相続の場面で活躍する専門家は、国家資格者だけでないことをご存じでしたか?
相続の民間資格は、国家資格と比べると比較的簡単に取得できるためおすすめです。
この記事では、さまざまな相続資格の仕事内容やおすすめの民間資格の試験の詳細・取得の流れまで解説します。
民間資格の中には不動産の営業マンや税理士のキャリアアップにつながるものもあるので、ぜひ参考にしてください。
目次
相続資格は種類が豊富!国家資格・民間資格別に詳しく解説
相続資格といっても数多くの種類があり、専門範囲や取得方法が異なります。
ここでは、国家資格・民間資格別にそれぞれの概要をご紹介します。
「独占業務」ができる資格が多い相続の国家資格
相続の国家資格には、独占業務を有するものが多いです。
独占業務とは、資格を有している者でなければ従事することを禁止されている業務のことでその業務範囲は法律で定められており、無資格者が行うと罰則が課されます。
業務独占資格は、高度な専門性や知識が求められるため、取得難易度が高い傾向にあります。
ただし、下記で解説する国家資格の中ではファイナンシャル・プランナーのみ、独占業務を持ちません。
弁護士
弁護士は相続を含む法律全般の専門家として、民事・刑事の訴訟に関する法律事務を行い、裁判の適正を確保します。
弁護士になるための司法試験を受験するには、法科大学院過程を終了するか司法試験予備試験への合格が必要なうえ、受験資格には5年という期限も存在し合格率も低いため、国家資格の中でも最難関と言われています。
税理士
税理士は相続を含む税金全般の専門家として、納税のアドバイスや申告書の作成などを行います。
常に一定の受験数がある人気国家資格ですが、合格率は15%前後で推移しており、その学習範囲の広さからも難関の資格として知られています。
司法書士
司法書士は主に登記の専門家として、個人や企業からの依頼で法律に関連する書類の作成や手続きを代行します。
その合格率は5%前後を推移しており、取得のハードルは非常に高いです。
行政書士
行政書士は役所に提出する書類作成の専門家として、飲食店の営業許可や建設会社の建築許可など、各種手続き・申請を行います。
他の士業と比べて難易度は控えめで、退職後の独立開業の需要もあり「身近な街の法律家」として人気がある資格です。
不動産鑑定士
不動産鑑定士は、不動産の価値判定の専門家として依頼人の要望に応じて、土地や建物の価値の判定や有効利用法のコンサルティングを行います。
合格率は15%前後で推移しており、取得までにかなりの勉強時間が必要になることから、前述の弁護士や公認会計士と並び三代難関国家試験の1つです。
ファイナンシャルプランナー(FP)
ファイナンシャル・プランナーは、資金計画の専門家として金融知識を提供し、依頼人のライフプラン設計についてサポート・アドバイスします。
3級から1級までが存在し金融分野の総合的な知識が学べるほか、2級までは比較的少ない学習時間で取得を目指せるため、金融機関勤務者はもちろん学生から他業種のビジネスパーソンまで非常に人気が高い資格の1つです。
民間資格は相続の窓口の役割を担う専門家
国家資格者と相続人との窓口の役割を担う、民間資格者の概要を解説します。
相続の民間資格は国家資格と比べて、取得難易度が控えめであることが大きな特徴です。
相続士
相続士は、相続の総合的な知識をベースに各国家資格者とネットワークを組み、依頼人が的確な相続を行えるよう手助けをします。
こちらの詳細は後ほど解説します。
相続診断士
相続診断士は、相続について依頼人にヒアリングをし相続診断を行うことで、将来の相続への準備をサポートします。
相続診断とは円満な相続をサポートするために現状を把握し、改善点を見つけ出すことを目的として行う診断です。
こちらの詳細も後ほど解説します。
遺言執行士
遺言執行士は、遺言者の意思を最大限に尊重し、相続人のため迅速に遺言を実行します。
事業承継士
事業承継士は「社長個人の相続」「会社の事業承継」という2分野を融合することで、会社の文化やノウハウを承継し、後継者による更なる成長を図ります。
相続カウンセラー
相続カウンセラーは、心理的負担の多い相続業務において依頼人のケアを行います。
終活カウンセラー
終活とは、人生の終焉を見つめることを通して、今をよりよく自分らしく生きる活動のことです。
終活カウンセラーは、終活の観点から依頼人の悩みに応え、実践的なアドバイスを行います。
相続アドバイザー
相続アドバイザーは、円満な相続を実現するため依頼人と各士業との間に入り、的確なアドバイスをします。
事業承継アドバイザー
事業承認アドバイザーは、事業承認における状況把握から情報収集・整理・承認手法に関するアドバイスをします。
相続知識検定マスター
相続知識検定マスターは、相続の専門家になるための登竜門的な位置付けの資格です。
基本的な知識を学ぶことで自らの相続と向き合い、相続相談にも乗れる人材を目指します。
相続財産再鑑定士
相続財産再鑑定士は、相続税の過払いを解決するため依頼人と再鑑定の専門家との橋渡し役を担い、相続税還付により戻ってきたお金で次の相続の税金対策のサポートまでを行います。
こちらの詳細も後ほど解説します。
さまざまな職種で役立つ相続の資格
相続の資格は既存の職業と組み合わせることで、ご自身のキャリアアップや新規顧客の獲得に役立てられます。
コンサルタント業務の幅が広がる税理士
税理士は相続の資格と組み合わせることにより、相続分野で専門性と信頼性を獲得し、コンサルタント業務の幅を大きく広げられます。
税理士の業務分野は、法人税や固定資産税など多岐に渡りますが、中でも相続税の相談を受ける機会は非常に多いです。
さらに、2015年より相続税法が改正された影響で相続税の課税対象者が倍増したことにより、ある種の「相続税節税ブーム」が起こっているため、相続の資格を取得することで新規顧客の獲得が大きく期待できます。
新規顧客が見込める生命保険・不動産業界
生命保険・不動産業界では扱う業務の特性上、相続との親和性が非常に高いです。
相続の知識は、保険契約や不動産取引の「その後」をフォローアップするため、長期の関係性を見据えた提案を可能にします。
そのため、生命保険・不動産業界の営業に従事するビジネスパーソンは、相続の資格を取得することでキャリアアップにつながる強力な武器を得られます。
相続資格は日常生活でも役立つ
ご家族やご自身の相続については遅かれ早かれ誰もが向き合うことになり、その意味では相続の知識はすべての人に役立つと言えます。
しかし、実際に起こってから初めて学ぶというのは、その際の心理的状況も考慮すると非常にハードです。
とはいえ、学習の機会は少なくその範囲は法律から金融にまで多岐にわたるため、自発的な準備は難しいでしょう。
そこで、資格を通して事前に体系的な知識を身に付けておくことで、いざというときに落ち着いた対処や日常から相続について話し合う機会をもつことができます。
おすすめの相続の民間資格を紹介!
ここでは、数ある相続の民間資格の中でもおすすめの3種類の資格について詳しくご紹介します。
①相続士
まずは相続士について解説します。
試験概要は、以下の通りです。
試験日 | 申し込みの3日後から3か月以内 |
会場 | 全国CBT会場 ※CBTとは、Computer Based Testing の略称で、全国のテストセンターでコンピューターを利用して受験する試験形態のこと |
試験概要 | 出題:全50問 3択方式 試験時間:90分 テキスト持ち込み不可 |
難易度 | 合格基準:30/50点 比較的優しく、相続全般に関する基本的な知識が問われる |
資格認定 | 即時判定 合格後、任意で登録すると認定証発行 |
費用 | 受験料:33,000円(税込) 教材料:別途発生 登録料:10,000円 月会費:1,000円(口座振替) |
試験申込みはこちら | CBTS 相続士資格試験サイト |
主な業務内容は、以下の3つです。
……遺産分割協議の取りまとめ、不動産の相続登記、保険や預金の相続手続き等 |
相続士は相続相談の窓口的な役割を担えるほか、周辺の資格(税理士・行政書士・FP等)をお持ちの方なら、現在の専門分野と組み合わせて活用することができます。
資格取得後は、相続士事務所の開業も可能です。
また、上位資格として「相続士上級資格」があり、こちらは相続全般のより深い知識を身につけたい方におすすめです。
②相続診断士
次に、相続診断士についてご紹介します。
資格試験概要は、以下の通りです。
試験日 | 申し込みの21日後以降 |
会場 | 全国CBT会場 |
試験概要 | 出題:全60問 3択方式・穴埋め方式 試験時間:60分 |
難易度 | 合格基準:70/100点 比較的優しい |
資格認定 | 即時判定 合格後、約2か月後に認定証送付 |
費用 | 受験料:38,500円(税込) 再受験料:16,500円(税込) 教材料:受験料に含む 登録料:受験料に含む |
試験申込みはこちら | CBTS 相続診断士資格試験サイト |
主な業務内容は、以下の3つです。
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相続診断士は、トラブルの芽を早めに摘み取り、相続を円滑に進める道先案内人として、社会的な役割を担います。
資格単体で活用するのはもちろんですが、生命保険業界であれば「相続対策」や「生前贈与」の観点からお話ししたり不動産業界なら税制改正についてお伝えして不利益を回避したりと、組み合わせることで真価を発揮する資格でもあります。
また、上位資格として「上級相続診断士」があり、こちらは相続診断の実務により強くなりたい方におすすめです。
③相続財産再鑑定士
次に、相続財産再鑑定士についてご紹介します。
試験概要は、以下の通りです。
試験日 | 随時 |
会場 | 自宅・郵送 |
試験概要 | 不明 |
難易度 | 不明 |
資格認定 | 到着次第、採点 3〜4週間ほどで合格証を送付 |
費用 | 受験料:38,800円(税込) 再受験料:なし 教材料:受験料に含む 登録料:受験料に含む |
試験申込みはこちら | 相続財産再鑑定協会 公式サイト |
主な業務内容は、以下の3つです。
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相続財産再鑑定士は、相続関連の営業成績を伸ばしたい方におすすめの資格で、特に生命保険・不動産業界との相性が良好です。
なぜなら、相続税還付により戻ってきたお金には、次の相続の際に多額の相続税が課税されるリスクがあるからです。
その税金対策として適切なのが生命保険加入や不動産購入であるため、これらの営業につなげやすくなります。
なぜ相続に専門家は必要?
では、なぜ相続に専門家が必要なのでしょうか。
相続問題は各国家資格者と民間資格者との連携が重要
相続問題の解決には、各分野に特化した国家資格者との連携が求められるため、それらを仲介する存在に大きな需要があります。
たとえば、相続にあたって被相続人の持ち家を売ることにした場合、不動産の価値を算定するには不動産鑑定士が、売買を仲介するには不動産業者が、不動産登記を行うには司法書士との連携がそれぞれ必要です。
あるいは、遺産相続に関しても、相続財産調査には行政書士が、相続登記には司法書士が、相続税納付については税理士とのコンタクトがそれぞれ必要となります。
このように、相続当事者がケースごとに適切な国家資格者を見極めて、個別に連絡をしていくのは大きな負担を伴います。
そこで、柔軟な橋渡し役として活躍するのが民間資格者であり、依頼人の相続が円滑に進むことを可能にするのです。
相続の民間資格者に相談するメリット・デメリット
次に、相続の民間資格者に相談をするメリット・デメリットを解説します。
相続の民間資格者に頼むメリット
相続の民間資格者に相談するメリットとしては、以下のようなものがあります。
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相続の民間資格者は、相続を専門分野としているため、相続に関する総合的な知識をベースに臨機応変に相談を受けられます。
また、各国家資格者の専門領域を熟知しているため、依頼者のケースに応じて、適切な国家資格者に取り合うことが可能です。
相続の民間資格者に頼むデメリット
相続の民間資格者に相談するデメリットとしては、以下が考えられます。
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相続の民間資格者は、国家資格者の管轄する独占業務を行えません。
民間資格者が担うのは、あくまで橋渡し的な役割や、独占業務に該当しないアドバイス・サポートに留まります。
そのため、当事者の中で依頼したい内容が明確な場合に限れば、直接国家資格者に相談するほうがスムーズです。
【ケース別紹介】相続の専門家選びで失敗しない方法
次に、ケース別に適切な専門家を解説します。
相続全般のアドバイスをもらいたい方は相続士へ
相続全般に関してアドバイスが必要な場合は、相続士へのコンタクトがおすすめです。
なぜなら相続士はケースを限定せず、一人ひとりの相続時間帯に応じた支援を想定しているからです。
たとえば被相続人が複数の金融資産や会社を所有している場合、専門家による詳細な分析と法的行為が必要になるため、まずは相続士に一次相談をするのがスムーズでしょう。
将来の相続が不安な方は相続診断士へ
将来の相続に不安を抱えているなら、相続診断士への相談がおすすめです。
なぜなら相続診断士は、基本的な知識をベースに相続診断をすることで生前から相続問題について向き合い、トラブル対策を講じることを得意としているからです。
たとえば相続人が複数人存在していて、遺産の分割について決まっていないケースは注意が必要です。
この場合は、相続診断士へ事前に相談して将来のトラブルを防ぐことで、余裕を持って相続を迎えられるでしょう。
相続税申告が終わった方の相談は相続財産再鑑定士へ
相続税申告がすでに終了している場合、相続財産再鑑定士への相談がおすすめです。
なぜなら相続財産再鑑定士は、申告済みの相続税に関して納めすぎている可能性を伝え、相続税還付につなげることを得意としているからです。
たとえば、被相続人が地主でかつ相続税申告を終えている場合、所有している不動産によっては相続税還付に成功しやすい傾向があります。
このようなケースでは、相続財産再鑑定士に相談をすることで、払いすぎた相続税を取り戻すことができるかも知れません。
相続の相談内容が明確に決まっているなら国家資格者へ
相続の相談内容がすでに明確な場合は、国家資格者に直接相談をするのがよいでしょう。
たとえば、相続人が過去にも1度相続を経験していて、かつ相談が必要な専門家を把握している場合は、直接国家資格者にコンタクトを図るのが適切です。
しかし、同名の国家資格者にもそれぞれ個別の専門分野が存在するため、相続への特化レベルや担当事例を事前に下調べしておくことを推奨します。
民間企業に相続の相談はできる?
次に、民間企業に相談できるケースを検討します。
不動産会社に相談する
被相続人が複数の不動産を所有している場合は、それぞれの不動産会社に問い合わせることができます。
不動産の相続ではその状況や評価によって、相続税が数百万円単位で増減するので各不動産の詳細を把握することで、有利な処理をすることができるでしょう。
銀行に相談する
被相続人が多様な資産を所有している場合は、銀行に問い合わせることも手続きとして考えられます。
銀行の強みは扱っている商品種類が多いことなので、信託や保険、金融商品などバリエーション豊富な分野で、提案を受けることができます。
保険会社に相談する
相続が発生し相続人が生命保険金を請求したいという場合、保険会社に連絡することも検討手段の1つです。
生命保険金の請求には、各保険会社の取り扱いや死亡事由等により、必要書類が異なります。
ご家庭に届いているお知らせなどをご確認のうえ、保険会社に問い合わせてみましょう。
相続に関する相談は有資格者の多い株式会社林商会へ
相続に関する資格は年々需要が増えており、相続そのものへの関心の高さがうかがえます。
しかし、相続の正しい知識を身に付けなければいざ相続が起きたとき、不安を抱えることになります。
そのような不安や悩みは、ぜひ相続に関する有資格者が多数在籍している林商会にご相談ください。
相続診断士、弁護士、司法書士などの専門家が、確かな知識と経験をもとに、丁寧に疑問解決へと導きます。
まずは無料相談、無料お問い合わせからお気軽にご相談ください。
まとめ
相続の資格には国家資格と民間資格があり、取得難易度の観点から民間資格がおすすめです。
相続の民間資格者は総合的な橋渡し役として活躍できるほか、現在の職業と組み合わせることでキャリアアップを図ることができ、ご自身や親族の相続についても事前に向き合う機会が得られます。
なかでも、おすすめの民間資格は以下の3つです。
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相続士は相続の全般的なサポート、相続診断士は将来の相続相談、相続財産再鑑定士は相続税申告後のアドバイスをそれぞれ得意としています。
ぜひ本記事を参考に、適切な相続資格の取得を検討してみてください。