指定相続は遺言書がある場合の遺産分割の方法だが、相続人の分割協議が必要!?法定相続分との違いについても解説

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相続が発生すると、被相続人の遺産分割を行わねばなりません。

遺産分割には2つの方法があり、遺言書がある場合は「指定相続」、遺言書がない場合は「法定相続」と呼ばれます。

この記事では、両者の違いや指定相続の注意点について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

指定相続分とは?

指定相続分 協議

ここでは、指定相続分とは何かについて解説します。

指定相続分は「遺言書により指定された相続分」

指定相続分とは、遺言書によって指定された相続分を指します。

被相続人は、遺言書によって「誰にどのくらいの財産を相続させるのか」を決められるほか、第三者に決定を委ねることも可能です。

指定相続分の定め方

指定相続分を定めるときには遺言書が必要で、遺言書以外の方法は認められていません。

被相続人が遺言で相続分を指定する場合、基本的には「長男には財産の2分の1、長女と次男には4分の1ずつ」など、割合で示す必要があります。

しかし実際には、「長男には家と土地、次男には車と預貯金」など、個別に具体的な相続財産を指定していることが多く、そのような遺言も有効とされています。

遺言書がない場合は民法で定められた「法定相続分」に従う

被相続人による遺言書がない場合は、民法で定められた相続人の範囲と順位、受け継ぐ相続分に従わねばなりません。

これを法定相続といい、法定相続によって決められた相続人を法定相続人、法定相続人の相続分を法定相続分と言います。

法定相続人の優先順位は以下の通りです。

  • 相続人:被相続人の配偶者
  • 第1順位:子ども、子どもがいない場合は孫、子どもと孫がいない場合はひ孫
  • 第2順位:父母、父母がいない場合は祖父母
  • 第3順位:兄弟姉妹、兄弟姉妹がいない場合は姪・甥

配偶者は優先的に相続人となり、相続人の順位は、第1順位の該当者がいない場合は第2順位に、第2順位の次は第3順位へと移ります。

また、法定相続の割合は家族構成や親族の人数によって異なり、配偶者と第1順位の子どもがいる場合は、配偶者が財産の2分の1、残りの2分の1を子どもが相続します。

法定相続人について更に詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。

▼法定相続人の範囲や順位などについて解説

指定分割分と法定相続分はどちらが優先される?

有効な遺言書があれば、法定相続分よりも指定相続分が優先されます。

遺産は被相続人の所有物であるため、法律よりも被相続人の意思が尊重されるのは当然と言えるでしょう。

ただし、相続人全員の意見が一致した場合には、遺言書とは異なる割合での遺産分割が可能です。

遺言書で相続分を指定するメリットとデメリット

指定相続分 家

遺言書で相続分を指定するメリットとデメリットを紹介します。

メリット:故人の意思を自由に反映できる

遺言書で相続分を指定する場合、被相続人が自由に遺産分割を決められます。

「配偶者には2分の1、長男と次男に4分の1ずつ」「配偶者には6分の1、長男と次男に3分の1ずつ、孫に6分の1」など、被相続人の意思を反映することが可能です。

相続分が割合で指定されている場合は、個々の財産の具体的な分け方は、相続人同士で話し合って決めなければなりません。

デメリット:不公平な指定分割はトラブルのもと

遺言書の内容によっては、トラブルに発展する可能性があります。

被相続人が指定した相続分が「配偶者が4分の3、孫に4分の1、長男・長女は無し」など大きく偏っている場合は、相続が無しと指定された人が不快に感じることも少なくありません。

このような場合は、先述した通り、相続人同士が納得したうえで遺言書以外の方法での遺産分割が可能です。

トラブルを防ぐためにも、遺言書で相続分を指定する際には公平な遺産分割になるよう心がけましょう。

相続分の指定で注意すべき4つのこと

指定相続分 印鑑

遺言書で相続分を指定する場合、4つの点に注意しなければなりません。

遺留分に配慮しよう

遺言書による指定相続では、被相続人が自由に遺産の割合や相続人を指定できますが、無制限に指定できるわけではありません。

兄弟姉妹や甥姪以外の法定相続人が最低限もらえる相続分(遺留分)への配慮を怠らないようにしましょう。

遺留分は民法1028条で保障されており、遺言書によって相続分が指定されていたとしても、この遺留分を侵害することはできません。

仮に「〇〇(血縁関係のない人)に遺産のすべてを相続する」など、遺言書で遺留分を侵害する相続が指定されていた場合、その遺言書自体は有効です。

しかし、配偶者や子ども、孫、父母、祖父母などの遺留分をもつ相続人は、遺言で指定された相続人に対して、遺留分を現金で返してもらう遺留分侵害額請求ができます。

ただし、遺留分侵害額請求は、相続開始または遺留分侵害の事実を知ってから1年以内に行う必要があるため、注意が必要です。

相続分を指定しても遺産分割協議が必要

遺言書による相続分の指定は、あくまで財産の取得割合の指定のみです。

具体的に誰がどの財産を相続するかは指定されていないため、指定相続の場合も遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

遺産分割協議では、被相続人が指定した相続分に従って、土地・建物、生命保険金、預貯金、死亡退職金など、どの財産を誰が相続するかを決定します。

遺言書が無効にならないように作成する

遺言書の作成方法を誤ると無効になってしまうため、注意が必要です。

無効になるリスクを避けるためには、被相続人自身の直筆で作成する「自筆証書遺言」よりも「公正証書遺言」がおすすめです。

公正証書遺言は、公証役場で2名以上の証人の立ち合いのもと、公証人に作成してもらう遺言書を指します。

公文書である公正証書遺言は自筆証書遺言に比べて信用性が高いほか、公証役場で保管されるため確実性も高く、無効になるリスクが低いと言えます。

しかし、2名の証人が未成年や配偶者・直系血族などの推定相続人の場合は無効になるため、注意しましょう。

相続財産に債務が含まれる場合

相続財産に債務が指定されている場合でも、遺言書での指定通りに債権者から請求がくるとは限りません。

遺産に住宅ローンやクレジットカードの未払いなどの借金がある場合、被相続人は相続人に相続分の指定に従って債務を相続させることができます。

しかし、銀行やクレジットカード会社などの債権者は、法定相続分に従って債務者(相続人)に請求することも可能で、請求を受けた相続人は債権者に必ず返済しなければなりません。

債務の返済後に、遺言で指定された本来の負担額より多く払った相続人がいる場合は、少なく払った相続人に求償できます。

相続人が債務を相続したくない場合は、「相続破棄」または相続財産の範囲内で債務を相続する「限定承認」を行うことで、債務の拒否や軽減が可能です。

しかし、相続破棄を行う場合はすべての遺産の相続ができなくなってしまうため、注意しましょう。

遺言書による相続分の指定をケース別に解説!

指定相続分 遺言書

遺言書による相続分の指定には、さまざまなケースがあります。

ここでは3つのケースについて解説します。

【ケース①】相続人全員の相続分を指定

遺言書によって相続人全員の相続分が指定されている場合は、原則としてその指定に従って遺産を分割します。

しかし、誰にどの財産を相続するかや遺留分への配慮、個々の遺産をどう評価して分割するのかなど、相続分の分割だけで遺産相続が解決できるわけではありません。

特に不動産や建物などは分割が難しいため、遺言書の内容に違和感や不安を感じた際には、弁護士や遺産相続に詳しい専門家に相談してみましょう。

【ケース②】一部の相続人に関して相続分を指定

一部の相続人に関してのみ相続分が指定されており、他の相続人の相続分が指定されていない場合は、法定相続分に従って遺産分割を行います。

たとえば、遺言書に「長男に2分の1、残りの2分の1は長女と次男に相続したい」と指定されていたケースなどです。

このような場合、長男は遺言書の指定どおり2分の1を相続し、相続分の指定がない長女と次男は、法定相続分に従って長女が4分の1、次男が4分の1を相続します。

なお、相続分の指定がなかった長女と次男に対しては、法定相続分に従わず協議によって遺産分割を決めることも可能です。

【ケース③】共同相続人に配偶者がいる

ケース②で配偶者がいる場合は、以下の2つのパターンでの相続分が考えられます。

【パターン1】

  • 法定相続分に従って配偶者への相続分を優先
  • 配偶者への法定相続分以外の相続分(2分の1)を子ども3人で相続
  • 遺言書の指定通り、2分の1の遺産を長男2分の1、長女と次男に4分の1ずつ相続

つまり、妻(配偶者)が2分の1、長男が4分の1、長女と次男が8分の1ずつという相続分になります。

【パターン2】

  • 遺言書の指定通り長男に2分の1を相続
  • 長男への指定相続分を除いて、2分の1の遺産を配偶者と長女次男に法定相続
  • 2分の1の遺産を配偶者が2分の1、長女と次男が4分の1ずつ相続

つまり、妻(配偶者)4分の1、長男2分の1、長女と次男が8分の1ずつになります。

このように相続分が曖昧なケースでは、「遺言の意思解釈」が必要です。

被相続人がどちらのパターンで相続を希望したのかを、相続人それぞれと被相続人の関係や状況を考慮して、客観的な推測のもと、慎重に決定しなければいけません。

そのため、遺言書を作成する際は、相続分を明確に表記することが大切です。

死後に意思に反した解釈を生まないためにも、少なくとも法定相続人すべての相続分は記載することをおすすめします。

指定相続と遺贈の違いについて

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遺贈とは、遺言書によって法定相続人以外の個人や団体に遺産の一部、もしくはすべてを譲ることを言います。

指定相続は原則として法定相続人に限られるのに対し、遺贈は内縁の妻や息子の嫁・養子縁組をしていない婿養子など法定相続人以外の人や団体も対象です。

また、遺産分割協議を行う必要がある指定相続とは異なり、遺贈には必要ありません。

加えて、相続を破棄したい場合にすべて遺産の相続を破棄しなければならない指定相続とは異なり、遺贈では遺言により贈られた財産がいらないと判断した場合、一部のみを放棄できます。

このように、指定相続と遺贈では、対象となる相続人や遺産協議の有無、相続破棄の内容が大きく異なるのです。

指定相続に関する疑問やご相談は林商会にお任せください

遺言書による指定相続では故人の意思を自由に反映できますが、遺留分への配慮や無効にならない遺言書の作成など、さまざまな注意点があります。

曖昧な知識のまま相続の指定を進めると、故人の意思に反した相続や相続人同士のトラブルに発展しかねないため、専門家への依頼や相談がおすすめです。

林商会には、弁護士・司法書士・行政書士・税理士など相続の専門家が在籍しており、お悩みの一つひとつに丁寧に寄り添った最善の解決策をご提案します。

指定相続についての疑問やお悩みは、まずは無料相談からお気軽にご連絡ください。

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まとめ

指定相続は、被相続人の意思を反映させる遺産分割方法です。

しかしトラブルを避けるためにも、遺言書の内容によっては、相続人同士での遺産分割協議も必要でしょう。

被相続人の思いや意思を汲み取りながら、不公平がないよう合理的に遺産分割を決めていくことが大切です。

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