「遺産を相続する際の順位を知りたい」というお声を多く耳にします。
相続人には順位が定められており、第1順位、第2順位、第3順位の順に相続を行い、同順位の人は同じ割合で相続します。
今回は相続順位のほか、相続の割合や相続人の範囲についてもわかりやすく解説しますので、ぜひ参考になさってください。
目次
法定相続人の相続順位
まずは、相続人や順位について、詳しくみていきましょう。
【大前提】配属者は常に相続人となる
遺産相続の順位や配分は民法の基準以外に、遺書など生前の財産所有者(被相続人)の意思によってある程度の裁量をもたせることができます。
しかし、あくまでも「配偶者は常に相続人となる」ことが大前提です。
ここでの配偶者とは、被相続人の妻(または夫)にあたる婚姻上のパートナーを指します。
一緒に生活をしていても、婚姻関係は結ばずに事実婚状態である「内縁の妻(夫)」には相続権がないので、注意しましょう。
もしも、事実上の配偶者に遺産相続を望む場合には、生前に遺書を残しておく必要があります。
配偶者以外の相続人には順位がある
法的に遺産相続の権利がある「法定相続人」は、配偶者を除いた中で立場や関係性によって順位が付けられます。
上の順位の法定相続人がいる限り、下の順位の相続人に相続権は発生しません。
順位は以下の通りです。
● 第1順位:子どもや孫など被相続人の下の世代(直系卑属) ● 第2順位:父母や祖父母など被相続人の上の世代(直系尊属) ● 第3順位:兄弟姉妹(いなければ甥や姪) |
親類縁者の関係の距離を表す言葉ではよく「〇親等」という表現が使われますが、こちらとは順位に違いがあるので気を付けましょう。
同じ順位の人は全員が相続人となり、相続割合は平等
日本の民法上では、相続順位以外で相続の割合に差をつける決まりはありません。
なかには生前の金銭援助の額や、介護負担の度合いによって割合に差を付ける場合もありますが、あくまで当人たちの話し合いの結果です。
相続の割合を決める際には、同じ順位では同じだけの遺産がもらえるものと覚えておきましょう。
遺言がある場合には遺言内容が優先
日本の民法では血縁で定められる相続順位以外に、遺言書を使って被相続人が相続順位を決めることができます。
被相続人が生前に残して正式に遺言状として認められたものは、相続において必ず優先すべきものです。
さまざまな事情によって、被相続人が法定相続人以外の人に遺産を相続したい場合や、同じ順位の法定相続人の中で割合に差をつけたい場合に使われます。
原則、正式な遺言書の内容を覆すことはできませんが、納得できない場合には遺留分制度を使うことができます。
遺留分とは、遺言状の内容にかかわらず相続できる一定割合の留保分です。
被相続人の近親者に対して認められる制度で、遺留分を受け取る権利が保障されます。
言い換えれば、遺言は優先されますが、あくまで遺留分の範囲で制限される可能性があるということです。
【遺産相続の割合や範囲は?】法定相続の基本ルール
法定相続人について理解しよう
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことを指しており、法定相続人の範囲に含まれている人たちに「相続権」が与えられます。
ただし、遺言書がある場合は法定相続人以外の人にも遺産を渡すことが可能です。
また、それぞれの順位に法定相続人に該当する人がいる場合にも、優先されるのは順位の高い人です。
配偶者が法定相続人の場合
法定相続人の範囲において、配偶者は有利な立場にいます。
遺産相続の範囲は「配偶者+〇〇」で考えるのが基本です。
また、遺産相続の際にどれだけ多くの法定相続人がいたとしても、まずは「配偶者+それ以外」で分配を行います。
配偶者が受け取れる割合は以下の通りです。
パターン | 配偶者 | 子ども・孫 | 親・祖父母 | 兄弟・姉妹 | 割合 |
A | 〇 | × | × | × | 100% |
B | 〇 | 〇 | × | × | 50% |
C | 〇 | × | 〇 | × | 66% |
D | 〇 | × | × | 〇 | 75% |
直系卑属(第1順位)が法定相続人の場合
配偶者の次に分類されるのは、第1順位である直系卑属(子ども・孫)です。
直系卑属とは、被相続人から見て下の代に続いていく血族のことを指します。
配偶者がいる場合には「配偶者+子ども」、配偶者がいない場合には子どものみ、子どもが亡くなっている場合には孫へ、孫が亡くなっている場合にはひ孫へと相続権が移る仕組みです。
これを代襲相続と言います。
子どもが受け取れる割合は以下の通りです。
パターン | 配偶者 | 子ども・孫 | 親・祖父母 | 兄弟・姉妹 | 割合 |
A | 〇 | 〇 | × | × | 50% |
B | × | 〇 | × | × | 100% |
子どもが複数人いる場合には、ここからさらに等分をします。
直系尊属(第2順位)が法定相続人の場合
配偶者・直系卑属の次に、被相続人よりも上の代を指す直系尊属が続きます。
第2順位の直系尊属には両親・祖父母などが含まれ、対象者が亡くなっている場合にはさらに上の代に相続権が移動していきます。
両親・祖父母が受け取れる割合は以下の通りです。
パターン | 配偶者 | 子ども・孫 | 親・祖父母 | 兄弟・姉妹 | 割合 |
A | 〇 | 〇 | × | × | 0% |
B | 〇 | × | 〇 | × | 33% |
C | × | × | 〇 | × | 100% |
兄弟姉妹(第3順位)が法定相続人の場合
第2順位の直系尊属に続くのは、第3順位の兄弟・姉妹です。
兄弟・姉妹がすでに亡くなっていて該当者がいない場合には、その甥・姪が法定相続人に該当します。
兄弟・姉妹が受け取れる割合は以下の通りです。
パターン | 配偶者 | 子ども・孫 | 親・祖父母 | 兄弟・姉妹 | 割合 |
A | 〇 | 〇 | × | × | 0% |
B | 〇 | × | 〇 | × | 0% |
C | 〇 | × | × | 〇 | 25% |
D | × | × | × | 〇 | 100% |
法定相続人の範囲について
法定相続人は、法律上の被相続人と遺族の関係によって決定します。
ここで問題となるのが、「内縁の妻(夫)」と呼ばれる人物です。
事実婚状態の相手は法的な婚姻関係にあるわけではないので、配偶者として遺産を相続はできません。
ただし、事実婚の相手との間にできた子どもが法的に認知されている場合は、相続の権利が与えられ、法定相続人になり得ます。
子どもが未成年の場合や胎児が無事に生まれた場合は、代理人が必要になるため、手続きを行う際は注意しましょう。
法定相続人の範囲について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
相続順位が問題になりやすい複雑なパターン
順位が定められているとは言え、なかにはトラブルに発展するケースもあります。
孫が相続(代襲相続)する場合
法定相続人は自動的に権利が付与されてしまうため、トラブルが起きやすいと言われています。
代表的なトラブルの一つが、代襲相続で孫が相続人になった場合です。
相続人が状況を考えずに要求をする
被相続人が多額の財産を築いていた場合や、親族内ですでに取り決めがあったときに、事情を考慮せずに権利を行使しようとすることで起こります。
大切なのは、孫も法的に認められた相続人であることを理解して互いに話し合うことです。
孫側が手続きを進めようとしない
反対に孫側が関わろうとしない場合もあります。
法定相続人は遺産を相続する意思がない場合でも、相続放棄の手続きをしなければ全体の手続きが進みません。
意思に関係なく権利が付与されてしまう相続制度の弊害と言えるでしょう。
配偶者と実子と養子が相続する場合
被相続人に養子がいる場合には、実子と同じだけの財産をもらう権利があります。
もしも配偶者に加えて実子と養子が1人ずついるならば、遺産の配分は「配偶者50%:実子25%:養子25%」になり、実子と養子の割合は変わりません。
疎遠な実子ではなく、孫や第三者への相続の割合を増やしたい場合にも、この仕組みは利用できます。
孫や財産を残したい第三者を事前に養子にすることで、疎遠の実子と同じ第1順位の立場で相続を受けさせることができるのです。
離婚した元配偶者との子どもに相続権はある?
配偶者と離婚した場合、相続関係はどのように変化するのでしょうか。
以下で詳しく説明します。
元配偶者との子どもには相続権がある
離婚した場合でも、疎遠になっている元配偶者との子どもには相続権が発生します。
新しい配偶者とその子どもができていたとしても、元配偶者の子どもから相続権がなくなるわけではありません。
どうしても元配偶者との子どもに遺産を残したくない場合は、正式な遺言書に明記しておく必要があります。
現配偶者と元配偶者との子どもの法定相続分は?
相続人が現配偶者と元配偶者の子どもの場合には、2人で遺産の50%ずつを相続します。
元配偶者側に子どもが2人以上いる場合には、50%から均等に分けられ、それぞれの子どもに与えられる仕組みです。
現配偶者に子どもがいる場合は平等に分け合う
現配偶者と元配偶者それぞれに子どもがいる場合には、現配偶者に50%、子どもは人数によって残りの50%を等分します。
現配偶者か元配偶者かに関係なく、相続人の子どもには一人ひとり権利があります。
しかし、これは子どもだけの話であって、元配偶者自身には相続の権利は発生しないため、混同しないように注意しましょう。
現配偶者の連れ子に相続権はない
例外として、同じ子どもであっても現配偶者の連れ子には相続権は発生しません。
連れ子と再婚相手には法律上の親子関係が認められていないからです。
もし相続権を発生させたいなら、法律上の親子になるため、養子縁組の手続きを行う必要があります。
養子にすることで連れ子も法律上の親子と認められて、第1順位相当の相続権を持つことができます。
元配偶者との子どもが死亡した場合はどうなる?
通常、第1順位の子どもがすでに亡くなっている場合は、代襲相続によりその下の孫が相続人として権利を引き継ぎます。
これは元配偶者の子どもでも変わることはありません。
しかし、先述したように、関係性が薄い人物の遺産相続はトラブルになるケースがほとんどです。
あらかじめ連絡を取れる状態にしておくなど、工夫しましょう。
元配偶者との子どもと相続手続きをする際の注意点
元配偶者との子どもを入れずに遺産分割協議をするのは無効
遺産相続において、相続権を持っている人物を省いて勝手に遺産相続の割合を決めることはできません。
元配偶者の子どもであっても権利は平等であり、遺留分侵害請求の訴えを起こされてしまえば遺留分の返還を余儀なくされます。
相続遺産を明確にしてから話し合う
遺産相続の話し合いをするときには、事前に相続対象となる遺産を整理してから行いましょう。
後から隠し財産が見つかると再度話し合いの場を設ける必要が出てきてしまいます。
連絡が取れないときには住所の特定が必要
法定相続人に選ばれている人物と連絡が取れない場合には、手続きを進めることができません。
そのため、興信所などに依頼して住所を特定する必要があります。
未成年の子どもの代理人:元配偶者と顔を合わせる可能性がある
元配偶者の子どもがまだ未成年の場合には、代理人が仲介する必要があります。
これは判断能力が低い未成年にもしっかりと法律に従って分配がされているか確認するための処置です。
代理人や元配偶者を交えて公平な話し合いを行う必要があるため、顔を合わせるのを避けられないこともあるでしょう。
子どもの心情に配慮する
遺産相続のときは、子どもの心情に配慮することも大切です。
子どもが被相続人と接点を持つことを望んでいるのか、望んでいるならばどんな形がベストなのか、代理人や保護者が見極めていきましょう。
遺留分侵害額請求をされた場合の対処法
法定相続人と話し合うことなく勝手に遺産の分配をしてしまった場合には、遺留分侵害請求が適用できます。
請求の措置がとられてしまうと、親族たちが譲りたくなかったものまで遺産分配が行われてしまう可能性があります。
トラブルを避けるためには、最初からしっかりと話し合いを行なって、事情などをオープンにしながら折り合いをつけていきましょう。
相続についてのご相談は、林商会にお任せください
遺産相続の際には、民法で定められた順位や割合に従って相続手続きが行われることをご説明してきました。
しかし、遺言書がある場合や代襲相続が発生した場合、離婚した元配偶者との間に子どもがいる場合など、注意が必要なケースがあります。
「相続は難しそうでよくわからない」とお悩みの方は、ぜひ相続の専門家集団である林商会にご相談ください。
相続診断士、弁護士、司法書士などの専門家が、確かな知識をもとにお悩みに寄り添ってきめ細やかに対応させていただきます。
まとめ
今回は、遺産相続における相続順位と割合について解説しました。
法定相続人は自動的に権利が付与されてしまう制度上、トラブルが絶えず手続きも複雑になりやすいです。
トラブルを避けるためにも、生前の遺言書の準備や真摯な話し合いを心がけましょう。