「亡くなった親の遺産に田舎の山林が含まれているけれど、相続すべきか迷っている」「山林を相続することになったけれど、何をしたらよいかわからない」など、山林の相続についてお悩みの方必読です。
この記事では、山林を相続するメリットとデメリットや山林を相続したら行う手続きのほか、山林を相続したくない人がとるべき対処法についても解説します。
目次
【山林を相続すべき?】メリットとデメリットを比較して判断しよう!
山林の相続にはメリットとデメリットがあります。
双方を理解したうえで、相続するかしないかの判断をしましょう。
山林を相続するメリット
まずは山林を相続するメリットについて解説します。
貸し出して活用できる
立地や土地面積によりますが、林業事業者などの企業に山林を貸し出して活用できます。
また、自然環境を守るために山林の活用をサポートしている自治体もあるため、希望する方は役所で相談してみましょう。
売却して利益を得られる
需要が見込めるエリアなら、林業事業者などに山林を売却して利益を得られる可能性があります。
しかし、なかなか売れない可能性があるため、木材の売却も視野に入れるとよいでしょう。
もしも自身で林業を行わない場合は、人を雇うことで収益化が可能です。
キャンプ場などのレクリエーションの場として活用できる
広大な山林は、キャンプ場などのレクリエーションの場として活用できます。
なぜなら、近年はキャンプやハイキング、サバイバルゲームなどのアウトドア人気が高まっているからです。
山林を地域のレクリエーションの場として活用すれば、地域貢献につながります。
太陽光発電に活用できる
山林は太陽光発電に活用できます。
日当たりのよい場所にソーラーパネルを設置すると、効率よく売電することが可能です。
ソーラーパネルの設置には、日当たりのよさや日照時間の長さ、設置場所の広さなどの条件をクリアせねばなりません。
また、土地の形状によっては設置できないケースもあるため、まずは業者に相談しましょう。
山林を相続するデメリット
続いて、山林を相続するデメリットについて解説します。
売却しにくい
山林は売却しにくい点がデメリットです。
なぜなら宅地などと比較して買い手が少ないうえ、敷地の広さのわりに売却価格が安く売却益が少ないからです。
また、買い手が見つからないと管理費用や固定資産税などを負担し続けなければなりません。
収益化しにくい
山林は売却しにくいだけでなく、商業地などと比較して収益化しにくい点もデメリットに挙げられます。
なぜなら、郊外にある山林は活用方法が限られ、エリアや需要によっては収益がほとんど出ないケースもあるからです。
山林のほか林産物の販売も収益化につながりますが、長期的に取り組む必要があるでしょう。
また自身で林業や林産物業を行わない場合、人件費が発生してさらに利益が出づらくなってしまいます。
管理と固定資産税の負担がかかる
山林を所有すると管理と固定資産税の負担がかかります。
山林の管理には体力的に大きな負担がかかりますが、業者に依頼すると管理コストが発生します。
また山林を所有しているだけで、固定資産税を納税せねばならない点にも注意が必要です。
子どもや孫に相続の負担がかかる
山林を相続すると、自分が亡くなった際に子どもや孫に相続の負担をかけてしまう可能性があります。
たとえば、売却に出した山林の買い手が見つからない状態のまま亡くなってしまうと、管理コストや固定資産税の負担を子どもや孫にかけてしまう事態になりかねません。
山林を相続するかどうかの判断基準
山林を相続するかどうかの判断基準は、主に以下の2つです。
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まずは、アクセスの良さや宅地に転用しやすい形状など、売却しやすい要素があるかどうかを確認しましょう。
次に賃貸や売却、レクリエーションの場としての活用などで収益化が可能かどうかを確認したうえで、相続するかどうかを決めましょう。
山林を相続したら行う3つの手続き
ここからは、山林を相続したら行う3つの手続きを紹介します。
所有者の届出をする
まずは所有者の届け出をします。
森林法改正によって、平成24年4月以降、山林を相続した際には市長村長への届出が義務化されました。
届出の提出期限は相続発生後90日以内で、届出を怠ると10万円以下の罰金を支払わねばならない可能性があります。
また、敷地面積に関わらず提出しなければならない点にも注意しましょう。
森林組合に土地活用の意思表示をする
続いて、森林組合に土地活用の意思表示をします。
なぜなら、土地活用の意思表示をしておけば、森林組合が山林の買い手や借り手を斡旋してくれる可能性があるからです。
山林はすぐに買い手や借り手を見つけづらいため、森林組合にサポートしてもらいましょう。
相続登記(名義変更)をする
森林組合への土地活用の意思表示ができたら、相続登記(名義変更)をします。
山林を相続したら、下記の必要書類を揃えて速やかに法務局で手続きをしましょう。
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また、現在は必ずしも相続登記をする必要はありませんが、2024年4月1日から義務化される点には注意が必要です。
【注意】山林の相続手続きをせず放置したらどんな問題が起こる?
山林の相続手続きをせずに放置したら、所有者不明の山林が増えてしまいます。
所有者不明の山林は、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
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上記のような問題の発生を防ぐためにも、山林の相続手続きは速やかに行ないましょう。
山林を相続する際に注意すべきこと
山林を相続する際に注意すべきことを紹介します。
山林・保安林・原野の所在地情報を把握する
山林・保安林(農林水産大臣または都道府県知事によって指定された森林で、特定の公益目的を期待された森林)・原野(人の手が加えられていない土地)の所在地情報を把握しましょう。
相続する山林の所在地情報(所在番地)を特定する際には、まずは登記及び課税情報を確認します。
しかし、実際の所有権の範囲とはズレが生じている可能性が高いため、登記所備付地図を閲覧したり地形・立木の生態の正確さに焦点を当てた行政機関の地図を取り寄せたりしなければなりません。
山林の現況調査が必要
山林は土地情報の不正確さによって隣地所有者と境界線トラブルになりやすいため、現況調査が必要です。
現況調査とは、地域の現況に関する既存資料の収集、解析や現地調査を指します。
土地情報の正確性を保証するために、業者等に現況調査を依頼しましょう。
相続したけど…いらない山林を処分する方法
いならい山林の処分を検討する際には、以下の5つの手段から選びましょう。
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山林相続で起こりがちな問題点
山林相続で起こりがちな問題点を紹介します。
伐採・造成・建築に関して法律で強く制限される
伐採・造成・建築など、山林に手を加える際には法律で強く制限されます。
たとえば、保安林指定による伐採制限や林地開発許可制度による開発行為の制限などが挙げられます。
上記のような法律による制限のため、山林を活用しようと思っても許可が下りない恐れがあるので注意が必要です。
災害発生時のリスク
山林の周辺では山崩れや土石流等が発生しやすいため、災害発生時のリスクにも注意が必要です。
山林の管理状況次第では損害賠償請求を起こされる可能性があり、自然災害が想定外の出来事だとしても、責任は免れないでしょう。
また、トラブルが起きると子どもや孫に負担をかける可能性もあるため、管理状況に問題がないか定期的に確認しなければなりません。
不法投棄等の犯罪リスク
山林は近隣に常駐することは難しいため、不法投棄等の犯罪リスクにさらされています。
不法投棄以外にも、森林の窃盗、立木等の器物破損、放火による延焼等の犯罪リスクがあるため、森林組合に管理を任せることを検討してもよいでしょう。
しかし、森林組合による不審者の監視にも限界があるため、犯罪リスクの可能性は免れないのが現状です。
値下げしても買い手が見つかりにくい
山林は、値下げしても買い手が見つかりにくいのが一般的な傾向です。
先述のような問題点のため、買い手を見つけにくいからです。
買い手がなかなか見つからないと、管理費や固定資産税を支払い続けなければならないため、森林組合や山林バンクなどへの相談が必要です。
山林の相続税評価
山林の相続税評価について紹介します。
【はじめに】山林は3種類に区分される
山林は以下の3種類に区分されます。
純山林
純山林とは、市街地から離れた場所にある山林で、宅地の価額の影響をあまり受けません。
中間山林
中間山林とは、市街地や別荘地帯の近くにある山林で、純山林より売買価格の水準が高いのが特徴です。
市街地山林
市街地山林とは、宅地内もしくは市街化区域内にある山林で、宅地の価額の影響を強く受けるのが特徴です。
山林の評価方法
山林の評価方法について紹介します。
純山林・中間山林は倍率方式
純山林と中間山林は倍率方式で評価します。
倍率方式は、固定資産税評価額と地域ごとに決められた倍率をもとに評価します。
計算式は「山林の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率」です。
各地域の倍率は国税庁が定めており、「評価倍率表」で確認が可能です。
市街地山林は宅地比準方式
市街地山林は宅地比準方式で評価します。
宅地比準方式では、山林を宅地として評価した価格から、宅地に転用する際の造成費を控除します。
計算式は「山林の相続税評価額=(宅地として評価した1m²あたりの価格-1m²あたりの造成費)×山林の面積」です。
保安林・特別緑地保全地区にある山林の評価方法
保安林・特別緑地保全地区にある山林の評価方法について紹介します。
保安林の評価方法
保安林とは、水源の保持や土砂災害の防止、生活環境の向上などの目的を達成するために、水産省農林水産大臣または都道府県知事によって指定された山林です。
評価の際には、立木の伐採制限に対応する控除割合を差し引きます。
なぜなら、目的にあった山林の機能を確保するため、伐採や土地形質の変更に規制があるからです。
計算式は「保安林の相続税評価額=山林の自用地価格額-(山林の自用地価格×控除割合)」です。
特別緑地保全地区にある山林の評価方法
特別緑地保全地区とは、都市で良質な自然環境を形成している緑地のことです。
無秩序な市街化を防止するもの、景観が優れているものなどが指定されています。
特別緑地保全地区に含まれる山林の評価方法は、以下の計算式で算出します。
「特別緑地保全地区内の山林の相続税評価額=純山林や中間山林、市街地山林としての評価額×(1-80/100)」です。
【注意】山林は「立木」も相続税評価の対象になる
山林を相続すると土地だけではなく、敷地内に生えている立木(樹木の集団)も相続税評価の対象になるので注意が必要です。
立木は種類や樹齢、場所などによって評価方法が個別に定められています。
山林を相続したくない人がとるべき3つの対処法
山林を相続したくない人がとるべき3つの対処法について紹介します。
寄付をする
条件を満たしている山林は、国や地方自治体に寄付できます。
自然保護のためのエリアやレクリエーションの場として活用できる場合は、受け入れてくれるでしょう。
反対に、使い勝手が悪い山林は断られてしまう恐れがあります。
寄付を検討している方は、市区町村など自治体の担当窓口で相談しましょう。
売却する
山林を相続したくないときは、寄付以外に売却も可能です。
最近はキャンプやアウトドアが人気なので、以前より購入希望者が多い傾向にあります。
ただし、一人で買い手を探すのは負担が大きいので、森林組合や山林バンクへの相談がおすすめです。
他にも、近隣の山林所有者や林業者への売却、国庫帰属制度の利用なども検討するとよいでしょう。
ただし、個人でのやり取りはトラブル発生の恐れがあるので、注意が必要です。
相続放棄する
相続放棄とは、亡くなった方の財産の相続権を放棄することです。
山林も相続放棄できますが、「土地や不動産だけを相続放棄できない」「相続放棄しても土地の管理責任は残る」などの注意点があります。
また、相続が発生してから3か月以内に家庭裁判所に申し立てを行わねばなりません。
煩雑な手続きも多いので、専門家に相談することをおすすめします。
土地や不動産の相続放棄について詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
山林の相続についてのご相談は林商会にお任せください!
山林を相続するかどうかはメリットやデメリットを正しく理解したうえで判断し、相続する際には必要な手続きを行わねばなりません。
しかし、山林には権利関係や境界線が不明なケースも多く、相続しても「何から手を付けてよいかわからない」とお困りの方も少なくありません。
そのようなお悩みは、相続のプロ集団である林商会にお任せください。
司法書士・弁護士・税理士などの専門家が、正しい知識と豊富な経験をもとに、お悩みに寄り添って最適な解決策をご提案します。
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まとめ
本記事では、山林相続のメリット・デメリットを紹介しました。
山林相続は方法によっては収入を得られますが、長期的な取り組みが必要であったり収益化が難しかったりします。
名義変更などの手続きが必要なほか、放置したときの問題点など注意すべき点があるので、専門家の意見を取り入れながら対応を進めましょう。
山林相続についてお悩みの方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。