「兄が長男だからという理由で遺産をひとりじめしようとしている」など、相続問題は兄弟姉妹といえどもトラブルに発展しがちです。
また、分割が難しい土地や不動産相続もトラブルが起こりやすいと言えます。
この記事では、相続争いのトラブル事例や対処法・予防法のほか、土地相続や兄弟姉妹で起こりがちなトラブルをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
【はじめに】相続問題(トラブル)は3つのパターンに分類される
相続問題で揉めてしまうと、家族の関係性が悪化したり長期化したりする恐れがあるため、あらかじめ予想されるトラブルを把握しておくとよいでしょう。
ここでは相続問題で起こりがちな3つのパターンを解説します。
パターン①相続人同士が遺産分割で対立する
よくあるパターンとしてまず挙げられるのが、相続人同士が遺産分割で対立することです。
兄弟姉妹がいるなど相続人が多い場合は、遺産相続の割合でトラブルになるケースが多く見られます。
現金のほか、不動産や遺品など分割が難しく不公平になりやすい遺産も多いためです。
また遺産の取り分が多い人は、他の相続人から不足分を請求された場合に補償金の支払いにも応じなければならないため、トラブルになりやすいと言えます。
パターン②高額の相続税が相続人の負担になる
遺産相続を受けると相続税を納めなくてはいけませんが、相続税が高額になり相続人の負担になってしまうケースも多く見られます。
相続税は一律でではなく、遺産金額と相続人の人数によって税率が10〜55%まで変動する仕組みです。
遺産の金額が多くなるほど、また相続人が少ないほど税率が引き上げられるため、相続人が少なく多額の遺産を相続しても、相続税の負担も増えてしまいます。
また相続税は、相続開始日から10か月以内の納付が義務付けられていますが、現金による一括納付が原則である点も、相続人に大きな負担となるでしょう。
パターン③現金化できる相続財産が少なく相続税の支払い負担が大きい
故人の遺産に現金が少なく不動産などの割合が多い場合、相続税の支払い負担が大きくなります。
現金を相続すれば相続税の支払いに充てることが可能ですが、不動産を相続した場合は、相続税の納税資金を自分で用意しなければなりません。
不動産を売却して現金を工面する方法もありますが、不動産売却の際にも仲介手数料や税金が新たに課せられるため、資産価値をそのまま受け取れないことには注意が必要です。
先述の通り、相続税は現金での一括納付が原則なため、相続税の金額が増えるほど相続人は納税資金を新たに用意しなければならず、負担に感じてしまうでしょう。
必読!相続争いのトラブル事例と対処法・予防法まとめ
相続にはお金が絡むため、たとえ血を分けた家族といえどもトラブル(争い)に発展してしまうケースが多く見られます。
たとえば「遺言によって長男が遺産を独占した」というトラブル事例には、長男に対して遺留分を主張し、遺留分侵害額請求を行うことで対処可能です。
また、相続争いを予防するためには、家族で話し合って情報共有するなどの事前対策が有効です。
相続争いのトラブル事例と対処法・予防法について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
土地(不動産)相続は問題(トラブル)の宝庫!?5つの事例と対策
遺産相続にトラブルはつきものですが、特に現金ではなく土地や不動産などを相続する場合には相続問題が起きやすいとされています。
ここでは、土地や不動産の相続トラブルの事例と対策を解説します。
①相続財産を平等に分けようとする
相続財産を平等に分けたいがために相続問題に発展するケースで、土地(不動産)相続では頻繁に起こりやすいトラブルと言えます。
要因
遺産となった土地(不動産)は、現金のように均等に分配するのが難しいことが挙げられます。
また土地や建物の評価額にも複数の値が存在するため、採用する値について相続人同士で意見が割れがちです。
リスク
話し合いがまとまらず、トラブルの解決までに時間がかかってしまうことが多いでしょう。
また最終的に土地を分割して相続することになった場合、土地活用や売却などが難しくなります。
対策
主な対策方法は以下の4つです。
地価分割 | 相続対象の土地(不動産)を売却し、手数料などの経費をすべて差し引いた金額を相続人で均等に分割する |
代償分割 | 相続対象の土地(不動産)を相続人の1人が相続し、残りの相続人に対して代償金を支払う |
現物分割 | 相続対象の土地(不動産)を相続人の人数で分割し、土地(不動産)の一部をそれぞれが相続する |
共有持分 | 相続対象の土地(不動産)を相続人の人数で分割し、それぞれが人数で割った分の所有権を得る |
現物分割や共有持分の場合、他の相続人との共有財産として管理していく必要があります。
②「介護で親に貢献したから土地(不動産)をもらえる」などと思い込んでしまう
相続人に兄弟姉妹がいる場合に、同居の有無など親への貢献度を相続に反映させるためによく起こるトラブルです。
要因
被相続人と同居するなどして密接に関わり、介護や身の回りの世話などを引き受けていた相続人がいる場合は、相続の取り分を巡って相続問題が起こりやすくなります。
民法改正によって被相続人への貢献度は相続に反映させることが可能となりましたが、
遺産分割の割合に不服を持つ相続人がいる場合は、スムーズに話がまとまらないケースも多いでしょう。
リスク
被相続人が遺言を残していない場合、貢献度の判断基準が同居していた相続人の主張のみとなります。
公正な判断材料として証明することが難しいため、他の相続人から異議を唱えられる可能性が高くなるでしょう。
対策
被相続人と密接に関わりながら生活を支えている相続人がいる場合は、生前に遺産相続についてあらかじめ話し合っておきましょう。
また、被相続人が亡くなった後には遺言書が大きな効力を発揮するため、前もって準備してもらうことも大切です。
遺言書は法務局で預かってもらうことも可能なため、加筆や紛失などを防ぐために利用するとよいでしょう。
③実家が空き家になるリスクが理解できていない
実家に住んでいる親が亡くなって空き家になると、さまざまなリスクが発生します。
要因
相続の話し合いがまとまらなかった場合や、建物をそのまま残しておきたいという心情から空き家になってしまうケースがあります。
不動産は特に均等に分割することが難しいため、近年このようなケースが後を絶ちません。
実家は特に思い入れが強い建物であるため、兄弟姉妹間でも意見が割れやすいことも要因の一つと言えるでしょう。
リスク
実家が空き家になることで、以下のようなリスクがあります。
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対策
実家を空き家にしないための対策は以下の通りです。
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④土地(不動産)の名義変更が行われていなかった
被相続人の生前に土地(不動産)の名義変更が行われていなかった場合、相続人同士で遺産分割協議を行う必要があり、相続手続きが滞りがちです。
要因
土地(不動産)の名義変更のためには所有者を明確にする必要があるため、所有権を巡ってトラブルになるケースも多く見られます。
名義変更に必要な「遺産分割協議書」には相続人全員の署名が必要なため、遺産分割協議は避けては通れない道と言えるでしょう。
しかし現在は土地(不動産)の名義変更が義務化されていないこともあり、協力的でない相続人がいる場合は手続きに時間がかかってしまうことがあります。
リスク
名義変更が行われていない土地(不動産)は、売却はもちろん、融資を受けるための担保にするなど活用することができません。
また複数の相続人の中から土地(不動産)の所有権を相続できたとしても、名義変更を行なっていない場合は他の相続人の負債精算に使われる可能性があります。
名義変更を怠っていると、いざ変更しようとした際に代をさかのぼって所有者を特定しなければならないため、手続きが難しくなることもリスクの一つです。
対策
名義変更のトラブルを防ぐためには、土地(不動産)の名義が先代から変更されているかどうかあらかじめ確認しておきましょう。
また、所有権争いが起きやすい遺産分割協議を行わずにすむよう、遺言書を用意してもらうことも大切です。
⑤現金を相続しないため相続税を相続人の貯金から納めなければならない
被相続人の遺産が土地や不動産のみの場合、相続税は相続人の貯金から支払わねばならず、高額な相続税が相続人の負担になるケースも多く見られます。
要因
相続税の納付は現金での一括納付が原則のため、土地や不動産では納付できず相続人の貯金から相続税を納付する必要があるのです。
土地や建物の価値や相続人の数によって相続税が上がることに加え、相続を受けた日から10か月以内に納付しなければならないことも、相続人にとって大きな負担になるでしょう。
リスク
相続税には納付期限が設けられており、10か月以内に相続税を納付しなかった場合には、以下のようなリスクがあります。
延滞税 | 納付が遅れた期間に応じて年利7.3〜14.6%の延滞税が加算される |
無申告加算税 | 意図的に相続税を申告しなかった場合に遺産額の15〜20%の割合で加算される |
過少申告加算税 | 申告額が実際の相続税より少なかった場合に加算されるが、税務調査で不足が判明した後自主申告すれば課せられない |
どうしても現金を用意するのが難しい場合は、相続した土地(不動産)を売却して支払うことになるでしょう。
しかし、その際にはさまざまな手数料が差し引かれるため、本来の価値より手元に入る金額は少なくなることにも注意が必要です。
対策
相続税の納付時に慌てないようにするためには、親の生前に相続税を試算して納付方法を決めておきましょう。
親によっては自分の私的な財産を調べられることに抵抗を覚える場合もありますが、相続は被相続人も含めた問題であることを伝えて、協力を求めることが重要です。
試算を行なったうえで相続税が相続人の貯金よりも多くなりそうな場合は、生命保険などで不足分の現金を補填することなども検討しておく必要があります。
絶縁の可能性も!?兄弟姉妹で起こりがちな相続問題(トラブル)
親の介護や世話をしていた兄弟姉妹がいる
親の介護や世話をしていた兄弟姉妹がいる場合、遺産の取り分を巡って相続問題が起こりやすくなります。
一般的に、献身的に親を支えてきた相続人が他の兄弟姉妹より多めに相続するのは、当たり前のように思われるでしょう。
しかし、介護をしてきた側としてこなかった側とでは負担の感じ方も違うため、双方の認識に差があることも多いのが現実です。
実際に親の介護をしていた相続人が他の相続人に貢献度を証明することも難しく、どちらも譲歩せずに話し合いが進まないケースも多く見られます。
さらに、同居により家賃や食費などを親が負担していた場合など、長期にわたって経済的な恩恵を受けていたケースは、より揉めやすくなりがちです。
対処法
親と同居している兄弟姉妹がいる場合は、遺産の分配方法についてあらかじめ取り決めをしておくことが重要です。
口頭での約束ではあやふやになってしまうため、きっちり書面に残しておくようにしましょう。
話し合いが難しい場合は、親の生前に遺言書を用意しておいてもらうことも有効です。
連絡が取れなかったり会ったことがない兄弟姉妹がいる
連絡が付かなかったり会ったことがない兄弟姉妹がいる場合は、遺産分割協議が行えません。
遺産分割協議は、相続人全員で行わなければならないと法で定められており、1人でも欠けた状態で協議を行なったとしても法律上無効となってしまうためです。
だからといって遺産分割協議を行わずにいると、土地や不動産の所有権が定まらず不利益を被る事態になりかねません。
最終的に法的機関を介して、強制的に話し合いを進めなければならないケースもあるでしょう。
親が亡くなった場合に相続人となる人物と、しっかり連絡が取れる状態にあるかどうか確認しておくことが大切です。
対処法
相続人と連絡が取れない場合は状況によって対処法が異なるため、以下を参考にしてください。
一方的に無視されている | 相手も不利益を被ることを伝える |
遺産分割協議に参加してくれない | 家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てる |
連絡先・住所がわからない | 本人の本籍地の役所で戸籍附票から住所を割り出す |
住所の特定も不可能 | 不在者財産管理人を代理として選任する |
生死不明の状態が7年以上経過 | 失踪宣言を行い、相続人から外す |
遺言書の遺産分割が兄弟姉妹間で不公平な内容だった
親の意思によっては、遺言書に記されている遺産分割の内容が兄弟姉妹間で不公平な場合もあるでしょう。
遺産の分割量が他の相続者より少なかった人は、遺言書に異議を申し立てるなどして納得しない事例も多く見られます。
しかし基本的に遺言書は被相続人の意思が反映されるものであるため、第三者から見ても明らかに不公平な内容であったとしても、法的には正当な書類として認められます。
そのため、遺言書の内容に異議を申し立てたところで認められないケースが多いでしょう。
対処法
不公平な遺言書を遺さないように被相続人に伝えておく方法もありますが、遺言書は故人の意思が最も尊重されるものであるため、内容にまで相続人が関与することはできません。
例外として、本人の直筆ではないと証明できれば無効とすることが可能ですが、その際には筆跡鑑定や証人なども必要になるため、現実的には難しいでしょう。
また遺言書の内容を相続人全員が妥当ではないと判断した場合のみ、無効とすることも可能ですが、そのためには相続人全員の合意が必要です。
遺産を多く相続することになった人物が合意してくれる可能性は低いため、一度作成された遺言書の内容を無効とすることは困難と言えます。
日頃から親を大切にすることで、兄弟姉妹間であからさまな不公平が生じる事態は回避できるでしょう。
土地(不動産)など分割が難しい相続財産がある
現金など分配しやすい遺産だけでなく、土地(不動産)が遺されている場合は、どのように分配するかで意見が割れがちです。
特に実家など思い入れが強い不動産の場合は、売却を主張する側と残したい側とで意見が対立しやすいでしょう。
兄弟姉妹がいる場合、土地(不動産)の所有権は特に相続問題につながりやすく、一度こじれてしまうと後々の親戚付き合いにも影響が出てしまう可能性があります。
トラブルを予防するため、親が健在のうちに先を見越した計画を立てておくことが大切です。
対処法
トラブルを回避するためには、親の生前に親族間で話し合い、全員が納得のいく形で相続できるよう取り決めをしておくとよいでしょう。
全員が納得できる分配方法が決まっていれば、相続が発生した際も相続人同士で円満に手続きが進められます。
親に遺言書を遺してもらい不動産の所有権を明確にしておくことも有効ですが、土地(不動産)は価値が高く分配方法によっては不公平が生じやすいため、注意が必要です。
認知症の人が問題なく相続するためにはどうすればよい?
成年後見人制度を活用しよう
相続人が認知症で判断能力が不十分な場合、財産上の不利益を被ってしまう恐れがあります。
そのような場合は、財産管理や取引をサポートする「成年後見人」制度を活用しましょう。
成年後見人は、認知症の相続人が遺産分割協議や不動産などの名義変更手続きを行う際に必要な存在で、家庭裁判所によって選任されます。
資格は不要ですが、親族や福祉・法律関係の専門家が対象者です。
成年後見人について詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
相続問題(トラブル)の解決は弁護士・司法書士などの専門家に依頼すると安心
相続にはお金が絡むこともあり、兄弟姉妹間といえども大きなトラブルに発展しがちです。
また、分割が難しい土地や不動産の相続は、特にトラブルが起こりやすいと言えます。
相続問題には正しい専門知識が必要なうえ煩雑な手続きも多いため、素人が自力で解決するのは難しいのが現実です。
「相続人同士のトラブルの仲介なら法律のスペシャリストである弁護士」「相続財産に不動産が含まれている場合は不動産登記を専門に扱う司法書士」など、トラブル内容に応じて最適な専門家に依頼をすると安心です。
相続の相談先について詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
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相続争いはトラブルに発展しやすく、問題解決には時間も手間もかかるうえ、精神的にも大きな負担になりがちです。
つい感情的になってしまいがちな場面でも、相続の正しい専門知識と豊かな経験をもつ専門家のサポートがあれば、安心して問題解決に取り組むことができます。
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まとめ
相続問題は親しい兄弟姉妹の間でも起きやすく、解決にも時間がかかってしまいます。
相続問題が起こらないようにするためには生前の準備がとても重要ですが、相続問題に発展してしまった場合は、専門家に相談することでスムーズな解決につながるでしょう。