使用貸借の相続は借主が死亡したらどうなる?貸主が死亡したときの土地の評価額や相続税についても詳しく解説

使用 貸借 相続 アイキャッチ

使用貸借とは、個人的な信頼関係に基づいた契約を指します。

ただし、借主が死亡したら使用貸借契約は終了する点や、有償の賃貸借に比べて相続税が高くなる点には注意が必要です。

この記事では、使用貸借している土地の評価方法のほか、使用貸借契約を引き継いだ貸主が知っておくべきことなどをご紹介します。

自身が契約にかかわる際の参考にしてください。

目次

【はじめに】使用貸借について理解しよう

青家

まずは使用貸借の基本についてご説明します。

使用貸借とは

使用貸借とは、借主が目的物を無償で「使用・収益」できる権利で、契約が終了した際に返還することで成立する契約です。

たとえば、親の土地を無償で借り、子どもが家を建てて住むケースなどが使用貸借にあたります。

なお、使用貸借は貸主が死亡しても終了せず相続人との間で継続しますが、借主が死亡した場合、使用借権は相続人に相続されません。

賃貸借との違い

使用貸借と似た言葉として賃貸借がありますが、以下のような相違点があります。

使用貸借 賃貸借
契約の内容と根拠条文
  • 貸主と借主の信頼関係に基づいた無償契約。
  • 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用・収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。(民法第593条引用)
  • 賃料が発生する有償契約。
  • 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用・収益を相手方にさせることを約し、 相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。(民法第601条引用)
賃料 無償 有償
権利の性質 借主の一身専属権 一身専属権ではない
契約の存続期間 返還時期の定めがあるときはそのときまで。定めがないときは契約に定めた目的に従い使用収益を終えたときまで。 50年を超えることができない
相続 貸主の死亡:相続人が相続
借主の死亡:契約が終了
貸主の死亡:相続人が相続
借主の死亡:相続人が相続

注意!契約書がなくても契約は成立する

使用貸借は口約束でも契約自体は成立します。

ただし、無償で借りている使用貸借は、賃貸借よりも借主の立場が弱い傾向にあります。

使用貸借している土地は相続でどうなる?

土地

続いて、相続の際に使用貸借している土地がどのように扱われるのかご紹介します。

貸主が死亡した場合

土地の貸主が死亡した場合、使用貸借は相続開始後も存続し、貸主の相続人が貸主たる地位を承継します。

そのため、基本的には借主に影響はなく相続開始後も使用が可能です。

借主が死亡した場合

民法597条により、使用貸借は借主の死亡によって終了すると規定されています。

借主の死亡後、土地を相続した借主の相続人は、貸主から土地の明け渡しを迫られたら建物を収去して立ち退かなければなりません。

【例外】借主が死亡しても使用貸借が相続対象になるケース

例外として、使用貸借契約で「借主が死亡した場合、借主の相続人が相続する」などの特約がある場合は、借主が死亡しても相続の対象です。

使用賃貸の貸主が亡くなった場合の相続税について

計算機とぺん

ここでは、貸主が亡くなった場合の相続税について詳しく解説します。

賃貸借の場合と比較して相続税は割高になる!

貸主が亡くなった場合の相続税は、使用賃貸のほうが賃貸借よりも割高です

なぜなら、賃貸借契約を結ぶと、相続税評価額を計算する際に自用地評価から借地権割合に相当する土地の評価額を控除できるからです。

借地権の評価額は、自用地の評価額に借地権割合をかけて求めます。

たとえば、自用地価格が4,000万円の土地を所有し、50%を貸していた場合の相続税評価額の違いは下記の通りです。

使用貸借の場合 賃貸借の場合
4,000万円 4,000万円×(100%-50%)=2,000万円

使用賃貸している土地の相続税評価額について

貸主が亡くなった場合、使用賃貸している土地の相続税評価額は、借主が個人か法人かによって異なります。

借主が個人のケース

亡くなった貸主の土地を、子どもが無償で借りて建物を建てているような個人間における土地の使用貸借の場合、土地の相続税評価額は「自用地評価額」に該当します。

自用地評価額では、土地の評価において、他人の建物が建っているからといって土地を減価させることは認められきません。

借主が法人のケース

一方、亡くなった貸主の土地を、貸主の同族会社が無償で借りて建物を建てている場合、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出しているか否かで土地の評価方法が異なります。

  • 土地の無償返還に関する届出書を提出している場合:土地の相続税評価額は自用地評価額
  • 土地の無償返還に関する届出書を提出していない場合:土地の相続税評価額は自用地評価額から借地権の評価額を控除した価額

使用貸借の土地に小規模宅地等の特例は使える?

貸主が亡くなった場合、土地が小規模宅地等に該当するかどうかは、亡くなった貸主と相続人が同一生計であったかどうかで決まります。

つまり、父である被相続人と子である相続人が生計を一にしていた場合は特定居住用宅地等に該当しますが、生計を一にしていない場合は該当しません。

【注意!】親子間の節税対策で賃貸借を選んでもメリットは少ない

親子間の節税対策で使用貸借から賃貸借にしても、賃貸借に必要な地代や権利金を子どもが親に支払うことにより、かえって親の財産が増えてしまいかねません。

財産が増えると相続をする際の相続税も増えるため、節税対策で賃貸借を選んでもメリットは少ないと言えます。

さらに、親子間で土地の使用貸借を賃貸借に変更すると、貸主から借主へ借地権の贈与があったとみなされ、借主に贈与税が課税される点に注意しましょう。

使用貸借契約を引き継いだ貸主がおさえておきたい6つのポイント

契約書と朱肉

相続によって使用貸借契約を引き継いだ貸主がおさえておきたい6つのポイントを、詳しくご紹介します。

新たな貸主としての手続きは不要

使用貸借契約を引き継ぐ場合、新たな貸主としての手続きは不要です。

契約書があるケースで契約書に記載された貸主の名義が被相続人のままだとしても、貸主としての権利は亡くなった貸主の相続人に継承されます。

もちろん、借主の同意なども不要です。

使用貸借契約における貸主の義務

貸主は使用貸借の期間中に、自分の所有物を他人が無償で「使用・収益」することを受け入れる義務があります。

ただし貸主に修繕義務はなく、使用するうえでの維持費や通常の必要費は借主に負担させることが可能です。

また、原則として貸主は目的物に何らかの欠陥や不具合があったとしても、借主に対する責任は負いません。

貸主の相続人が複数いる場合、遺産相続前は全員が貸主

貸主の相続人が複数いる場合、遺産分割が行われていない段階では、基本的に貸主の相続人全員が契約を引き継ぎます。

もしも、亡くなった人が家の一部を使用貸借により貸していた場合、家の使用貸借契約は相続人となる配偶者や子ども全員が引き継ぐことになるでしょう。

そのため、使用貸借している土地や建物の権利・義務を相続人全員で共有し、契約解除や変更を検討する場合には手間がかかります。

使用貸借契約の終了条件

使用貸借契約の終了条件は下記の3つです。(民法第597条引用)

  1. 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
  2. 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
  3. 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

契約解除の際は書面で「契約解除の合意書」を取り交わす

契約解除の際は、口頭でなく書面で「契約解除の合意書」を取り交わしましょう。

使用貸借契約は、貸主と借主の双方が合意すれば口頭でも解除できますが、口約束ではトラブルが発生した際に事実の証明ができません。

トラブルを防止するためにも、合意書を取り交わしておくほうが安心です。

使用貸借している土地を売却・活用するには借主の立ち退きが必要

使用貸借している土地を売却・活用するには、借主から土地を返還してもらう必要があります。

使用貸借契約の終了条件や解除の条件を満たしていれば、借主から土地を返還してもらえますが、契約期間中などの場合には、借主が使用し続けることができます。

売却・活用するには、話し合いや立ち退き料を支払うことで、借主に立ち退いてもらう必要があるでしょう。

使用賃貸契約を解除したい貸主がすべきこと

3つの家

続いて、貸主が使用賃貸契約を解除したい場合にすべきことを4つお伝えします。

使用貸借契約が貸主の都合で解除できるかどうかを確認する

使用貸借契約の解除について、下記のように定められています。(民法第598条引用)

  1. 貸主は、前条第2項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
  2. 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
  3. 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。

立ち退き料を提示して交渉する

借主が契約解除に合意しない場合、立ち退き料を提示して交渉するのも一つの方法です。

建物を貸している場合の立ち退き料は、家賃の約6か月分が相場とされています。

使用貸借では、契約で終了時期について定めていない限り、貸主の一方的な意思表示で契約解除が可能です。

しかし、実際は借主からの返還がなければ契約が解除できたとはいえないため、当事者同士が合意するための話し合いが必要となるでしょう。

賃貸借契約への変更を交渉する

無償ではなく有償で貸し出したい場合は、使用貸借契約から賃貸借契約への変更を交渉しましょう。

当事者間で使用貸借契約から賃貸借契約に切り替えることについては、法律上何の問題もありません。

賃料や契約更新期間などを新たに取り決め、当事者間で賃貸借契約を交わします。

借主としては有償になるため、賃貸借契約への変更にデメリットを感じるかもしれませんが、賃料を支払う分、借主の権利は使用貸借よりも優先的に保護される仕組みです。

貸している建物や土地を売却する

使用貸借で貸している建物や土地は、現在の借主と第三者のどちらにも売却可能です。

法律上、使用貸借権は第三者に対抗できません。

しかし、第三者に売る場合、まずは借主から返還してもらうことでトラブルを防止できるでしょう。

借主と合意できない場合は、専門家に相談することをおすすめします。

必読!使用貸借のトラブル防止策

二世帯住宅

最後に、使用貸借でトラブルを起こさないための対策をご紹介します。

家族や知り合いへの使用貸借でも契約書を作成する

家族や知り合いへの使用貸借でも、トラブルを避けるために契約書を作成しましょう。

使用貸借契約は親子や身内など親しい間柄で行われることがほとんどです。

その分、トラブルが起きたときは対処しにくく、人間関係が悪化してしまう可能性もあります。

契約書があれば契約内容がお互いにわかるので、トラブルを避けられるでしょう。

家族全員への周知を徹底しよう

使用貸借契約をする場合、当事者間だけでなく家族全員への周知を徹底しましょう。

家族全員に周知することで、契約解除の際のトラブル防止にもつながります。

使用貸借契約を円満に解消する手順

使用貸借契約を円満に解消するためには、以下のような手順を踏みましょう。

貸している側

  1. 使用貸借の期間や使用・収益の目的が達せられているかを契約書などで確認する
  2. 借主に使用貸借契約の解消を伝えて、返還を求める
  3. 使用貸借したものの破損や損耗を確認する
  4. 破損や損耗などがあれば、借主に原状回復してもらう

経年劣化にともなう修繕は、貸主・借主のどちらが負担するのかあらかじめ決めておくとよいでしょう。

借りている側

  1. 貸主に使用貸借契約の解消を伝える
  2. 破損や損耗などがあれば、原状回復してから貸主に返還する

使用貸借の相続についてのご相談は林商会にお任せください

今回は使用貸借の相続について詳しく解説しました。
親しい間柄で行われることが多い使用貸借ですが、専門知識を必要とする複雑な内容なので専門家に依頼すると安心です。
使用貸借の相続についてのご相談はぜひ、相続のプロ集団である林商会にお任せください。
弁護士や税理士などのプロがお悩みに対し親身かつ丁寧に対応します。

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まとめ

使用貸借契約は借主が亡くなった場合には終了しますが、貸主が亡くなった場合は貸主の相続人が貸主たる地位を承継します。

また、使用貸借契約を相続によって引き継いだ貸主は、新たな貸主としての手続きは不要です。

ただし、相続後に使用賃貸契約を解除したい場合は、立ち退き料を提示したり、賃貸借契約への変更を交渉したりなどの話し合いが必要となるでしょう。

個人的な信頼関係に基づいた使用貸借ですが、万が一のトラブルを避けるためにも契約書の作成がおすすめです。

 

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