【相続放棄は生前にできる?】生前贈与や遺留分放棄などの対応のほか、借金を相続したくない場合の注意点についても解説します

相続放棄 生前 アイキャッチ

「親に借金があるので相続したくない。今のうちに相続放棄することはできるの?」というお悩みの声を多く耳にします。

残念ながら生前に相続放棄はできませんが、生前贈与など代わりの手段での対策が可能です。

今回の記事では、生前に相続放棄の代わりにできる対策のほか、遺留分放棄の手続きや注意点についても解説します。

生前の相続放棄はできない

紙と手

生前に相続放棄を行うことはできません。

相続放棄の手続きは家庭裁判所への申し立てが必要ですが、生前には受付をしていないので注意しましょう。

生前の宣言や念書だけでは相続放棄したことにならない

相続放棄は、家庭裁判所への申し立てがないと認められません。

そのため、被相続人や他の相続人に相続放棄を宣言・誓約したり、相続放棄する旨の念書・誓約書などを一筆書いたりしただけでは、相続放棄をしたことにはなりません。

相続放棄を希望する際には、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に出向くか郵送での手続きを行う必要があります。

被相続人の生前に相続放棄を宣言したり念書を書いたりしている人は、相続開始後の手続きを忘れないようにしましょう。

生前に相続放棄ができない理由

生前に相続放棄ができない理由は、相続放棄を生前に行うことは法律で認められていないためです。

相続放棄は、家庭裁判所に対して定められた手続きを行うことで法的に認められますが、家庭裁判所では生前の相続放棄を受け付けていません。

【相続放棄に代わる手段】被相続人が生前にできる7つのこと

電卓とノート

親が多額の負債を抱えていることがわかっている場合でも、相続放棄の手続きは被相続人の生前に行うことはできません。

しかし、代わりとなる手段が7つ挙げられますので以下でご紹介します。

債務整理をする

生前にできる相続放棄に代わる方法として「債務整理」が挙げられます。

債務整理とは、被相続人が自ら債務を減らすことで相続人の負担を減らす方法です。

生前に借金返済の見込みがなければ、債務整理を検討してみましょう。

債務整理の方法は、以下のように自己破産個人再生(民事再生)任意整理の3つに分類されます。

自己破産 裁判所に申し立てて借金を免除してもらい、返済義務を免れる
個人再生(民事再生) 裁判所に申し立てて借金を大幅に減額してもらい、残りの借金を3~5年で返済する
任意整理 債権者との交渉により、利息や毎月の返済額、返済期間などを見直して完済する

生命保険に加入する

被相続人が生命保険に加入することも、相続放棄に代わる方法の一つです。

生命保険の死亡保険金は相続放棄をしても受け取れるため、家族は借金を相続放棄する一方で保険金は受け取ることができます。

生前贈与をする

相続財産を特定の相続人に残したい場合は、生前贈与も検討するとよいでしょう。

生前贈与で受け取った財産は、相続放棄をしても返す必要がありません。

被相続人の財産額が負債より多いときは、生前贈与がおすすめです。

家族信託をする

家族信託とは、信頼できる家族に自分が保有する不動産や預貯金などの財産を管理・処分する権限を与えておく方法です。

老後の介護や認知症の発症などに備えて信頼できる家族へ託しておくことで、自分の意向に沿って相続財産を分割しやすくなる効果が期待できます。

推定相続人の廃除を申し立てる

推定相続人の廃除とは、被相続人が家庭裁判所に申し立てを行い、特定の相続人の相続権を失わせる制度を指します。

強い効力があるため、相続廃除を認めるかどうかは慎重に判断され、認められるケースは稀です。

遺言書を作成する

特定の人に相続をさせたくない場合は、遺言書の作成がおすすめです。

特定の相続人に遺産を相続させたくない旨を遺言書に記載することで、その相続人を相続対象から除外できます。

ただし、後述する遺留分の存在に注意が必要です。

遺留分放棄をする

遺言書で相続対象から除外された場合でも、配偶者や子ども、親には遺留分という権利があります。

遺留分放棄をする際の手続きや注意点について、見ていきましょう。

遺留分放棄をする際の手続きや注意点

手続き

遺留分とは、被相続人の法定相続人に最低限保障される遺産取得分を指します。

子どもや配偶者などの近親者は、被相続人が亡くなったときに財産を相続する権利を保有しており、遺留分は遺言の内容よりも強い権利と言えます。

生前贈与や遺言書だけでは、被相続人の意向に沿って相続が分割されるとは限りません。

そのようなときに活用できる方法が「遺留分放棄」です。

遺留分放棄について、しっかりと理解しておきましょう。

遺留分について

遺留分とは、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額(民法1043条)」のことです。

被相続人の遺言によって、遺産のすべてを特定の人物に渡したり、法定相続人以外の人に財産を残したりする場合があります。

たとえ遺言がある場合でも、法定相続人は、遺留分を主張すれば必ず一定の財産が取得できるのです。

そもそも遺留分とは

遺留分とは、被相続人の遺言によって特定の人物が多くの財産を譲り受けた場合に請求できる「一定範囲の相続人に認められている最低限の遺産取得割合」のことです。

例として、親の遺言に不公平な遺産分割の方法が記載されていたり、愛人にすべての財産を譲られたりといった場合には、法定相続人が財産を受け取った人に対して遺留分を請求できます。

遺留分は被相続人の遺言よりも効力が強いため、被相続人の意向に沿った遺産分割を行うためには生前の「遺留分放棄」が有効です。

遺留分があるのは誰か

遺留分が認められるのは、配偶者直系卑属(子どもや孫)・直系尊属(親や祖父母)です。

被相続人の兄弟姉妹や甥姪には遺留分が認められない点に注意しましょう。

遺留分の割合

遺留分の割合は、相続人によって異なるため、以下のように総体的遺留分(遺留分の合計)と個別的遺留分(遺留分権利者それぞれの遺留分の割合)を掛け合わせて計算しましょう。

父母が2人、子が複数いる場合には、それぞれの遺留分を人数で割ります。

【総体的遺留分】

直系尊属のみ(親や祖父母) 遺産全体の3分の1
配偶者や子どもの場合 遺産全体の2分の1

【個別的遺留分】

相続人 遺留分の合計 それぞれの遺留分
配偶者 他の相続人
配偶者と子 2分の1 4分の1 子(合計):4分の1
配偶者と被相続人の父母 3分の1 父母(合計):6分の1
配偶者と被相続人の兄弟 2分の1 兄弟:なし
子のみ 子:2分の1
被相続人父母のみ 3分の1 父母:3分の1
兄弟のみ なし

生前の遺留分放棄は家庭裁判所の許可が必要

生前に遺留分放棄をすることは可能ですが、非常に強い効力をもつため、家庭裁判所の許可が必要です。

個人で遺留分放棄を宣言したり書面に残したりしても、効力は発生しないので注意しましょう。

また、他者が遺留分放棄を強要したり、本人の意思に関係なく勝手に遺留分放棄の手続きをしたりはできません。

生前に遺留分放棄するとどうなる?

生前の遺留分放棄が認められると、相続が発生したときに被相続人の遺言書や生前贈与に納得できなかったとしても、遺留分侵害額請求を行うことができなくなります。

生前に遺留分放棄をする際の手続き方法

遺留分放棄の前提と生前の遺留分放棄の手続きについて説明します。

遺留分放棄の前提

遺留分放棄の前提として以下の2つのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

  1. 相続人本人の意思を無視して遺留分放棄させることはできない
  2. 申し立ては必ず許可されるものではない

生前に遺留分放棄をする際、遺留分放棄をする相続人本人が家庭裁判所に申し立てる必要があり、本人の許可を得ずに放棄はできません。

また、生前の遺留分放棄は、申し立てを行なっても必ず許可がされるわけではない点にも注意が必要です。

遺留分放棄の手続きは大きな効力が発生することから、裁判所が相当と認めない限り、許可はされません。

遺留分放棄の手続き方法

遺留分放棄の手続きは被相続人ではなく、遺留分を放棄する相続人本人が行います。

申立先は、被相続人の住所地を管轄している家庭裁判所です。

また、以下の書類などを準備します。

  • 申立書
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 申立人の戸籍謄本
  • 収入印紙800円分
  • 郵送用の郵便切手

遺留分放棄が許可されるための基準

申し立ての完了だけでは、遺留分放棄は認められていません。

家庭裁判所で裁判官による審問手続きを行なったうえで、許可するか否かを判断します。

生前の遺留分放棄が許可されるための基準について、以下でご紹介します。

本人の意思による遺留分放棄であること

まず、遺留分放棄は相続人本人の意思であることが欠かせません。

たとえば、被相続人や他の相続人から遺留分放棄を強要されていた場合などは認められません。

合理的な理由や相当の代償があること

もう一つは、遺留分放棄をする合理的な理由があるかどうかです。

一般的には「相当の代償を受けていること」が合理的な理由として挙げられます。

たとえば、遺留分放棄の代わりに生前に相当な金銭を受領していたり、住宅を買ってもらっていたりする場合などです。

相続開始後も遺留分放棄はできる

相続開始後も遺留分放棄は可能です。

しかし、生前の遺留分放棄とは異なり、家庭裁判所の許可を得るための手続きは必要なく、遺留分を侵害している人に対して、遺留分を放棄する意思を表示するだけで問題ありません。

相続放棄との違いは何?

相続放棄は初めから相続人でないことになるため、遺産分割協議には参加できず、被相続人の債務も引き継ぎません。

その一方で、遺留分放棄しただけでは被相続人の債務支払い義務が残りますが、遺言書に書かれていない財産の遺産分割協議にも参加できます。

両者の違いをしっかり押さえて、自身にとって最適な手段を選択しましょう。

親の借金を相続したくない場合に知っておきたいこと

家と夫婦

生前から親に多額の借金があることを把握しており、相続したくないと考えている方も多いのではないでしょうか。

親の負債を相続しないために知っておくべきことを、以下でご紹介します。

親の生前と死後では対処法が異なる

親の生前と死後では対処法が異なります。

親の生前に相続放棄をすることはできないため、代わりに債務整理で借金を減らす、遺留分放棄手続きを行うなどの方法で対処しましょう。

親の死後は、相続放棄の手続きを行うことで、負債を含むすべての財産を引き継ぐ必要がなくなります。

【注意!】遺言書の内容は債権者には関係ない

被相続人の借金を引き継がないよう、遺言書に特定の人物へ借金の相続をしない旨を記載している場合でも、債権者は遺言書の内容に拘束されない点には注意が必要です。

たとえば、親が遺言書に「借金を含めた財産はすべて長男に相続させ、次男には相続させない」と記していても、債権者は遺言書の内容に関係なく次男にも借金の請求をすることが可能です。

相続放棄の疑問点は林商会にお気軽にご相談ください

相続放棄は生前にできないことなどをご紹介しましたが、「相続放棄って難しそう」という不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

相続放棄に関する手続きは複雑で、正しい知識がないとトラブルになりかねません。

少しでも疑問や不安を感じる方は、ぜひ相続放棄のプロ集団である林商会にお任せください。

相続診断士、弁護士、司法書士などの相続放棄の専門家が、一つひとつの疑問やお悩みを丁寧に解決していきます。

まずは無料相談、無料お問い合わせからお気軽にご相談ください。

お問い合わせ

まとめ

生前から相続放棄の手続きはできませんが、債務整理、生前贈与、遺言書の作成、遺留分放棄などの代わりの方法で対策が可能です。

しかし、遺留分があるため、遺言書の作成だけでは意向に沿った相続が行えない可能性があります。

遺言書を作成する際には、あらかじめ生前に遺留分放棄も行なってもらうのがおすすめです。

遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要ですが、申し立てによっては許可されないこともあるため、遺産分割や遺留分放棄に不安があるときは、専門家へ相談してみましょう。

公式LINEアカウントで無料相談受付中!

終活瓦版では公式LINEアカウントにて、遺品整理・終活・ゴミ屋敷などの無料相談を実施中です!

どんな些細なことでも構いません。まずはお気軽にご相談ください!

LINEをお友達追加する