見制度を利用して適切に財産を管理しましょう。
元気なうちであれば、事前に委託内容を決めておく任意後見制度が利用できます。
また、判断能力が既に低下している場合でも、法定後見制度の申立てが可能です。
遺産の分割割合を把握しておく
遺産の分割割合や方法を知っておくと、遺産分割時のトラブル回避に役立ちます。
相続人同士で遺産分割で揉めた場合は、まず法定相続分を前提に遺産分割協議を行うとよいでしょう。
たとえば、配偶者、子ども2人が相続人の場合の法定相続分は以下の通りです。
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相続税の課税対象を把握しておく
各財産が課税対象に該当するかどうかを把握しておくと、遺産分割協議や相続税申告手続きの際にスムーズに話を進められるでしょう。
ただし、基礎控除額の範囲内だと相続税はかかりません。
基礎控除額の計算方法は以下の通りです。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
相続財産の総額から基礎控除分を引くと相続税の課税対象範囲が分かります。
弁護士に相談する
相続争いでは、相続人同士が話し合っても折り合いがつかないケースがあります。。
そこで、もしスムーズに進まないと感じたら、トラブルが深刻化する前に弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士であれば、相続に関する解決方法だけではなく、書類や申立の手続きもサポートしてもらえるでしょう。
相続争いで弁護士に相談する3つのメリット
ここでは、相続争いに関して弁護士に相談するメリットを3つ紹介します。
法律や相続の正しい知識を教えてもらえる
弁護士に相談することで、法定相続分や寄与分など、法律の正しい知識を教えてもらえます。
相続人同士の話し合いでは揉めごとになりやすい事項も、専門家の知識の裏付けがあればスムーズに進められるでしょう。
また、意見が対立してしまった相続人それぞれに対して、根拠をもって説得できる点もメリットといえます。
代理交渉により当事者同士のトラブルを防げる
相続人同士で揉めてしまって話し合いが進まない場合、弁護士に代理交渉を依頼できます。
代理交渉により、相続人の親族と揉めなければならない精神的負担やストレスも軽減可能です。
交渉決裂後も調停・審判・起訴を依頼できる
万が一交渉が決裂したときに、遺産分割調停や審判などの手続きを依頼できるのも、弁護士に依頼するメリットです。
知識がない状態で手続きを進める不安も解消でき、書類の書き方についてもアドバイスをもらえれば安心でしょう。
相続争いやトラブル対策のご相談は弁護士も在籍する林商会にお任せください!
相続は「争族」とも揶揄されるほど、トラブルに発展してしまうケースが後を絶ちません。
親族間での争いが深刻化しないためにも、不安な点があれば早いタイミングで専門家に相談するのがおすすめです。
相続の専門家集団である林商会では、弁護士・税理士・行政書士・相続診断士などが在籍し、随時相続関連の相談を承っております。
お客さまのお悩みごとに最適な解決策をご提案いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
相続争いはどの家庭でも起こりうるトラブルです。
仲の良かった家族の決別を避けるためにも、問題が発生したらすぐに対処しましょう。
また、生前から家族で話し合い、トラブル対策を講じておくことが大切です。