2024年に相続登記が義務化されることをご存じでしたか?
義務化後に相続登記を怠ると罰則を受ける可能性もあるため、不安もあるでしょう。
しかし、いざ登記を始めるとしても何から始めていいのかわからない方も多いかと思います。
そこでこの記事では、相続登記に必要な書類と手続きの流れをわかりやすく解説します。
目次
【下準備】相続登記に必要な書類を集めよう!
相続登記をするためには、さまざまな書類を集める必要があります。
法務局などの登記所で入手できる登記事項証明書のほか、用意しなければならない必要書類について詳しくみていきましょう。
相続登記に必要な書類の発行機関と費用
相続登記に必要な書類
必要な書類 | 発行機関 | 費用の目安(1通あたり) |
相続人全員の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 手数料450円前後 |
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | それぞれの時点で本籍地のあった市区町村役場 | 手数料450円前後 |
被相続人の住民票の除票か戸籍の附票 | 除票は最後の住所のあった市区町村役場、附票は最後の本籍地の市区町村役場 | 手数料300円前後 |
不動産を取得する人の住民票 | 住所地の市区町村役場 | 手数料300円前後 |
不動産の固定資産評価証明書 | 不動産のある市区町村役場 | 手数料300円前後 |
相続登記が完了した際に発行される書類を郵送してもらう場合、書留機能のある封筒を同封しましょう。
遺産分割協議を行なった場合
必要な書類 | 発行機関 | 費用の目安(1通あたり) |
遺産分割協議書 | 自作する | - |
相続人の印鑑証明書 | 市区町村役場 | 手数料300円前後 |
遺産分割協議を行う場合に必要なのが、遺産分割協議書です。
すべての相続人が署名と実印を押印した遺産分割協議書は、遺産分割について相続人全員が納得していることの証明になるでしょう。
遺言によって相続する場合
遺言書に書かれていた内容通りに相続する場合には、相続登記の書類に加えていずれかの遺言書を提出します。
自筆証書遺言 | 家庭裁判所での検認が必要 | |
秘密証書遺言 | 家庭裁判所での検認が必要 | |
公正証書遺言 | 謄本でも認められる |
遺言によって相続人以外の人が相続する場合
遺言書に相続人ではない人に財産を遺すことが記されていた場合、遺言書の内容を実行する人を証明するための書類が必要になります。
必要な書類 | 発行機関 | 費用の目安 |
遺言書 | - | - |
遺言執行者の印鑑証明書※ | 市区町村役場 | 1通あたり手数料300円前後 |
遺言執行者選任審判謄本※ | 家庭裁判所 | 申立料800円 |
すべての相続人の印鑑証明書※ | 市区町村役場 | 1通あたり手数料300円前後 |
※このいずれか
費用削減!戸籍謄本などの原本還付を受ける方法
相続を進めるときに必要な戸籍謄本や住民票、印鑑証明などの原本を返してもらうための手続きを、「原本還付」と言います。
原本還付を行うと、手続きの際に原本とコピーの両方を提出して原本だけを戻してもらうことが可能になるので、同じ書類を何度も請求する費用や手間を省けます。
相続関係説明図を作成するとコピーは不要!
原本還付をしたとしても、提出のために毎回すべての戸籍謄本をコピーするのは大変でしょう。
その手間を省くことができるのが、「相続関係説明図」と呼ばれる被相続人と相続人の続柄や生年月日などをまとめた表です。
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相続登記のほか、金融機関での預貯金の解約にも活用できます。
相続関係説明図について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
法定相続情報一覧図を作成すると原本すら不要!
相続関係説明図と同様に、相続関係を一覧にしたものが「法定相続情報一覧図」です。
法定相続人が誰なのかを法務局の登記官が証明する書類であり、記載する事項も決まっています。
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この1つの書類だけで相続関係を証明できるので、さまざまなシーンで戸籍に関する書類の提出を簡略化できます。
相続登記の手続きの流れをケース別に解説
相続登記は自分でできるものなのでしょうか?それとも専門家に依頼しなければならないのでしょうか?
どうすべきか判断するために、まずは全体の流れを確認してみましょう。
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大きく分けると、「相続する不動産について確認をする」「相続する人を決める」「相続登記に必要な書類を用意する」「法務局へ申請する」という4つの作業が必要です。
相続人の数が多い場合や被相続人の戸籍が複雑な場合は、手間や時間が多くかかります。
また、遺言書の有無で必要な書類や手続きが変わるので、正しく申請するためには注意が必要です。
【ケース1】遺言書がある場合
財産分与について書かれた遺言書が遺されていたときは、その内容に従って相続登記を行います。
公正証書遺言以外の遺言書の場合、家庭裁判所での検認が必要です。
遺言書検認には1か月ほどかかるので、早めに検認の申し立てをしておくとよいでしょう。
【ケース2】遺言書なしで法定相続をする場合
法律に定められている通りに法定相続で財産を分配するケースでは、土地や不動産を複数の相続人で共有します。
そのため、すべての相続人が相続登記を行う必要がありますが、単独申請が認められているので、相続人のうちの1人が共同名義で相続登記をすることが可能です。
法定相続で登記をするときは、相続人同士で話し合いをしてから行えば、トラブルを防げます。
【ケース3】遺言書なしで遺産分割協議をする場合
すべての法定相続人が遺産の分割について話し合い、誰がどの財産を受け取るかを決めることを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議は、誰がどの財産を相続したのかを明確にして、土地や不動産などを共同ではなく1人の相続人の名義にできます。
相続登記の際には、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要です。
その他の特殊なケースの手続きの流れ
①相続欠格・相続控除・相続放棄者がいる場合
相続が発生すると、法定相続人には相続権を行使する権利が生まれます。
しかし、場合によってはその権利がなくなったり、権利を手放したりすることもあるので、それぞれのケースについて見ていきましょう。
相続欠格
法定相続人がある行為をした場合、相続権が剥奪されることが民法891条に記されています。
相続欠格の理由には、主に2つの事項があります。
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たとえば被相続人などを殺害する行為、遺言書の内容について脅迫する行為、遺言書の作成を妨害する行為は、相続欠格にあたります。
相続控除
相続した財産に対する相続税は、不動産の名義変更とは関係なく課税されます。
しかし、誰が相続するかによって相続税の課税額が変わる場合もあるので、相続登記をする際には、相続税について検討してから決めましょう。
小規模宅地などの評価減の特例 | 被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地、貸していた土地を一定の要件に合う人が相続した場合、その不動産の評価額を最大80%減にできる |
配偶者控除 | 配偶者は1億6,000万円までは相続税が非課税 |
相続放棄者
被相続人に借金がある場合や相続に関わりたくないときには、相続が発生してから3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで相続放棄ができます。
法定相続などで共同相続登記をするときに、相続人の中に相続放棄者がいる場合には、それを確認するための書類として「相続放棄申述受理証明書」が必要です。
②遺贈による登記の場合
遺言書によって相続人ではない人が財産を遺贈された場合には、相続とは違う手続きが必要になります。
相続になるとき
法定相続人が財産を受け取る場合は「相続」です。
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遺贈になるとき
「遺贈」の場合は、通常の相続とは異なる注意点があります。
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③死因贈与による登記の場合
死因贈与とは、贈与者が亡くなった時点で受贈者に財産が移転する契約のことで、その財産が不動産であるときは登記手続きが必要です。
死因贈与による登記手続きには2つの種類があります。
死因贈与の効力が発生してから登記する場合
贈与者が亡くなってから所有権を移すための登記をするときは、受贈者と贈与者のすべての相続人によって共同で登記申請を行う必要があります。
また死因贈与執行者が指定されている場合は、贈与者に代わって執行者が登記手続きを進めることが可能です。
契約をしたときに仮登記をした場合
死因贈与の契約を結んだときに、贈与者が亡くなると始まる「所有権移転仮登記」を事前に行うことが可能です。
贈与者が亡くなった後に、受贈者と贈与者の相続人全員か執行者が共同で、本登記手続きを行います。
【登記をしないと罰則!?】2024年から相続登記が義務化へ
日本全体の問題であった「所有者不明土地」の対策として、民法の不動産登記法の改正が決定し、2021年4月1日から相続登記が義務化されることになりました。
ココが変わる!法改正後の相続登記のポイント
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不動産を所有してから3年以内に相続登記をすることが、国民の義務となりました。
もし遺産分割協議の最中などで登記ができない場合には、「相続人申告登記制度」を利用して法務局に申請することで、登記の義務を果たしたとみなされます。
ただし、実際に相続人が決定してから3年以内に、必ず相続登記を行わなければなりません。
法改正は所有者不明の土地が多すぎることが原因
相続登記の義務がないことで、長い期間放置されて所有者がわからない土地が年々増加する一方です。
やがて近い将来には、北海道の面積ほどの土地が所有者不明の土地になると言われています。
所有者不明の土地が増えることは、以下のような弊害をもたらすでしょう。
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所有者がわからないと、その土地を有効に活用することが難しいだけでなく、トラブルにつながるリスクも高まることから、法改正が行われました。
相続で取得した土地の国庫帰属が大きな目玉に?
土地を相続すると維持や管理の義務が発生します。
特に相続をした土地が不要な土地の場合、その負担が大きくて困っている人も少なくありません。
そこで、不要な土地を国庫に帰属させることができる制度として、2023年4月27日から「相続土地国庫帰属法」が施行されることになりました。
ただし、国庫に帰属できる土地にはいくつかの条件があり、以下のような費用や労力がかかる土地は制度が適用されません。
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また審査には手数料が必要で、実際に国庫に帰属する場合には、10年分の土地管理費用に相当する負担金を納める必要があります。
相続登記をしないと起こる問題点
相続登記をしないまま放置すると、義務化以外にも多くの問題が起こります。
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名義人が確認できないので不動産の信用度が下がり、売却や活用ができないというのが大きな問題点と言えるでしょう。
また何代にも渡って相続登記されていない土地は、誰のものなのか不明確で、遺言で財産として指定したとしても無効になる場合もあります。
相続登記をしておけば、いざ不動産を活用したいときにスムーズに動けるため、早めの申請がおすすめです。
相続登記はどのタイミングで行うのがよい?
相続登記の申請には、書類の再発行にかかる費用を抑えるベストなタイミングが存在します。
相続登記は相続税申告前がベスト!
財産の相続をするとさまざまな手続きをしなければならないので、どれから手をつけてよいのか迷ってしまうかもしれません。
相続登記や相続税の申告では、戸籍に関する書類を用意する必要がありますが、相続登記の申請で使った書類はその後返却されるので、そのまま相続税の申告に使うことができます。
しかし、相続税の申告で提出した書類は返却されないため、相続登記は相続税の申告の前に行うのがおすすめです。
相続税の申告の期限は、相続が始まってから10か月までに行う必要があるので、間に合うように早めに相続登記をしましょう。
相続登記に関する相談は司法書士へ
相続登記は手間がかかることが非常に多い
相続登記の手続きを自分で行うことは可能です。
しかし、大変な手間と時間がかかることから、司法書士へ依頼したほうがよいケースも多いでしょう。
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など、つまずくポイントがたくさんあります。
特に相続関係が複雑な場合は、司法書士にお願いしたほうがスムーズに相続登記を進めることができるでしょう。
相続登記を任せたほうがよいラインとは?パターン別に解説!
【パターン1】兄弟間の相続や代襲相続などのイレギュラーな場合
相続登記では戸籍謄本を取得する必要がありますが、兄弟の戸籍は無条件で取得することができないため、手間がかかります。
兄弟の戸籍謄本を取得するには、権利行使のために必要である理由が明確でなければなりません。
「相続登記のために取得する」ことが証明できれば、兄弟の戸籍は取得が可能です。
また、本来相続人となる人が亡くなっていて、代わりにその人の子どもが代襲相続をする場合も、通常より手間がかかります。
被代襲者(本来の相続人)が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を提出しなければならないので、戸籍に詳しい司法書士への依頼がおすすめです。
【パターン2】相続人間の仲が悪く話し合いをしづらい場合
相続人同士の仲が悪いと、相続登記に関する話し合いがなかなか進まず、トラブルに発展することがあります。
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不動産を相続すると共有の状態になるので、売却や建物の解体、賃貸などをする場合にはすべての相続人の了承を得なければなりません。
遺言書、もしくは遺産分割協議の決定に従って、相続する人が相続登記をしたほうが不動産を有効に活用できるので、話し合いがしづらい場合には司法書士や弁護士などの専門家に依頼をするほうがよいでしょう。
【パターン3】代償分割などの難しい遺産分割協議を行いたい場合
相続人が不動産を相続する代わりに、その相続人がもっている財産(現金や不動産)を他の相続人に譲渡するのが代償分割です。
財産が譲渡されたことは、遺産分割協議書に記載されます。
なかでも財産が不動産の場合、登記は譲渡した相続人と譲渡された相続人が共同申請で行うことになるでしょう。
手続きが複雑なため、難しい遺産分割協議を行う場合には司法書士に任せるのがおすすめです。
相続登記の相談は株式会社林商会へ
この記事では、相続の登記についてご説明してきました。
登記は相続の専門的な知識を問われることも多く、個人で行うことが不安な方もおられるかもしれません。
そのような不安は、ぜひ相続の専門家集団である林商会にご相談ください。
相続診断士、弁護士、司法書士などの専門家が、確かな知識と経験をもとに、丁寧に疑問解決へと導きます。
まずは無料相談、無料お問い合わせからお気軽にご相談ください。
まとめ
相続登記は個人で行うこともできますが、申請のために必要な書類を集める手間や時間がかかります。
また、長い間名義変更をせずに放置していた不動産や、遺産分割協議が進まない場合など、個人で行うにはハードルが高い相続登記も少なくありません。
相続登記の義務化が決定した今、いざというときに慌てないためにも早めの登記を行うことをおすすめします。