空き家の相続には譲渡所得の特別控除の特例が使える!売却や相続放棄などの対処法のほか、相続人の管理義務についても解説

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家と相談中の夫婦

「住む予定がない実家の空き家を相続することになったけれど、どのように対処したらよいかわからない」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

空き家を相続する前には、資産価値があるかどうかを確認することが大切です。

今回は、空き家を相続するときの対処法のほか、譲渡所得の特別控除の特例についても解説します。

目次

空き家を相続する前に確認すべき2つのこと

家の模型を持つ人

空き家を相続する前に、以下の2つのポイントを必ず確認しましょう。

相続人と権利関係

空き家の相続を複数人で検討する際は、相続人同士の権利関係を明確にしておくことが大切です。

相続手続きの際には相続人全員の協力が不可欠なため、権利関係を事前に確認しておけば、遺産分割協議を行う際のトラブル防止にもつながります。

資産価値があるかどうか

空き家を相続する際は、資産価値も確認しておきましょう。

資産価値があれば、将来的に住む予定がなくても売却して現金化する選択肢がありますが、資産価値がなければ、所有しているだけで維持費や管理費などの負担がかかってしまいます。

資産価値の有無をふまえて、空き家を相続した後の対処方法を検討するとよいでしょう。

資産価値がある場合の対処法

家の模型と札束

ここからは、相続する空き家に資産価値がある場合の具体的な対処法を解説します。

売却

相続する空き家に住む予定がない場合は、売却という選択肢があります。

空き家を所有しているだけでは、維持費や管理費などの費用負担が膨らむ一方です。

相続した空き家の活用方法が見出せない場合は、売却して現金化する方法を視野に入れるとよいでしょう。

ただし、相続した空き家を売却するためには、相続登記を行わなければなりません。

相続登記を行うには相続人全員の協力が必要なため、相続人同士で納得のいく結論を出すように心がけるのも、大切なポイントです。

賃貸

空き家を賃貸物件として貸し出すのも選択肢の1つです。

入居者が決まれば、家賃収入を得られるだけでなく、家屋の劣化防止にもつながります。

ただし、空き家を賃貸物件として貸し出す場合は、オーナーとして維持費や修繕費を負担しなければならないため、経営に必要な収支計画を立てておきましょう。

住居として使用

空き家を住居として使用するのも、相続した際の対処方法としておすすめです。

人が住んでいない状態の空き家は劣化のスピードが速く、老朽化が深刻であれば大幅な修繕が必要です。

加えて、空き家が遠方にある場合は、管理のために定期的な訪問を必要とするため、移動費用の負担だけでなく労力もかかります。

空家の立地環境が現在のライフスタイルに適している場合は、住居として使用する選択肢も視野に入れておくとよいでしょう。

【必読】相続した空き家を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる!

家と電卓とお金

相続した空き家を売却する場合は、譲渡所得の特別控除の特例が適用されれば3,000万円の控除が可能です。

ここからは、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の概要や適用条件、手続き方法を解説します。

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例について

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、相続した空き家を売却する際に、一定の要件を満たすと譲渡所得(不動産売却時の利益)から3,000万円を控除できる制度です。

譲渡所得は以下の計算式で算出します。

譲渡所得=譲渡価格(売却価格)-必要経費(不動産購入時の費用+譲渡費用)-3,000万円

相続した空き家が適用要件を満たしている場合は、ぜひこの制度を利用しましょう。

相続した空き家に関する適用要件

相続した空き家に関する適用要件は、以下の通りです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された
  • 区分所有建物登記がされていない
  • 相続開始の直前までに被相続人以外の居住者がいない

期間の適用要件

特例期間の適用要件は、以下の通りです。

  • 平成28年4月1日から令和5年12月31日の間に売却している
  • 相続開始日から3年経過した日が属する年の12月31日までに売却している

その他の適用要件

相続した空き家に関するその他の適用要件は、以下の通りです。

  • 相続または遺贈によって取得した空き家である
  • 相続開始の直前まで被相続人の家屋として使用された
  • 相続から譲渡までの期間に、事業や貸付、居住を目的に使用していない
  • 譲渡価格が1億円以下である
  • 譲渡時に一定の耐震基準を満たしている
  • 解体時は新たに建物を建てていない
  • 他の特例を受けていない
  • 同じ被相続人から取得した他の不動産に対してこの特例を受けていない
  • 生計を一にする親族や内縁関係者など特別な関係の人に売却したものではない

手続きについて

特例の手続きは確定申告と同時に行います。

具体的な手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 空き家の所在地の市区町村に、被相続人居住用家屋等確認書の交付を申請する
  2. 被相続人居住用家屋等確認書の交付を受ける
  3. 2に必要書類を添えて確定申告を行う

相続した空き家が特例の対象であることを証明する「被相続人居住用家屋等確認書」は、譲渡所得の確定申告を行う際に必要な書類なため、必ず準備しておきましょう。

被相続人居住用家屋等確認書の申請時に必要な書類は、以下の通りです。

  • 被相続人の除票住民票の写し
  • 空き家の解体時または譲渡時の相続人全員の住民票の写し
  • 対象物件の売買契約書の写し
  • 相続から譲渡まで空き家だったことがわかる書類(電気・ガス・水道の使用中止日が確認できる書類または不動産会社の売却ちらしなど)
  • 空き家の閉鎖事項証明書の写し(※土地のみ譲渡する場合)
  • 取り壊しから譲渡までの空き家の使用状況がわかる写真(※土地のみ譲渡する場合)

注意!老人ホームに入居していた場合も適用対象

空き家の被相続人が老人ホームに入居していた場合も、特例の対象として適用されます。

被相続人居住用家屋等確認書の申請時に必要な書類に加えて、以下の書類を提出しましょう。

  • 被相続人の介護保険被保険者証の写しまたは障害福祉サービス受給者証の写し
  • 老人ホームの入所契約書の写しまたは被相続人の戸籍の附票の写し
  • 老人ホームの外出・外泊記録

他の特例との併用できる?

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例は、以下の特例との併用が可能です。

  • 小規模宅地等の特例
  • 居住用不動産の3,000万円特別控除
  • 特定の居住用財産の買換え特例
  • 住宅ローン控除

なお、相続税の取得費加算の特例とは併用不可なため、どちらが有利かを慎重に検討して選ぶようにしましょう。

相続人ごとに特例を適用できる!

複数の相続人が共有名義で空き家を引き継いだ場合も、各相続人が譲渡所得を3,000万円まで控除できます。

たとえば、相続人が2人の場合は合計6,000万円、3人の場合は合計9,000万円の控除が可能です。

資産価値がない場合の対処法

悩む家族

ここからは、空き家に資産価値がない場合の対処方法を解説します。

過料が課される前に解体

資産価値がなく放置することが不適切だとみなされ、空き家対策特別措置法の「特定空家等」に指定されると、自治体による行政指導を受ける必要があります。

従わない場合は最大50万円の過料を支払わねばならない可能性があるため、過料の支払いを避けたい場合は、解体も視野に入れて検討するとよいでしょう。

ただし、解体には1坪あたり4~6万円程度かかるため、コスト面が気になる方は注意が必要です。

譲渡・寄付

資産価値がない空き家でも、所有するだけで維持費や管理費などのコストがかかります。

また、解体する場合にはさらにコストがかかる可能性もあります。

コストを抑えつつ資産価値のない空き家を手放したい場合は、近隣住民への無償譲渡や、自治体への寄付も視野に入れて検討するとよいでしょう。

相続放棄

資産価値のない空き家を手放す方法として、相続放棄という選択肢があります。

ここからは、空き家の相続放棄に関する疑問を解決していきましょう。

相続人全員が空き家を相続放棄するとどうなるのか

相続人全員が相続放棄した空き家は、以下の流れを経て国の所有物として管理されます。

  1. 法人化される
  2. 相続財産管理人を選任する
  3. 相続財産管理人が相続財産を清算する
  4. 国庫に帰属する手続きを行う
  5. 国の所有物として管理される

上記のように相続財産管理人の選任などの適切な手続きをとらなければ、国が空き家を管理することはありません。

相続放棄をすると空き家の管理義務はなくなるのか

空き家を相続放棄した場合でも、相続財産管理人による管理が開始されるまで、空き家の管理義務はなくなりません。

また、空き家の管理義務を放棄することで周辺住民とのトラブルが生じた場合、損害賠償を請求される可能性もあります。

相続財産管理人が選出されるまで、管理責任を怠らないようにしましょう。

土地や不動産の相続放棄に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事をお読みください。

土地や不動産の相続破棄について解説

空き家を相続するときに必要な手続きと注意点

握手をする人

ここからは、空き家の相続時に必要な手続きと注意点を解説します。

遺産分割協議で空き家を相続する人を決める

遺言書に空き家の相続に関する事項が明記されていない場合は、相続人同士による遺産分割協議で空き家を相続する人を決めます。

遺産分割協議が難航すると、家庭裁判所の調停や審判で相続人を決めなければなりません。

空き家の相続人を円滑に決めるためにも、相続人同士の権利関係は事前に明確にしておきましょう。

相続登記はできるだけ早めに行う

空き家を相続する際には、忘れずに相続登記を行なっておくのも大切なポイントです。

相続登記を怠ると、空き家の売却も賃貸もできないうえ、次の相続が発生すると権利関係が複雑化してトラブルにつながりかねません。

空き家を相続する際は、できるだけ早く相続登記を済ませておきましょう。

小規模宅地の特例を受ける

小規模宅地の特例とは、被相続人が事業または居住用として使用していた宅地を相続した場合、その宅地の相続税評価額が大幅に減額される制度で、空き家の相続時にも適用可能な場合があります。

小規模宅地の特例が空き家の敷地に適用される主なケースは、以下の通りです。

  • 被相続人と同居する配偶者が相続する場合
  • 相続人に持ち家がない場合

※被相続人が相続直前まで居住していたことを原則とする

小規模宅地の特例が適用されると相続税の負担を軽減できるため、空き家を相続する際は積極的に利用しましょう。

【空き家の現状】全国で増え続けている!

増加を示すグラフと家のおもちゃ

空き家は年々増え続けており、深刻な社会問題となっています。

ここからは、全国で増え続ける空き家の現状を解説します。

空き家問題は年々深刻化

空き家問題は年々深刻化しており、2018年の全国の空き家率は過去最高水準の13.6%を記録しました。

参考:総務省「2018年(平成30年)住宅・土地統計調査」

また、2014年11月公布の「空き家等対策特別措置法」では、以下のような対策が講じられていますが、空き家の増加はとどまる気配がありません。

  • 空き家の実態調査
  • 特定空家に対する助言や指導、勧告、命令など

空き家問題をこれ以上深刻化させないために、一人ひとりが空き家問題を自分事として捉え、持ち家を将来どうすべきか相続前に家族で話し合っておきましょう。

空き家の多くは相続がきっかけ

社会問題として深刻化している空き家問題の主な原因は、以下の通りです。

  • 法定相続分で複数の相続人が共有・相続登記したため、売却や処分が困難になった
  • 先祖代々引き継がれた土地や家屋のため、名義変更を行なっていなかった
  • 相続トラブルが原因で権利関係が複雑化し、売却が困難になった

このように、空き家問題の多くは相続がきっかけで起こっています。

これ以上空き家を増やさないためには、相続前から家族で話し合いを重ね、相続人全員が納得のいく相続の対処方法を考えておきましょう。

【絶対NG】空き家を放置した場合のデメリット

「NG」積み木と人形

ここからは、空き家を放置した場合のデメリットを解説します。

住まなくても固定資産税がかかる

空き家は、住んでいない場合でも固定資産税がかかります。

住宅用地にかかる固定資産税は、「住宅用地の特例」により6分の1程度減額されますが、空き家等対策特別措置法の「特定空家等」に指定されてしまうと、固定資産税の減額措置は受けられません。

放置した空き家は、通常よりも多くの固定資産税を支払う可能性があることを念頭に置いておきましょう。

劣化が進んで資産価値が下がる

空き家の放置による弊害の1つが、老朽化の進行です。

劣化の進んだ家屋は資産価値が大幅に下がるだけでなく、相続後の選択肢が狭まってしまう可能性もあります。

空き家を活用する選択肢を狭めないためにも、放置せず定期的に管理しましょう。

近隣住民とのトラブルが起こりがち

放置された空き家が要因で起こる主なトラブルは、以下の通りです。

  • 老朽化の進行による建物の倒壊
  • 周囲の景観への悪影響
  • 周辺環境への庭木の浸食
  • 不審者の出入り
  • 悪臭
  • 不審火
  • 害虫・害獣被害

空き家の放置は相続人だけの問題ではなく、近隣住民にも悪影響を与える可能性があります。

災害時に損害賠償が発生する可能性がある

放置した空き家が原因で発生する災害時の主な被害は、以下の通りです。

  • 家屋の部品が飛散し、人やものなどに当たる
  • 伸びた庭木が折れ、周辺のものが破損する
  • 建物の倒壊に周辺住民が巻き込まれる

空き家による被害では、損害賠償請求が発生するケースも多数報告されています。

このようなデメリットをふまえ、空き家を相続した際には適切な対応を行いましょう。

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まとめ

空き家を相続する際は、資産価値の有無や特例の適用条件を満たしているかどうかを事前に確認してから、最適な対処法を決めるとよいでしょう。

空き家の放置は避け、定期的な管理を心がけるのも大切なポイントです。

また資産価値がない場合でも、相続人としての管理義務を怠らず、相続放棄や解体などの適切な対処を心がけましょう。

 

 

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