さまざまな理由で相続人がいなかったり、相続人全員が相続放棄したりといった場合、相続財産管理人が必要になります。
その際、相続財産管理人に支払う費用はどのくらい必要なのか、気になる方もいらっしゃるでしょう。
今回は、相続財産管理人に支払うべき報酬の相場や支払い方法を徹底解説します。
また、相続財産管理人にかかる費用を抑えるためにできることも説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続財産管理人に必要な費用の相場はどのくらい?

故人に相続人がいない場合や、相続人が相続を放棄する場合には、故人の代わりに債務を履行するための相続財産管理人を選任しなければなりません。
相続財産管理人は、相続人がいなくなった故人の遺産を適切に管理し、債務を精算したり内縁関係にあった特別縁故者に支払ったりする役割を担います。
相続財産管理人を選任するには、家庭裁判所に選任申立てをしなければならず、そのための手続きにも費用が必要です。
この章では相続財産管理人の選任にかかる費用について詳しく解説します。
費用の相場
相続財産管理人を選任するのに、数十~百万前後の費用は想定しておきましょう。
費用に幅があるのは、故人の遺産額によって左右されることが大きいためです。
ただし、親族が相続財産管理人を行なう場合には、費用をかけずに遺産の管理ができます。
詳しい費用の詳細については以下の項目を参考にしてください。
費用の支払方法、費用を支払えない場合はどうすればいい?
相続財産管理人への報酬は、通常であれば故人の遺産から差し引いて支払われるため、遺族から相続財産管理人の口座に費用を振り込む必要はありません。
しかし、故人の遺産が少なく報酬の支払いが困難である場合は、予納金の支払いを命じられるケースもあるでしょう。
相続財産管理人を親族以外で選任している場合、遺産の額によっては予納金のほうが大きくなる可能性もあります。
遺産が少ない場合には、家庭裁判所で相続財産管理人を選任するより、親族が相続財産管理人を行うほうが費用負担を抑えることが可能です。
相続財産管理人の選任申立ての費用は大きく分けて【3種類】

相続財産管理人の選任申立ての費用は、3種類の区分に分けられることが特徴です。
どの区分でどれくらいの費用が必要なのかを目安として知っておくことで予算を立てやすくなるでしょう。
ここからは、相続財産管理人の費用区分について詳しく説明します。
必要費用
相続財産管理人の選任に必須な費用には、次の4つが挙げられます。
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相続財産管理人の申立てで、家庭裁判所へ必要書類を提出する際必要になるのが収入印紙です。
ただし、800円の印紙はないため、200円か400円の印紙を800円分購入して貼り付けましょう。
予納郵券とは、相続財産管理人とのやり取りを見越してあらかじめ申立人が購入しておく切手で、金額は各家庭裁判所ごとに異なります。
戸籍謄本等は相続人がいないことを証明する書類で、取得費用がかかります。
場合によっては戸籍謄本だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍謄本を取得する必要が出てくる可能性もあるため、費用は人によってさまざまです。
また、相続財産管理人を選任した際はそれを裁判所が官報に掲載する義務があるので、官報広告料も必要になります。
予納金
予納金とは、故人の遺産を管理するための費用を遺産で賄えなくなったときに備えて、申立人があらかじめ相続財産管理人に支払っておく予備金を指します。
予納金の額は家庭裁判所によって異なり、判断基準となるのは故人の遺産金額です。
遺産が多ければ予備金の必要性は少なくなるため、予納金の額も下がりますが、遺産が少なければ、保険として予納金の額も大きく設定される可能性が高いでしょう。
専門家報酬
専門家報酬とは、相続財産管理人選任申立書の作成を専門家に依頼した場合に発生する費用で、相場は月額1〜5万円程度とされています。
専門家とは、主に弁護士や司法書士のことを示し、実際に選任申立書の作成を依頼するのはこのうちのどちらかになるでしょう。
司法書士に比べて弁護士のほうが費用は高くなりますが、司法書士も弁護士も自由報酬制であるため、依頼する場所によって報酬の値段も変動することがほとんどです。
専門家報酬についての詳細は以下で説明します。
相続財産管理人選任申立てを代理で依頼した場合の報酬は?

相続財産管理人の選任申立ての手続きは、弁護士や司法書士にすべて行なってもらうことも可能です。
先ほど紹介したような選任申立書の作成だけでなく、すべての手続きを弁護士や司法書士などの専門家に依頼した場合、報酬の相場はどれくらいになるのでしょうか。
この章では、弁護士・司法書士に相続財産管理人の選任について代理手続きを依頼した場合、どれくらいの費用がかかるのかを詳しく説明します。
代理手続きの依頼を検討している方は参考にしてみてください。
弁護士の場合
弁護士に代理手続きを依頼した場合、相場はおよそ20万円以上になることが多いです。
弁護士は業務範囲が広いため、必要書類の収集から申請などの手続きまで、すべて代行してくれます。
相続財産管理人の選任申立てを行った本人が、本来行うはずだった手続きをほぼすべて任せておけるため、負担が少なくスムーズに手続きを進めることが可能です。
弁護士は代行してもらえる業務が多い分、依頼時の費用も高額になりやすいと言えるでしょう。
司法書士の場合
司法書士に代理手続きを依頼した場合の相場は、およそ10〜20万円ほどと言われています。
司法書士も依頼者本人に代わって、必要書類を収集したり相続財産管理人選任申立書を作成したりと、手続きに必要な事柄を代行してくれる専門家です。
弁護士と比較すると費用が抑えられますが、依頼人に代わってすべての手続きを行うことはできません。
相続財産管理人の選任における主要な過程を部分的にサポートしてくれるのが司法書士の役割です。
代理で依頼する際のメリット・デメリット

相続財産管理人選任申立ての代理を弁護士や司法書士に依頼した場合、必要書類の準備など、手続きにおける手間が省けることが大きなメリットでしょう。
専門家に任せておくことで複雑な書類の作成などを代行してもらえるため、手続きをスムーズに済ませられることもポイントです。
デメリットに挙げられるのは、弁護士や司法書士に報酬を支払わなくてはならないことです。
弁護士のほうが手続きにおけるサポート力が高い分、報酬も高くなる傾向があります。
相続財産管理人が選任されるまでの流れ

相続財産管理人の選任申立てを行ったとしても、実際に選任されるまでに2か月ほどの期間を要することがほとんどです。
相続財産管理人が選任されるまでには複数の段階があり、その中でさまざまな調査が行われます。
相続人の遺産に関することや縁故者などを明らかにしたうえで、妥当と認められた場合にようやく選任されるのです。
この章では、相続財産管理人がどのような流れで選任されるのか、流れを具体的に説明します。
申立
相続財産管理人の選任申立てができるのは以下の通りです。
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利害関係人とは、故人の債権者や内縁関係にあった者、故人の養老看護を行っていた者、不動産など特定のものを譲り受けた者を指します。
また、相続財産管理人の選任申立ては、故人の最終住所地の家庭裁判所で行う必要があり、申立て人の最寄りの家庭裁判所などでは受理してもらえないため、注意しましょう。
必要書類の提出
相続財産管理人の選任申立てに必要な書類は以下の通りです。
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必要書類のうち戸籍謄本が多いのは、故人に相続人が存在しないことを証明するためです。
その他には財産を証明するための資料や、故人に利害関係人がいる場合は債務を明らかにする資料などが必要になります。
家庭裁判所による審理・選任
家庭裁判所は相続財産管理人を選任する際、財産の内容や故人との関係性、利害関係があったかどうかなどを考慮し、遺産の管理を任せることに最も適した人物を選任します。
公平な視点をもつことから、弁護士や司法書士が選任されるケースもありますが、候補者がいる場合は名指しすることも可能です。
しかし、名指しした候補者に故人との利害関係が認められなかった場合や、家庭裁判所に選任不要と判断された場合は申立てが却下される場合もあります。
相続財産管理人の役割とは?仕事内容を解説

相続財産管理人は故人の遺産を適切に管理する職業ですが、その仕事内容がどのようなものか具体的に知る人は少ないでしょう。
ここでは、相続財産管理人の仕事内容について詳しく解説します。
相続財産管理人の仕事内容
相続財産管理人に選任された場合に行う仕事は、主に相続財産の調査・管理・精算・処分・換価(換金)などです。
遺産がどれくらいあるのかを調査した後、債務があれば履行し、受領すべきものがあれば受領を行うなど故人本来の遺産を適切に管理します。
また、不動産などを売って換価したり剰余遺産を国庫に帰属する権限をもったりなど、大きな判断を任されることも多いでしょう。
ただし、相続遺産管理人は故人の遺産を相続する者ではないため、遺産を権限の範囲外で私的に扱うことは許されません。
相続財産管理人が必要なケース【2選】

相続財産管理人は、遺産をもった人が亡くなった場合に必ずしも選任されるものではありません。
しかし、特定の状況下では選任が必要とされます。
どのようなケースで相続財産管理人が必要になるのか、以下で確認しておきましょう。
相続人がいない場合
相続人がいない場合は、相続財産管理人の選任が必要です。
ただし、選任申立てを行う際には利害関係・遺産・相続人の3要件を確認する必要があります。
相続財産管理人の選任が求められる理由は、遺産を残された者が不利益をこうむる可能性があるためであり、故人の遺産は資産だけでなく負債も含まれます。
相続人がいないことを証明したうえで、利害関係者に債務があった場合は故人の代理を務める者が遺産を使って精算しなければなりません。
相続人全員が相続放棄した場合
相続人がいるにもかかわらず、全員が相続放棄した場合にも相続財産管理人を選任しなければなりません。
相続人全員が相続放棄をするということは、相続人がいないものとみなされるためです。
前述の通り、負の遺産が故人に遺されていた場合は、利害関係にあった者が不利益をこうむることになるでしょう。
これを防ぐためには相続財産管理人が必要になりますが、利害関係者の中でも裏付けのある債権者が選任申立てを行うことができます。
知ってましたか?相続財産管理人にできること

相続財産管理人は故人の遺産を適切に管理するために、管理人の判断で遺産を取り扱う権限が与えられています。
具体的にどのようなことができるのか、以下で詳しく紹介しますのでご覧ください。
相続財産の管理行為
相続財産の管理行為は、財産の状態をそのまま保った状態で利用することを指します。
管理行為は保存行為とも呼ばれており、できることは以下の通りです。
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管理行為に家庭裁判所の判断はいらず、相続財産管理人の判断で決めることができます。
相続財産の処分行為
処分行為は遺産の形態を完全に変えてしまうことを指します。
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上記の処分行為には家庭裁判所に権限外行為許可の申立後、許可が得られてから行わないといけません。
相続財産管理人の費用を抑えるために!知っておきたい2つのこと

相続財産管理人を選任しなければならなくなった場合、費用を最小限に抑えるためにはどうすればよいでしょうか。
多少の手間がかかったとしても費用を少なくしたいという方には、以下の方法がおすすめです。
相続財産管理人選任申立てを自ら行う
故人に相続人がいないことや、自分が故人に対して債権をもっていた場合など、特定の条件を満たしていれば自ら選任申立てをすることが可能です。
弁護士や司法書士などの専門家に依頼せず自分で申立てをすることで、代行報酬などの
費用を抑えることができるでしょう。
ただし、法的な手続きのサポートをしてくれる人がいないといったデメリットが挙げられます。
書類作成や手続きに時間がかかってしまったり必要な資料が足りなかったりする可能性もあるため、自分でよく調べておく必要があります。
相続財産管理人を親族にしてもらう
相続財産管理人を親族にしてもらう選択肢も、費用を抑えるために有効な手段の1つです。
相続財産管理人が親族となり、本人からの同意を得られた場合は報酬を払う義務がなくなります。
手続きや遺産の管理を親族がしなければならないため、負担のかかる方法ではありますが、第三者に代行を依頼することに比べると費用面ではメリットが多いと言えるでしょう。
ただし、親族が相続財産管理人に申立てしたとしても必ず選ばれるとは限りません。
家庭裁判所の判断により適任者とならなかった場合や、親族よりも適した人物がいた場合は相続財産管理人として選任される可能性は低いでしょう。
相続財産管理人に関する相談は株式会社林商会へ

相続財産管理人の選任申立てをするには、かなりの手間と時間がかかってしまいます。
特に必要書類などは数も多いため、何から準備をすればよいのかとお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
手続きについて何も分からない、少しでも手間をなくしたいといった際は弁護士や司法書士といった専門家に依頼するのをおすすめします。
林商会では、弁護士や司法書士をはじめとした相続に関する専門家たちが沢山在籍しているので、どんなことでも気軽に相談していただくことが可能です。
丁寧なサービスでお客様にご満足いただいている林商会だからこそ、1人ひとりのお客様のご要望に寄り添った提案をさせていただきます。
まとめ

相続財産管理人の選任申立てを行う際の費用は総額で数十~百万円前後が相場であるということがわかりました。
また、経済的な理由によって相続財産管理人の報酬を支払えない場合は予納金の支払いが課される可能性があります。
相続財産管理人の選任申立ては弁護士などの専門家に依頼することも可能ですが、費用を抑えるためにはなにを優先させたいのか、しっかり見極めて決めることが大切です。